- 著者
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寺島 恒世
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.7, pp.1-9, 1991-07-10 (Released:2017-08-01)
『中務内侍日記』が描く風景の特徴は、京極派和歌のそれに通じる所が大きく、春宮(天皇)の好尚を前提とした周到な作意が認められる。基調に哀愁を漂わせるのも叙景のための一手段であった。風景描写は、京極派和歌の出発に立ち会った作者がその歌風の生成過程を書き留めようとする意図に発していた。そこに、公事記録を主とする後半の記述とは形を変えながら、それに通底する対天皇(春宮)の姿勢を認めることが出来るのである。