著者
西村 馨
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A 教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.47-55, 2015-03-31

「すっきりする」という日常語は,カウンセリング・心理療法の現場でしばしば用いられる興味深い語である。本研究では,「すっきり」とそれに関連する日常語が表す体験感覚の考察を通して,背後に仮定されている心の働きを明らかにすることを目指した。その働きを理解する上で重要なキーワードとして,「整理する」という語に注目し,日本語特有の心の調整方法について論じた。身体-心-状況が混然一体となった感覚の中で,思いの流れが順調であることを健康と感じる一方,その流れを妨げる状況に対しては,自己回復力を待ちつつ,積極的に働きかける動きが生じることが浮き彫りになった。精神分析理論との異同についても論じ,体験を統合する過程に注目した,身体感覚に根差した心の働きのモデルの可能性を示唆した。The everyday Japanese expression sukkiri-suru (feeling refreshed) is an engaging concept that can often be found in counseling or psychotherapeutic situations. This study aims to reveal some implicit psychological functions behind the word’s meanings by examining the experiential senses that sukkiri and its related, everyday words refer to. To understand those functions, seiri-suru (clearing and ordering) is discussed as an important keyword, and vehicle regulating the mind particularly notable in the lexico-grammar of the Japanese language. Health is experienced in the flow of feelings moving smoothly in a harmonious combination of body, mind, and situation. When anything disturbs the flow, active engagement to recover it is invoked while the potential to self-recovery is awaited. The uniqueness of this model,different from that of psychoanalytic theory is discussed. Furthermore, the potential for this bodily-senses model which focuses on the process toward the integration of experience is suggested.
著者
橋本 由里 宇津木 成介 Yuri HASHIMOTO Narisuke UTSUKI
雑誌
島根県立大学短期大学部出雲キャンパス研究紀要 (ISSN:18824382)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.11-17, 2011-03-18

動物に「こころ」があるかどうか定かではないが、動物への共感は人間らしさの原点になっている。本研究では、動物に「こころ」の作用を認めない者ほど攻撃性が高く、共感性が低いという仮説のもとに、ラスムッセンら(1993)の調査対象を植物や無生物にまで拡張し、心的機能に関する大学生の認知の仕方が、攻撃性や共感性を含む情動知能とどのように関わっているのかを調べた。その結果、攻撃性の高い者ほど対象に心性を認めないこと、共感性が高い者ほど対象に心性を認めることが明らかになった。ペット飼育や動物園における動物との接触体験等が動物への共感性を育成する可能性が示唆された。
著者
岡野 真一 片寄 晴弘 井口 征士
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.67(1997-MUS-021), pp.67-72, 1997-07-20

本研究はモデルにもとづく雨音の生成を目標とし,そのためには()一粒の雨滴の音のモデル()雨滴の落下分布モデルを作成する必要があると考えている.本稿では()についてはサンプル音で代用するものとし,()のモデルを構築して雨音の生成を行った様子を紹介する.またそれについての考察も述べる.アプリケーションの構築には,Sillicon GraphicsのIRIX (SF/Motif,AudioLib等)を利用し,音の生成から出力までを1台でリアルタイムに行えるよう設計している.このモデルは気象学のデータに基づいており,雨量等が変化したときの雨音を生成することが可能である.
著者
北川拓 新井イスマイル
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2013-MBL-65, no.11, pp.1-8, 2013-03-07

スマートフォンの普及に伴い屋内ナビゲーションの需要が高まっているが,屋内では GPS が利用できず,それに代わる測位手法が確立されてないため普及に至っていない.そこで本研究では,数ある屋内測位手法の中からデッドレコニングを選択し,その課題として方位推定に着目した.既存の手法では加速度・地磁気センサを用いて方位推定を行なっているが,屋内では鉄筋の帯磁や電気機器の磁気作用等が原因で実用的な方位推定ができない.そこで本研究では,近年スマートフォンに標準搭載されつつあるジャイロセンサを用いることでこの方位推定精度の向上を目指す.提案手法の概要として,スマートフォン内蔵センサ特有のノイズに対してはローパスフィルタを適用することで対処し,ジャイロセンサのオフセット誤差については歩行者の直進状態を検出し,その期間の角速度値を 0 に補正することで誤差の軽減を図る.大阪・梅田周辺地下街で測位実験した結果,加速度・地磁気センサを用いる既存手法に対しては 24 %,角速度データを補正せず積分する手法に対しては 81 %の方位推定精度の向上が得られた.
著者
松原 剛 金杉 洋 熊谷 潤 柴崎 亮介
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.1550-1555, 2016-07-06

平常時から継続的に人々の流動や分布を把握することは,様々な分野の基盤情報として需要が拡大しつつある.人々の流動を把握する手段として,屋外においては GPS を利用した衛星測位技術が確立しているが,地下や屋内等 GPS が利用できない場所では,様々な屋内測位手法が提案されており,施設ごとに独立して設置されている.人々の流動や分布の変化を屋内施設 ・ 地下空間に渡って捉えるには,少なくとも施設単位の粒度で位置を特定する必要がある.本論文では東京都内の地下鉄駅を対象に,携帯電話網の通信で参照される基地局セル ID と各地下鉄駅の対応表を作成し,地下鉄利用時の利用駅の推定を試みた.
著者
片瀬 拓弥
出版者
清泉女学院短期大学
雑誌
清泉女学院短期大学研究紀要 = Bulletin of Seisen jogakuin Junior College (ISSN:02896761)
巻号頁・発行日
no.35, pp.12-21, 2017-03-20

本研究は、オンラインビデオ教材と協同学習を組み合わせた反転授業を行い、事後テストの9週間後の記憶保持と感想文内容との関連性をテキストマイニングにより分析し、どのような記述内容が、9週間後の記憶保持に影響するのか検討した。その結果、9週間後の記憶保持の上位群は、下位群よりも予習行動に関する記述が有意に多かった。一方、9週間後の記憶保持の下位群は、上位群よりも協力行動に関する記述が有意に多かった。
著者
新舎 隆夫 碇谷 幸夫 男澤 康 久保 隆重
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第33回, no.情報システム, pp.2227-2228, 1986-10-01

近年、半導体技術の進歩に伴い、論理装置の大規模化、高集積化が進み、論理装置の設計品質向上及び観計工数低減が重要な課題になってきている。この課題に対処する有力な方法は、機能レベルの論理設計自動化と既存論理の再利用設計支援の二つに大別される。前者は、新規設計の場合に有効であり、機能論理記述言語で設計した機能論理仕様からゲート論理を自動生成する論理自動生成が行われている。これに対して、後者は、既存論理装置の小型化、高性能化、低価格化、高信頼化等を図る場合に有効であり、既存のゲート論理を目標回路系のゲート論理に変換する回路系変換が一般に行われている。しかし、再利用設計では、既存論理をそのまま再利用することは少なく、機能拡張を伴うことが多いので、回路系変換だけでは不十分である。本報告では、先に提案した論理再利用方式の構想を具体化した論理レベル変換方式の位置づけと概要について述べる。なお、本方式の詳細はで述べる。
著者
石 龍徳 Tatsunori Seki
雑誌
東京医科大学雑誌 (ISSN:00408905)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.433-449, 2011-10-30
著者
石塚 勝美 Katsumi Ishizuka
巻号頁・発行日
vol.8, pp.37-55, 2010-03-31

国連平和維持活動(PKO)は、第二次世界大戦以降の国際紛争解決において重要な役割を果たしてきた。中国のPKO への参加は、その設立創成期から始まったとは言えない。中国は国連安全保障理事会の常任理事国であるために、東西冷戦期においてミドルパワー主体であったPKO には必然的に消極的であった。中国は、また伝統的に国家主権や内政不干渉の政策を採っていたのもその一因である。しかし東西冷戦終了後、中国は、それまでのPKO 政策を見直し、PKO に積極的な姿勢を打ち出している。その結果中国はカンボジアや東ティモールにおけるPKO に参加を果たし、現在の中国は世界有数のPKO 派遣大国となり、主にアフリカ諸国への派遣が目覚しい。そのような中国のPKO 参加への柔軟的な姿勢は、政治的な現実主義や理想主義、あるいは国際的あるいは国内的な視野のバランスの取れた政策によることができよう。そして昨今のPKO 派遣における様々な統計を考慮した場合、中国はアジアを中心とした国際安全保障体制に更なる注目を寄せるべきである。たとえば中国は、アジア地域の平和構築体系の設立において中心的な役割を果たすことが期待される。
著者
垂井 康夫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, 1976-03-15
著者
菊地 宏一郎 矢向 正人
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.45(2005-MUS-060), pp.19-24, 2005-05-23

筆者等は 従来より三味線音楽をコンピュータ上で扱うための研究を行っており これまでは 基礎研究として 三味線譜のためのデータ形式の研究開発を進めてきた. 現在 このデータ形式は 実装面からのデータ形式に対する検証 ・ 評価を必要とする段階にあり 筆者等はデータ形式に対応するアプリケーションの開発を進めている. 本稿では 今回このアプリケーションに実装した 三味線文化譜の楽譜編集機能について報告する.
著者
奥村 明俊 星野 隆道 半田 享 西山 雄吾 田淵 仁浩
雑誌
研究報告コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21888604)
巻号頁・発行日
vol.2017-CDS-19, no.19, pp.1-8, 2017-05-18

近年,転売を目的としたイベントのチケット購入やダフ屋行為が増加しており,本人確認が今まで以上に重要となっている.チケットの本人確認の課題は,大規模イベントにおいて入場者のなりすまし防止と確認作業の効率化を両立することである.我々は,この課題の解決に向けて顔認証による本人確認システムを開発し実用化してきた.本人確認システムは,20 以上の大規模コンサートで活用され,なりすまし防止に効果を発揮している.このシステムは,チケット購入時に登録された購入者の顔画像とイベント入場時の入場者の顔画像を照合し,購入者と入場者が同一であることを確認する.顔認証による本人確認システムでは,イベント係員が入場者を静止させてチェックインや顔認証を実行し,一人あたり平均 7 秒で本人確認を行っていた.本論文では,より効率的な本人確認を実現するために,入場者が顔認証のために立ち止まることなく歩行したまま本人確認を行うノンストップ顔認証システムを提案する.歩行中の入場者は,横を向いたり目を閉じたりするなど顔認証に不向きな状態で撮影されることが多い.提案システムは,入場者を 2 つの異なるカメラで撮影し 2 種類の画像と登録画像を照合して顔認証を行うことで,歩行中の入場者の高精度な顔認証を実現した.提案システムは,アイドルグループのコンサート入場者 4226 名の本人確認に活用され,顔認証精度は 91% である.本人確認から入場までの時間は,顔認証に成功した場合一人あたり平均 2.5 秒,顔認証が成功せずに係員が目視で確認した場合も含めて一人あたり平均 2.8 秒である.従来の顔認証システムによる本人確認と比べて確認時間を 60% 削減した.
著者
日比野 雅彦
出版者
人間環境大学
雑誌
人間と環境 : 人間環境学研究所研究報告 : journal of Institute for Human and Environmental Studies = Journal of Institute for Human and Environmental Studies (ISSN:13434780)
巻号頁・発行日
no.2, pp.51-58, 1998-07-31

モリエールはフランス17世紀を代表する喜劇作家として知られているが、彼の青年時代については2つの喜劇と2つの笑劇、いくつかの公正証書類以外ほとんど資料が残されていない。20代から30代前半の、役者としても作家としでも貴重な時期をどのように過ごしたかを知ることは、後の傑作を知る上でも重要なことといえる。一方、モリエールが創始者ともいわれる「コメディー・バレエ」は、パリ時代に数多く書かれ、晩年の喜劇作品では、台詞そのものが音楽性の高いものといわれている。モリエールの作品を論じる場合、このようにコメディー・バレエという新しいジャンルを抜きにすることはできない。モリエールは巡業時代に、コメディー・バレエとしての作品を残していないが、『相いれないもののバレエ』と呼ばれる作品の上演に関わった。このバレエはモンペリエの貴族たちの余興の一環として作られたもので、今日的意味で重要性に乏しい作品ともいえるが、言葉のない空間を駆使した作品であるがゆえに、役者モリエールにとってもまた喜劇作家モリエールにとっても意味のある作品であったと考えられる。
著者
後藤 均平 ゴトウ キンペイ Kinpei Goto
雑誌
史苑
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.1-4, 1998-03