著者
阿部 幸紀
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.448-451, 2013-09-20 (Released:2017-06-30)

本編では,全世界的なリチウムの資源とその採掘法,および炭酸リチウムへの変換法とその需要について述べる。リチウムの埋蔵量(リチウム金属換算,以下同)はおおよそ1,300万tから3,472万t,そのうち鉱石とかん水の比率は3:7程度と見積もられている。鉱石を用いる場合,製品化までの期間が1ヵ月程度と短いものの,採鉱・選鉱等でコストがかかる。一方,かん水からは自然界の天日濃縮などで製品化まで1年ほどかかるものの,生産コストは安い。国内で生産ないし消費されるリチウム金属とリチウム化合物は,出発原料,製品の全量を輸入に依存している。輸入品の主体は炭酸リチウムで,そのままで使われるほかに,臭化リチウム,酸化リチウム,塩化リチウムなどの二次加工製品の原料としても用いられる。近年,リチウムイオン二次電池の正極材および電解液中の電解質材料として急速に需要が拡大しているほか,添加剤としてさまざまな用途に使用されている。
著者
宗林 由樹
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.145-155, 2016-11-15 (Released:2018-10-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

海洋の微量元素は,海洋生物の微量栄養塩,現代海洋のトレーサー,古海洋研究のプロキシ(代替指標)としてきわめて重要である。しかし,海洋の微量元素は,濃度が低い,共存物質が測定を妨害する,採水から測定までの間に目的元素が汚染混入するなどの理由により分析が難しかった。著者は,簡便かつ精確な新しい分析法を開発し,それらを海洋研究に応用してきた。本稿では,以下の二つの内容について詳しく述べる。(1) 海水中アルミニウム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,カドミウム,鉛の多元素分析法の開発とその応用。(2) 海水中銅安定同位体比分析法の開発とその応用。これらの方法は,新しいキレート樹脂NOBIAS Chelate-PA1と誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)に基づいている。その分析結果の精確さは,国際共同観測計画GEOTRACESの相互較正などを通して確証された。さまざまな元素の濃度比,および濃度と安定同位体比の情報が利用できるようになり,海洋の生物地球化学サイクルに関する理解がますます深まりつつある。
著者
瀬戸 治男 佐藤 勉 米原 弘
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.197-204, 1973

An alternative double labeling method which utilizes ^<13>C-^<13>C coupling in structural and biosynthetic studies was applied to the structural elucidation of dihydrolatumcidin. The cmr spectrum of the double labeled and mixed labeled metabolites showing strong ^<13>C-^<13>C coupling gave enough information on carbon sequences and made it possible to determine the total structure of the metabolite. Direct evidence was obtained that acetic acid was incorporated into dihydrolatumcidin without cleavage of the C-C bond of the acetic acid molecule. The detail mechanism of biosynthesis of polyketides, terpenes and steroid can be studied by utilizing ^<13>C-^<13>C coupling.
著者
庄 莉莉 村上 かおり 鈴木 明子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.231-239, 2020 (Released:2020-04-23)
参考文献数
12

現在, ブラジャーは女性の生活必需品となっており, 第二次性徴期から乳房の発達やブラジャー装着についての知識をもってブラジャーを正しく装着することが求められる. 多くの研究によって第二次性徴期における女子の下着装着の課題と下着教育の必要性が明らかにされているが, 下着教育に重要な役割を担っている母親は娘にどのような影響を及ぼしているのかは明らかになっていない. 本研究では, 質問紙調査によって母親とその娘である女子高校生のブラジャー装着に関する意識や行動の実態を明らかにし, 母娘間の関係性を分析することによって, 今後の下着教育の在り方に, 示唆を得ることを目的とした. 結果として, 母娘とも体の変化やブラジャー装着に関する意識は高いとは言えず, 装着に関する実態も望ましくないことが明らかになった. ブラジャー装着に関する知識・理解および関心・意欲の観点には, 母親と娘との関係性は見られなかった一方, 母親の実態や行動は娘に影響をもたらしていることが検証された. また, 娘は下着教育の場は家庭であるという認識が強いことが示されたが, 母親は自分の知識に自信をもっておらず, 下着装着について学校教育に期待している実態が見られた. 娘だけではなく, 母親を対象とした下着教育が必要であり, また, 母娘が交流できる場も求められると考える.
著者
川口 暁生 小名 国仁 合羽 輝彦 高田 倫行
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.3_119-3_124, 2008 (Released:2010-08-18)
参考文献数
10

CAEを利用した自動形状最適化システムと、品質工学におけるSN比の考え方を融合、ロバスト最適化手法を構築。これをディーゼル吸気ポートに適用、誤差因子として中子型ずれに着目し、このときのスワール安定性をSN比とした。GAによる多目的最適化の結果、流量・スワール・SN比の同時向上が可能であることが示された。
著者
八木 剛平 伊藤 斉 三浦 貞則
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.49-58, 1978-01-15

Ⅰ.序文 向精神薬(主として抗精神病薬)によるいわゆる遅発性ないし持続性ジスキネジアは従来精神病院入院中の高齢者(50〜60歳)の一部に観察され,長期(一般に数年以上)にわたって抗精神病薬を投与されたものが多いが症状の起始は明らかでなく,いったん生じた異常運動は抗精神病薬の中断後も消失することはない(恒常性ないし非可逆性)とされていた13)。われわれは1968年以来,それまで遅発性ジスキネジアの認められなかった患者について,抗精神病薬療法の経過を注意深く観察してきたが,1975年までの約8年間に18例について症状の新たな発生を観察するとともに,その経過を追跡して症状の消失を確認することができた。これらの症例の一部は第9回国際神経精神薬理学会において既に報告したが22),当時観察中であった症例についてもその転帰が明らかになったので,ここに改めて報告することにした。本論文の目的は,第一に多くは塔年者において,抗精神病薬療法のかなり早期に発症した軽症のジスキネジアが,原因薬物の中止によって消失したこと,しかしその後の長期経過は楽観を許さないことを示して,遅発性ジスキネジアに関する従来の定説に若干の修正を促すこと,第二にその発症と可逆性に関与する諸要因を検討して遅発性ジスキネジアを発症した精神分裂病者(以下分裂病者と略称)に対する薬物療法について考察することにある。
著者
穐田 宗隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 : 化学と工業化学 = Journal of the Chemical Society of Japan : chemistry and industrial chemistry (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.12, pp.783-793, 1998-12-10
参考文献数
36

触媒的CO水素化反応の素反応過程を遷移金属モデル錯体上で再現することを目的として, ヒドロシランによる有機金属錯体の還元反応を研究した. ヒドロシラン類はそのH-Si結合が水素のH-H結合に似た反応性を示すのに加えて, ケイ素部分が酸素官能基に対して高い親和性を示して脱酸素還元反応が進行することが期待される. 研究の結果, Pichler-Schulz機構を経る増炭反応, Fischer-Tropsch機構を経るメタン化など, 触媒的CO水素化反応に対して提案されている素反応 (CO還元, C-Cカップリングなど) を有機金属錯体上で再現することに成功した.
著者
橋口 倫介 鈴木 宣明 シロニス R.L. ペレス F. リーゼンフーバー K. 大谷 啓治
出版者
上智大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本計画の2年目で最終年度に当る平成2年度は13世紀から15世紀までの学者の自己理解と知識観の変遷との関係が研究課題となった。この研究テ-マを計画通りに時代区分に従って3つの分野に分けて研究が進められた。1.13世紀の知識観は、大学とくに神学部と哲学部において形成されたものなので、パリ大学とオックスフォ-ド大学における学問論が主題となり、2.14・15世紀に関して、フランス・ドイツ・イギリスにおける「古き道」と「新しき道」という2通りの学問理解が研究され、3.14世紀後半〜15世紀は、イタリアの人文主義にみられる学問観が研究課題となった。1.に関して、13世紀大学において展開された知識観の内、3つの基本形態が区別できるようになった。(1)12世紀サン=ヴィクトル派の学問観を継承・発展させた旧フランシスコ会学派とくにボナヴェントゥラに代表される神学的学問観では、諸学問を神学の下で統一しようとする伝統的知識観、(2)ボエティウスを通して媒介されたアリストテレスの哲学的学問論を受け継いだドミニコ会とくにトマス・アクィナスによって代表される認識論的知識観、(3)オックスフォ-ドにおける、アラブ哲学とアウグスティヌス主義の光論を基盤とし、中期フランシスコ会学派とくにロジャ-・ベ-コンによって代表される数学的・実用主義的な知識観。2.に関して、14・15世紀ヨ-ロッパ北方において、(1)いわゆる「古き道」のアルベルトゥス学派、トマス学派、スコトゥス学派における体系的で思弁的な学問観、(2)「新しき道」を自称した形式論理的・唯名論的・経験論的な学問観、(3)とくにフランスにおいて登場した自然学・経済学・歴史学などの新学問によって特徴づけられた知識観。3.に関して、14・15世紀イタリアにおける学問を生活・文芸・人間形成と結びつけて考察する初期ルネサンスの知識観を研究し、その社会的背景と学者の精神性との連関性を明確にとらえることができた。
著者
瀬戸 治男 Tanabe Masato
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.264-270, 1974

The biosynthetic pathway of sterigmatocystine, a metabolite of Aspergillus versicolor, was studied by labeling the metabolite with ^<13>CH_3^<13>CO_2Na. The ^<13>C-nmr spectrum revealed that sterigmatocystine is formed from tetraketide through pathway (b) as shown in Fig. 1. The same technique was also applied to investigate the biosynthesis of penicillic acid. The result shown in Fig.3, pathway (a), was completely in agreement with the conclusion obtained by Mosbach.
出版者
日経BP社
雑誌
日経メディカル (ISSN:03851699)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.16-18, 2016-08

被告側の奈良県も、過酷な勤務状況という認識は持っているようだ。奈良県立医科大学に地域枠を設定するなど、人材確保に努めてもいる。実際に産婦人科医の人数は増えたが、まだ交代制の勤務は実現していない。
著者
岡村 裕
雑誌
杏林社会科学研究 (ISSN:09103600)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.17-49, 2019-01-31