著者
河野 文彰 和田 俊介 仙波 速見 水野 隆之 川越 勝也 清水 哲哉 中村 都英 鬼塚 敏男
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.71-75, 2012 (Released:2013-01-31)
参考文献数
19

症例は67歳,女性。頸部腫瘤と胸部異常陰影の精査のために当科に紹介となった。頸部超音波検査および頸部CT検査で,30mm大の頸部腫瘤を右内頸静脈の背面に認め,穿刺細胞診にて悪性(乳頭癌)と診断された。しかし甲状腺には明らかな異常病変を認めなかった。また患者は来院時より右の眼瞼下垂と瞼裂狭小を認めていた。甲状腺オカルト癌および頸部リンパ節転移と診断し甲状腺全摘出術と頸部リンパ節郭清術を施行した。頸部腫瘤は内頸静脈と右椎骨前筋群に浸潤を認め,さらに右迷走神経と右交感神経幹への浸潤も認めた。迷走神経は温存できたが,内頸静脈および交感神経幹は合併切除を余儀なくされた。術前に交感神経鎖浸潤を来たしHorner症候群を呈した興味あるまれな症例を経験したので報告した。
著者
森川 正利
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.193-203,en17, 1954-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
33

The hemolytic activity of various surface active agents (SAA) and their influences on the activity of other hemolytic agents was investigated using rabbit red cells. The result : 1) The hemolytic potency of cationic SAA was markedly stronger, than that of anionic or nonionic ones. There seems to be no relation between the hemolytic activity and the surface tension of the SAA solution. 2) Tween 80, G 2162 and Softex KW (cetyl trimethyl ammonium biomide) increased the intensity the hemolysis elicited by urethane, chloral, HgCl2, Pb(NO3)2 and hypotonic solution respectively, but Span inhibited it. 3) The hemolytic activity of staphylolysin was suppressed by SAA, especially by cationic agents. The ratio of concentration of SAA and staphylolysin required to suppress hemolysis was C/CC/16C (C= the minimum hemolysing concentration). 4) The hemolytic action of Softex KW and Span 20 was inhibited by cholesterol, but this inhibition was not so strong as in the case of saponin-hemolysis.
著者
瀬川 栄一
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.108, 2009

【はじめに】2009年5月22日~31日においてFINA Water Polo World League 2009 アジア大洋州ラウンドが開催された。日程の詳細としては、5月22日~24日-オーストラリアラウンド(アデレード)、5月28日~31日-ニュージーランドラウンド(オークランド)であった。この大会に伴う14日間の水球日本代表チームの遠征・合宿に帯同スタッフ(トレーナー)として参加したので、活動内容と水球選手の傷害特性について報告する。【方法】対象は本年4月に国立スポーツ科学センターにおいて行われた代表選考会により選出され、本遠征に参加した男子選手13名、女子選手13名の計26名。男子平均年齢22.6歳(17~28歳)、女子平均年齢20.5歳(19~24歳)。各選手の対応時に問診表を配布し主観的な疲労・疼痛部位と強度(3段階)を記入した。遠征をとおしての活動内容は1)チームスタッフの医事管理2)選手のケア・コンディショニングおよびリハビリテーション3)ゲーム中の急性外傷等の対応4)傷病者の現地医療機関への付き添い5)チームの雑務などを行った。また、処置内容と外傷を施術後にトリートメントログとして記録した。それらの記録より水球選手の1)主な疲労部位、2)疼痛部位、3)ゲーム毎の外傷、を抽出し種類・発生要因等について検討した。【結果】本遠征において行ったゲーム数は大会6試合と練習試合4試合の合計10ゲーム。コンディショニングの対応者は26名の選手全員を対象とし総対応数が115件。処置内容はマッサージ64件、アイシング15件、ストレッチング13件、超音波11件、テーピング5件、マイクロカレント5件、徒手療法2件(重複例あり)であった。主な疲労部位として訴えが最も多かったのが肩甲帯・腰部各12名、次いでハムストリングス8名、頸部6名、前腕部・背部各5名であった。疼痛部位については腰部4名、頸部・肩甲帯各3名であった。疲労・疼痛部位はともに一部の選手が重複例となる結果を示した。外傷については一試合平均0.8件(練習試合含む)であった。【考察】 遠征を通して重篤な疾病や外傷が発生することなく終えることができ、日本代表として大会史上初のスーパーファイナル進出という結果を得たことから成功裏に終えたのではないかと考える。コンディショニングにおいては腰部・肩甲帯の疲労や疼痛が多く訴えられ、水球競技の特徴的な動作の巻き足とスカーリングの影響からではないかと考えられた。投球動作の影響による疼痛を予測していたが投球側の肩の痛みを訴える症例はいなかった。そして、激しいコンタクトによる外傷の多さがあらためて確認できた。また、疲労の蓄積が疼痛に変化した選手を確認でき主観的な疲労強度と疼痛の関係を再考する課題を得た。
著者
鈴本 勉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.402-405, 2003-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

ヒトはそれぞれ顔や体型が異なるように個性を持っている。このような個性はしばしば親から子へ遺伝することを,我々は経験的に知っている。これは,各個人のDNAに書き込まれた情報が微妙に異なることに由来している。最近では,体質や性格までもがDNAの仕業であることがわかってきており,ゲノム配列の解読が終了した今,これまで以上に遺伝子とヒトの個性の関係について,関心が高まっている。また,そのような遺伝子の違い(遺伝子多型)はしばしば病気のなりやすさや,治療薬に対する副作用の強弱に関わることが知られ,遺伝子多型の研究は病気の発症原因の探求と治療法の開発にも大きな貢献をしている。
著者
野田 尚史
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー (ISSN:21850119)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.117-124, 2013-03

このサブプロジェクトは,(i)のような考えから出発している。(i)本当の意味で日本語教育を言語の教育からコミュニケーションの教育に変えるためには,日本語教育のための研究も言語の研究からコミュニケーションの研究に変える必要がある。 日本語教育のためのコミュニケーション研究というのは,具体的には(ii)から(iv)のような研究である。このサブプロジェクトでは,これからこのような研究を進めていく。(ii)母語話者の日本語についての研究 (iii)非母語話者の日本語についての研究 (iv)日本語の教育についての研究
著者
松永 武三
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1209-1224, 1965-11-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
85

1) Seventy-nine cases of congenital sexual abnormalities have been experienced in recent six years (1958-1964).They are 15 cases of female pseudohermaphroditism, 13 male pseudohermaphroditism, 5 true hermaphroditism, 7 gonadal dysgenesis, 4 agonadism, 14 hypergonadotrophic testicular dysgenesis and 21 hypogonadotrophic testicular dysgenesis. Cytogenetical study was made in these patients as well as in normal adult males and females, and patients with hypospadia, cryptorchdism, vaginal defect and hymenal atresia.2) The nuclear chromatin was determined on buccal smears of these patients by the rapid staining method devised by the author.Advantages of this method are ease in securing suitable cells and rapidity and simplicity in preparation. Therefore, it is used in massexamination or screening test for the various sexual abnormalities.3) Chromosomal counts and karyotyping were carried out by the short term method of Moorhead et al. on cultured leucocytes, and the chromosomes were prepared by the air drying method and arranged in seven groups according to their length and centromere position.The classification is a slight modification of the international system of nomenclature of human mitotic chromosomes adopted in 1960 in Denver, Colorado.4) The phenotypic males with hromatin-negative nuclei are revealed in all cases of male pseudo-hermaphroditism, 3 of gonadal dysgenesis, 7 of hypergonadotrophic testicular dysgenesis and in all 21 cases of hypogonadotrophic testicular dysgenesis. The phenotypic females with chromatin-negative nuclei are revealed in 4 cases of gonadal dysgneesis, 4 of agonadism and one of true hermaphroditism, and the phenotypic males with chromatin-positive nuclei are revealed in 3 cases of ture hermaphroditism and 7 of hypergonadotrophic testicular dysgenesis. The phenotypic females with chromatin-positive nuclei are revealed in 15 cases of female pseudohermaphroditism and one of true hermaphroditism.5) Five cases of true hermaphroditism, 6 of gonadal dysgenesis, one of agonadism and 7 of hypergonadotrophic testicular dysgenesis showed abnormal sex karyotype: that is, 4 cases of phenotypic female gonadal dysgenesis and a 45/XO chromosomal constitution. Four cases of true hermaphroditism had the basic diploid number of 46 and an XX sex chromosome constitution and one had a 46/XY. Two cases of the phenotypic male gonadal dysgenesis showed a sex-chromosome mosaicism, which had a 46, 45/XY, XO. Agonadism had a 45/XO chromosomal constitution, and 7 cases of hypergonadotrophic testicular dysgenesis had a 47/XXY.This type of 46, 45/XY, XO mosaicism has not previously been reported.6) The correlation of sex-chromatin patterns and sex chromosome constitution was discussed, hypothetical mechanisms involved in the pathogenesis of abnormal sexual development are reviewed, and the role of chromosomes in human sexual development is briefly discussed.
著者
武田 久美子 大西 彰 三上 仁志 犬丸 茂樹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.556-562, 1994-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
18

ミトコンドリァDNAは細胞質のミトコンドリア内に存在する核外DNAである.ミトコンドリアDNAの制限酵素切断型多型(RFLP)を,細胞質マーカーとして利用できるかどうか検討した.まずC57 BL/6(B6)マウスのミトコンドリアDNAを制限酵素SacIで直鎖状にし,ラムダファージに組み込んで完全長のクローンを得た.そしてこれをプローブとしてサザンブロットハイブリダイゼーションを行ない,マウスのミトコンドリアDNA多型の検出を試みた.B6およびRR系統マウスの各組織から抽出したDNAを用いたところ,いずれの試料からもミトコンドリアDNA由来のバンドが検出でき,B6とRR系統マウスとの間で期待されたRFLPが観察された.しかし,抽出されたDNA量当りのミトコンドリアDNA量は組織ごとに異なっていた.また,凍結保存したB6とRR系統間のキメラマウスの組織より抽出したDNAを用いたところ,両者のパターンが検出され,キメラであることが判定できた.以上の結果から,ミトコンドリアDNAのRFLPが細胞質マーカーとなりえること,ミトコンドリアDNAクローンがRFLPの検出やキメラ判定のプローブとして有効であることが明らかになった.
出版者
大阪府教育委員会
巻号頁・発行日
1953
著者
Onbe Takashi Kakuda Shunpei
出版者
広島大学水畜産学部
雑誌
Journal of the Faculty of Fisheries and Animal Husbandry, Hiroshima University (ISSN:04408756)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.21-45, 1962-12-20

1) 内湾における魚類の生態を明らかにすることを目的として,瀬戸内海中央部の笠岡湾において,湾内に極めて濃密に設置される桝網の漁獲物を,ほぼ周年にわたって調査した.2) 桝網漁獲物中に出現した魚類は48科83種に達した.この外,頭足類11種,甲殻類11種,剣尾類1種をえた.3) 漁獲物の組成では魚類が数量共に首位を占め,個体数,重量はそれぞれ,全漁獲物中の82%および72%に達した.漁獲量には季節的変動があり,夏期に多く,冬期に少ない.4) 期間中ひきつづいて,かなり大量に漁獲された魚類4種(テンジクダイ,スズキ,マルアジ,イシモチ)について,その出現時期,湾内における成長,その他二,三の生態的事項について述べた.5) 出現時期および数量から,笠岡湾内に出現する魚類は,昼態的に次の三者に分類することができる.i) 湾内に定住するもの:テンジクダイ,ヒイラギ,アミメハギ,マハゼ,サツパ等.ii) 湾内に一時的に滞留するもの:a. 産卵のため成体が来遊するもの:魚類ではみるべきものが少ないが, トウゴロイワシ,ダツ科の2種(ダツ,テンジクダツ)等がある.b. 幼期にのみ来遊し,湾内で成育するもの:マルアジ,スズキ,イシモチ,マコガレイ,イシガレイ, トカゲエソ,アカカマス等.iii) きわめて稀に出現するもの:クロアナゴ,サンマ,ギンカガミ等.
著者
八束 真一 新山 泰徳 福田 健太郎 鹿園 直毅
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:18848346)
巻号頁・発行日
vol.79, no.808, pp.2859-2872, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

A novel liquid-piston steam engine which can achieve high efficiency at low temperature region of T < 300 °C as well as high reliability and low cost is developed. In this study, a numerical simulation tool for designing the liquid-piston steam engine is developed and experimentally verified. In this study, nucleate boiling and thin film evaporation are both considered in the model. It is verified that sensitive heat transport and simultaneous occurrence of evaporation and condensation are the major causes of losses. It is expected that higher efficiency can be achieved if whole liquid which is introduced in the heating section is totally vaporized.
著者
堂本 康彦
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.7, pp.432-438, 1982-07-15 (Released:2011-11-04)

著者は全国の代表的な麦味噌の成分特性についての調査を行ったので, ここに報告していただいた。これまで, 麦味噌の地域的特徴についての詳細な調査報告はあまりない。米味噌には幾つかの代表的な型があるが, 麦味噌においても地域的な型が存在する。この点を理解し, 新しい消費層のニーズに対応して品質の向上を計ることが, 今後の需要拡大の方途でもある。