著者
永崎 研宣 大向 一輝 下田 正弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.324-334, 2022-02-15

仏教学のための知識基盤の構築にあたり,テキストの共有は重要な課題である.これを効率的・効果的に実現することを目指すデジタル学術編集システムにおいて,近年普及しつつある国際的な画像共有の枠組みであるIIIF(International Image Interoperability Framework)は実装と運用の側面を改善する役割を果たしうる.筆者らは,仏教学のためのデジタル学術編集システムのモデルを設計し,そのモデルにおいて実装・運用面を改善する手段としてIIIFを位置づけ,仏典全文テキストデータベースSAT2018においてそれに基づく実装を行った.これを通じて,デジタル学術編集システムの運用におけるスケーラビリティと持続可能性に関する課題を明らかにした.
著者
楊 吟雨 田口 哲也 Yinyu Yang Tetsuya Taguchi
出版者
同志社大学文化情報学会
雑誌
文化情報学 = Journal of culture and information science (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1-2, pp.14-23, 2021-03-31

前回の研究ノートは歴史的契機を軸にして日本と台湾のアポリティカルな若者文化について論考を進めた。本稿では、「アポリティカルな若者文化」という前回提出した概念を再度用いて現在の東アジアで展開されている大衆文化の1形態である48系のアイドル文化を記述することによって東アジアで現在展開されている大衆文化の特質を明らかにしたい。今回の研究対象になるのは日本発(日源)のアイドル文化である。
著者
荻野 雅宏 中山 晴雄 重森 裕 溝渕 佳史 荒木 尚 McCrory Paul 永廣 信治
出版者
一般社団法人 日本脳神経外傷学会
雑誌
神経外傷 (ISSN:24343900)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-34, 2019-08-20 (Released:2019-08-20)
参考文献数
58

【解説】「スポーツにおける脳振盪に関する国際会議」は2001年にウィーンで第1回会議が開かれたのち,近年は夏季オリンピックの年の秋に開催されており,第2回 (プラハ, 2004年),第3回 (チューリッヒ, 2008年),第4回 (チューリッヒ, 2012年) を経て,2016年にベルリンにて 「第5回国際スポーツ脳振盪会議」 が開催された。この国際会議の目的は選手の安全を確保することと,選手のコンディションを改善することであり,プロフェッショナル,アマチュアを問わず,スポーツで脳振盪を負った選手の状態を正しく評価し,安全にスポーツに復帰させることを目指すものである。さまざまな分野のエキスパートが討論を重ね,最終的に以下の共同声明 (consensus statement) を公開するとともに,声明の根拠となった系統的なレビュー12編24,25,i–x)を発表した。脳振盪を負った選手を評価する標準的ツールSport Concussion Assessment Tool (SCAT),5歳から12歳までの小児に用いるchild SCAT,非医療従事者が脳振盪を疑う際に用いるConcussion Recognition Tool (CRT) はそれぞれ,SCAT5,child SCAT5,CRT5へと改訂された。この共同声明 (McCrory P, Meeuwisse W, Dvoraket J, et al. Consensus statement on concussion in sport —the 5th inter­national conference on concussion in sport held in Berlin, October 2016. Br J Sports Med 51: 838–847, 2017) や上記のツールはすべてWeb上で自由に閲覧でき,ダウンロードも可能である。関係者は原文にあたり,その内容に精通していることが求められるが,一部から公式な日本語訳を強く望む声があり,本学会のスポーツ脳神経外傷検討委員会の有志が,前版xi)の訳者らとともにこれにあたった。次回の改訂は2020年の秋以降に予定されているので,本稿が来る東京オリンピックならびにパラリンピックにおけるこの領域の基本的な指針となる。しかし本文中にもある通り,この共同声明は臨床的なガイドラインを目指すものでも,法的に正しい対処を示すものでもない。現時点における総論的な指針と考えるべきであって,個々のケースへの対応には,現場の裁量が認められていることを強調したい。
著者
倉橋 敦 小黒 芳史
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.112, no.10, pp.668-674, 2017 (Released:2018-03-12)
著者
彬子女王
出版者
京都産業大学日本文化研究所
雑誌
京都産業大学日本文化研究所紀要 = THE BULLETIN OF THE INSTITUTE OF JAPANESE CULTURE KYOTO SANGYO UNIVERSITY (ISSN:13417207)
巻号頁・発行日
no.24, pp.9-35, 2019-03-25

慶応3(1867)年、大政奉還がなされ、250年以上に及ぶ徳川の時代が終わり、明治天皇を中心とした新しい国作りが行われることになる。鎖国も解かれ、多くの外国人が日本を訪れるようになる。今まで日本の国内のことだけに気を配ればよかった日本の目は、外を向かざるを得なくなっていく。日本が西欧の列強各国と並びうる力を持った国であるということを国内外に示すために、様々なシステムを整えていくことが求められたのである。 日本人の衣食住も、明治時代に大きな変革を遂げていく。中でも、洋装化は急進的に勧められた改革の一つであった。明治天皇と昭憲皇太后が洋装で様々な行事にお出ましになることを決断され、法令でも正式に定められたことにより、随従の人々の服装もそれによって変化し、徐々に日本国内で洋装が一般化していった。 本稿では、明治から平成に至るまでの女性皇族の衣装の変遷を明らかにする中で、明治時代の洋装化が国内外にどのように受け止められたかを考察する。さらには、洋装化が日本の皇室に何をもたらしたかを考えてみたい。
著者
五味 馨
出版者
日本LCA学会
雑誌
日本LCA学会誌 (ISSN:18802761)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.221-228, 2021 (Released:2021-10-25)
参考文献数
13

本解説記事では地域循環共生圏の理念を具体的・分析的な研究に応用するため、地域循環共生圏の理念を整理・解説し、既存の圏域概念との比較から地域循環共生圏の特徴を示す。また応用のための枠組みとして、地域循環共生圏に必要な 9 要件と、地域循環共生圏構築にかかわる様々な活動に対し共通に適用可能な一般的な要素への分解とその構造化の手法を紹介する。応用例としてこれまでに行われている地域循環共生圏事業の簡単な分析例を示す。最後にライフサイクル分析において地域循環共生圏の理念を活用する際に予想される課題として、多目標の考慮や空間範囲の重視を挙げる。
著者
石元 広志
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

性行動においてメスは、たとえ同種のオスであっても容易に交尾を受入れない。このメスの交尾意思決定を制御する脳神経機構は未解明である。ショウジョウバエのメスは、多くの動物と同様に、たとえ同種であっても求愛をすぐには受入れない。この交尾前の拒否行動は、交尾の決定権がメスにあることを示し、交尾相手を選択する行動である。このように、メスが継続した求愛を受けて、交尾の拒否から受容へと行動を転換する一連のプロセスを制御する脳神経機構を明らかにする目的で、本研究は、このメスの交尾前拒否行動を制御する責任神経細胞の特定を進めた。その結果、昆虫脳に共通して存在する中心複合体楕円体内の2種類の神経細胞群(各々アセチルコリン作動性神経細胞群とGABA作動性神経細胞群)で構成されるType-I Incoherent feedforward loopを形成する神経回路が、メスの性行動を制御することを突き止めた。また、脳に存在する2対のドーパミン神経細胞が、この回路を駆動すること、特定のドーパミン受容体が回路を構成する神経細胞の活動を制御することを明らかにしている。昨年度は、この回路の動作に一酸化窒素(NO)を介する逆行性シナプス伝達制御が関与すること見出し、当該神経回路の動作調節機構の一端を明らかにした。本年度は、分子解剖学的手法を用いて、当該神経回路と上流の神経群の接続を詳細解析し、フェロモン等のオスの情報を集約する脳の領域との解剖学な接続関係を明らかにした。さらに楕円体は、運動機能にも重要な役割を担う。そこで、これら神経機能を阻害することによる歩行速度の低下と交尾潜時の相関を検討した。以上の成果を集約して、本年度論文として出版することができた。また、各種メディアを通じて研究成果を社会一般に発信した。
著者
Ryutaro Goto Yumi Henmi Yuto Shiozaki Gyo Itani
出版者
The Plankton Society of Japan, The Japanese Association of Benthology
雑誌
Plankton and Benthos Research (ISSN:18808247)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.155-164, 2021-08-06 (Released:2021-07-31)
参考文献数
42

Ikeda taenioides (Ikeda, 1904) (Annelida: Thalassematidae: Bonelliinae) is the world’s longest spoon worm species, which possesses an extremely long tape-like proboscis with a striped color pattern and a large brownish red trunk. This species is endemic to the Japanese Islands and inhabits a deep vertical burrow in intertidal and subtidal sand flats. Their proboscis, which extends from its small burrow opening, has been frequently observed around Japanese coasts. However, sampling of the main body (i.e., trunk) has been extremely rare because it always stays within a deep part of the burrow. Here, we report the success of the sampling of two specimens of I. taenioides with trunks in two different localities of the Seto Inland Sea (i.e., Ohmishima and Hachi), Japan, in 2019 and 2020 using a yabby pump. This is the first sampling of the trunk of I. taenioides in 88 years after its last collection in Onomichi Bay in 1931. We described the trunk color and morphological characteristics of the two specimens, including the internal anatomy. The trunks of the two specimens showed different colors, that is, pale brown (Ohmishima) and deep brownish red (Hachi). However, they were not distinguished to the species level by the comparison of partial COI sequences, suggesting that I. taenioides has an intraspecific variation in trunk color. Despite the difference in the sampling seasons (Ohmishima: June, Hachi: February), both specimens included numerous ripe eggs. According to previous studies, those collected in November and December also included numerous ripe eggs. Taken together, I. taenioides may be reproductive throughout the year or have multiple reproductive seasons per year.
著者
楊 海英 Haiying Yang
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.39-130, 2003-07-30

「スニト部のギルーン・バートル」(Sönid-ün Gilügün Bayatur)という人物は,13 世紀のモンゴル・ハーン国時代に大いに活躍した,と年代記はそろって記述する。スニトは13 世紀の『モンゴル秘史』にも見られる有名な部族の名称である。ギルーンは名前で,バートルは「勇士」を意味する爵号である。ギルーン・バートルはまずチンギス・ハーンをまつる八白宮祭祀のなかでその存在が認められる。祭祀者たち(Darqad)にチンギス・ハーンからの恩賜を配る儀礼の場で,ギルーン・バートルの直系子孫を称する者がその祖先の功績に基づいてチンギス・ハーンからの恩賜を拝受する。八白宮祭祀のなかで,ギルーン・バートルはチンギス・ハーンに追随した「4 人のバートル(勇士)」のひとりとして位置づけられている。このような位置づけは17 世紀以降に書かれたモンゴルの年代記の記述とも一致する。 つづいて19 世紀半ば頃の清朝道光年間にギルーン・バートルはもう一度登場する。今度は八白宮の祭祀者ダルハトのひとり,ユムドルジ(Yümdorji)という人物が,自らは13 世紀のギルーン・バートルの直系子孫で,代々八白宮の祭祀者集団内のバートル(勇士)という職掌をつとめてきたと主張する。ユムドルジは税金納入をめぐってオルドスの貴族たちと対立するが,シリンゴル盟のスニト左旗の王公たちの支持をとりつけたため,ことを有利に運ぶ。スニト左旗の王公たちとユムドルジは,13 世紀のスニト部のギルーン・バートルはユムドルジの直接の祖先である,という共通した歴史的認識を有していたことから,ユムドルジを支持したのである。このように,ギルーン・バートルという13 世紀に存在したとされる人物はチンギス・ハーンの八白宮祭祀のなかでその功績がずっと認められてきただけでなく,その子孫を称する人物も広く認知されていた。モンゴルにとって,歴史あるいは歴史上の人物は決して過去のものではなく,現在を活きる存在であることが分かる。
著者
Jeffrey Kotyk
出版者
対法雑誌刊行会
雑誌
対法雑誌 (ISSN:24355674)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.101-108, 2021 (Released:2021-08-01)

Chinese Buddhists adopted Indian cosmology based on Mount Sumeru and the Four Continents, which differed from native Chinese models. The four continents (Jambūdvīpa, Pūrvavideha, Avaragodānīya, and Uttarakuru) are positioned on a flat disc-shaped world. This was a type of flat earth cosmology that was documented in Abhidharma literature. The Buddhist canon does not mention a spherical earth, but Chinese monks were actually aware of an alternative cosmological model based on a spherical earth framework through the Jiuzhi li 九執曆 , a manual of Indian astronomy which was translated by Gautama Siddha in 718. This text introduced into Chinese the first instance of the concept of latitude (Skt. sva-deśa-akṣa). This sort of scientific theory based on a spherical earth model was already known by the mid-Tang. The Xiuyao jing 宿曜經 , compiled by Amoghavajra (705–774) in 759 with a subsequent revision in 764, not only adopts the cosmology outlined in Abhidharma texts, but also cites the Jiuzhi li. The issue at hand is why Amoghavajra and also the astronomer Yixing (673–727) never adopted cosmology based on a spherical earth. The present study will address these points.

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著者
岩川友太郎編
出版者
集英堂
巻号頁・発行日
1884