著者
河野 忠
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.83, 2006 (Released:2006-05-18)

大分県には84ヶ所,総数にして400体ほどの磨崖仏が存在しており,日本全国の8割近くの磨崖仏が集まっているといわれている.これまでの湧水調査の中で磨崖仏には必ずといってよいほど湧水が見られたので,便利な指標として利用していた.従来,磨崖仏の造立は密教との関係を指摘され,深い信仰心から造立されたといわれていたが,水の存在から磨崖仏をみた研究は知られていない.石像文化財保護の観点からみると,磨崖仏に湧水が存在する事は風化が早まる可能性があり好ましい事ではない.にもかかわらず,大分県の磨崖仏に湧水が存在する事は,そこに何か理由があるのではないかと考え,磨崖仏と湧水の悉皆調査を開始した.これまでに54ヶ所の磨崖仏を訪れ,湧水の存在を確認した結果,確実に湧水が存在するものが35ヶ所,湧水跡のみられたものが16ヶ所,存在しないもの3ヶ所となった.未調査の磨崖仏が30ヶ所ほどあるものの,9割以上の磨崖仏に湧水が確認された.しかも湧水のない3ヶ所の磨崖仏は,移動可能な石仏と横穴式墳墓に彫った磨崖仏であった.従って,調査した磨崖仏には必ず湧水が存在するといってよい.磨崖仏における湧水の存在理由は自然科学的には次のように説明できる.大分県には9万年前に噴火した阿蘇の溶結凝灰岩が大野川流域を中心に堆積し,各地に垂直の懸崖を形成しており,磨崖仏の格好の造立地を提供している.溶結凝灰岩はよい帯水層ともなっているので,多くの湧水が見られる事も確かである.磨崖仏に湧水が存在するその他の理由としては,制作者の硯水(作業の合間にとる水)と磨崖仏への閼伽水等が考えられる.製作現場での実質的な問題として,飲み水がなければ長期間にわたる磨崖仏製作は不可能といってよいだろう.また,閼伽水は神仏に毎日欠かさず供えるもので,近くに水場がなければならない.閼伽は密教と密接な関係を持つ言葉であり,磨崖仏に塗られている赤い塗料である水銀から作る朱(しゅ,アカ)にも通じている.しかも大分県には水銀産地である事を示す丹生地名が3ヶ所も知られている.このことから,大分県の磨崖仏は密教の影響を強く受け,水の存在に対する感謝の念と実用的な問題から,湧水の存在する場所に造立されたと考えるべきである.また,大分県外でも磨崖仏に湧水が存在する例は多く,海外の磨崖仏(中国のキジルや莫高窟など)にもその例が見られる事は特筆すべきであろう.
著者
David MARTÍN-HIDALGO Beatriz MACÍAS-GARCÍA Lauro GONZÁLEZ-FERNÁNDEZ
出版者
The Society for Reproduction and Development
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
pp.2021-075, (Released:2021-10-24)
被引用文献数
6

We aimed to analyze the influence of different cellular concentrations of boar sperm suspensions on the induction of capacitation and acrosome reaction. When spermatozoa were incubated at 100 or 200 mill/ml, significant increases in protein tyrosine phosphorylation in the p32 protein were observed, compared to those at 50 mill/ml. In addition, sperm concentration-dependent increases were observed in plasma membrane lipid disorganization (50 mill/ml vs. 200 mill/ml), induction of the acrosome reaction (50 mill/ml vs. 100 mill/ml and 200 mill/ml), and sperm viability (50 mill/ml vs. 100 mill/ml and 200 mill/ml). Our data indicate that an increase in sperm concentration stimulates the induction of capacitation and acrosome reaction in boars.
著者
四宮 正親
出版者
関東学院大学経済研究所
雑誌
経済系 (ISSN:02870924)
巻号頁・発行日
vol.237, pp.28-43, 2008-10

本稿は,第2次大戦前における日本の自動車流通販売について考察し,特に外国メーカーの近代的な自動車流通販売体制の導入と,そこでの外国メーカーとディーラーの関係に着目した。外国メーカーが採用したフランチャイズ・システムにもとづくディーラー網の構築と,潜在需要の開拓に結びついた販売金融制度は,従来の輸入代理商を通じての販売に比べると,日本の自動車市場を大きく開くことにつながった。ただし,自動車先進国アメリカの,成熟した自動車流通販売システムの日本への直接的な導入は,外国メーカーと傘下ディーラーの関係に大きな問題をもたらした。両者の関係は,必ずしも協力的なものとは言えず,むしろ抑圧的でさえあった。そしてそれは,フランチャイズ方式にもとづくディーラー・システム自体のもつ構造的な問題であったため,交渉力確保のためディーラーの組織化の動きを促した。
著者
間宮 厚司
出版者
法政大学国文学会
雑誌
日本文学誌要 (ISSN:02877872)
巻号頁・発行日
no.71, pp.2-9, 2005-03
著者
高津 康正 眞部 徹 霞 正一 山田 哲也 青木 隆治 井上 栄一 森中 洋一 丸橋 亘 林 幹夫
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.87-94, 2002-06-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

21種のグラジオラス野生種について特性調査および育種素材としての評価を行ったところ,草丈,葉数,葉・花の形態,小花数および開花期等には種によって大きな違いがみられた.また草丈が10cm程度で鉢物に利用可能なもの,現在の栽培種にはみられない青色の花被片を有するものなど,育種素材として有望な野生種が見出された.香りを有する種は全体の52.3%を占め,香りのタイプもチョウジ様,スミレ様などさまざまであることが示された.さらにこれらの野生種について到花日数,小花の開花期間,稔実日数および1さや当たりの種子数を調査し育種上重要な情報を得ることができた.フローサイトメトリーによる解析の結果,野生種においては細胞あたりのDNA含量が多様で,種によってイネの0.9〜3.5倍のゲノムサイズを有するものと推定された.本法による倍数性の判定は困難であるが,種の組合せによっては交雑後代の雑種性の検定に利用可能であることが示唆された.
著者
梶原 浩史 山口 浩司
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.35, pp.78, 2002

豊田スタジアムは、収容人員45,000人を誇る、国際試合に対応可能な球技専用競技場である。照明設備は、大屋根に設置された222台の投光器によりFIFA(国際サッカー連盟)の基準である水平面照度1500lx以上を確保し、さらにJISのTV撮影の基準である鉛直面照度1000lx以上、均斉度0.3以上を満足している。光源には、演色性に優れる2kW高演色形メタルハライドランプ(ショートアーク形、平均演色評価数Ra90)が使用されハイビジョン放送のための要件(Ra80以上)を満足している。また、緊急時の照明として競技区域内で通常の2/3の照度を確保するため、150台の2kW投光器を瞬時再始動型とし、一瞬の電圧降下や停電によるランプの立ち消えによるパニックに対応している。
著者
edited by Andy Oram and John Viega
出版者
O'Reilly
巻号頁・発行日
2009
著者
松山 春男
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.1151-1162, 1981-12-01 (Released:2010-01-22)
参考文献数
65
被引用文献数
2 6

Recent developments related to the total syntheses of spermidine and spermine alkaloids are reviewed. Those alkaloids are kukoamine A 11, maytennine 30, celacinnine 31, celallocinnine 32, celafurine 33, celabenzine 34, dihydroperiphylline 35, (±) -dihydropalustrine 73, 75, lunarine 76, lunaridine 77, codonocarpine 79, and (-) -homaline 93. This article is constructed by following chapters : (i) acyclic spermidine and spermine alkaloids, (ii) macrocyclic spermidine alkaloids, (iii) macrocyclic spermine alkaloids, (iv) observations on biosyntheses, and (v) new synthetic methods of macrocyclic aminolactams.
著者
梁 媛淋
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.127-151, 2016-06-30

本稿は、1830年頃に譜代大名彦根井伊家で作成された分限帳を主な素材として、同家の身分構造を明らかにする。大名家の内部構造の解明は近世の政治体制を知るために重要であり、明治維新やそれに伴う武士身分の解体を考える手がかりとなるだろう。
著者
大塚 斉之助 芥川 進
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.1138-1150, 1981-12-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
103
被引用文献数
1 1

テルペン, ステロイドを始め天然物の合成に今日各種の金属錯体がよく用いられる。この分野の発展は目ざましく数多くの総説が現れている。ここでは主として遷移金属錯体を用いるテルペン類の合成をとりあげる。セスキテルペンは一部にとどめた。このように限っても数多くの報告はこの小文にまとめきれない。そこで筆者らが進めている実用的な合成に焦点をあてることにする。すなわちイソプレンあるいは化学原料としてかなり豊富に利用できるテルペンを利用する合成とそれらに関連する反応を取りあげることにした。
著者
遠藤 銀朗
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.152-159, 1992-08-17 (Released:2010-03-17)
参考文献数
6

Methane production in the environment has been recognized as an important factor for the global warming. It is also important as a process for self-purification in the polluted environment. In this study, the author isolated methanogenic bacteria which live in a lake sediment and investigated the methanogenic activity of the isolated bacteria. The author also studied the distribution of methanogenic activity in a lake sediment by using sediment samples which were obtained from each depth of the sediment, and temperature effects to the methanogenic activities. One coccus bacterial strain of methanogenic bacteria isolated from the lake sediment was a hydrogen utilizing methanogen. It was impossible to isolate acetate utilizing methanogen from the lake sediment because of the coexisting bacteria other than methanogens. There were many differences between hydrogen utilizing methanogenesis and acetate utilizing methanogenesis. Methanogenesis from hydrogen dominated in the lake sediment, especially in the deeper sediment. This methanogenic activity was also observed at low temperature. Methanogenesis from acetate was active at the upper sediment which contained much organic compounds, but not so high as methanogenesis from hydrogen.
著者
井上 治彦
出版者
伊丹市昆虫館
雑誌
伊丹市昆虫館研究報告 (ISSN:21877076)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.13-18, 2017-03-31 (Released:2019-11-11)
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.1115, pp.64-69, 2018-03-08

北九州市の玄関口、JR小倉駅から徒歩7分の「ミクニワールドスタジアム北九州」(略称はミクスタ)。PFI事業で整備した球技専用スタジアムだ。観客と選手の距離を縮め、迫力ある試合を楽しめる仕掛けを施した。
著者
前田 広人 程川 和宏 奥西 将之 日高 正康
出版者
日本プランクトン学会
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.69-73, 2009 (Released:2011-02-03)
著者
小杉 清 横井 政人 五明 圓 植松 七生
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-6, 1967-12

宿根草の花芽分化に関する研究 I.ジャーマン・アイリスの花芽分化・発育についてジャーマン・アイリスの花芽分化期については従来二つの異なった発表があった.そこで, その原因を明らかにしようとして, 1964〜1966に2品種を用いて調査を行なった.結果は2品種とも8月下旬に花序分化が開始されたので, この時期を分化期と定めた.この時の平均気温は26℃, 平均草たけは67cmであった.この結果は妻鹿氏の結果(9月上旬)に近く, ドイツのKramer氏(6月中旬)とはやや離れた.この相異は分化標徴の認定によるか, 両国間の気候の相異によるか, データーおよび写真がないので明らかでない.なお近年2季咲ないし4季咲の品種が現われてきたので, これらの分化状況については, さらに後日の研究を要する。