著者
権 力
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

法医鑑定では, 犯罪被害者の死因のみならず, 生存時間や受傷時の苦痛・身体的行動能力などについての医学的立証が求められることがある.ヒトの死の直前における神経伝達物質の中, 特にカテコラミンの測定を中心として, 致死的外傷(侵害刺激)が中枢神経系に及ぼす急性ストレス反応を生化学的に評価し, ヒト(法医剖検例)における脳組織, 脳脊髄液および血液内に残された痕跡を分子病理学, 分子生物学および神経化学・生理学的指標を用いて多元多角的に分析した.
著者
樋田 京子 進藤 正信 戸塚 靖則 東野 史裕 樋田 泰浩 北村 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

腫瘍血管内皮細胞に特異的に発現しているマーカーをシグナル伝達経路,新規性などの観点からピックアップした.siRNAによるマーカーのノックダウンを行い, マーカーの発現抑制が及ぼす細胞への増殖・遊走能への影響を解析した.その後蛍光免疫2重染色によりおこない,ヒト腫瘍血管における発現を確認した.ヒトにも発現が認められたマーカーの阻害剤を用いたところ,in vivo血管新生の抑制を伴う抗腫瘍効果をみとめた.腫瘍血管内皮特異マーカーを標的とする治療の実現が可能であることが示唆された.
著者
橋本 あり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

乳癌を例とした解析の中で、GEP100-Arf6-AMAP1シグナルがEGF刺激による乳癌細胞の浸潤活性に重要であることを明らかにしてきた。申請者らの研究成果から、VEGF刺激による血管新生においてもGEP100-Arf6-AMAP1シグナルが重要な役割を担う共通のシグナルであることを明らかにした。また、GEP100がPHドメインを介してリン酸化VEGFR-2と複合体を形成すること、VEGF刺激によるGEP100-Arf6-AMAP1シグナルの活性化はVEGFR-2の951番目のリン酸化チロシンを介していること、そしてGEP100/VEGFR-2の結合を阻害する低分子化合物を見い出した。さらに、病理学的解析からGEP100-Arf6-AMAP1シグナルが創薬標的としての可能性があることが示された。
著者
奥田 昌之 芳原 達也 國次 一郎 杉山 真一
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

コメットアッセイ(single gel electrophoresis)による毒性評価は細胞DNAの障害性をとらえることができ、様々な臓器や動物種に応用されている。本研究では労働衛生の現場で利用される化学物質でも損傷をとらえることができるのか、またどのような損傷をとらえることができるかを明らかにするという研究を計画するに至った。まず化学物質による健康被害の報告が有り、その化学物質に特異的な臓器の障害が明らかである物質として、ブロモプロパンに注目して実験研究を行うこととした。ラット(Wistar系)精巣から取り出した精祖細胞、精母細胞に短時間のブロモプロパンを曝露させると、濃度依存的、時間依存的にコメットアッセイによるDNA損傷がおきた。また、ブロモプロパン類のなかでもBr基を多く持つ化合物の方がDNA障害を起こすことがわかった。産業現場で用途が似ているトリクロロエチレンとの同時曝露を行うと、ブロモプロパンによるDNA障害は軽減された。この機序については今後詳細に検討する必要が有る。DNAの加水分解を起さない条件下でコメットアッセイを行ったところ、コメットの形成は明らかではなかった。また精巣から抽出したDNAを用いた実験では、アポトーシスを起すと報告されているzealarenoneと比べて、ラダー形成は顕著なものではなかった。酸化的ストレスの指標である80HdGを測定したところ、初代培養細胞および組織のDNAにおいてブロモプロパン高濃度曝露で80HdGが上昇していた。これらの結果は、コメットアッセイでDNA障害性を検知することができるとともに、コメットアッセイを行う条件を変えることでアポトーシスによる損傷と区別することができることを意味する。コメットアッセイの実験方法を工夫することにより簡便な毒性の評価方法、スクリーニング方法となりえるという知見を得た。
著者
山下 恭広
出版者
金沢大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

(I)嫌気無酸素好気生物ろ過装置による有機物・栄養塩除玄法の開発炭素繊維を充填した嫌気無酸素好気生物ろ過装置を提案し,下水処理場最初沈殿池越流水を用いて有機物及び栄養塩除去を目的とした処理実験を行なった。その結果,嫌気槽においてDOCが最大約80%除去され硫酸塩還元が進行していることが確認された。この嫌気槽内の硫酸塩還元微生物群集を把握するため,異化型亜硫酸塩還元酵素(dsrB)をターゲットとしたNested PCR-DGGE法による解析を試みた。その結果,Desulfovibrio属,Archaeoglobus属及びDesulfacinum属と推定される硫酸塩還元微生物が検出された。これらの硫酸塩還元微生物は不完全酸化型の硫酸塩還元微生物であったことから,嫌気槽内ではメタン細菌と共存していた可能性が示唆された。(II)間伐材と鉄くずを用いた無機排水からの栄養塩除去法の開発鉄くずと間伐材充填無酸素生物ろ過装置を提案し,下水2次処理水からの栄養塩除去を目的とした処理実験を行なった。その結果,杉チップを充填した装置とアスペン材を充填した装置で長期的な窒素リン除去が進行した。この両装置内の木質からDNAを抽出し,16s rRNA遺伝子をターゲットとしたPCR-DGGE法を適用した結果,木質内の微生物は季節によって優占種が変動すること,木質によって優先種が異なることが示唆された。一方,異化型亜硫酸塩還元酵素(dsrB)をターゲットとしたNested PCR-DGGE法を適用した結果,両木質で明らかに異なるバンドが検出された。シークエンスを行った結果,杉チップ内にはDesulfacinum属もしくはDesulfovibrio属と推定される硫酸塩還元微生物が,アスペン材内にはSyntrophobacter属と推定される硫酸塩還元微生物が検出された。
著者
高橋 秀晴
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

2007年10月31日に秋田県に寄託された小牧近江資料約20000点を用いて、小牧の執筆意識や推敲過程について考察した。また、プロレタリア文学系作家群及び鎌倉文士群からの書簡の分析を通じて小牧との交流状況を明らかにし、妻福子、長男左馬介との往復書簡によって、私人としての小牧を立体化した。他方、ハノイやパリを現地調査し、文献上得られていた知見を確認したり、新たに特定することに成功した。以上により小牧の全体像を明らかにし、その結果を、論文、口頭発表、書籍等という形で公表した。
著者
緒方 満
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

基礎的な音楽能力(例えば聴唱力、視唱力、正確な音高で歌唱・合唱できるスキル等)を児童に保障するには、児童の「音高認識体制」の成長を体系的に促進するためのエクササイズアプローチによる音楽教育プログラム(以下、本プログラム)を音楽科授業に導入することが有効である、と考える。緒方らは、《独自に開発した本プログラムの実践→実践の効果を測定する音楽能力調査の実施》という手続きを繰り返しながら、本プログラムの効果に関する実証的研究を2か年連続で行ってきた。平成19年度の研究は、昨年度までに本プログラムの実践を経験したにもかかわらず、合唱スキルが未熟なままである児童に焦点をあてた。2007年7月より、そのような課題を有する児童6名を抽出し、彼らに本プログラムを個別に実施し、10月に音楽能力調査を行った。目的は、彼らの音楽能力の特徴に関する情報を得ること、および彼らに適合した本プログラム開発の模索であった。個別指導の観察経過から以下のことがわかった。本プログラムにおいて単なる「音パターン」の階名聴唱・階名視唱を行うだけでは、「音高認識体制」の強化につながりにくい。したがって、本プログラムの導入期、つまり「ドレミ」の3音で開始する低学年の時期から、児童の内面において音高と階名が強固に結びつく指導方法の工夫が必要である。さらに、実践では、階名での即興唱をしばしば取り入れながら、児童の「音高認識体制」の強度を教師が常々把握していくことが必要であろう。調査では、オルフ木琴を演奏させる課題を用いた。歌唱によって音高再生を行う困難さを除外することができ、児童の「音高認識体制」の測定を実証的に進めることができた。結果は、プリテストを実施していないので明確に明らかとは言えないが、個人得点を詳細にみると、(1)2名が高得点であったこと、(2)不安になると混乱傾向にある男子が、調査中の緊張の中、一定の得点を獲得していること、および(3)「音高はずれ」児童である2名も得点であったことなど、個別指導の効果がみられることを示した。
著者
河野 誠司 中町 祐司 笠木 伸平
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、関節リウマチ(RA)の病態におけるmiRNA-124の関与をインテグリンβ1制御の面から明らかにし、miRNAによるRAの病態解明と診断・治療への応用を図ることを目的とし、以下の結果を得た。(1)RA患者培養滑膜細胞にmiR-124を強制発現させると、インテグリンβ1の発現減少が見られた。(2)ラット・アジュバント関節炎モデルで、miR-124を投与したところ、関節炎の軽減が認められた。さらに関節組織において、インテグリンβ1の発現低下を認めた
著者
三井 唯夫
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大容積・低バックグラウンドの液体シンチレータ検出器に、到来方向検出と粒子識別の能力を付加するための基礎研究を行った。液体シンチレータの発光点をイメージインテンシファイアユニットによって撮影することによって、1MeVガンマ線の位置分解能が、現在の15cmから5cmへと改善することを実測した。また、以前開発した「リチウム6液体シンチレータ」の中性子捕獲時間・捕獲後アルファ線エネルギーの測定を行った。これらの基礎データを用いて、地球ニュートリノ到来方向測定のシミュレーションを行った。
著者
鳥本 司 岡崎 健一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

シリコン太陽電池に変わる次世代太陽電池の材料として、Cdなどの毒性の高い元素やInなどの希少元素を含まず、かつ高い光活性を示す環境調和型の半導体材料であるCu_2ZnSnS_4(CZTS)が注目され、薄膜太陽電池が試作されている。しかしながら、これまでにCZTSナノ粒子の化学合成はほとんど報告されていなかった。そこで本研究では、高温有機溶媒中における化学反応を利用してCZTSナノ粒子の液相合成を行い、得られた粒子についてその光電気化学特性を調べ、太陽電池の光吸収層としての可能性を検討した。対応する金属イオンの酢酸塩と硫黄粉末を、化学量論比で混合しオレイルアミンに分散させた後、240℃で加熱することにより、5-7nm程度の粒径をもつCZTSナノ粒子を合成した。粒子は、その表面がオレイルアミンで修飾されており、溶液中に安定に分散した状態として得られる。光吸収スペクトルから、粒子のバンドギャップエネルギーは約1.5eVと見積もられる。つぎに、エタンジチオールを架橋剤とする交互吸着法によって、粒子サイズを保ったまま、CZTSナノ粒子を透明電極基板上に積層した。得られたナノ粒子薄膜電極に可視光を照射すると、カソード光電流が得られ、CZTSナノ粒子はp型半導体特性を示した。また、900nm以下の波長の光照射に対して応答した。光電流の立ち上がり電位が、CZTSナノ粒子の価電子帯上端の電位であると見なすと、得られた粒子の伝導帯下端および価電子帯上端の電位は、各々、-1.2Vおよび0.3V vs.Ag/AgClであると見積もることができる。同様の手法を用いることによって、様々な化合物半導体のナノ粒子化が可能となり、本研究成果は、将来の半導体ナノ粒子を用いる太陽電池開発に大いに役立つ。
著者
牧岡 朝夫
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

アメーバの嚢子形成及び脱嚢はヒトへの感染型の形成及び感染の成立のための重要な過程である。本研究は両過程に必須なアクチン細胞骨格再編成の重要分子であるアクチン脱重合因子コフィリン並びにプロフィリンに注目し、アメーバゲノム中の両遺伝子の同定、塩基配列の決定、系統解析、組換えタンパク質の調製、局在及び両過程における発現解析を行い、分子種による違いを明らかにした。
著者
水谷 修紀 高木 正稔
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

小児白血病の発症機序解明に向けて胎児環境と遺伝の視点から解明を試みた。妊娠マウスにDNA損傷刺激としてエトポシドを母体腹腔内に投与し、胎児造血細胞の状態の経時変化を追跡した。比較対象として母体マウスの骨髄を用いた。DNA損傷の程度を胎児肝、母体骨髄で解析した結果、胎児肝がはるかに強いDNA損傷応答を示すことが分かった。以上からDNA損傷刺激に対しては胎児の方が母体より強いことが判明した。染色体異常においてもATM+/+、ATM+/-、ATM-/-の遺伝的背景の中でATM-/-では顕著な増加が認められた。発がん遺伝子の効果をATM遺伝子の遺伝的背景の中で比較した。その結果、ATMのhaploinsufficiencyが発がん効果を発揮することを証明した。
著者
大曽根 寛
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、当初、フランスと日本の新しい障害者政策の構造と施行実態に関する比較研究を構想していたが、両国の政策の全体系の比較検討を報告書として印刷するには到らなかった。最終年度の2010年度末に発行した報告書では、焦点を精神障害という領域に絞り、さらに職業支援に関することがらに限定した。それゆえ、最終報告書のタイイトルは「フランスと日本における新しい障害者政策に関する比較研究-精神障害者への職業支援を中心にー」としてある。また、2009年度末に、中間報告書として発行した「フランスの新しい障害者政策の紹介」では、制度・政策の詳細を示している。あわせて参考にしていただければ幸いである。
著者
田中 幸弘 伊藤 壽英 橡川 泰史
出版者
新潟大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

1.ヒアリング本研究課題のため本年度は以下の主体へのヒアリングを実施した。(1)みずほ銀行グループ等いわゆる「サブプライム問題」が本年度7月以降、マーケットで顕在化したことで、証券化商品及び地方債について保証業務を行っているいわゆる「モノライン」会社の信用リスクが顕在化し、当初想定していた地域の再生のために必要なインフラとしてのわが国における証券化型地方債モデルの枠組みの再考が必要となったため、みずほ銀行グループ等、海外・国外におけるCDO等の証券化商品及び地方債を手がける当事者に対して聞き取り調査を実施、解決を要する事項の法的検討を行った。(2)日本格付研究所トムソンフィナンシャル、他日本格付研究所トムソンフィナンシャル等、サブプライム問題による仕組み債、地方債の格付け実務への影響と今後の実務の枠組みの変容の可能性についてのヒヤリングを実施し、上記サブプライム問題顕在化によるマーケット環境の激変に対してどのような問題が地方債及び地方再生の法的枠組みに生じうる課について、投資家サイド(特に地銀)の地域再投資とバーゼルIIの枠組みとの関係、解決を要する事項の法的・実務的検討を行った。2.研究会及びとりまとめ研究分担者3名による研究会を3回実施した。本年度は昨年度の成果を踏まえ、分担者による実地調査の内容の報告と分析及び日本法における地方再生の法的枠組みの検討の論理的な問題・論点のまとめを行う予定であったが、年度中に起きたサブプライム問題による研究テーマへの影響と枠組みの再構築を考えざるを得ず、これに必要なテーマについて整理を行った。各回のテーマは以下の通り。わが国における地方再生の法的枠組みのあり方について・・・証券化型地方債モデルの可能性と法的留意点・いわゆるサブプライム問題の法的構造と地方債モデルにおけるモノライン会社の役割への影響・いわゆるMBS、CDO等の証券化商品の時価評価の枠組みと今後の証券化型地方債モデル構築の際の留意点
著者
織田 公光 相田 美和
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

低ホスファターゼ症は組織非特異型アルカリホスファターゼ遺伝子の突然変異に起因する先天的な代謝異常症である。しかし、遺伝子上の変異がどのように本疾患の発症に係わっているのかに関してはよくわかっていない。本研究では、重症の低ホスファターゼ症で報告されたジスルフィド結合に関わる2例の変異と、優性遺伝することが知られているミスセンス変異の解析を分子レベルで行い、その発症メカニズムを示した。
著者
織田 顕祐 米田 健志
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、仏教の中国伝来をインド文化圏と中国文化圏との東西交流と見たときに、一体どのようなことが見えてくるのかその実態に迫ることである。従来、仏教の東漸は篤信の外国三蔵によって行われたと簡単に考えられてきたのであるが、そうした面が否定できないにしても、より大きな働きは文化圏同士の交流にあったのではないかと考えるべき点がいくつもある。中国に仏教が伝来したのは、ほぼ紀元1世紀頃であり、2世紀中旬以降になると経典翻訳も次第に数を増してくるが、この時代は中央アジアにおいて大月氏国が隆盛となる時代と重なっている。この時代の中国における仏教受容を伝える中国側の歴史資料は、伝説的な要素が多くて信用することができないと一般的には考えられているが、こうした点を今回改めて検討した結果、いくつかの理由によって記述に信愚性が高いことが明らかになった。こうした点から考えるに、インドと中国を結ぶ大月氏国の存在は想像以上に大きかったはずであり、こうした点の研究がますます重要であることが明らかとなった。また、漢代の牟融撰述の「理惑論」にはある程度詳細な仏伝や、仏経は万巻に及ぶといった言及があり、後漢当時の訳経のみによっては到底知ることのできなかったはずの記述がなされている。こうした事実は牟融が後漢の都であった洛陽を離れて、交趾(現在のハノイ)に至って初めて知ったことであった可能性が高い。こうした点から考えるに、当時交趾には相当量の仏典が齎されていたことが想像され、仏教の東漸が中央アジアの陸路経由ばかりでなく、インドシナを経た海路によっても盛んに行われたことを窺わせる重要な事実であると言うことができる。言うまでもなく、物流という面から見れば、海路によるほうが圧倒的に有利であり、「物」としての経典の将来はこうした面を見逃すことができないと考えられ、こうした視点に立った研究が一層重要である。
著者
関山 敦生 笠原 恵美子 千田 大 岡村 春樹 内村 健治 井上 正康
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究により、(1)ストレスの種類と量のマーカー、(2) IL18、活性酸素、TNF-αを介する三つのサイトカインカスケード(3)ミトコンドリアが介するサイトカイン誘導メカニズム(FEBS Letter 2011)(4)大うつ病の重症度マーカー(5)ストレス後精神障害予測マーカーをそれぞれ発見した。(4)、(5)に関しては更なる検討を予定。成果は、2011年度後半から東北太平洋沖地震救援活動従事者の健康管理に役立っており、本研究の社会的成果は多大である。
著者
山根 利之
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

マウス胚性幹細胞を培養皿中で分化させ単離した胚発生の最初期に出現する多能性造血前駆細胞は、新生仔あるいは成体マウスへ移植しても生着しない。原因を探索したところ、胚性幹細胞由来造血細胞は移植直後には脾臓や骨髄などの造血組織に到達するもののすぐに骨髄組織から消滅し造血ニッチへ停留できない可能性が示唆された。またマウス胎内における相同細胞は造血開始時期に胚体に比べ卵黄嚢に多く存在することを突き止め、卵黄嚢が最初期の多能性造血前駆細胞の主な供給源であることを明らかにした。
著者
稲葉 宗夫 比舎 弘子 槇 政彦
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

並体結合マウスの作出は定常循環動態下における細胞のリクルート/ホーミングを検討する有効な手段である。GFPマウスよりIBM-BMTした宿主[GFP→C57BL/6]を正常C57BL/6と並体結合し([GFP→C57BL/6]^<IBM-BMT>+C57BL/6と標記)、GFPマウス由来の各血液細胞の分化をGFPマウスよりIV-BMTした宿主[GFP→C57BL/6]を正常C57BL/6と並体結合したマウス([GFP→C57BL/6]^<IV-BMT>+C57BL/6と標記)と比較検討した結果、造血前駆細胞の頻度は[GFP→C57BL/6]^<IBM-BMT>+C57BL/6マウスにおいて優位に高いことが判明し、並体結合により構築された正常生理的条件下においてドナー由来細胞の生着がIBM-BMTにより促進されていることが推定された。
著者
一杉 正仁
出版者
獨協医科大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度に行った動物実験結果および平成18年度に行った妊婦衝突試験用ダミーを用いたスレッド試験結果を総合的に解析した。その結果、妊婦が時速30km/h以下の追突事故に遭遇した際、腰部にかかる外力のみでは、胎児の予後に悪影響をおよぼすというエビデンスは得られなかった。さらに、追突事故に遭遇した前席乗員は、反動で腹部を車室内部に強打することがわかった。したがって、妊婦乗員のシートベルト着用効果を考えるうえでは、この腹部にかかる外力を低減させることが重要であると結論づけた。シートベルト着用で、追突時における腹部とステアリングとの二次衝突をある程度予防し、子宮内圧の変化を低減できることがわかった。しかし、負荷された加速度が大きいか、あるいは乗車位置がハンドルと近い場合に、シートベルトを着用してもある程度の外力が腹部へ作用することが明らかになった。そこで、さらなる積極的予防策として、緊急ベルト引き締め装置を追突事故時に作動させるシステムを考案した。その結果、比較的高速度の追突事故遭遇時には、子宮内圧をさらに低減させ、胎児保護に効果的であることが示唆された。また、低速度(約13km/h)の正面衝突事故をモデルしたスレッド試験を行ったところ、シートベルト着用時には、子宮内圧の上昇を35〜45%に軽減できることがわかった。したがって、シートベルトの着用は、追突および正面衝突時の妊婦子宮内圧上昇を抑制するうえで有効であった。妊婦のシートベルト着用について社会的議論がされているなか、われわれはシートベルト着用が胎児保護に有効である科学的根拠を明らかにした。本研究成果の一部は新聞、テレビ等でも紹介されたが、これら成果を積極的に公表し、一般の方に正しい知識を啓蒙している。