- 著者
-
宮田 公佳
- 出版者
- 国立歴史民俗博物館
- 雑誌
- 国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
- 巻号頁・発行日
- vol.180, pp.209-229, 2014-02-28
博物館等に収蔵されている資料のみならず,撮影された資料画像あるいは調査研究の成果である報告書等もまた情報資源であり,これらの情報資源から抽出された情報が展示や新たな研究へと活用されている。情報資源を有効活用するためには,情報の抽出,処理,利用に関する手段が必要であり,画像情報や文字情報を個別対象とした先行研究が行われている。画像と文字は情報種別としては異なるが,果たすべき役割には共通点が存在するため,両者の特徴を融合することで相乗効果を発揮し,情報資源をより有効活用することができると考えられる。膨大な情報を有効活用する手段として,データベースが広く用いられている。一般的に,データベースは検索語の入力によって検索が行われるため,検索語に関する事前知識が必要となる。博物館等が提供するデータベースには専門的な用語が多く入力されているため,必然的に利用者には専門知識が要求されることになり,結果として専門家のためのデータベースとなりやすい。そこで本研究では,画像情報と文字情報とを融合させることで,専門的な事前知識の有無に影響を受けにくい情報活用手段としてのデータベース構築について議論する。対象資料は洛中洛外図屏風歴博甲本であり,描かれている人物に関して抽出された文字情報と,デジタル化された資料画像とをデータベースという形式で融合する手法を検討する。博物館展示では,資料解説等の役割を担うデジタルコンテンツが運用されることがあるが,本研究ではデータベースをデジタルコンテンツ化することで,利用者に対してデータベースであることを意識させないインタフェイス設計についても検討を行った。本論文における対象資料は一点のみであるが,情報活用手段を入力,処理,出力の三要素に分解することで一般化を試みており,類似資料の活用においても本論文におけるデータベース構築手法は応用可能である。