著者
馬籠 信之
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.341-345, 1996-06-10 (Released:2010-02-05)
参考文献数
10

本稿では,水・油・界面活性剤から成る系における自発的な界面運動について記述している。化学種の濃度が水相と油相間で非平衡である時,界面で様々な自励振動が見られる。今回は,その自励振動のうち,特に界面張力の周期的な増加に注目し,界面張力変化と界面運動との相関について説明した。界面張力が急激に増加すると接触角も急激に変化し,その結果界面張力間のバランスが崩れて運動が起こることを明らかにした。また,油水系では界面運動の駆動力は水相と油相間での界面活性剤の濃度勾配である。すなわち,等温条件下で化学的なエネルギーから機械的な運動を直接取り出している系であると言える。これは,例えば筋肉におけるエネルギー変換の機構と比較すると1)非平衡状態で起こり,2)熱エネルギーを介さない化学→機械エネルギーの直接変換系であり,3)空間的に非対称性を取り入れることによって運動方向の制御が可能である,といった点などにおいて共通性があり,生物の運動のメカニズムを探索する上で有効であると考えている。
著者
喜多 野裕子
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.159-171, 2014-12-20

『ハムレット』におけるオフィーリアについては, これまでジェンダーやセクシュアリティ, あるいは女性の狂気の表象という観点から解釈されてきた. しかしBialo が指摘するように, そのような解釈は階級を見落としがちであり, さらにはオフィーリアの狂気の場がデンマーク王位の不安定さが繰り返し描写される『ハムレット』という芝居の構造の中で論じられることも少ない. 故に本論は, Bruce Smith によるシェイクスピア劇におけるバラッド・パフォーマンスに関する議論基づき, 4幕5場におけるオフィーリアのパフォーマンスの劇的機能を明らかにする. オフィーリアのバラッド歌唱は民衆による政治的危機下において行われる. 民衆は, レアティーズの父の殺害を隠蔽する王室に反抗し, レアティーズを王にせよと要求し宮廷に進攻する. この場を考察することで, オフィーリアのバラッド・パフォーマンスは, 初期近代イングランドにおいては舞台上で直接的に表出させることが許されなかった民衆の抗議を内在することを明らかにする.
出版者
宣伝会議
巻号頁・発行日
vol.36(9), no.465, 1989-09
著者
近松 竜一 近藤 紀人 中嶋 智史
出版者
公益社団法人日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次論文集 (ISSN:13477560)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1035-1040, 2002-06-08
被引用文献数
1

コンクリート工事におけるせき板部を対象とした養生材料として,型枠を脱枠した後,硬化コンクリートの表面に貼付して乾燥を防ぐ養生用保水テープを開発し,その適用効果について検証した。この保水テープは,表面が多少濡れていても容易に貼付でき,また屋外に放置した状態でも3ヶ月以内であれば糊残りなく剥がすことができる。コンクリートを打ち込んだ後,早期に脱枠しても,保水テープを貼付することにより表層部に緻密な硬化組織が形成され,施工計画の自由度を高め,計画どおりの保水効果が期待できる有用な養生工法であることを確認した。
著者
原田 走一郎 ハラダ ソウイチロウ
出版者
大阪大学
巻号頁・発行日
2016

14401甲第18322号
著者
大塚武松 編
出版者
日本史籍協会
巻号頁・発行日
vol.第5, 1927
著者
長江 明 杉山 芳雄 桑原 利秀 福田 保
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.347-351, 1960

第1報に発表した実験の結果では, 上質のメリケン粉が顔料の測色のための展色材として, よい成績を示したので, 続いて, 国産の有機, 無機顔料のほぼ同一の条件のもとにおける測色を行なった。上質のメリケン粉を糊とし, 展色材に使用すると, ある範囲の吸油量の差があっても, 水で適当にうすめることにより, 塗りやすい状態に調節できるから便利である。測色した顔料は国内のメーカー30余社の協力を得て集めたもののうちから, 代表的なものを選んだ。すぐれた色彩をもつ顔料が多く, その測色結果は, 図および一覧表に示した。
著者
上宇都 ゆりほ
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.46-55, 1999-03-10

『拾玉集』に収載される建久二年閏十二月二十八日の慈円・良経贈答歌は後白河院崩御直前に交わされた。和歌の明るさは院と疎遠であった九条家の展望に加えて、病悩に伏していた任子が内裏に還啓するという慶事による。慈円はこの頃院御悩の修法を行っているが、慈円の両義的立場は暗喩という表現法をもたらし、和歌の解析を困難とする。その晦渋さは遊戯性によるものではなく、「達磨」も「新風和歌」を示す歌語ではないと考える。
著者
後藤 康志
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.27-42, 1996

本研究では、ハイパーメディアによる情報検索活動と直接体験を組み合わせたオープン性の高い単元を構成し、児童の学習の支援を目指した。単元の学習を分析した結果、学習は情報検索の活動から情報発見と新たな活動へ、そして見学を含む他のメディアによる情報活動に発展していき、その結果(1)伝統工業に携わる人々の苦労に関する知識の構成と、(2)知識の実感とそれに基づく知識の再構成という、クローズドな学習ではできなかった学習の支援が可能になったことが明らかになった。
著者
宮下 高明 前野 隆司 野々村 美宗
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.169-172, 2011-05-20 (Released:2011-08-20)
参考文献数
17
被引用文献数
4 2 3

われわれは,兎の毛皮,木など産業界で広く利用される生体由来の物質の触感を評価した。その結果,ヒトが毛皮や木に触れると「好感」と「快適感」が喚起されることが明らかになった。この感情は,ガラスやアルミなどの無生物物質に触れたときは発生しなかった。固体試料の触感や物性と感情の関係を多変量解析したところ,兎の毛皮や木に触れたときに好感が喚起されたのは,これらの物質がサラサラしていてツルツルしていないためであること,さらにこれらの感情は,表面粗さの影響を最も強く受けることが示唆された。本研究の成果は,着心地の良い服や使いやすい家具だけでなく,よりリアルなバーチャルリアリティシステムやヒューマノイドロボットの開発のために利用されるであろう。

1 0 0 0 OA 電気年鑑

著者
電気之友社 編
出版者
電友社[ほか]
巻号頁・発行日
vol.大正13年, 1926
著者
中 精一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.51-54, 1974-03-25

畑雑草の防除の効率化をはかるために,牽引型除草機の作業条件と作業体系とを組合わせて,機械除草の限界と雑草の種類組成ならびに大豆の生育・収量に及ぼす影響について検討した。1)雑草本数は効果的な条件を連続して適用すると経時的に減少するが,除草効果を高めるには,初期に作用の大きい条件を適用する方式と経時的に作用を増す方式があることが判った。2)ホー除草に比べて機械除草区の雑草本数は0.7〜4.9倍,雑草重は1.8〜16.2倍であり,除草爪の作用深さが増すにしたがって雑草量は減少した。最適作業条件は「作用位置5.cm-作用深さ8cm-連続3回掛け」の条件である。3)除草作用は播種25,45日後の作業で大であり,作業前に比較して雑草本数はそれぞれ68〜81%,43〜84%に減少した。4)作業前の雑草の種類組成は,本数でメヒシバが74%を占めたが,作業回数が増し,雑草総本数が減少するにしたがってメヒシバの占める割合が減少し,ツユクサ,タデ,ヒエの割合が増加した。5)大豆の収量はホー除草に比べて若干低収の傾向があるが,作業条件の間では明確な傾向は認められなかった。