著者
林 剛 舘 知也 髙岡 みらい 野口 義紘 寺町 ひとみ
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.140, no.9, pp.1151-1164, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2

Pharmacists working in collaboration with doctors are mainly involved in proposals and inquiries of prescription. At such times, belief conflicts are expected to deteriorate teamwork and induce stress. However, there is no strong evidence for this. To clarify factors resulting in belief conflicts, we conducted a survey among 594 pharmacists working at medical institutions in Gifu City and belonging to Gifu Pharmaceutical Association or Gifu Prefectural Society of Hospital Pharmacists between January 2019 and April 2019. The items of the survey were gender, place of employment, pharmacist working experience (years), awareness of “professional competencies for pharmacists” stated in Model Core Curriculum for Pharmacy Education —2015 version—, whether each item of “professional competencies for pharmacists” is applicable to himself/herself or not, whether teamwork deteriorates and stress occurs due to proposals and inquiries of prescription or not, and Assessment of Belief Conflict in Relationship-14 (ABCR-14). The recovery rate of the questionnaire was 50.3% and the valid response rate was 77.6%. Multiple logistic regression and Bayesian network analyses revealed that “I can empathize with a patient's feelings and emotions, but I experience difficulty with unfair criticism” commonly resulted in teamwork deterioration due to proposals of prescription. “Pharmacist working experience years (more than 10 years)” and “The other staff make unreasonable demands of me in the work” commonly resulted in stress. Thus, belief conflicts in therapeutic relationships result in teamwork deterioration and stress in prescription proposals.
著者
大場 博幸
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.67-84, 2023 (Released:2023-06-30)
参考文献数
30

2019 年4 月~5 月に発行された一般書籍600タイトルのデータセットを用いて,公共図書館の所蔵と貸出による新刊書籍の売上への影響について検証した。各タイトルについて,発行直後から11ヶ月間,全国を単位として,月毎の売上部数,月毎の所蔵と貸出,月毎の需要を示す指標,月毎の古書供給数と古書価格,同期間の委託状況,同期間の電子書籍の発行状況を調べた。これらをパネルデータとし,売上部数を目的変数,そのほかを説明変数として固定効果モデルによる回帰分析を施した。分析の結果,平均値を基準としたとき,前月の所蔵1 冊の増加につき月平均で0.06 冊の新刊売上部数の減少,前月の貸出1 冊の増加につき月平均で0.08 冊の減少という推計値が得られた。このほか需要の減少や古書供給の増加もまた新刊書籍の売上冊数にマイナスの影響を与えていた。需要の高いタイトルに対する図書館による特別な影響は観察されなかった。
著者
小林 正佳 今西 義宜 石川 雅子 西田 幸平 足立 光朗 大石 真綾 中村 哲 坂井 田寛 間島 雄一
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.986-995, 2005-10-20 (Released:2010-12-22)
参考文献数
35
被引用文献数
9 9

嗅覚障害の治療としてステロイド薬の点鼻療法が一般的に行われているが, 治療が長期にわたる症例も多くその副作用が懸念される. ステロイド薬点鼻療法長期連用に関してその安全性を有用性と比較して検討した報告はない. そこで今回は当科嗅覚味覚外来で同療法を施行した患者を対象にこの比較検討を施行した.0.1%リン酸ベタメタゾンナトリウム液 (リンデロン液®) の点鼻療法を施行した62例中42例 (68%) に点鼻開始後1~2カ月で血清ACTHまたはコルチゾール値の低下が出現したが, 異常な理学的所見や自覚的症状は認められなかった. 点鼻療法を中止した8例は全例1カ月後にそれらの値が正常範囲内に回復した. 一方, 同療法を継続した34例中4例で開始後2~5カ月で自覚的な顔面腫脹感, 顔面の濃毛化というステロイド薬のminor side effectが出現したが, 中止後1カ月ですべての症状が消失した. 同療法のみを3カ月以上継続した23例の治療効果は, 自覚的嗅覚障害度, 基準嗅力検査上ともに統計学的に有意な改善がみられ, 日本鼻科学会嗅覚検査検討委員会制定の嗅覚改善評価法でも78%例で何らかの改善判定が得られた.ステロイド薬点鼻療法の長期連用は軽度で可逆的な副作用を生じ得る. 一方, 嗅覚障害の治療効果は高い. よって同療法は有用な嗅覚障害の治療法であり, 臨床的必要性に応じて十分な注意の下に長期連用することは可能と考えられる.
著者
加治木 紳哉
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.133-154, 2008-06-30 (Released:2021-08-01)

National projects often would not stop, even when a failure is predicted. For example, the Ministry of Transport in Japan developed a new type of a high-speed ship "Techno-Super-Liner (TSL)" and the TSL development project was considered to be "successful" technically in trial voyage. Even though its high production and operation costs were pointed out from the start, the Ministry of Transport decided to use TSL commercially, and resulted in utter failure. The author has investigated the case of TSL in detail in order to show the mechanism of this failure This paper has analyzed the background of the national project on TSL and the technical development of TSL in a technological research association. It also has shown the process towards commercialization and social and political background. The author has shown the three factors of failure. Firstly there was no mechanism to consider commercial user's real need in R&D. Secondly there was no mechanism to stop or redirect the R&D, when it was found a mismatch between those who develop technology and those who use the technology. Thirdly R&D process was vulnerable to a political intervention if there was no definite goal of R&D before the project was started.
著者
佐伯 奈津子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.159-182, 2017-10-31

2005年8月15日,フィンランド・ヘルシンキにおいて,自由アチェ運動(GAM)とインドネシア政府とのあいだで和平合意覚書が結ばれた。和平合意後,アチェでは,物理的暴力が激減するいっぽうで,紛争中にはみられなかった新たなタイプの暴力が増加している。本論文は,紛争後のアチェが直面する問題を明らかにすることで,永続的な平和を実現するための課題を検討する。本稿で分析した和平再統合プログラムにおける紛争被害者支援では,不明確な支援対象,元GAMメンバーなどによる強要や汚職,持続可能でない支援効果,中央の統制と不確実な資金調達などの問題がみられた。
著者
松尾 豊
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.299-307, 2021-06-01 (Released:2021-06-15)
参考文献数
32
被引用文献数
1

This article tries to position deep learning in the intersection of artificial intelligence and cognitive science, as a long quest toward human intelligence. First, the recent development of huge language models obtained by transformer-based methods such as BERT and GPT-3 is introduced. Then, I explain what these models can do and can not do, and why. Two essential problems, which is embodiment and symbol grounding, are shown. In order to solve these problems, deep reinforcement learning with world models are currently studied. Disentanglement is shown to be an important concept to find factors to control. Lastly, I explain my perspective toward the future advancement, and conclude the paper.
著者
杉田 昭栄
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.143-149, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1

鳥類は,視覚が発達した動物である.彼らは,すみやかに遠くに焦点を合わせることも,近くのものに焦点を合わせることも自由に行なえる.また,色の弁別能力も高い.このように視覚に優れる仕掛けは眼球のつくりにある.その優れた視力は,水晶体および角膜の形を変え,高度にレンズ機能を調節することにより行なう.このために,哺乳類とは異なるレンズ系を調節する毛様体の特殊な発達や哺乳類には無い網膜櫛もみられる.また,網膜の視細胞には光波長を精度高く選別する油球を備えているばかりでなく,各波長に反応する視物質の種類がヒトのそれより多い.したがって,ヒトが見ることのできない紫外線域の光波長を感受することもできる.さらには,この視細胞から情報を受けて脳に送る神経節細胞もヒトの数倍の数を有する鳥類が多い.このような仕組が鳥類の高次の視覚を形成している.

41 0 0 0 OA 東京府統計書

著者
東京府 編
出版者
東京府
巻号頁・発行日
vol.大正11年, 1925

41 0 0 0 OA 東京府統計書

著者
東京府 編
出版者
東京府
巻号頁・発行日
vol.大正13年, 1925
著者
林 隆之 藤光 智香 秦 佑輔 中渡瀬 秀一 安藤 二香
出版者
政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策研究センター (SciREX センター)
雑誌
SciREX ワーキングペーパー = SciREX Working Paper
巻号頁・発行日
no.SciREX-WP-2021-#02, 2021-06

研究成果の測定は、資金配分や組織の戦略策定など様々な目的のもとで行われる。研究成果の測定において留意しなければならない点は、全ての研究分野に適応可能な一律の指標群は存在しないにもかかわらず、限られた数の指標が使われやすく、それによって、組織や研究者の行為に望まれない影響が生じることである。本ワーキングペーパーは、大学等の組織を単位とした研究測定における多様な研究成果指標に関する課題について、主に人文・社会科学に焦点を置きながら検討する。 最近の日本における大学等への「業績に基づく資金配分」の文脈の中では、比較可能な少数の標準的な指標を設定し測定することが求められる。しかし、学術界からは、多様な研究活動を奨励するために、できるだけ多種多様な研究成果を認識する重要さが指摘され、それらは比較可能な形で集計することが難しい。そのために議論のすれ違いが生じやすい。このような「多様性」と比較可能な「標準性」とを両立させることが現実の制度設計において課題となる。この関係に対して、指標中心の評価の仕組みと、ピアレビューの中で指標を活用する評価の仕組みとでは対応の仕方が異なる。海外の状況を分析した結果、少数の指標中心の仕組みとしては、ノルウェーモデルと呼ばれるような、英語ジャーナル論文以外も含めて広く定義した「学術出版物」を計測する方法がとられている。そこでは、国内データベースの整備、学術コミュニティによる「学術出版物」の定義と学術出版チャネルリストの作成、測定による影響のモニタリングの仕組みが必要となっている。他方、ピアレビュー中心の仕組みでは、研究の定義を広く設定するとともに、分野ごとに多様な成果の例示を評価機関等が作成し、定義や記載内容を共通化していくことが必要となっている。 日本でこのような取組を実施しうる可能性について、歴史学と経営学を対象に、大学評価への提出業績、科学研究費補助事業の成果について分析を行い、英国のREF2014での成果と比較した。結果、日本では研究成果の多様性が英国より高く、ジャーナルや出版社を「学術出版物」として区分するよりは、幅広いオーディエンスを対象とする成果発表を行っている傾向があり、海外のように定義した「学術成果物」の測定をそのまま用いることは現状では難しいことが示唆された。また、補足的に、国際的にも経験が十分に蓄積されていない、研究成果の学術面を超える社会的インパクト測定においても同様に、その多様性と標準化について、一般的論点と人文・社会科学に特有の論点があることを示した。 少数の指標を中心とした評価とピアレビューを中心とした評価の双方の仕組みにおいて、多様性と標準化を追求するためには複数の留意点があり、今後は、測定のみならず人文・社会科学研究の価値についての根本的議論も含めて、大学やアカデミーなどの関係者が協議することが期待される。さらに、今後、社会変革を促進するための人文・社会科学を含めた「総合知」が求められるなかで、その評価のあり方については、こうした論点も踏まえた検討が必要となる。
著者
佐藤 賢一
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-35, 2023-02-01

This paper introduces the system of arithmetic education in Daigaku-ryo (大学寮), an educational institution established to train bureaucrats in 8th century Japan. In particular, the author argues that Japanese Imperial Court did not completely adopt the educational policy given by the Tang Dynasty to various arithmetic textbooks. Second, the paper points out that Akihira Fujiwara’s (藤原明衡, 990? – 1066) Unshu Ourai (雲州往来) used arithmetic terms derived from Sunzi Suanjing (孫子算経).
著者
原田 泰
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.13-17, 2000-07-31 (Released:2009-09-03)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

夫が外で働き、妻は家を守るのが日本の典型的な家族であるというイメージがあるが、専業主婦の誕生は新しい。伝統的な農家の嫁は働き手であって、専業主婦ではないからだ。専業主婦が誕生するためには、その夫がまず誕生しなければならない。そのような夫は、1920年代に生まれた。1920年代の経済発展が、多数の高賃金のホワイトカラー、男性熟練労働者を生み出した。戦後の高度成長のなかで、この専業主婦の夫はさらに一般化した。ところが今日、日本の高度成長は終わり、賃金は停滞している。男性だけの稼ぎで生活水準の向上を期待できなくなった。女性が働くことが当然に求められるようになっていく。男たちは専業主婦の夫から働く妻の夫に変わり、専業主婦を前提とした社会のあり方も変わっていくしかない。日本の「伝統的」家族も、その淵源は新しい。家族は社会の変化に応じて生まれたものである。それが生まれる過程で、過去の伝統や文化がさまざまな影響を与えたことは事実だろうが、決定的な力は経済環境にある。
著者
北 潔
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.149, no.5, pp.214-219, 2017 (Released:2017-05-09)
参考文献数
18

2013年12月に西アフリカではじまったエボラ出血熱では1万1,000人以上が死亡し,現在においても特効薬もワクチンもない.また三大感染症として知られているAIDS,結核,マラリアによる死者は世界中で年間300万人を超えている.さらに効果を示していた薬剤に対して耐性を示す病原体の出現はウイルス,細菌から寄生虫にまで及んでいる.そして,人々に深刻な人的,社会的,そして経済的損失を引き起こしている.例えば代表的な熱帯病であるマラリアは熱帯・亜熱帯のアジア地域や,サハラ以南のアフリカの広い地域で流行しており,最近のWHOの報告では,年間2億人以上の人々が新たに感染し,死者は40~50万人にのぼる(World Malaria Report 2016).かつての特効薬であったクロロキンに対する耐性マラリアは世界中に拡散し,最新の治療法であるアルテミシニンと他剤の併用によるartemisinin combination therapy(ACT)に対しても薬剤耐性株が出現している.しかもACTはコストが高いことから新たな治療法の開発が求められている.このような状況の中で2015年10月5日,スウェーデン王立科学アカデミーはノーベル生理学・医学賞を大村智(さとし)北里大学特別栄誉教授,米国ドリュー大学名誉研究員のウイリアム・キャンベル博士および中国中医科学院主席研究員の屠呦呦(と・ゆうゆう)博士に授与すると発表した.その受賞理由は大村博士とキャンベル博士については「線虫によって引き起こされる寄生虫感染症に対する新規な治療法の発見」であり,屠博士は「マラリアに対する新規な治療法の発見」である.すなわち前者は抗フィラリア薬「イベルメクチン」,後者は抗マラリア薬「アルテミシニン」の発見によるものである.イベルメクチンは大村博士が土壌中の放線菌から見出したマクロライド系の化合物であり,アルテミシニンは中国の薬草の一種である青蒿(チンハオ.クソニンジンと呼ばれる)から屠博士等が見出したエンドペルオキシドを持つ化合物であり,いずれも「自然からの贈り物」である.なぜ抗寄生虫薬の発見が受賞対象となったのか? 本稿ではイベルメクチンに代表される我が国からの抗寄生虫薬開発への貢献と筆者らの取り組みを紹介する.