著者
浮ヶ谷 幸代
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.393-413, 2013-01-31 (Released:2017-04-10)
被引用文献数
2

本稿の目的は、近代以降の医療・福祉をめぐる制度的専門家(以下医療専門家と表記)が臨床現場で抱えるサファリング(苦悩)の様態を明らかにし、医療専門家が自身のサファリングに向き合いながら、現場から編み出した対処の術(すべ)について明らかにすることである。1970年代以降、人文社会科学分野の医療化批判論や医療専門家内部での批判的検討を受けて、医療現場では問題解決志向システムという考え方に基づいて医療システムや医学教育を改革し、医療実践にかかわる監査委員会の設置など、改善策を打ち出してきた。度重なる医療改革や監査システムの強化は、医療専門家にとって臨床現場で新たな問題を生じさせるとともに葛藤や苦悩をも生み出してきた。他方、医療化批判論や医療人類学分野の病者のサファリング研究の文脈では、病者の苦悩のみが扱われ、医療専門家が抱える苦悩は看過されてきた。また、医療専門家自身も社会や患者からの期待に応えるように、自らの苦悩を隠したままであった。そこで、本稿では、医療人類学における病者のサファリング研究を敷衍して、医療専門家が抱えるサファリングについて記述、分析するとともに、近代の医療の専門性研究に新たな視座を提示することを試みる。具体的には、日本の看護師、精神保健福祉士、成年後見人という3種の専門家の事例を提示し、そこに見られる多職種間連携の分断化の問題や臨床現場での患者、利用者、依頼人との距離感という問題に伴うサファリングを明らかにする。そのうえで、医療専門家自らが編み出したサファリングへの対処の術としての知恵や技法、そして臨床現場で形成されたサファリングを共有する場について検討する。結論として、医療専門家が経験するサファリングは否定されるべきものでも排除されるべきものでもなく、サファリングと向き合うことこそが、サファリングに対処するための新たな術を生み出すという創造性の源泉となることを明らかにする。
著者
西野 明
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.163-165, 2019-03

[要約] 本研究では,日本のバレーボールの普及・発展に向けた一資料を得るために,日本におけるバレーボールの制度(6人制と9人制)の特徴について検討した。主にルール上の相違点に関して6人制との比較から,認知度及び理解度が低いと思われる9人制の特徴を,筆者の実践経験もふまえ明らかにした。バレーボールという一つの競技ではあるが,サービスの回数(6人制は1回,9人制は2回),ボールコンタクト(9人制はボールがネットに触れると最大で4回接触可能),ポジション(6人制はローテーション,9人制はフリーポジション),コート規格などの点で9人制独自のスキルや作戦が必要になることがわかった。 今後は,バレーボールのさらなる普及・発展のためにも,両制度(6人制と9人制)の特徴を捉えながら,うまく共存できるようにすることが大切である。
著者
中野 達也 望月 祐志 甘利 真司 小林 将人 福澤 薫 田中 成典
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.173-184, 2007-09-15 (Released:2007-10-19)
参考文献数
57
被引用文献数
2 1

1999年に北浦らにより提唱されたフラグメント分子軌道(FMO)法は、分子系をフラグメントに分割し、フラグメントのモノマー、ダイマー・・・の計算から系全体を計算する方法であり、タンパク質やDNAのような巨大分子系全体を量子論的に扱う計算方法として、近年注目を集めている。本稿では、FMO法の概要と、多層FMO(MLFMO)法に基づいたタンパク質の励起状態計算、及びFMO法に基づいたconfiguration analysis for fragment interaction (CAFI)やvisualized cluster analysis of protein-ligand interaction (VISCANA)といった解析方法について報告し、FMO法の今後について展望する。
著者
千葉 茂
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.286-289, 1953-09-25 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8

The changes in colouration of needles, green to reddish-brown, in the fall in Cryptorneria japonica are associated with decreases in chlorophyll, with occurrence of yellowish- or reddishbrown pigments in chloroplastens. From the results of chemical investigations, these pigments were determined as α-carotin, β-carotin and xanthphyll.In general, almost all the trees of Cryptomeria turn the dour of needles to reddish-brown (Red cloured type), but sometimes appear such individuals that needles are still green during the winter as the chlorophyll in chloroplastens remained unbroken (Green dour type).Crossing experiments were done between these two types and following results were obtained: (1) The colouring of needles was effected by genetical control. (2) The FI progenies, arisen from Red×Red and reciprocal crossing between Red×Green were all red coloured type. Green type progenies arose only from the crossing whithin Greens. (3) These results suggested that the gene which causes the changing the colour of needles is dominant (R) and that of green colour is recessive (r); (R) probably be complete dominance as shown in Fig. 1 and Table 1. (4) Dominant gene (R) probably causes the destruction of chlorophyll in chloroplastens and as this result the colouration of needles will appear by the occurrence of carotinoid pigments, recessive gene (r) did not not causes the destruction of chlorophyll during the wininter.

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著者
蔡升元 等編
出版者
鳳文館
巻号頁・発行日
vol.巻1-106, 1800
出版者
日経BP
雑誌
日経コンストラクション = Nikkei construction (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.766, 2021-08-23

ドローンやSNS(交流サイト)などは、災害後の情報の取得・共有に欠かせないツールとなった。2021年7月3日に静岡県熱海市で発生した大規模な土石流でも、被災地の現況把握などに大きく貢献した。こういった災害対応の中でも筆者が特に注目したのは、静岡県が被…
出版者
日経BP
雑誌
日経コンストラクション = Nikkei construction (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.765, 2021-08-09

土砂災害警戒情報は、土砂災害の恐れの高まる境界線「クリティカルライン(CL)」を2時間以内に超える見込みがある場合、今後の気象情報も踏まえて、気象台と都道府県が共同で発表する。CLは1時間雨量と地中の水分量を表す「土壌雨量指数」で設定する。 今回…
著者
早川 真紀子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.145, 2007

〈はじめに〉平成14年褥瘡未実施減算が始まり、全国的に褥瘡に対する注目度が高まった。文献検索によると、病院内の褥瘡発生件数の内訳が在宅、施設からの持込が、院内発生率の2倍弱という結果の報告がある。実際、在宅では、ADLがA1、A2の動ける人の中にも褥瘡を有するケースの経験もしている。当事業所における在宅での褥瘡発生率を調査し、在宅においての褥瘡発生の因果関係を知り、今後のケアプラン作成や支援方法に役立て、在宅における褥瘡予防を考える。〈研究方法〉_I_調査研究:当事業所で契約を交わしたケース139件(H17/1~H17/12まで)のうち褥瘡を有した25件の家庭環境・サービス利用状況を調査する。_II_研究期間:H18/5/1~H19/4/30〈結果〉 資料1 グラフ参照〈考察〉サービスの利用により、観察の目が多くなり、褥瘡は早期に発見でき、治癒、改善している。複数の事業所が関わることで、スタッフ間の意識の高まりや緊張感もでてくるのではないか。サービス提供事業所では日々の状況や介護者の心理的な動きを記録している。モニタリングの場面で情報を得ることから考える。独りで過ごす時間が長い人は5人で92%は同居していた。背景として考えられる事とは、老老介護や経済的理由で介護者が自宅に一緒に居る事実がある。旧栃尾市は地場産業の衰退による離職者が多い、若い世代の流出で高齢者世帯が非常に多い地域である。年金暮らしのためサービスの介入が困難でマンパワーが不足したケースが数字として現れた。褥瘡の発生したケースは要介護3以上が92%で、発生のリスクが高い事がわかる。リスクを最小限にしようとすると必然的に介護量が更に増す。病院であれば24時間専門職の対応ができる。在宅では限られた時間でのケアスタッフの対応と家族の介護力に期待するしかない。悪化、不変ケース5人の共通点として、介護歴が5年以上、介護の協力者や相談者がいない、閉鎖的な考えで他人の介入を拒みサービスの介入が困難であった。関わるサービス事業者と普段の情報交換で理解を深め、観察項目の確認をすることで、専門性の目を高め援助できるケアプラン作りが必要である。介護者の思い入れが強かったり、使命感に縛られサービスを介入する事が難しいケースの場合、サービス導入ばかりにとらわれず、話を聞く事に専念し介護者の心の負担をわかりあえたという瞬間を感じたケースもあった。〈結語〉◙サービスが関わっているケースは褥瘡を早期に発見できる◙主介護者が抱え込んでいるケースはサービスが介入しづらい◙サービスを導入するには経済的な理由も考慮する必要がある◙要介護3以上に褥瘡の発生リスクが高い 〈文献、検索〉 1)江原喜八、褥瘡を防ぐシーティング、月間総合ケア、2006.vol.16.no.122)折茂賢一郎、安藤繁、新井健五、廃用症候群とコミュニティケア、別冊総合ケア、2005 医歯薬出版3)市川冽、ケアマネジメントのための福祉用具アセスメント・マニュアル、1998 中央法規4)日総研グループ、褥瘡ハイリスク患者の予防管理が実践できる仕組みづくり、月刊.Nurse.Data 2004資料1 グラフ6票
著者
黒木 聖司 長尾 剛司
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.792-798, 2005-07-15
出版者
日経BP ; 1985-
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.466, pp.56-65, 2021-01

PART3定年を待たずして経済的自由を手に入れ、早期退職を実現する人たちもいる。悠々自適の年金暮らしではなく、「好きなこと」で収入を得ることで60歳以降の家計をデザインできた人たちだ。その成功への道のりと秘訣を3人の達成者に聞いた。
著者
清川 真千子 内村 正幸 上山 勝行 手塚 博愛
出版者
鹿児島県畜産試験場
雑誌
鹿児島県畜産試験場研究報告 (ISSN:0389357X)
巻号頁・発行日
no.36, pp.98-103, 2002-12

薩摩鶏雄とロードアイランドレッド雌の交配による交雑鶏を基礎鶏とし、交雑鶏同士の交配を繰り返して作出した第12世代さつま地鶏について、育成期は2001年2月28日から8月21日までの175日間、成鶏期は2001年8月22日から2002年5月28日までの280日間性能を調査し、次の結果を得た。1.飼養成績。(1)育成期。175日間の育成率は、雌雄平均で88.7%、体重は3484g、飼料消費量は96.4g/日・羽、飼料要求率は4.94であった。(2)成鶏期。176~455日齢までの生存率は、雌雄平均で87.1%、体重は433g、飼料消費量は150.8g/日・羽、雌の産卵に対する飼料要求率は5.31であった。2.産卵成績。初産日齢は154日齢、50%産卵到達日齢は178日齢、53g卵重到達日齢は189日齢であった。産卵率は、平均で45.2%、産卵ピークは232~259日齢で、53.8%であった。3.繁殖成績。交配は自然交配で実施し、受精率、中止卵率、死ごもり卵率、対有精卵ふ化率および対入卵ふ化率は、それぞれ67.3%、7.4%、11.1%、81.5%および54.9%であった。
著者
板倉 圭吾
出版者
北海道大学大学院法学研究科
雑誌
北大法政ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.18, pp.59-90, 2012-01-31