著者
川口 広美
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.61-68, 2021 (Released:2022-03-09)
参考文献数
14

本稿では,筆者が教科教育学をどのように受け止め,研究を進めてきたかを探究する。筆者のこれまでの研究経験を振り返った結果,「良い教科教育実践はどうあるべきか」という教科教育学の根本的な問いに対し,正解を与えるのではなく,実践者との対話・協働を通じた正解の作り方を支援し,そのプロセスを叙述するというアプローチを主としてとってきたことを読みとった。上述の発見や現在の自己の研究課題を踏まえ,本稿の最後には教科教育学研究におけるより多様な研究者・実践者との協働・対話の必要性を提案する。
著者
見舘 好隆 永井 正洋 北澤 武 上野 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.189-196, 2008-10-20 (Released:2016-08-05)
参考文献数
22
被引用文献数
1

学生の「学習意欲」や「大学生活の満足度」は,どのような要因が押し上げているのか.想定される様々な要因を探るアンケートを公立S大学の学生に実施し,その結果から因子分析によって「学習意欲」「大学生活の満足度」に影響を与えていると想定される因子を抽出した.そして抽出された因子間の因果関係を共分散構造分析にて分析した結果,「教員とのコミュニケーション」は「学習意欲」を高め,さらに「大学生活の満足度」にも影響を与えていた.また,「友人とのコミュニケーション」は「大学生活の満足度」にあまり影響を与えておらず,「学習意欲」には関連がないことが示唆された.
著者
森勢 将雅 藤本 健 小岩井 ことり
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.1523-1531, 2022-09-15

本論文では,統計的歌声合成に向けた日本語の歌唱データベース(以下ではデータベースをDBと呼称する)を構築した結果について報告する.歌唱DBは歌声のジャンルを統一して構築することが望ましく,著作権上の問題を勘案し,従来は著作権の切れた童謡が用いられてきた.一方,2019年に改訂された著作権法第三十条の四に基づき,利用条件に制約があるものの,既存の楽曲を用いた歌唱DBを研究者向けに公開する動きもある.本研究は,さらに利用条件を緩めるため,従来の歌唱DBと同程度の規模ですべてオリジナルの楽曲で構成される新たな歌唱DBを構築する.構築する歌唱DBでは,音高,音高遷移,音符の長さや,日本語で出現するモーラを幅広くカバーすることで,様々な楽曲の合成に対応できることを目指す.既存の歌唱DBと比較してカバーするモーラの種類が多いことを確認し,エントロピーによる評価では,全項目で最高値ではないものの,良好な結果を達成した歌唱DBであることが示された.
著者
山本 啓介
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.40, pp.117-151, 2014-03-14

飛鳥井家は『新古今和歌集』撰者の一人である雅経を祖とする和歌・蹴鞠の家である。本稿はその飛鳥井家の当主と周辺における蹴鞠の伝授書の整理分析を中心に行った。飛鳥井家による蹴鞠伝授書は、現在確認した限りでは、早くは応永一六年(一四○九)の雅縁のものから、慶長一八年(一六一三)の雅庸まで計三七種類がある。これらの書の伝授奥書には、対象や伝授の状況なども記されていることが多く、飛鳥井家と門弟との関わりや動向について知る手がかりとなる。その分析から、飛鳥井家が室町から近世にかけての長期にわたり、公家や守護大名、地方武士に至る広い階層に伝授を行っていたことや、地方下向中の伝授や口伝を筆記したものなどの様々な伝授形式があったことが知られる。また、被伝授者の中には飛鳥井家の和歌の門弟としての事跡も残っている人物もいるため、その他の蹴鞠伝授者の場合も同様に和歌の門弟であった可能性を考えてよいものと思われる。被伝授者の中にはその詳細が判然としない人物も少なからずあったが、むしろ本資料の紹介によって明らかとなる事実もあることだろう。This report is an analysis about the Initiation books of “kemari” written by Asukai family in Muromachi and Warring States period.These Initiation books exist 37 kinds. From these, a relation and the trend with the pupil are identified as a person of Asukai family. It lasted for a long term from Muromachi to the early modern times, and the Asukai family knew various instruction forms such as the things which took notes of in a downward direction instruction and learning through the grapevine to a thing and the district which I initiated the wide hierarchy before reaching a court noble and a feudal lord, the district samurai into.
著者
白井 嵩士 榊 剛史 鳥海 不二夫 篠田 孝祐 風間 一洋 野田 五十樹 沼尾 正行 栗原 聡
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第26回全国大会(2012)
巻号頁・発行日
pp.1C3OS121, 2012 (Released:2018-07-30)

ソーシャルメディアでは多くのユーザーが活発な情報交換を行っており、情報が短時間で拡散するという特徴がある。しかし、これらの中にはデマ情報も含まれており、デマ情報の拡散が問題視されている。本研究ではTwitterにおけるデマ情報およびデマ訂正情報の拡散に焦点を当て、これらの拡散の様子を解析するとともに、感染症の伝播モデルを応用した拡散モデルを提案し、早急なデマ拡散の収束を目的とする方策を検討する。
著者
松本 悠太 林崎 由 北山 晃太郎 舟山 弘晃 三田 雅人 乾 健太郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3Yin239, 2022 (Released:2022-07-11)

敬語は日本では社会生活上でのコミュニケーションを円滑に行う上で重要とされているが,敬語を適切に使い分けることは日本語を母語としない日本語学習者にとって困難である.このような問題に対して,常体文を自動的に敬体文へ変換してくれるようなシステムの開発についてはほとんど議論がされておらず,またそのようなシステムを評価するためのデータも存在しないのが現状である. 本研究では任意の常体文に対して,意味を保持しつつ適切な敬体文へ自動変換を行う敬語変換という新たなタスクを提案する.また,本タスクの確立に向けた,データアノテーションスキームおよび評価データセットを提供した.さらに,文表現の分解手法を用いた調査によって敬語変換タスクをスタイル変換タスクの一種として見なして解くことの妥当性および実現可能性を示す.
著者
Satoshi Kodera Hiroyuki Morita Hiroshi Nishi Norifumi Takeda Jiro Ando Issei Komuro
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-22-0086, (Released:2022-09-06)
参考文献数
43
被引用文献数
3

Background: The cost-effectiveness of sodium-glucose cotransporter 2 (SGLT2) inhibitors for chronic kidney disease (CKD) has not been evaluated in Japan, so we analyzed the cost-effectiveness of dapagliflozin, an SGLT2 inhibitor, for CKD stages 3a and 3b.Methods and Results: We used the Markov model for CKD to assess the costs and benefits associated with and without dapagliflozin from a health system perspective. We estimated the incremental cost-effectiveness ratio (ICER), expressed as per quality-adjusted life-years (QALYs). An ICER <5 million Japanese yen (JPY)/QALY was judged to be cost-effective. The effect of dapagliflozin on renal and cardiovascular events was based on published clinical trials. In patients with CKD stage 3a, the ICER of dapagliflozin over standard treatment was 4.03 million JPY/QALY gained. With a cost-effectiveness threshold of 5 million JPY/QALY gained, the cost-effectiveness probability of dapagliflozin over standard treatment was 52.6%. In patients with CKD stage 3b, the ICER of dapagliflozin over standard treatment was 0.12 million JPY/QALY gained. The cost-effectiveness probability of dapagliflozin over standard treatment was 75.2%.Conclusions: The results seemed to show acceptable cost-effectiveness when dapagliflozin was used for CKD stage 3b. On the other hand, cost-effectiveness of dapagliflozin for CKD stage 3a was ambiguous, and further validation is needed.
著者
中西 諒 岡村 聡
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.12, pp.835-851, 2019-12-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
42
被引用文献数
10

北海道太平洋沿岸西部は,17世紀の地震・津波の規模や波源を明らかにする上で重要な地域である.そこで歴史記録に残っている1640年の駒ヶ岳噴火にともなう山体崩壊津波の規模を推定するために,内浦湾から胆振海岸西部にかけて17世紀のイベント堆積物の分布を明らかにした.イベント堆積物の粒度・鉱物組成は海浜周辺の砂とよく類似しており,内陸に向け薄層化・細粒化・軽量化を示す.本砂層は,内浦湾から登別にかけて1640年の駒ヶ岳噴火テフラ(Ko-d)によって覆われていることから,1640年の駒ヶ岳山体崩壊にともなう津波堆積物であると判断される.現世の津波堆積物調査結果を基に各調査地点の津波堆積物分布における浸水深1mが妥当かを評価し,数値シミュレーションを用いて1.20km3を超える山体崩壊物流入量を再現し遡上高を求めたところ,内浦湾沿岸から白老周辺までは,両者の推定遡上高が調和的な結果となった.この津波規模は約Mt 7.9-8.2と見積もられる.
著者
露崎 弘毅
出版者
特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会
雑誌
JSBi Bioinformatics Review (ISSN:24357022)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.18-25, 2021 (Released:2021-04-23)
参考文献数
34

生命科学分野で取得されるデータ集合は、雑多(ヘテロ)な構造になり、ヘテロなデータ構造を扱える理論的な枠組みがもとめられている。本連載では、汎用的なヘテロバイオデータの解析手法である行列・テンソル分解を紹介していく。第1回では、第2回以降のアルゴリズムの基礎となる、1行列での行列分解について説明する。
著者
長谷川 眞理子 Mariko HASEGAWA
出版者
総合研究大学院大学 学融合推進センター
雑誌
科学と社会2010
巻号頁・発行日
pp.399-419, 2011-03-31

第Ⅲ部 生命科学と社会2009 第4章 生命科学と社会(4)