著者
高澤 知規
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.408-414, 2019-07-15 (Released:2019-08-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

手術室で発症するアナフィラキシーショックは,発生頻度は低いものの,対応を誤れば生命に危険が及ぶため,迅速かつ適切に対応しなければいけない.原因薬剤としては,筋弛緩薬とその拮抗薬,抗生剤が多い.診断には臨床症状のほか,血液中のヒスタミン・トリプターゼの濃度測定が有用である.薬物治療の第一選択はアドレナリンである.原因薬剤の同定には皮膚テストがゴールドスタンダードであるが,in vitroで実施できる好塩基球活性化試験は有望な検査である.原因薬剤が同定されないまま放置されると,次の手術で患者を危険に晒す可能性があるため,アナフィラキシーの原因をつきとめておくことが麻酔科医の責任だと考える.
著者
岡村 幸子
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 = THE SHIRIN or the JOURNAL OF HISTORY (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.537-570, 2001-07-01

個人情報保護のため削除部分あり本論では、平安時代における天皇の御物を取りあげ、その保管と伝領を切り口として、平安期における皇統のありかた、及びそれに対する認識について考察した。その結果、まず、天皇御物の管理体制の転換期が宇多・醍醐朝に認められた。この時期天皇御物は清涼殿と宜陽殿納殿に整理し直され、その管理も女司から蔵人の手に移っていった。そして、後に「累代御物」として定着する、皇位継承に伴って新帝に伝領される御物のいくつかが光孝・宇多に由来をもつものなのである。その背景には、御物に対する天皇の認識が関わっている。すなわち、文徳~陽成から光孝への皇統の転換にあたり、光孝・宇多・醍醐らは、その正当性と権威を託す対象として天皇御物をとらえ、それを累代御物として伝領していくことで、自らの皇統に、鶴の皇統とは異なる権威を与えようとしたのである。本流と傍流を区別する思想が明らかに見られるのが、十一世紀初めの一条朝における両統迭立期である。そしてそこには、中国王朝の交替になぞらえた「反正」という概念が持ち込まれていた。即ち、たとえば王葬によって途絶えた前漢を再び興した後漢の光武帝が「反正」の君であったように、光孝や一条が「反正」の君であったとみなされていたのである。そして、光孝以降に創られた累代御物と同様、円融系の天皇によって和琴鈴鹿が累代御物に加えちれ、その後も伝領されていく。光孝以降の累代御物と同様、それは他の皇統とは独自の正当性を有することを示すための、つまりその皇統のための累代御物として出発したものであったが、やがて全ての天皇が継承すべき累代御物として伝領されていく。そのような累代御物となった時、その皇統が「本流」であるという観念は、目に見える形として示されるのである。In the Heian period, the lmperial throne was succeeded not only by the son, but by the Emperor's brother or his cousin, so the lineage of the lmperial throne was complicated. The purpose of this study is to investigate how the emperor evaluated his own lineage, and how the complicated lineage was systematized. And in order to investigate these themes, the author considers how the hereditary treasures of emperors were transfered, because these treasures generally bestowed the authority of the throne. The author shows that the system of preservation and management of the treasures changed in the period of the Emperor Uda (宇多) and Daigo (醍醐), because they recognized the value of the treasures as the symbols of the authority. The lineage changed when the Emperor Yozei (陽成) abdicated the throne to the Emperor Koko (光孝), father of Uda, so they needed a different authority from that of the former lineage. The two lineages were symbolically unified by offering the Dai-Shoji (大床子), which was one of the hereditary treasures of the emperor, from Yozei to the Emperor Suzaku (朱雀), the son of Daigo. In consequence, the lineage beginning from Koko was regarded as the main, and the other as a branch. The same situation reoccurred early in the 11th century. This time, the scholars regarded the Enyu (円融) lineage as the main, and the Reizei (冷泉) lineage as a branch. After that, the treasure named Suzuka (鈴鹿), which the emperors in the Enyu lineage had owned, was added to the hereditary treasures of the emperor.
著者
長谷川孝博 松村宣顕 高橋秀年 井上春樹
出版者
国立大学法人 情報系センター協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.107-114, 2013

<p>構成員約12,000人(アカウント総数約13,000)の国立大学法人において,120日間のパスワード定期更新の管理策をシステム要求として徹底実践した場合に起こる課題と成果を8年間の運用実績とデータに基づき考察した.パスワード定期更新の管理策を順当に履行できる利用者は約7割であった.残る約3割のパスワード失効者および忘失者に対して「IDカード認証するパスワード自動再発行機」,「指静脈の生体認証を用いた無人パスワード自動再発行機」および「窓口における対面の再発行申請手続き」を併用して対応した.「IDカード認証するパスワード自動再発行機」が最も有効に機能し,その他の再発行機能が補助的に機能した.その結果,長期に亘る本管理策運用が可能であることが示された.</p>
著者
助重 雄久 佐竹 里菜
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

Ⅰ 本報告の背景とねらい<BR> 歴史都市を散策する「まち歩き観光」は、古くから老若男女を問わず人気を博してきた。近年では、従来「まち歩き観光」が盛んでなかった地域でも、地域資源を巡るまち歩きによって誘客を図ろうとする動きが広がっている。またインバウンドの促進により、まち歩きをする外国人も増加してきた。<BR> 「まち歩き観光」で求められるのが、散策コースや観光スポットの位置を人々にわかりやすく知らせる観光案内である。「まち歩き観光」を推進する自治体等のなかには、街頭にある観光案内図の整備に力を入れるところも増えてきた。しかし観光案内図のなかには、地図表現に問題があるなど、観光客に的確に情報を伝える役割を果たさないものも目立つ。<BR> 本研究では、街角に設置する観光案内サインの整備に力を入れてきた金沢市と京都市の事例を中心に、観光案内図の問題点とその改善に向けた取り組みを考察し、観光客にとって「わかりやすい観光案内図」に求められる要件を探った。<BR><BR>Ⅱ 金沢市における観光案内サインの整備と問題点<BR> 金沢市は従来、観光案内図や市街図等を課ごとに作成しており、デザインもスケールも不統一であった。また、地図の更新は行っていなかったため、情報が古い地図や汚損した地図も多く、観光客から多くの苦情が寄せられていた。<BR> こうした状況を憂慮した金沢市では、2008年から観光客にもわかりやすい案内図づくりの指針を定め、地図や矢印サイン、歴史説明板等のピクト、文字の大きさや書式、色彩、図面サイズ、地上高等の統一を図った。地図はどこに設置する場合でも正面に見ている方角が上になるようし、表示範囲も観光客が徒歩で行ける範囲を考慮して1km四方とした。<BR> 金沢市は、同時に地図に掲載する情報やマスターマップを課ごとに管理する「縦割り方式」をやめ、景観政策課がとりまとめるようにした。景観政策課では各課から集まった地形・道路・観光地等の情報を収集し、それらをマスターマップ上に盛り込んで地図を作成する。地図は汚損や情報変更の有無に関係なく2年に1度定期更新する。<BR> 本研究では、金沢市が設置した地図が観光客にとって本当にわかりやすいのかを検証するため、観光客100名に聞き取り調査を実施した。また、兼六園下から兼六園に向かう紺屋坂に設置された3枚の観光案内図を観光客の動線上のあらゆる方向から撮影し、見やすさを検証した。<BR> ヒアリング調査の結果、地図の色彩、表示情報、見ている方角を上にした点、目線からみた高さについては大部分の観光客が「わかりやすい」と評価していた。一方、表示範囲に関しては半数の観光客が「他の観光地や駅の位置がわからない」、「広域案内図が必要」と回答した。<BR> また、撮影した写真の分析からは、①案内図の裏側が空白であるため、後方からは地図だと気づかない、②側方から見ると、地図の表示面はまったく見えない、③市以外が設置した案内板や周辺の木々に囲まれ、案内板が観光客の目線に入らない、といった問題点が明らかになった。<BR><BR>Ⅲ 観光客の行動や目線を考えた京都市の観光案内サインアップグレード<BR> 京都市街地は道路が直交していて交差点に特徴がないため、現在位置が把握しにくいことが指摘されていた。また、既存の観光案内図は地名等を4カ国語で表記した結果、寺社等が密集する地域では地図が文字で埋まってしまい、肝心の目的地がわからない状態となっていた。<BR> 京都市ではこうした問題を解消するため、「シンプルで、わかりやすく、京都の町並みに調和した」観光案内サインの設置を検討すべく、平成22年度に「観光案内標識アップグレード検討委員会」を設置した。平成23年度末からは、委員会で策定したガイドラインに基づいた観光案内サインの設置が進められている。観光案内図を含む観光案内板は、日本語と英語のみで観光地や通り名・建物名等を表記するシンプルなデザインに変更された。案内板から徒歩で行ける観光地までの所要時間も表示した。<BR> また、金沢市の案内図に関して指摘した諸問題も、a.遠い観光地間までの移動は徒歩でなく公共交通機関を使うと考え、市内の地下鉄・鉄道路線図を案内図の下に入れる、b.目線に入りやすい地下鉄の出口正面や横断歩道横に設置する、c.案内板の面と垂直方向に「iマーク」を表示して、側方からくる人にも一目で案内板の存在がわかるようにする、d.案内板の裏面に巨大な矢印表示を配置することで、反対側の歩道から横断歩道を渡ってくる人にも一目で案内版だとわかるようにする、といった配慮をすることで解決している。今後観光案内図を設置する地域においても、京都市のように観光客の行動や目線を考慮した案内図づくりが必要といえよう。
著者
小野 田鶴
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.243, pp.68-71, 2004-12

派遣会社が「派遣の人数を減らしましょう!」と提案。「損して得取れ」の営業で市場を開拓している。親友二人で始めたビジネス。熱血漢の憤りに、理論派の相棒が事業化の道筋を付けた。営業の壁に資金ショートの危機——ベンチャー企業には、次々ハードルが立ちはだかったが……。 34歳の社長と33歳の専務、元同級生のコンビが、自転車で新宿の高層ビル街へ営業に乗り込む。