著者
小川 フェネリーひとみ 上田 伊佐子 森田 敏子
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.73-82, 2017-09-09 (Released:2018-04-18)
参考文献数
24

本論は,文献に示された「よい看護師」が身に付けているものは何かを明らかにし,徳の倫理に着目した考察を加えることにより,看護基礎教育における倫理教育への示唆を得ることを目的とした。医学中央雑誌Web版で1983年~2017年2月において「よい看護師」のキーワードで検索すると,原著論文9編が抽出された。調査対象は看護師3件,看護学生2件,患者や遺族2件,看護教員1件,教科書の内容変遷1件であった。「よい看護師」が身に付けている倫理の視点として【体験の自省】,【行為と判断の倫理原則】,【徳の倫理】,【公共の善】が形成された。日本で看護教育が始まって以来,教科書には,人としての特質と専門職としての特質,徳の倫理が記されていた。「よい看護師」の育成には,徳の倫理を基礎とした専門職としての知識・技術・態度の育成と倫理原則の育成の重要性が示唆された。
著者
児玉 雄二 岡田 真平 木村 貞治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.479, 2003

【はじめに】近年、成長期の中学生におけるスポーツ障害の報告が数多く認められる。我々が相談を受けたY中学校野球部でも、膝関節や足関節周辺のスポーツ障害が数多く認められた。また、ほとんどの選手において柔軟性の低下が認められた。そこで、本研究では、スポーツ障害の予防・改善を目的として柔軟性向上プログラムの指導を実施し、介入前後における柔軟性の変化について検討した。【対象】対象は、Y中学校野球部に所属する1年生13名、2年生3名の計16名で、調査に際しては、本人及び顧問、保護者の同意を得た。【方法】平成14年7月29日に、柔軟性の評価を行った。評価項目は、(1)ハムストリングス:体前屈、(2)腸腰筋:膝窩-床間距離、(3)大腿四頭筋:踵-臀部間距離の3種類とした。次に、これらの筋を中心に全身的な柔軟性向上プログラムを指導した。指導内容は、スタティック・ストレッチとダイナミック・ストレッチ(ブラジル体操)とし、ウォーミング・アップ時とクーリングダウン時に全員で実施するよう指導した。そして、約2ヶ月後の10月3日に柔軟性の再評価を行ない、指導前後での柔軟性の変化をt検定を用いて解析した。また、部員と監督に対し、アンケートによる意識調査を行なった。【結果】柔軟性向上プログラム施行前後での柔軟性の変化については、左右の平均で膝窩-床間距離は6.0cmから4.7cm(p<0.05)へ、体前屈は37.0cmから39.6cm(p<0.05)へ、踵-臀部間距離は10.2cmから9.6cm(p<0.05)へと、すべての項目において有意な改善が認められた。また、アンケート調査では、約7割の部員が、「身体が柔らかくなったと感じる」、「痛みが少なくなった」と回答した。【考察】介入前の評価では、膝関節,足関節周辺の慢性的な疼痛が多く認められるとともに、殆どの選手で柔軟性の低下が認められたことから、中学校野球部でのこれまでの部活動では、野球そのもののトレーニングが中心になっていて、柔軟性などの体力要素に着目した自己管理プログラムの実践が不十分であったと考えられる。また、約2ヶ月という短期間であったが、セルフケアとしての柔軟性向上プログラムの継続的な実施により、有意な柔軟性の改善が認められるとともに、アンケートの結果では、疼痛の軽減が認められた。以上より、今回指導した柔軟性向上プログラムは、柔軟性の向上に効果があるとともに、慢性的な疼痛などのスポーツ障害の軽減にも有効であったため、今後も、コンディショニングやスポーツ障害の予防・改善のための基礎プログラムとして、より多くの学校で実践してもらうよう啓発活動を継続していきたい。
著者
北野 守人 柳井 孝介
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.31, 2012

【はじめに】<BR>東京都高等学校野球連盟(以下都高野連)からの依頼を受け、合同練習(以下練習)、壮行試合及び日米親善野球 東京選抜ロサンゼルス遠征(以下遠征)におけるメディカルサポート(以下MS)を実施した。そこで、遠征における活動内容を報告し、今後の課題を考察する。尚、発表するにあたり都高野連の同意を得た。<BR>【対象と目的】<BR>東京都の高等学校から1・2年生の選手20名を平成23年度 秋季東京大会の結果を参考に都高野連の役員会にて選抜。練習(4日間)、壮行試合(2試合:日大三高 全国優勝メンバー、東都1部リーグ 選抜チーム)及び遠征:平成23年12月23~31日(4試合)に参加した選手20名を対象に実施。理学療法士は、対 東都1部リーグ 選抜では2名、遠征等は1名参加。遠征のMS目的は、1.傷害・障害予防2.感染予防3.時差ぼけ対策4.体調管理の4点を挙げ、対策・準備・対応を進めた。<BR>【結果】<BR>MSを行なった選手は20名中17名、内容別件数は延べ143件(練習・壮行試合:41件、遠征:102件)。内訳は、アイシング70件、野手コンディショニング17件、テーピング15件、外傷14件、今後の指導9件、投手コンディショニング7件、体調管理指導4件、栄養指導3件、処置3件、生活指導1件であった。身体部位別件数は196件(練習・壮行試合:51件、遠征:145件)で練習は肩・肘関節、遠征では肩・肘関節だけでなく手指・股関節・大腿・下腿も多かった。<BR>【考察】<BR>1)感染予防:機内では感染対策としてマスクの配布・着用を実施。遠征2日目に選手1人が喉痛を訴えたので、全選手に夜間用のミネラルウォーターを2本に増加、うがい薬・マスクを2日分配布。乾燥防止に就寝前に浴槽への湯張りを指示。その後、感染の悪化・発症はなかった。2) 介入件数・選手との会話の増加:遠征に入ると介入件数・選手との会話が多くなり、食事量が少ないと声も挙がったため夜食にバナナを2本配り対応。遠征では肉料理が多かったため摂取カロリーは足りていたと思われるが、野菜・米が少ないことから腹持ちがしなかった可能性が考えられた。3)野手コンディショニング介入回数増加:遠征時の平均湿度18%のグランドは非常に固く、芝生がない捕手・内野手への疲労が蓄積したと予測した。尚、介入した全選手は日米親善試合には復帰した。<BR>【海外遠征の課題】<BR>食事・設備改善だけでなく綿密な遠征日程を把握した上で僅かな時間をどのように有効活用をし、選手のケアにあたるか検討の必要性を感じた。また、遠征後に選手・監督から感謝の言葉を頂いたが、個人的な技術等へのスキルアップを更に図っていきたい。最後に、遠征に帯同させて頂き都高野連・米国の役員に対し心より感謝を申し上げます。
著者
水野 圭子 佐治 重衡
出版者
科学評論社
雑誌
腫瘍内科 (ISSN:18816568)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.159-165, 2010-08
著者
武者 篤 一戸 達也 新谷 誠康 布施 亜由美 鈴木 奈穂 福島 圭子 大串 圭太 五味 暁憲 黒田 真右 辻野 啓一郎 横尾 聡
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.154-159, 2018

<p>mTOR阻害剤のエベロリムス(アフィニトール<sup>®</sup>)は結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫に有効であるが,口腔粘膜炎が高頻度に発症することが報告されている.今回,エベロリムスの内服治療を行うことになった結節性硬化症患者の口腔管理を経験したので報告する.</p><p>患者は20歳,男性.既往として結節性硬化症,知的能力障害,てんかん,腎血管筋脂肪腫がある.腎血管筋脂肪腫に対する治療としてエベロリムス10mgを内服開始するにあたり,泌尿器科主治医より歯科受診を勧められ当施設を受診した.口腔粘膜に異常所見は認めないが清掃状態は不良であり,頰側転位している上顎左側第二小臼歯鋭縁による口腔粘膜炎発症が懸念された.第二小臼歯の予防的な抜歯と定期健診および口腔衛生指導を行うこととした.頰側転位している第二小臼歯は6カ月後に抜去した.その後数回にわたり口腔清掃不良の時期と一致して軽度な口腔粘膜炎(grade 1)の発症があったものの食欲減退はなく,重篤な口腔粘膜炎発症によるエベロリムスの減量や中止にいたることはなかった.抜歯後も継続して月1回の定期健診を行っているが,口腔粘膜炎が重篤化することはなく,エベロリムス内服治療へ影響することはなかった.</p><p>本症例は口腔粘膜炎を最小限に抑えることができ,重篤な口腔粘膜炎が原因の内服治療の中止や腎血管筋脂肪腫の増大を起こすことなく経過している.これは主治医との連携と,定期健診や口腔衛生指導が適切に行えたことによると考えられた.</p>
著者
郷原 佳以
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.131, pp.121-141, 2014

モーリス・ブランショ(1907-2003)はフロイトの精神分析とどのような関わりをもったのだろうか。まず気づかれるのは、ブランショが同時代の作家や批評家たちと異なり、精神分析を文学に導入することに対してきわめて慎重であり、文学作品の精神分析的解釈を繰り返し批判したことである。文学言語は作者の精神分析には還元しえない「終わりなきもの」への接近であるというのがブランショの見解であった。他方でブランショは、精神分析理論における「反復強迫」や「死の欲動」に関しては、同じ理由から、文学の経験との親近性を見出していた。注目すべきは、ブランショが1956年の論考「フロイト」において、多くの留保は示しながらも、精神分析における「対話」に「終わりなきもの」との関わりを認めたことである。ブランショにとって、精神分析は治癒のための制度である限りでは文学とは相容れないが、その「対話」においては文学の経験と接近するのである。

1 0 0 0 OA KAMIOKANDEのこと

著者
小柴 昌俊
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.332-336, 1996-05-05 (Released:2008-04-14)

早いもので日本物理学会が独立してから50年になるそうで, 振り返ってみると私が第一高等学校の理科甲類一年だったのですから, スケールは勿論違いますが, 苦楽を共にしてきたような気がします. この50年をふりかえる特別企画のなかで, 唯一つの単独実験としてKAMIOKANDEが取り上げられたことは, この実験に関与した総ての人々にとって大きな名誉と喜びです. それではKAMIOKANDEは何を達成したのでしょうか? 以下に他の分野の方々にもご理解いただけるように述べてみたいと思います. まず挙げるべきは「ニュートリノ天体物理学観測の創始」であると, 国内外で認められています. 透過力がきわめて大きい素粒子ニュートリノが星の生涯で果たしているであろう役割については早くから知られており, 天体からのニュートリノを観測することの重要性も指摘されていました. 米国では20年以上も前から地下深い所に37CIを含む多量の液体検出器を設置し, 太陽から降り注いでいる筈のニュートリノが37CIを37Arに変換したのを月に一度位の割合で抽出し検出する方法で観測をつづけ, 太陽からの電子ニュートリノは理論値の三分の一くらいしかないという結果を報告しています. しかしこのような放射化学的方法では入射したニュートリノの到来時刻, 到来方向は不明ですし, またエネルギースペクトルもわかりません. Keplerの昔から天文観測には到来信号の時刻と方向を知ることが不可欠です. また天体物理的観測, たとえば表面の温度や元素比, には更に信号のエネルギースペクトルを知らなければなりません. KAMIOKANDEはこれら三つの条件をみたす方式で天体からのニュートリノを観測したので, ニュートリノ天体物理学観測を創始したとされているわけですが, この実験がどのようにしてはじまったか, また透過力が極めて大きく, レンズも反射鏡も遮蔽も使えない天体ニュートリノの観測をどのようにして達成したかに入りましょう.