著者
野口 哲子
出版者
The Japanese Society of Plant Morphology
雑誌
PLANT MORPHOLOGY (ISSN:09189726)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.51-60, 2001 (Released:2010-06-28)
参考文献数
22

要旨:ゴルジ体から小胞体系(ER系)への逆行輸送が植物細胞でも存在する証拠を得る目的で、ER系とゴルジ体が近接している藻類細胞二種(単細胞緑藻Scenedesmus acutusとBotryococcus braunii) を用い、brefeldin A(BFA)がゴルジ体とER系の微細構造に及ぼす影響およびBFA処理によってゴルジ体標識酵素のチアミンピロフォスファターゼがER系に移行するか否かを細胞周期のいろいろな時期について調べた。その結果、BFAによって誘導されるゴルジ体からER系への逆行輸送は哺乳類の細胞だけに特有な現象ではなく、植物細胞にも共通の現象であることが示唆された。この逆行輸送は、二種の藻類ともに、間期の細胞では誘導されたが、分裂期の細胞では誘導されなかった。更に、この逆行輸送にはアクチンフィラメント系が関与し、微小管系が関与している哺乳類の細胞とは異なる機構であることが判った。
著者
田中 文也 和田 正昭 吉野 哲夫 木村 清志 岩槻 幸雄
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.23-27, 2011-08-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
16

A single specimen of a carangid fish, Alepes kleinii (125.1mm in standard length), was collected by a small set net at depths shallower than 8m off the northeastern Kadogawa Bay, Kadogawa-cho, Miyazaki Prefecture, Pacific coast of Kyushu Island, Japan. Alepes kleinii is distinguishable from its congeners by the following combination of characters: two rows of small conical teeth arranged irregularly in a narrow band on upper jaw but those on lower jaw in a single series, a diffuse dusky blotch present on upper margin of opercle, and straight part of lateral line starting behind below origin of second dorsal fin. The specimen represents the reliable record of the species from Japan.
著者
プリマ オキ ディッキ A. 吉田 武義 工藤 健 野中 翔太
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.173-183, 2012-12-31 (Released:2019-02-28)
参考文献数
37
被引用文献数
1 2

Many studies have investigated the relationships between gravity data and subsurface caldera structure beneath the area. Difficulties may arise, however, for these analyses because of different interpretations of the buried rims of the calderas. For buried calderas, ground deformations and erosional processes including landslides have significantly reduced the appearance of the original caldera rims. Generally, the interpretation of caldera rims is based on gravity data together with geological observations, because the preserved rim has a large negative gravity anomaly that reaches minima over the marginal low-density ridges. In this study, we propose an effective method to enhance the delineation of caldera rims from gravity data using watershed delineation in GIS. The proposed method incorporates a correlation analysis to appropriately assume a rock density to correct the gravity anomalies, and a band pass filter to eliminate noises in the data. Using gravity anomalies corrected with 2.60 g/cm3 of assumed rock density, and with bandpass filter that spanned the size-range of calderas, we have successfully extracted rims of the late Cenozoic calderas from NE Honshu, Japan.
著者
加藤 智久
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.188-189, 2017-02-15

今日,仕事をする上で英語は避けて通れないものになりつつある.英語運用能力の有無が年収にも影響を及ぼす現状で,日本に住みながら英語を話せるようになるのは簡単ではない.しかしオンライン英会話は,英語上達の現実的な手段になることから,ニーズが高まっている.本稿では,レアジョブ英会話のサービスを例に,オンライン英会話の仕組み,そのサービスを成立させる機能,オンライン英会話特有の強みを生み出す技術について説明する.また,レアジョブ英会話が目指す,将来のオンライン英会話の青写真を紹介する.自動車教習所に行けば運転免許が取れるように,オンライン会話を使えば英語が話せるようになることがレアジョブの目標である.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.812, pp.86-88, 2012-07-05

インターネット上で英会話学校を運営するレアジョブは5月13日、会員11万人分の氏名やメールアドレスなどが漏洩した可能性があると発表した。その後システム改修などセキュリティ対策のために、23日間にわたり事業停止に追い込まれた。人為的なミスが重なったことが原因だ。 「レアジョブのWebサイトを開くと警告が出る」。
著者
多賀 厳太郎
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.349-356, 2011-12-20 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
2

胎児期から乳児期の脳の発達に焦点を当て,脳のマクロな構造とネットワーク形成に関する解剖学的変化,脳が生成する自発活動と刺激誘発活動の変化,脳の機能的活動の変化について,近年の脳科学研究でわかってきた知見を俯瞰する。それを基に,乳児期の行動発達の動的な変化を理解するための,脳の発達に関する3つの基本原理を提案する。(1)胎児期の脳では,まず自発活動が生成され,自己組織的に神経ネットワークが形成された後で,外界からの刺激によって誘発される活動が生じ,さらに神経ネットワークが変化する。(2)脳の機能的活動は,特定の機能に関連しない一般的な活動を生じた後で,特定の機能発現に専門化した特殊な活動に分化する。(3)脳ではリアルタイムから長期的な時間にわたる変化まで,多重な時間スケールでの活動の変化が生じるが,異なる時間スケールの間の相互作用機構を通じて,構造と機能とが共に発達する。このように脳の発達は極めて動的な変化であり,段階的に見える行動の発達も,脳,身体,環境の相互作用から生じる創発的な過程であると考えられる。
著者
佐橋 健太郎 祖父江 元
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1471-1480, 2014-12-01

脊髄性筋萎縮症はSMN1遺伝子欠失により発症し,α運動ニューロン変性を伴い進行性に筋力低下をきたす,乳児死亡で最多の遺伝子疾患である。分子病態としてRNAスプライシング障害が主に提唱されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたSMN2スプライシング是正治療を含むSMN蛋白発現回復が有望な治療とされ,一方,近年末梢組織における病態が明らかになり,治療標的臓器が見直されてきている。
著者
秋山 弘之 平岡 照代 井上 覚
出版者
日本蘚苔類学会
雑誌
蘚苔類研究 (ISSN:13430254)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.105-108, 1998
参考文献数
9
被引用文献数
2

ジャゴケは苔類ゼニゴケ目ジャゴケ科に属し,北半球の温帯地域に広く分布している.日本においてもごく普通に見かける蘚苔類のひとつであり,また採取と栽培が容易なことから,生物学的研究の材料として広く用いられている.ジャゴケは世界に一種のみが存在すると見なされてきたが,その一方で生育基物の種類や周りの湿度などによって葉状体の大きさや厚さ,色などが著しく変異することも知られていた.アロザイム多型にもとづく近年の研究により,いわゆるジャゴケは形態が酷似した複数の種(sibling species;同胞種)から構成されていることが明らかとなった(Odrzykoski & Szweykowski 1991, Akiyama & Hiraoka 1994a).これらにはまだ正式な学名が与えられていないが,日本産の3種についてはそれぞれ,オオジャゴケ(ジャゴケJタイプ),ウラベニジャゴケ(ジャゴケFタイプ;以前のFSタイプ),そしてタカオジャゴケ(ジャゴケSタイプ:以前のTタイプ)という和名が与えられている(Akiyama & Hiraoka 1994b).本研究では,日本から見つかったこれら3同胞種について,雌雄の違いを含めてその染色体数と核型に違いが認められるかを調査した.その結果,染色体数については3同胞種の雌雄いずれにおいてもn=9で同数であること,また同じ核型(K=5V+2J+j+m)を有していることが明らかとなり,染色体の数と形態の面では分化していないことが判明した.これまでにジャゴケの染色体数の報告は数多くあるが,それらの多くがn=9である.その他にn=8あるいはn=10とするものもある(Table 2).これらの報告にみられる染色体数の違いは,もっぱらm染色体の数の違いによるものである.m染色体は,他の染色体に較べて著しく小さくその認識が困難なことから考えて,n=8あるいはn=10という報告はm染色体の数え間違えに起因するものではないかと推察される.
著者
三上 敦大 大村 いづみ 田中 洋亘 滝口 緑
出版者
市立室蘭総合病院
雑誌
市立室蘭総合病院医誌 = Journal of Muroran City General Hospital (ISSN:02892774)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.43-47, 2011-10-31

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、東日本は甚大な被害を受けた。地震・津波の恐怖、家族や住居、会社の喪失、長期化する避難所生活など様々な要因が重なり、被災者は皆精神的ストレスを抱えているものと思われる。そのような状況に対し、全国各地の「こころのケアチーム」が被災地で支援活動を展開した。このたび我々は道の要請にて「北海道こころのケアチーム第16班」として宮城県気仙沼市に派遣され支援活動を行った。相談の中で、支持的受容的な心理的サポートを必要とするケース、それに加え薬物療法が重要となるケースをそれぞれ経験した。その中でこころのケア活動による支援の必要性と、周囲の偏見により支援を求めにくい状況が実感された。
著者
大田 昌幸 杉本 周 福田 健介 廣津 登志夫 明石 修 菅原 俊治
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.2_129-2_139, 2011-04-26 (Released:2011-05-26)

本稿では,インターネット上の小規模な観測アドレス空間(Darknet)を用いて,その近隣のアドレス空間へ到着する異常パケットの振る舞いを推定できる可能性を示す.我々はこれまで,各組織の断片的未使用アドレス空間に到着する異常パケットの振る舞いを観測することで,近隣のアドレス空間に到着する異常パケットを推定・防御する分散協調監視アーキテクチャを提案してきた.異常パケットの振る舞いを推定するには,小規模な観測アドレス空間とその近隣へ到着する異常パケット間の時系列相関強度を調査する必要がある.そこで,アドレス空間をスキャンする異常パケットを対象に,Darknetの観測空間を小規模なサブ観測空間に分け,そのサブ観測空間の間の時系列解析から相関強度を求めた.さらに,サブ観測空間のサイズを変更させ,その相関強度のサイズ依存性を調査した.その結果,十分小さなサブ観測空間でも,近隣へ到着する異常パケットの振る舞いを推定できることが分かった.また,特定の観測位置をベースとした解析を行うことで非常に高い相関強度を得られた.これらの結果から,小規模な観測空間を用いる分散協調監視アーキテクチャでも異常パケットの振る舞いを推定できる可能性が示せた.