著者
小野 浩
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.191-212, 2013-08-25 (Released:2017-05-17)

本稿の課題は,公的な戦災復興計画の立案とその実践を軸として描かれる戦災復興=敗戦後の都市空間形成の歴史像を相対化することである。換言すれば,戦後統制に規定される私的な住空間の創出と分配という側面から,戦災復興の歴史像を提示することである。方法として,「戦争住宅難」を戦前平時の「住宅難」の枠組みで捉えるのではなく,前後の時代とは異なる1つの固有な構造を有する歴史的な存在として捉える。すなわち,商品としての住宅供給が諸統制により成立し得ない状況下において,人間の生存や労働力再生産に不可欠な住まいが,非商品化した住空間=「生き抜かれた空間」として創出,分割・分配される過程を,供給構造の破壊と所有構造の変化という視点から体系的に把握する。非商品化された住空間の創出については,都市計画の失敗の文脈で理解されてきた敗戦直後の「民間自力建設」について,統制下の資材,資金,宅地という基本要素からその成立条件を明らかにする。非商品化された住空間の分配については,縁故にもとづく全階層的な貸間提供の歴史的意義を考察する。
著者
加藤 雅久 若木 和雄 中村 亜弥子 志岐 祐一
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.381-392, 2007 (Released:2018-01-31)

国家総動員体制となった昭和13年から,戦後の本格的な住宅建設体制が整う24年までの約12年間は,軍や工場,輸出などに資源が振り向けられ,住宅をはじめとした一般需要は,代用品から新興建設材料に至る新興建材で補おうとしていた。本研究は,これら代用建材の供給とその品質確保の変遷を,建材行政の視点から検証し,戦後復興期を支えた新興建設材料の歴史的経緯を解明した。戦後の新建材につながる新興建材の品質確保と普及活動,およびそれらを担い行政と建材産業とを結びつける仕組みは,戦中期にその骨格が形成され,戦後は戦中期の体制を継承しつつ復興をすすめていったことがわかった。
著者
佐藤 禎一
出版者
政策研究大学院大学
巻号頁・発行日
2009

論文審査委員: 飯尾 潤(主査), 河野 俊行(九州大学), 白石 隆, 垣内 恵美子
著者
Shuhei Ota Kenshiro Oshima Tomokazu Yamazaki Tsuyoshi Takeshita Kateřina Bišová Vilém Zachleder Masahira Hattori Shigeyuki Kawano
出版者
Japan Mendel Society, International Society of Cytology
雑誌
CYTOLOGIA (ISSN:00114545)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.323-330, 2019-12-25 (Released:2019-12-20)
参考文献数
45
被引用文献数
5

The genus Chlorella is a well-known member of the green algal class Trebouxiophyceae, which is characterized by an immotile and asexual life cycle. Here, we performed an analysis of the whole genome and transcriptome of Parachlorella kessleri NIES-2152 with emphasis on the evolution of meiosis and the flagellar proteins. The Parachlorella transcriptomic data showed that the MID-related RWP-RK genes and meiosis-specific and flagellar proteins were expressed; at the transcriptional level, the DNA repair protein RAD50 was upregulated in the stationary phase, with four-fold more reads per kilobase of transcript per million mapped reads (RPKM) compared with the early stage of culture. In contrast, radial spoke protein genes were down-regulated in the stationary phase. These results suggest that genes for meiotic and flagellar proteins are culture stage-dependent and retain their functions. We presume that the algae lost some of the genes for meiosis and the flagella during asexual evolution, but other genes still possess biological functions other than those related to the flagellum and meiosis.
著者
野中 真由子
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.47-53, 2008-02-10 (Released:2010-11-25)
参考文献数
6

精神科看護師は,看護師のストレス要因に加え,精神疾患を抱える患者とのコミュニケーションの困難さ,患者の病状の把握や看護介入の困難さ,疾患の特徴から再発を繰り返しやすいという状態に起因するストレスがあると考えられる.また,精神疾患の多様化に伴い,ストレスは増強することが予想され,臨床で働く精神科看護師はその多様なストレスに柔軟に対処する力が必要となる.したがって,これまで以上に職場におけるメンタルヘルスが維持され,職業性ストレスを起こさない対策が求められると考える.本研究では,精神科病院に勤務する女性の精神科看護師76名を対象にストレス要因とその対処行動の実態についてのアンケート調査を行い,有効回答72名を対象にt—検定を用いて解析した.この結果,仕事のストレス要因は『心理的な仕事の質的負荷』『身体的負荷』『職場環境』であった.対処行動では,ストレス要因の大きい群と小さい群の比較を行ったところ,ストレス要因の大きい群に『仕事や生活の満足度』が少なく,『回避的認知・行動』が大きかった.しかし,これは精神科看護師に特有な対処行動とは考えにくかった.そこで,サポート体制の大きい群と少ない群での比較をした結果,サポート体制が多い群に『活気』があり,『不安』『抑うつ感』が少なかった.これらから,ストレス低減のための一つとして緩衝効果の高いサポート体制をより強化していくことが,ストレス要因が多い精神科看護師にとってもより健康的な対処行動を形成する上で有効であることが示唆された.
著者
原芳市著
出版者
晩聲社
巻号頁・発行日
1988
著者
徐 弘毅 兼松 祥央 茂木 龍太 鶴田 直也 三上 浩司 近藤 邦雄
出版者
Japan Society for Graphic Science
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.11, 2019 (Released:2019-12-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

日本のロボットアニメは長い歴史を持ち,多くの傑作が制作されている.また,戦闘シーンはロボットアニメにとって重要なシーンの1つである.本研究では,ロボットアニメにおける戦闘シーン制作のための構図設計支援システムを提案する.そのため,既存のロボットアニメ10作品から,2531の戦闘シーンを抽出し,ロボットの行動,カメラの動き,ショットサイズなどを分類した.また,これらの分類を用いてカメラワークや構図に関するデータのライブラリを開発した.このライブラリを用いることで,ユーザーは戦闘シーンを制作する際に,演出意図に合わせたカメラワークを検索可能である.開発したライブラリを用いた実験の結果,このライブラリは特に映像経験のないユーザーにとって有用であることが分かった.このことから,ディレクターなど映像制作ツールの取り扱いを専門としないユーザーでも容易に戦闘シーンの構図設計が可能である.
著者
吉田 博
出版者
札幌大学
雑誌
産研論集 (ISSN:09169121)
巻号頁・発行日
no.22, pp.91-111, 1999-09-30
著者
西村 貢 Mitsugu NISHIMURA
巻号頁・発行日
no.27, pp.27-43, 1998-03-31
著者
氏家 享子
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.95-110, 2018

LD,ADHD,ASDなどのいわゆる発達障害児が,自分の特性について理解し,合理的配慮等の必要な支援を求められるようになること,自己の特性に対する対処方法を知ることは,重要な課題である。自分の特性について理解する上での大切なプロセスの一つに診断名告知を受ける機会があるが,診断名告知は極めて難しい問題であり,その実態も明らかにされていない。 そこで本稿では,本人への診断名告知について,発達障害児を対象とした報告だけではなく,発達障害以外の疾病・障害の告知に関する先行研究も含めて概観し,発達障害児本人への診断名告知にも共通して必要だと考えられる視点や実践を整理し,必要な支援のあり方について考察した。その結果,発達障害児本人への診断名告知については,その理想的なあり方と実態については大きな隔たりがあり,診断名告知が医師からなされるのが望ましいとされていても,実際には母親が十分な準備もないまま行っている場合が少なくないことがうかがわれた。また,診断名告知がいつの時期になされるのがいいのかは一概に言えないが,本人の診断名告知を受ける準備や周囲の準備が必要なこととその内容の整理ができた。更に,告知において伝えれられるべき内容,アフターフォローについても様々な報告における要素から段階的に整理しまとめ,発達障害児本人が自身のことをうまく知りうまく対処できるようにするための必要な支援について考察した。
著者
小野 光徳 佐藤 孝雄 黒河 忠市 杉谷 成美 佐藤 尚也 入江 春雄
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.27-31, 1969-04-25 (Released:2011-08-11)

Photographic sensitive layer should produce sufficient density with the least layer thickness. In order to satisf y this demand, gelatin must retain as much silver halide as possible dispersed in the emulsion. The limit of silver halide, dispersed colloidally without sedimentation, in a given quantity of gelatin may vary with gelatins.The authors propose “colloidal retentivity” as a measure of this protective colloid power of gelatin against silver halide in the photographic emulsion. Colloidal retentivity is so defined as to show 100% when emulsion grains are well dispersed without sedimentation, while the more sedimentation, the les colloidal retentivity.Two methods of the measurment of colloidal retentivity are introduced.Colloidal retentivity as depending on the ripening temperature, rotation speed of a stirrer, silverhalidegelatin ratio and gelatin characteristics are studied.Colloidal retentivity brings different information about the ripening as compared with the turbidity measurment. Colloidal retentivity during the ripening passes maximum and minimum points while turbidity increases monotonously.The graingrowth mechanism is discussed on these results.