著者
中島 ひかる
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.49, pp.1-23, 2019 (Released:2019-06-28)

現代において、 フランスはどのように自らの共同体のアイデンティティを作ろうとしているのか、またそれを可視化するためにどのようにシンボルが使おうとしているのかを、歴史学者ノラの「記憶の場」の概念も援用しながら分析する。マ クロンは、EU の一体化を訴えることでヨーロッパのアイデンティティを再建し、その中でこそフランスのアイデンティティを示そうとするが、それはヨーロッパが自由、デモクラシー、人権といった世界のモデルになりえる普遍的な価値を体 現しているという啓蒙以来の観念と結びついている。しかしながら、難民受け入れ問題がヨーロッパ各国で、極右によるナショナリズムの擡頭を招いている今、この様な普遍理念によるヨーロッパのアイデンティティは既に自明なものではなくなっている。その中で、敢えてヨーロッパ再建を主張するとき、マクロンは民主主義発祥の地アテネやソルボンヌ大学といった、人々の共通の「記憶の場」である、文化遺産の力の助けを借りる。「記憶の場」は、ルソーの言う「祝祭空間」とも共通し、人々の一体感を高め、アイデンティティを確証するために役立つと考えられるからではないだろうか。
著者
近藤 さやか
出版者
学習院大学人文科学研究所
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.15, pp.182-170, 2016

『伊勢物語』の主人公とされる在原業平は各地に様々な伝説を残している。『伊勢物語』を基に、謡曲や古註釈の解釈、地名の由来などを含み、その土地に根差している。東北から九州まで広い範囲を舞台にした『伊勢物語』により、業平伝説も広い範囲に伝わっており、東下り関係の伝説と高安周辺の伝説が特に多い。しかし、これらは他地域ではあまり知られていない。本論では、『伊勢物語』の舞台としてよく知られた愛知県知立市の八橋の伝説と、『伊勢物語』には登場しない愛知県東海市の業平の伝説を比較する。この二つの伝説には、東下り関係の伝説と高安周辺の伝説の要素が共に含まれていることがわかった。伝説発生の流れを確認することによって、『伊勢物語』享受の方法を探るとともに、『大和物語』など説話的に広がっていく物語の形を考察する。 Ariwara no Narihira the hero of the "Ise Monogatari", has left a variety of legends in various places. Based on the "Ise Monogatari", the interpretation of the Noh play or full annotation, and the like derived from place names, is rooted in the land. By the "Ise Monogatari", which was to be staged in a wide range of places from Kyushu to the northeast, Narihira legend has also been transmitted to a wide range of places, especially many travel is given to the legend of the Azuma-kudari relationship and the legend around Takayasu of relationship. However, these things are often unknown in other regions. In this paper, we compare the legend transmitted to Yatsuhashi of that well-known, Aichi Prefecture Chiryu as the stage for "Ise Monogatari", the legend of Narihira transmitted to Aichi Prefecture, Tokai City does not appear in the "Ise Monogatari". The two of legend, it was found that the elements of the legend and Takayasu around the legend of the Azuma-kudari relationship are included together. By checking the flow of the legendary generation, together with exploring ways of "Ise Monogatari" enjoy, consider the shape of the story that will spread, such as in narrative manner "Yamato Monogatari".
著者
中村 道子 佐藤 薫 小泉 詔一 河内 公恵 西谷 紹明 中島 一郎
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-6, 1995-01-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
13
被引用文献数
8 12

WPI溶液を予め加熱処理し,室温で塩化ナトリウムを添加することによりゲル化する現象について検討し,以下のことが明らかとなった.(1) 80℃ 30分加熱処理した10% (w/w) WPI溶液に塩化ナトリウムを0.3-1.2% (w/w)添加すると,20℃において溶液は粘度の上昇をともないながら徐々にゲル化した.塩化ナトリウムの濃度が高くなるにしたがい粘度上昇は速く進み,ゲル化時間は短くなる傾向を示した.さらに,WPI溶液の加熱処理温度,塩化ナトリウムの濃度が高くなるにしたがい,ゲル強度は高くなることがわかった.(2) 電子顕微鏡観察の結果,WPI溶液を加熱処理することによりやや太く短い線状の可溶性凝集体が形成されることを確認した.さらに塩化ナトリウムの添加により,可溶性凝集体同士の会合が始まり,高分子化してゲルに至ることがわかった.塩化ナトリウム添加により得られたゲルは,GDL添加による酸性ゲルとよく似た網目状構造を呈していることがわかった.また,ゲルの網目状構造を形成している凝集体の太さは,塩化ナトリウム添加により得られたゲルの方がGDL添加による酸性ゲルよりもややランダムな構造をとることがわかった.
著者
王 志英
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.12, pp.71-82, 2010-03-31

本稿は中国語の四つの類義語動作動詞"扔"、"丢"、"摔"、"抛"の基本義とその用法について考察した。"扔"は遠くまで、近くまで対象物を「投げる」ことができるほかに、上向きと下向きへ対象物を「投げる」こともできる。"丢"は下へ向けて、対象物を「投げる」。"摔"は主体が力を入れ、対象物を上向きと下向きへ 「投げる」ことになる。また、"摔"は力が入っているため、対象物に付着してある物を「落とす」こともできる。主体の重力によって、主体自ら「落とす」こともありうる。"抛"は斜め上に向け、対象物を「投げる」。以上は四つの動作動詞の移動する軌道の違いにより、その間の意味の違いも見えてくる。@@@本论文考察了汉语的四个动作动词"扔"、"丢"、"摔"、"抛"的基本意思和其用法。"扔"除了能把物"扔"远、"扔"近外,还可把物向上或向下"扔"。"丢"主要是把物向下扔。"摔"时主体用力,可把物向上或向下"摔",并且因为用了力,可把物体上附带着的东西"摔"掉。"抛"主要是斜着向上"抛"物。以上四个动作动词由于移动轨道的不同,它们之间的意思也不同。
著者
西迫 大祐
出版者
明治大学
巻号頁・発行日
2014

identifier:http://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/handle/10291/16685
著者
石川 遼太 多和田 雅師 柳澤 政生 戸川 望
雑誌
DAシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.169-174, 2017-08-23

近年,ビット誤りに耐性を持ち,簡易な回路で算術演算を実現するストカスティック数による演算手法が注目されている.値の等しいストカスティック数が複数現われる演算回路では,ストカスティック数を複製する必要がある.ところが,複製により非独立なストカスティック数を生成すると,目的の演算結果が得られないため,いかに独立性の高いストカスティック数を複製するかが,最大の問題である.本稿では,非独立なストカスティック数の複製を防ぐため,乱数によるビット並び替えに基づくストカスティック数複製器を提案する.提案するストカスティック数複製器では,乱数を導入し,乱数に応じてバッファされたストカスティック数のビット列を並び換えることで入力ストカスティック数と値の等しい,独立なストカスティック数を複製する.複数個のストカスティック数の複製器を持つ演算回路を実装 ・ 評価した結果,再収斂のある回路では,提案手法は既存手法と比べ出力の平均二乗誤差 (MSE) を 54 % 削減した.
著者
田村 光三
出版者
明治大学政治経済研究所
雑誌
政経論叢 (ISSN:03873285)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.p1-38, 1979-06
著者
末岡 淳男 劉 孝宏 白水 健次 江村 篤裕 中野 寛
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.70, no.689, pp.38-45, 2004-01-25 (Released:2011-03-04)
参考文献数
5
被引用文献数
4 3

This paper deals with the occurrence mechanism of the squeal and chatter phenomena generated in a bicycle disk brake and their countermeasures. From the results by bench test apparatus, it was made clear that the squeal is in-plane vibration in the direction of rotor surface with frequency 1kHz caused by the frictional characteristics with negative slope with respect to the relative velocity generated in the vibration system including brake components and spokes, and the chatter is another frictional vibration with frequency 500Hz in which the squeal occurring in the in-plane direction of rotor and the out-of-plane vibration of rotor due to Coulomb friction are superimposed through the internal resonance relation caused by temperature increase of rotor during braking. The measures for squeal and chatter were taken on spokes and hub, and the validity was confirmed by using bench test apparatus.

1 0 0 0 IR 大江匡房

著者
山口 昌男
雑誌
比較文化論叢 : 札幌大学文化学部紀要
巻号頁・発行日
no.11, pp.9-68, 2003-03-15

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1908年04月08日, 1908-04-08
著者
名越 健郎
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.33-43, 2016-03-31 (Released:2018-04-27)

ロシア政府は2015年夏、北方領土問題で対日強硬姿勢を強め、15年で期限切れとなるクリール社会経済発展計画をさらに25年まで延長することを決めた。ロシアは西のクリミア半島と同様、北方領土の実効支配を強め、民族愛国主義高揚の手段に利用しているかにみえる。北方領土の情報収集は、短期間のビザなし渡航では難しく、国後、択捉両島で発行されている地元紙を読むのがデータ入手に有効な手段だ。四島は漁業、水産加工など開発潜在力は高いものの、自然環境、投資環境とも過酷で、開発の難易度が高い。ロシアは軍事目的もあって四島開発を重視しているが、汚職・腐敗も深刻で、住民の生活は厳しい。劣悪だった生活環境は政府の開発計画で改善されているものの、しょせんは公共投資による人工のミニバブルであり、公共投資が終了すると、島の経済は再び破たんしそうだ。地理的に近く、水産技術が高く、離島開発の経験豊富な日本にしか島の開発はできないだろう。

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1915年12月28日, 1915-12-28
著者
村西 幸代 河村 満
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.169-177, 1998 (Released:2006-04-26)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

左被殻に病変の主座を持ち,失語と構音障害を呈した3症例を経験した。3症例の症状は類似し,いずれも病初期に軽度の失語症状がみられたが1ヵ月以降の慢性期には消失し,構音の障害は病初期からみられ,その後も持続した。構音障害の特徴は自発話においては構音の歪みと韻律 (prosody) の障害が,課題発話の diadochokinesis では3音節の繰り返しが拙劣であった。しかし,復唱,音読で特に拙劣さが目立つことはなく,自発話と復唱および音読とに症状の乖離はみられなかった。この特徴は偽性球麻痺性構音障害,一側性錐体路の障害による麻痺性構音障害,脊髄小脳変性症による構音障害とは異なり,さらに Parkinson病,舞踏病,Wilson病などの両側錐体外路系に障害を持つ疾患で生ずる構音の障害とも異なっていた。3例の構音障害は左被殻周辺の病変に起因するものと考えられ,金子 (1989) らの左被殻病変例と類似し,失構音とは詳細には異なった特徴を有した。
著者
金子 真人 宇野 彰
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.270-278, 1989 (Released:2006-07-25)
参考文献数
21
被引用文献数
4 3

被殻出血により発症し軽微な構音の障害のみを呈した一例を経験した.本症例は発症時に軽度の失語症を認めたがその後消失し,構音面にのみ障害が認められた.本症例に対し以下の2点の目的から検討を加えた.第一に,構音の発話モダリティによる成績に差が認められないかが問題とされた.第2に,本症状の原因疾患および病巣が問題とされた.以上の点を検討するために,仮名音読,漢字音読,呼称を行ない発話にかかる持続時間の変動性係数が求められ,失語を認めない仮性球麻痺例と比較した.その結果,本症例の発話モダリティ間に有意な差が認められ,構音に音韻処理過程の障害が推察された.また,本症例は皮質下性失語からの移行型の可能性が示唆され,純粋語唖に近縁の一型ではないかと推察された.