著者
浜田 寿美男
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.133-139, 2007
被引用文献数
1

わが国では刑事取調べにおいて無実の人が嘘の自白をする例が少なくない.この虚偽自白の典型例は強制下の迎合によるものである.身柄を拘束された被疑者に対して,取調官が被疑者は犯人に間違いないと確信して取り調べるが,それはしばしば証拠なき確信である.この状況のもとで,被疑者は一般に想像されるよりはるかに強い圧力をこうむる.被疑者は身近な人々から遮断され,生活を警察のコントロール下に置かれ,屈辱的なことばを投げつけられ,弁明しても聞き入れてはもらえない無力感にさいなまれる.しかもこの苦しみがいつまで続くかわからず,見通しを失ってしまう.そこでは有罪となったときに予想される刑罰が自白を押しとどめる歯止めにならない.取調べ下の苦しみはたったいま味わっているものであって,それを将来に予想される刑罰の可能性と比べることはできないからであり,また,無実の人にとっては予想されるはずの刑罰に現実感をもてないからである.虚偽自白の心理は,第三者の視点からではなく,まさに渦中の当事者の視点からしか理解できない.この渦中の視点からの心理学をどのように展開するかは,今後,刑事事件を超えた課題となりうるはずである.
著者
木村 周平 小西 公大 伊藤 泰信 内藤 直樹 門田 岳久 早川 公
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究はソーシャルデザイン実践について、生活・地域・教育の領域において、それを推し進める「準専門家」(後述のようにアドバイザーやコンサルタント、研究者等を含む)の実践に着目して研究することで、ソーシャルデザインに対して文化人類学からどのような関わり方が可能なのかについての知見を提示することで、人類学や近接学問領域の蓄積、さらに公共的な実践に対して貢献しようとするものである。
著者
伊藤 二良
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:18849644)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.632-640, 1976-08-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
12

10年位前まで大がかりな機器とスタッフを要した同時録音は, 現在は機器の発達できわめて少ない人員で処理できるようになった.16ミリでは, 完全に1人で同時録音ができるカメラが普及し, また, アマチュァの8ミリでも, 同時録音が可能となった.しかし, これら同時録音には幾つかの方式があり, 取材目的に即した方式を選択する必要がある.そこで現在ある同時録音のシステムを取材から後処理まで通して見なおし, 整理してみた.
著者
山田 雄司
出版者
山田雄司
巻号頁・発行日
2007-03-01

北野天満宮に関する古文書・古記録は、現在では各所に分かれて所蔵されているため、その全貌をうかがい知ることは困難である。しかし、文書群全体を把握した上で利用する場合と、そうした把握なしに部分的に利用した場合では、おのずと理解に差が生じよう。また、文書がいかに伝来してきたかを把握しておくことも、文書の理解につながるはずである。本研究では、こうしたことを前提に、明治維新前にどのようなかたちで文書が伝来してきたのかできるかぎり復元することにつとめ、かつての所蔵ごとに分類しようと試みた。ただし、北野天満宮所蔵分および筑波大学附属図書館所蔵分については、いくつかの所蔵先から流入したと推測されるが、分割することはせず一括して目録を作成した。北野天満宮旧蔵文書の中で大部分を占めるのが、松梅院が有していた文書群である。松梅院旧蔵の古記録は、現在では北野天満宮・筑波大学附属図書館・天理大学附属天理図書館・早稲田大学図書館で所蔵されていることが確認できる。松梅院に関する文書・古記録は、維新後に還俗して正神主兼社務となった吉見氏が所持していたが、その一部は明治30年以前に北野神社に寄贈された。そして一部は吉見氏が北野神社から離れ、さらには種々の理由により史料を手放したことにより、市中に出回ったものと推測される。文書の多くは、もと安楽寺御供所に鎮座していた一之保社に伝来し、神仏分離により安楽寺が廃絶となり、明治6年7月に一之保社が北野天満宮境内へ遷座したことにともない、神宝類も天満宮に移管されることになって北野天満宮所蔵となったものが多い。著名な酒麹役に関する文書ももと一之保社で所持していた。その他、現在知ることのできる北野社旧蔵古記録・古文書の目録を作成し、あわせて、筑波大学所蔵の北野関係文書の翻刻を行った。
著者
伊藤 一成
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.47-61, 2018-06-06

本論文では,人型ピクトグラムを用いたプログラミング学習環境「Pictogramming(ピクトグラミング)」を提案する.PictogrammingはPictogramとProgrammingを合わせた造語である.ピクトグラムは表現の抽象度の高さから,それを見た人物が自分自身や本人に関わる人物事物を想起させる効果があるといわれている.人型ピクトグラムを人間の動作に模倣して動かす,今回実装したプログラミング学習環境は,構築主義の提唱で知られるPapertが重要視する同調的学習の概念と相性が良い.人型ピクトグラムを変形する“ピクトアニメーション”コマンドと移動の軌跡を図として表示する“ピクトグラフィックス”の2種類のコマンドを併用することで,コンパクトな命令セットで,かつスモールステップ学習可能な環境のため,短時間でピクトグラムのデザイン指針に準じた多様な作品を作成することができる.実際に100人程度の中学生を対象とした実践授業を行い,提案アプリケーションの有用性や教育現場での利活用の展望について観察,アンケート,理解度テストの3点から評価・分析した.観察の結果,“ピクトグラフィックス”を学習した授業で,人型ピクトグラムの動作を学習者自身が模倣する動作が見られた.またアンケート,理解度テストいずれも概して良好な結果を得,同調的学習を喚起させたと思われるアンケート回答もいくつか見られた.ただし,条件分岐を学習する授業については,他の授業よりアンケート,理解度テストともに有意に低い結果となっており,検討・改善の余地がある結果となった.

7 0 0 0 OA 憲法読本

著者
上杉慎吉 著
出版者
日本評論社
巻号頁・発行日
1928
著者
仏書刊行会 編
出版者
仏書刊行会
巻号頁・発行日
vol.第121巻 東大寺叢書 第1, 1922
著者
鎌田 晶子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.78-89, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
20
被引用文献数
4 3

「透明性の錯覚」(Gilovich, Savitsky, & Medvec, 1998)とは,自分の内的状態が他者に実際以上に明らかになっていると過大評価する傾向である。本研究では,行為者がひとつだけ味の異なる飲み物を観察者に言い当てられないように飲むというGilovich et al.(1998; Study 2)の手続きに基づいて3つの実験を行った。研究1a(n=45)では,Gilovichらの追試を行い,日本の大学生においても行為者の透明性の錯覚が同様に認められることを確認した。研究1b(n=46)では,同様の課題で1対1の対面条件を設定し実験を行ったが,透明性の錯覚は消滅せず,研究1aの結果が実験上のアーチファクトではないことを明らかにした。研究2(n=116)では,係留点が透明性の錯覚に与える影響について検討するため,行為者の主観的な衝撃度を操作した。その結果,衝撃の強さが行為者の透明性の錯覚量に影響を与える傾向が示された。これは,透明性の錯覚の発生メカニズムとして係留・調整効果を支持するものであった。行為者―観察者の対人相互作用における主観性や認知的バイアスについて考察した。

7 0 0 0 OA 共武政表

著者
陸軍参謀局 編
出版者
陸軍文庫
巻号頁・発行日
vol.巻5-9, 1875

7 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1926年01月28日, 1926-01-28
著者
山元 里美
出版者
水産大学校
雑誌
水産大学校研究報告 (ISSN:03709361)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.249-261, 2016-03

The article examines the political and social conditions as well as the historical background of how German carp were anthropomorphized as German immigrants in the United States. In doing so, it first reviews the literatures of critical media studies and propaganda studies. Second, it traces the historical evolution of German carp dispute between the 1880s and 1910s, and it points out that the fish once considered as valuable were devalued by the early 1910s. Third, it shows how German-Americans and German permanent residents were treated in the United States during World War One. Fourth, it analyzes newspaper coverage of War on German Carp, and it argues the media representations of German carp were used to justify the U.S. war entry.
著者
Takashi Kikukawa
出版者
The Biophysical Society of Japan
雑誌
Biophysics and Physicobiology (ISSN:21894779)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.317-326, 2021 (Released:2022-01-08)
参考文献数
48
被引用文献数
2

Microbial rhodopsin is a ubiquitous membrane protein in unicellular microorganisms. Similar to animal rhodopsin, this protein consists of seven transmembrane helices and the chromophore retinal. However, unlike animal rhodopsin, microbial rhodopsin acts as not only a photosignal receptor but also a light-activated ion transporter and light-switchable enzyme. In this article, the third Cl– pump microbial rhodopsin will be introduced. The physiological importance of Cl– pumps has not been clarified. Despite this, their mechanisms, especially that of the first Cl– pump halorhodopsin (HR), have been studied to characterize them as model proteins for membrane anion transporters. The third Cl– pump defines a phylogenetic cluster distinct from other microbial rhodopsins. However, this Cl– pump conserves characteristic residues for not only the Cl– pump HR but also the H+ pump bacteriorhodopsin (BR). Reflecting close similarity to BR, the third Cl– pump begins to pump H+ outwardly after single amino acid replacement. This mutation activates several residues that have no roles in the original Cl– pump function but act as important H+ relay residues in the H+ pump mutant. Thus, the third Cl– pump might be the model protein for functional differentiation because this rhodopsin seems to be the Cl– pump occurring immediately after functional differentiation from the BR-type H+ pump.