著者
久水 俊和
出版者
明治大学大学院文学研究科
雑誌
文化継承学論集
巻号頁・発行日
no.5, pp.96-83, 2008

本稿では、後世にマニュアルとして機能する「凶事記」の蓄積状況と作成過程を室町後期の例を用い考察した。その素材として、中世を通して内容が豊富である東坊城和長の『明応凶事記』を用いた。『明応凶事記』は、明応九年(一五〇〇)に行われた後土御門天皇の葬儀を記録したものであり、近臣であった和長が一連の葬送儀礼に関わったこともあり、残存している室町期の天皇葬儀の史料と比し、巨細に記録されている。しかし、近臣といえども中世の天皇葬儀において、すべての葬送儀礼を見分することは極めて難しかった。それは、天皇家の菩提寺である泉涌寺を筆頭とした僧衆や宮中の内々な儀礼を取り仕切る女房衆による密儀が多いためである。
著者
藤原 隆弘 西 啓
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-72, 2011

学術分野で広く利用されている電子ジャーナルは,インターネットやPDFの発展によりビジネス化されたが,一般の電子書籍市場はそれだけでは成功できなかった。Amazon社のKindleなどが電子書籍市場を形成できた要因と,Kindle以降に出現した電子書籍サービスを具体的に紹介し,サービスの構成要素を電子書店や文書フォーマットの特徴とともに解説した。その結果,現在の電子書籍市場がデバイス主導によって進んでいる事実を報告した。最後に,現在の電子書籍ブームによって変化がもたらされた,個人,出版社,製作者等の現在の状況と,電子ジャーナルが今後変化していく方向について論じた。
著者
薗田 碩哉
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.25-37, 2012-03-19

何かをするための余暇ではなく、私という存在の根源に帰ることのできる余暇という時間を得ること、そこに自由の出発点がある。そしてこの自由によって私たちは現実にある「しがらみ」から離れた別種のコミュニケーションを生み出し、新しい「つながり」を紡ぐことができる。政治とは人々の多様なつながりを組織することであり、それによって社会を改良することである。しかし、先進国でもっとも低水準の余暇しか持ち合わせない日本人は、貧弱な政治組織に低迷せざるを得ない。より良い社会を作るために多忙からの解放が必須である。余暇は祈りや瞑想を通じて、生きることの意味や世界のあり方に思いを巡らすことのできる時間ともなる。労働と生産を追い求めた産業社会の行き詰まりに直面して、私たちは余暇に力点を置いた生活と社会を構想し直さなければならない。未来への希望は余暇にこそある。
著者
伊藤 眞
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.95-119, 2007-04

商学部創立50周年記念 = Commemorating the fiftieth anniversary of the faculty50周年記念論文ライブドアの粉飾事件に関連して,会計基準等がない取引の会計処理について会計専門家はどのように考えるのか,裁判所の証人となった。証言の対象となったライブドアとクラサワ(K社)との株式交換(交換日(2004年3 月15日)は契約日(2003年11月19日)の4 ヶ月後)に関連して,まず子会社(投資事業組合を通して)が消費貸借により取得した親会社株式を売却(2003年12月2 日~19日)し,その後,株式交換日にK 社株主から親会社株式を取得(株式交換契約日(2003年11月19日)に売買契約を締結し1 週間後に前金を支払う)のうえ返還するという一連の取引について,事実関係を可能な限り明確化してみると,株式交換における交換比率の操作とそのLD株式買取契約の結果生じた含み益を実現するためのスキーム取引であることがわかる。この一連の取引について,有価証券消費貸借契約の会計処理の対象,その処理方法,民法上の任意組合の法的性格と会計処理,自己株式処分損益の性質及び会計処理,自己株式の借換えの会計処理,そして親会社株式の取得という商法違反である取引から生じた処分損益の会計処理という6 つの論点に整理した上で,各論点について歴史的経緯を含め検討した。その結論は次のとおりである。 自己株式の消費貸借については,自己株式等会計基準に基づいて考える必要があるが,その消費貸借による取得と返還自体は,金融商品実務指針に基づいて処理し,その運用損益を自己株式処分差額として処理すればよい。投資事業組合は民法上の任意組合であり,組合の積極財産は総組合員の共有である。したがって,重要性を有する組合財産及び損益であれば,出資者は科目ごとに持分相当額を取り込むべきであり,その結果,子会社は親会社株式運用益を損益計算書上取り込むことになるが,それは税引後の金額で連結修正されることによって,親会社の連結財務諸表上,「自己株式処分差益」としてその他資本剰余金に直接計上されることになる。 しかし,この一連の取引はLD が計画・実行したスキーム取引であり,仕組まれたものであると解されることから,任意組合の会計処理を適用する以前に,親会社の連結財務諸表上,「自己株式処分差益」としてその他資本剰余金に直接計上すべきものと解される。
著者
若尾 昌平 出澤 真理
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.6, pp.299-305, 2015

組織幹細胞の一つである間葉系幹細胞は骨髄や皮膚,脂肪などの間葉系組織に存在し,様々な細胞を含む集団から構成されているが他の組織幹細胞とは異なり,発生学的に同じである骨や脂肪,軟骨といった中胚葉性の細胞だけでなく,胚葉を超えた外・内胚葉性の細胞への分化転換が報告されている.このことから,間葉系幹細胞の中には多能性を有する細胞が含まれている可能性が考えられていた.我々は,これらの一部の間葉系幹細胞の胚葉を超えた広範な分化転換能を説明する一つの答えとなり得る,新たな多能性幹細胞を見出し,Multilineage-differentiating stress enduring(Muse)細胞と命名した.Muse細胞は胚葉を超えて様々な細胞へと分化する多能性を有するが腫瘍性を持たない細胞である.また,その最大の特徴として,回収してそのまま静脈へ投与するだけで損傷した組織へとホーミング・生着し,場の論理に応じて組織に特異的な細胞へと分化することで組織修復と機能回復をもたらす点がある.すなわち生体に移植する前にcell processing centerにおいて事前の分化誘導を必ずしも必要としない,ということであり,静脈投与するだけで再生治療が可能であることを示唆する.本稿ではこれらMuse細胞研究の現状と一般医療への普及を目指した今後の展望について考察したい.
著者
木元 英策
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.117-133, 2011-03-01

平安期や鎌倉期に「得分」といえば、「領主之得分」を指していた。それは、12世紀半ばの史料に現れる余剰生産物が、官物や地子、それから開発領主が収取する得分のみであったことからも窺われる。ところが戦国期になると、領主層が収取する年貢部分の固定化や生産力の向上にともない、さらなる余剰を生みだすようになる。戦国期の「得分」は主にその余剰部分を指し、土豪・富農層を中心に集積された。ところが、これまでその戦国期の「得分」について曖昧に捉えられる面もあり、定義付けおよび問題提起が不十分であった。そこで数多く伝存する北近江・和泉地域の売券・寄進状をつぶさに検討し、戦国期の「得分」を分類整理した結果、存在形態によっては、領主層が収取すべき部分にまで踏み出して、土豪層が得分を成立させている例を呈示するに至った。
著者
高橋 康夫
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.263, pp.117-127, 1978-01-30

Contents are mainly classified by two items as follows : 1. The history of the site of Gokomatsu In Sento Palace and the process of the urban redeveropement. 2. The actual circumstances of the renewal site. -1 The initial site planning and the structure of the area. -2 The site planning and inhabitant near the Zushi. -3 On the proprietary rights of the real estate of the inhabitants and the landed owner.
著者
高橋 史朗
出版者
八戸工業大学
雑誌
八戸工業大学紀要 (ISSN:02871866)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.295-304, 2009-02
著者
岩本 誠一
出版者
九州大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:0022975X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.25-50, 2003-03-31

本論文では、テニスを2項過程として考える。ゲーム、セットおよびマッチを制する確率をそれぞれ直接法および再帰的方法で求める。両プレーヤーの戦力が均衡しているとき、1ゲームは平均して63/4ポイントで決着することになる。
著者
瀬戸口 誠
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.316-321, 2009-07-01

大学図書館および図書館員がどのように関わっていくべきかという観点から,情報リテラシー教育におけるアプローチの意味について検討する。情報リテラシー教育におけるアプローチを,スキル志向と利用者志向という2つのアプローチに分けて,(1)情報リテラシーを捉える視点の所在,(2)前提事項,(3)学習成果という観点からそれぞれの特徴を抽出する。今後の情報リテラシー教育を構想するに当たって,両アプローチを組み合わせることで,図書館員と教員の連携に対して有効な視座を提示することを指摘する。