著者
山中 康行
出版者
京都女子大学図書館司書課程研究室
雑誌
京都女子大学図書館情報学研究紀要 (ISSN:21876991)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-71, 2016-02-29

この課題を取り上げた理由と目的 和本の装訂名称の用語には、粘葉装、綴葉装、列帖装、大和綴、結び綴等がある。しかし、同じ装訂1)の和本が人により、異なる装訂名称で呼ばれたり、異なる装訂の和本が同じ装訂名称で呼ばれるという、「同名異装、異名同装」の論争2)が、昭和初期から現在まで混乱が続いているので、これまでの混乱の状況と原因を解明し、混乱を解決するため、1900年から2006年までの間に、発行又は再版された単行本及び雑誌論文から、粘葉装、綴葉装、列帖装、大和綴、結び綴の説明の部分を抽出した。そして、和本の標準的な装訂方法を、外形の図版と装訂方法ともに示すことにより各人の説明に対応する装訂形態の図を時系列的にまとめ、一覧表に整理し、混乱の原因と問題点を集約し、解決策として各装訂に対して現在どのような装訂名称が相応しいかを提案した。和装資料の形態と装訂の名称について、これまでどのように呼ばれてきたかをたどり、同名異装、異名同装の混乱が生じた原因を考察することは書誌学上意義深いものがある。和装資料の名称はこれまで、①歴史文献にその根拠を求める方法と、②その形態から名称を解明する方法とがなされてきた。しかしそのいずれもが装訂名称の説明には不十分・不適切であり、不十分な説明が混乱を一層増す結果となった。本稿では、諸説を検証し、書き表し方、読み方についても言及し、製作の流れと使用材料による新たな観点を付加した装訂名称を提唱するものである。
著者
井内 美由起
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要. 文学研究篇 (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.43, pp.85-115, 2017-03

本稿では、夏目漱石『彼岸過迄』の第四篇「雨の降る日」とイプセン原作「人形の家」の関係について考察する。なぜなら、女性の自覚を扱った劇として評判を呼んだ「人形の家」との一致と差異を明らかにすることによって、「雨の降る日」の同時代性を明らかにすることができるからである。「人形の家」のノラが子供たちを人形のように可愛がったように、「雨の降る日」の千代子も宵子を人形のように可愛がる。「人形の家」において、「人形」とは女が父や夫から愛されようとして、すすんで彼らの気に入る女らしさを内面化することを表すメタファーであった。千代子が宵子を人形のように扱う行為もまた、千代子自身の疎外を表すメタファーとして解釈することができる。宵子の死とは人形化されたことによる死、つまり女が自ら性的規範を内面化することの悲劇なのである。さらに、以上のような文脈は第三篇「停留所」に接続されることによって、消費社会における女性の地位への批判として読むことが可能である。しかし、ノラが疎外の現実を自覚するのに対して、千代子は自らが疎外されていることに気付かない。このことは二つのテクストにおける人称の差異に表れている。「人形の家」は女主人公が愛のために自らを犠牲にすることを美徳とする価値観をこそ批判したのであるが、「雨の降る日」は犠牲を美しい行為として語っており、結局は女性の従属を肯定している、と論じた。This paper examines the relationship between the fourth chapter of Natsume Sōseki ' s (1867-1916) novel Higan sugi made (To the spring equinox and beyond, 1912) and Henrik Ibsen's (1828-1906) play A Doll's House (1879). Ibsen's play is famous for its portrayal of a woman who has become conscious of her own womanhood. A discussion of similarities and differences between this play and the fourth chapter of Sōseki's novel reveals the political import of the latter. Just as Nora, the protagonist of A Doll's House, dearly loved her children, so, too, does Sōseki's Chiyoko dearly love her uncle's daughter, Yoiko. In Ibsen's play, the doll is a metaphor for a girl or woman who, having become an object of affection for her father or husband, eventually internalizes the sort of femininity most pleasing to her male guardian. Chiyoko's treatment of Yoiko as a sort of doll may be understood as a metaphor for her own sense of disconnectedness. Yoiko's death was the result of the child having been transformed into a doll - the tragedy, that is, of having willingly internalized a self-destructive image of femininity. Moreover, Sōseki's fourth chapter, following as it does upon the third, may also be read as a criticism of a woman ' s place in consumerist economy. Whereas Nora eventually became aware of her marginalized existence, Chiyoko remains ignorant of her own condition. This fact is revealed through the differing ways in which the two authors use personal pronouns. It was believed that the woman who sacrificed her own dreams for the sake of love was a paragon of virtue. While Nora openly repudiates such an ideal, Chiyoko readily embraces this same ideal. I argue, therefore, that Sōseki's Chiyoko serves as a means of validating the subservient role of women.

1 0 0 0 OA 経済録 : 10巻

著者
太宰純 撰
出版者
巻号頁・発行日
vol.[7],
著者
裳華房 編
出版者
裳華房
巻号頁・発行日
vol.[正](先哲教訓), 1905
著者
三郷舎和風 著
出版者
巻号頁・発行日
vol.[3], 1774
著者
筒井 智樹
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.50, no.Special, pp.S101-S114, 2005-12-20 (Released:2017-03-20)

Recent achievements in seismic studies of volcanic structure are summarized in this article. Seismic studies of volcanic structure was enhanced and advanced extensively in 1990's. The advance of the study was supported by new compact and light weighted digital recorders and by popularization of 3-D travel time inversion algorithm. Seismological characters in volcanic structure were revealed and were represented as high and low velocity anomalies, concentrated seismicity and intra-crust seismic reflectors. Important problems for seismic studies of volcanic structure are presented as more penetration, more resolution and more quantification of seismic characters in active volcanoes, which should be solved in next decade.

1 0 0 0 OA 鎌田兵衛正清

出版者
巻号頁・発行日
1690

説教。元禄3年(1690)江戸刊。待賢門の夜戦に負けた源義朝は、鎌田兵衛正清と金王丸を伴い、正清の義父尾張の長田庄司をたよるが、平清盛の謀り状の所領の恩賞に眼の眩んだ長田は、婿を酒に酔わせて殺し、義朝は湯殿で深手を負って自害する。金王丸は単身長田の館に駆けつけ大暴れして長田の子供等を殺すが長田を逃す。金王丸は都に登り、義朝の奥方常盤御前に仔細を告げる。常盤御前は清盛の討手を逃れ、3人の若君を連れて都を落ち、小幡の里で老夫婦の情を受ける。清盛は常盤を誘き出すため母を牢にいれ、常盤は名乗り出るが、清盛は何故か常盤を景清に預け命を助ける。金王丸は清盛の前に罷りでて命と引き換えに長田を出させ、その場で主の敵を討つ。清盛に仕えるよう命ぜられるが断り、武士の鑑と称えられる。内題「鎌田兵衛正清」の下に、「伏見常盤、小幡物語」とあり、鎌田夫婦の悲哀、常盤御前親子の苦難、金王丸の活躍が描かれる。天満八太夫正本に依った絵入りの読みもの。(岡雅彦)
著者
志田 淳二郎
出版者
中央大学政策文化総合研究所
雑誌
中央大学政策文化総合研究所年報 (ISSN:13442902)
巻号頁・発行日
no.19, pp.89-107, 2015

The aim of this paper is to analyze President George H. W. Bush's efforts to cope with the dispute over SNF modernization within the Western alliance in 1990.American decisions on the modernized tactical nuclear forces in Europe (i.e., FOTL and TASM), were expected to have brought about the intense debates within the Western alliance. In spite of the complicated circumstance driven by the Cold War's demise, Bush's administration fi nally succeeded in weathering the strained situation within the Western alliance. In this paper, I will investigate how Bush's administration solved the SNF modernization issue within the alliance and took the initiative in leading it in 1990, based upon some primary sources at George Bush Presidential Library and Museum. In this regard, three decisions (cancellations of FOTL and TASM, and announcement of Bush Initiative), will be examined. This paper will clarify that the former two decisions were affected by the "learning" factor of Bush's administration, and the latter one by the "structural" factor of international relations. In conclusion, this study will draw the decision making style of the Bush's administration as the "prudent realist".
著者
山口 敬太 田中 倫希 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.39-54, 2015 (Released:2015-09-20)
参考文献数
67
被引用文献数
3

本研究は,戦前の大津における都市計画街路と湖岸埋立及び遊覧施設計画の内容と策定意図,実現過程を明らかにし,これらを通じて近代大津の都市建設の理念,実現の手段と主体のはたらきを明らかにするものである.大津では明治末年以降,市会を中心に湖岸埋立・道路整備構想が数度立案され,昭和初期には琵琶湖の風致整備を基軸とした近代的「遊覧都市」の建設という理念が確立し,このもとに都市計画街路網・埋立計画や遊覧施設計画が策定された.これらの計画は名勝地の連絡による遊覧交通系統の充実と,遊覧施設や湖岸の風致の整備を意図したものであった.湖岸埋立と逍遙道路は公有地の売却益による事業収入をもとに戦前から戦後にかけて実現した.これは市,県の遊覧都市建設という理念の共有に基づいた長期にわたる協働的推進によるものであった.
著者
松尾 龍二 美藤 純弘 松島 あゆみ
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.141, no.6, pp.306-309, 2013 (Released:2013-06-10)
参考文献数
11

上唾液核は顎下腺・舌下腺を支配する副交感神経系の中枢である.ラットの脳スライス標本を用いた電気生理学的実験により,上唾液核ニューロンは興奮性と抑制性のシナプス入力を受けていることが示されている.その主な受容体は興奮性がグルタミン酸受容体とムスカリン性アセチルコリン受容体,抑制性がGABA受容体とグリシン受容体である.免疫組織化学的にもこれらの受容体が検出された.一方,蛍光色素の軸索輸送を利用した組織学的検索により,上唾液核に入力する主な神経群は脳幹部の網様体,結合腕傍核,孤束核,および上位脳の視床下部外側野,扁桃体中心核,室傍核などである.これらの部位は上唾液核に直接入力すると考えられる.これらの神経核群の中で,抑制性GABAニューロンは主に脳幹部の網様体に存在し,前脳の扁桃体中心核や視床下部外側野にも検出された.これらの所見は,唾液分泌が食欲(摂食中枢としての視床下部外側野)や食の嗜好性(扁桃体中心核)を反映することを示唆している.さらに上唾液核へのコリン作動性入力の起始核として,脚橋被蓋核や背側被蓋核が上記の軸索輸送の実験で認められている.これらの部位は網様体賦活系と関連しており,覚醒やレム睡眠の維持などに重要である.精神ストレスは,食欲,情動,睡眠に影響することがよく知られており,これらの上位中枢の変化は唾液分泌にも変調を来すと考えられる.
著者
廣田 有里 土屋 薫 林 香織
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.26, 2016-03-15

高度成長期に流山に住居し始めた高齢化が進む旧住民と,「母になるなら流山」というキャッチフレーズで子育てのしやすさを打ち出し,近年,流入してきた子育て世代(新住民)を,双方の持つ社会的資源の交換を促すことによって,魅力的な,まちづくりの担い手となっていくと考え,「ゴーヤ」をツールとして交流させた。本研究で明らかになった点は,①世代間交流のツールとしての「ゴーヤ」の有用性と限界②プログラムに関わる資源に対する重要性の確認不足③プログラム実施結果,関係者が受け取るインセンティブの不平等,である。本研究によって,「ゴーヤ」というツールを用いての世代間交流の場を設けることは可能性の一端は確認されたが,課題が明確になったため,今後の改善がのぞまれる。
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.961, pp.68-73, 2007-09-24

ユーザーの心をとらえる「ヒット商品」の傾向は,ここ数年で劇的に変わった。日経流通新聞が毎年公表する「ヒット商品番付」に登場する民生エレクトロニクス機器の変遷をたどると,ユーザーの好みの変化がよく分かる(図1)。