著者
橋本 健一 Ken-ichi HASHIMOTO 千葉県立衛生短期大学
雑誌
千葉県立衛生短期大学紀要 = Bulletin of Chiba College of Health Science (ISSN:02885034)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.1-7, 2008

ナガサキアゲハPapilio memnon thunbergii SieboldおよびクロアゲハPapilio protenor demetrius Stollの千葉県鴨川市個体群(35°07'N)の20℃での蛹休眠誘起の臨界日長はナガサキアゲハでは約12時間40分,クロアゲハでは14時間以上であり,ナガサキアゲハの臨界日長は同所的に生息するクロアゲハより1時間以上短かった。ナガサキアゲハ鴨川市個体群の臨界日長は既に報告されている鹿児島市,和歌山市,箕面市,清水市および三浦市の各個体群での値(Yoshio and Ishii 1998, 2004)とほぼ同様であるので,本種は休眠性の変化を伴わずに北方へ分布を拡大しているものと思われる。このような分布の拡大は,秋季の気温の上昇により休眠世代の幼虫が蛹化に至るまでの温量が得られるようになったことが要因の1つであると考えられる。
著者
岡田 仁志
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.440-443, 2014-04-15

分散型の仮想通貨が相次いで登場し,インターネットの資金の流れを変えている.P2P技術を使ったビットコインなどの分散型仮想通貨は,これまでの電子マネーと全く異なり,発行主体が存在しない.このため,主体を規制する従来型の手法では適切なレギュレーションを及ぼすことができない.国境を超えて流通する分散型仮想通貨は,インターネット社会や現実の世界にどのような影響を及ぼすのか.分散型仮想通貨の構想を発表した原著論文を読み解きながら,その将来性と課題を考察する.そして,ビットコインなどの仮想通貨が原著論文の構想とは乖離している様子を確認したうえで,我が国における制度設計のためのヒントを探る.
著者
上出 吉則 辰己 丈夫 村上 祐子
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.39, pp.239-246, 2017-08-10

小学校でのプログラミング教育の実施に向けた有識者会議の提言では,「プログラミングへの興味を持ってもらうことが重要」 「既存の教科の中で実施」 などの提言が見られる.我々は,プログラミングを有志の生徒がおこない,同年代の生徒の創作した Scratch プログラム教材を中学校の数学の授業で活かす試みをおこなった.「図形の回転移動」 の単元での図形の移動概念の理解を目標とした.さらに,本研究では数学の授業としての情意面での効果を定量的に検証する試みをおこなった.Scratch プログラムの使用前と使用後の自己評価のデータの平均値を算出し F - 検定および t - 検定をおこなった.その結果,数学教育として通常の方法に比べて Scratch プログラムの効果があることがわかった.記述式回答においても,プログラミングへの興味 ・ 関心を示す生徒が増加した.これらのことより,算数数学教育においては,プログラミングを学ぶことや活用することで,教科書では不可能な数学的概念の深い理解が得られ,結果としてプログラミングへの興味 ・ 関心を持てることがわかった.
著者
青木 武信 アオキ タケノブ Takenobu AOKI
出版者
総合研究大学院大学
巻号頁・発行日
2001-03-23

本研究の目的はインドネシアの大衆芸能、クトプラ(kethoprak)について、現地調査から得られたデータをもとに、その公演形態、公演内容、および芸人と彼らの社会生活について民族誌的記述を行い、1990年代半ば、スハルト政権最末期のインドネシアにおけるクトプラについて考察するものである。事例としてはジョクジャカルタを中心に活発な公演活動を行っているクトプラ劇団、ペーエス・バユ(PS Bayu)をとりあげる。 クトプラはインドネシア、中部ジャワの大衆芸能であり、笑いとアクションを中心としたドタバタ喜劇である。クトプラは中部ジャワー帯で人気が高く、ジョクジャカルタを中心に各地で公演が行われているが、最近ではテレビでの放映も行われている。 クトプラで演じられる物語の主要なテーマは女性、領土、財物の奪い合いである。クトプラの人気を支えているのは、人々の情動に直に訴えかける通俗性である。この通俗性は自身の欲望に忠実な登場人物の姿に由来する。つまり、クトプラでは誰もが少ながらず持ってはいるが、日常的には抑圧されている欲望が舞台の上で鮮明に提示されるのである。そのために、観客は深い共感をもって観劇を楽しむことになる。 クトプラのもうひとつの特徴は、必ずしも単純ではない物語の筋を簡略化し、格闘シーンや笑いのシーンを適宜挿入しながら、柔軟に舞台を構成してゆくやり方にある。クトプラの芸人たちは、公演地における観客の嗜好を考慮し、かつ観客の反応をみながら、公演内容を臨機応変に組み立ててゆく。格闘シーンは舞台の進行にアクセントをっけ、弛緩した観客の注意を舞台に引き戻す効果をもっている。また、クトプラは笑いのシーンをふんだんに挿入することで、深刻さをさけ、観客に気晴らしの娯楽を提供している。理想と現実との垂離に日常的に直面し、緊張を強いられている観客は、笑いのシーンで、このズレを提示されて、それを笑うのである。 このように、人々の心に潜む欲望を的確にとらえて表現する技術や、観客の舞台に対する反応を鋭敏に感じとり、舞台を柔軟に構成してゆく技術にたけていることが人気クトプラ芸人の条件となっている。こうした能力は彼らの豊富な社会経験に由来する。クトプラの公演が行われる地理的範囲は広く、公演をおこなう機会も多様である。そのために、芸人たちはジョクジャカルタを中心に、中部ジャワの各地を訪れ、さまざまな人々と接触し、見聞を広め、広範な人的なネットワークを構築する。これらのことがクトプラ芸人の演技者や演出者としての能力を培っているのである。 こうした能力は舞台の外でもきわめて重要な役割を果たしている。このことを示す端的な例はペーエス゜バユの座長であるギトとガテイである。彼らは舞台の上で卑猥で低劣なジョークを連発し、ドタバタ喜劇を演じる。だが、舞台の外では強い倫理観を持った好人物とみなされている。こうした舞台の上でのパフォーマンスと非常にかけ離れた人物像は舞台外での芸人の「演技」から作られるところが大きい。彼らは、人に何を期待され、何が求められているかを鋭敏に感じとり、それを舞台の外においても自身の「演技」に生かしているのである。 そして実際に、ギトとガティは地域社会において名士やリーダーとしての役割を期待され、そうした期待にこたえている。また、ガティは集落長という公職についている。ギトとガティが居を構えている集落にすむ村人の大多数はあまり裕福とはいえない農民である。彼らは、何らかの事情で、まとまった額の現金を必要とする場合、ギトやガティのもとを訪れることが多い。あるときは、手持ちの装飾品などを質草にして現金を借り、またあるときは、所有する農地や水田を彼らに買ってもらう。これに加え、集落が共同で使用する水場の新設や整備、共同墓地の拡張、道路の舗装、青年団の活動などに際しても、ギトとガティは経済的援助を求められる。 こうした期待と要求に応えることは、とかくマイナスのイメージを付与されがちな芸人という存在が地域社会で生活していく上で、必要に迫られて行っている戦術ともいえる。たしかに、仮設の小屋掛けでおこなう巡回公演を中心とするクリリガンと呼ばれるクトプラ劇団の芸人の生活は、売春まがいの行為をおこなう等の理由から、ジャワ人の一般的倫理観から大きくずれている。そうしたこともあり、ギトとガティは自己の社会的イメージを大変重視している。それは人気クトプラ劇団のリーダーであり、ジャワ芸能界の人気者にして重鎮、かつ温厚で、人当たりのよい人物というイメージである。彼らはジャワ社会における期待されている人物像を舞台の外で演じているといってよい。 以上のように、ギトとガティがになう役割と彼らの行為を見てくると、彼らは地域社会(村)とその外にあるジャワ社会を結びつけ、情報、金銭、人的コネクションを地域社会にもちこむ存在だということである。ジャワ社会でトコ・マシャラ力(tokoh masyarakat)と呼ばれる地域社会における名士あるいはリーダー的存在にはさまざまな種類の人物がいる。それは篤農家であったり、宗教的指導者であったり、富裕な商人であったりする。ギトとガティはこうした多様なトコ・マシャラカの一例なのである。 ギトとガティは政治的、宗教的に特定の勢力と深く関係することなく、中立的な立場を保持してきた。そうすることが多方面からの公演依頼を可能にすると判断したためである。だが、クトプラ芸人のなかには公演依頼を増やすために、積極的に特定の政治団体、特にスハルト政権下の与党、ゴルカル党に参加し、活動を行う者もいた。ギトとガティの場合にもいえることだが、芸人たちは生き残りをかけて、ときには利用できるものは何でも利用するしたたかさを顕わにする。そのとき、芸人は豊富な経験に裏打ちされた彼ら独特の「嗅覚」あるいは現実的感覚を大いに働かせているのである。こうした生々しい現実的感覚をもつからこそ、クトプラ芸人はジャワ社会の変化に巧みに適応しながら、クトプラの人気を長きにわたり保持しつづけることができたのだと考えられる。 そして、1990年代、テレビの普及と並行してジャワ社会は大きく変化してきている。ペーエス・バユの公演活動から、こうした変化へ適応していく様子を窺うことができる。公演は儀礼的な要素が小さくなり、娯楽としての要素が中心となってきた。公演機会も村清めのようなジャワ固有の信仰に基づくものは少なく、インドネシアの独立記念日を祝う催しやムスリムが断食月明けを祝うサワラン儀礼が多くなっている。公演日の選択にあたっても、ジャワ暦よりも土日を優先するようになっている。舞台の内容も笑いとアクションの要素を強調する傾向にあり、漫才のみの公演も増えている。公演機会や公演内容はよりいっそう世俗化し、インドネシア化しつつある。その一方でテレビを通じてクトプラはジャワ王朝時代劇としてイメージを鮮明にしている。また、ムスリムにとって聖なる月である断食月と儀礼には適さないとされているジャワ暦のポソ月は、公演機会として現在でも避けられている。このように完全に世俗化し、ジャワ的なものがインドネシア的なものに置き換わってしまっているわけではない。1990年代の現代インドネシアにおいて、ジャワとインドネシアの間でクトプラ芸人は巧みに両者の要素を取り入れ、使い分け、生き残ろうと努めている。
著者
西森 秀稔
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.716-722, 2014-06-15

量子アニーリングは,組合せ最適化問題を量子効果を利用して解くための汎用の解法である.シミュレーテッド・アニーリングにおける熱ゆらぎによる状態探索を量子ゆらぎで置き換えたものであり,シミュレーテッド・アニーリングに比べて一定の効率向上が見られることが知られている.カナダのベンチャー企業D-Wave社が開発してすでに発売・稼働しているD-Wave Oneおよびその後継機種D-WaveTwoは量子アニーリングをハードウェアレベルで実現した装置であり,初の商用量子計算機というキャッチフレーズにより注目を集めている.本稿では,量子アニーリングの基礎理論を概説したあと,D-WaveTwoがそれをどうやってハード的に実現しているか,実際に量子力学に従って動作しているのか,本当に速いのか,今後の注目点はどこにあるのかなどについて現時点での知見を紹介する.
著者
Jeannette M. Wing 翻訳:中島 秀之
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.584-587, 2015-05-15

このエッセイはコンピュータ科学者だけではなく,すべての人が学び,そして使いたいと考えるに違いない一般的な態度とスキルに関するものである.
著者
吉岡 良昌 Yoshimasa YOSHIOKA
出版者
東洋英和女学院大学大学院
雑誌
東洋英和大学院紀要 = The Journal of the Graduate School of Toyo Eiwa University (ISSN:13497715)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-16, 2014-03-15

At the starting point of the educational reform after the World War Ⅱ in Japan,Shigeru Nanbara, President of the Tokyo University, continued to insist that human Revolution is needed to complete the democratic society in Japan. Although the Constitution and the Basic Act on Education has been established as the system Of Japanese government, it was the most important task that the human being oneself must be reformed toward the new person to maintain the new system. It was an ideal educational goal for Japanese to become to attain to “the full development of the personality” as written at the First article of the Basic Act on Education. Arimasa Mori who was a famous philosopher following after the Nanbara’s vision, has been trying to comlete the task of the human revolution in Japan by the way of his own philosophical way. His conclusion was that Japanese individuality and Japanese democratic society must be reformed and confirmed by the Christian Faith.
著者
中山 心太
雑誌
夏のプログラミング・シンポジウム2011報告集
巻号頁・発行日
pp.7-10, 2012-01-06

ITの現場で運用されているプログラムは、正常系が2割、異常系8割程度の比率で記述されている。C言語などの既存言語ではプログラムフローの制御と、エラートラップが同一の記法(if文)で記述されており、静的解析においては区別がつかない。そのため、新たにプロジェクトに配属された人にとっては、運用されているコードを読んでも、正常系も異常系も同様に見えてしまい、プログラムの動作を把握するのが難しい。そこで、テストコードは正常系と異常系が仕様書から定義できるため、テストコードを用いてプログラムの動的解析を行うことによって正常系のみを効率的に抽出し、正常系のみを表示するエディタを提案する。これにより、短期間にプログラムの動作を把握することができ、プロジェクトの開発効率の向上が期待できる。
著者
白井 暁彦 鈴木 百合彩
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.452-457, 2015-09-18

エンタテイメントシステムにおける再現可能な実験や客観的な評価手法の確立は,本分野を科学研 究として発展させるために重要な研究である.本発表では特に,複数のエンタテイメントシステムにおけ る「おもしろさ」を物理的・客観的に測定するため,自然な体験環境で行うパブリックテストを成立させ るための同意書および実験運用方法,ガイドラインを提案する.
著者
三宅 悠介 松本 亮介 力武 健次 栗林 健太郎
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-37, no.4, pp.1-8, 2017-05-18

BtoC の EC サイトで取り扱う商品の種類の増加に伴い,EC サイト利用者の通常の行動では全ての商品を見て回ることは困難であるため,多くの EC サイトでは効率的に商品を閲覧できるよう関連性のある商品を動線上に表示している.購買履歴等の情報が蓄積されないと関連商品を選定できない問題を解決するため,商品の持つ様々なメタデータを利用する手法や,視覚的な訴求力の強い商品画像を元にした,畳み込みニューラルネットワークを始めとした深層学習による精度の高い関連商品の選定手法が提案されている.しかし,適切な粒度のメタデータの整備に手間を要する問題や,深層学習のための大量の訓練データセットと計算時間が必要となる問題から,これらが導入への大きな障壁となっている.本報告では,画像分類用の学術ベンチマークであり,EC サイト商品画像特性と類似する ImageNet において高い成績を出した Inception-v3 モデルを学習済みネットワークとして採用し,一般物体の特徴を強く表現する識別層に近い手前のプーリング層までから得られる特徴量をもとに近似最近傍探索により類似度を比較することで,特徴抽出器の学習と購買履歴を必要としない類似画像による関連商品検索システムを提案する.EC サイトにこの類似画像による関連商品検索システムを導入し,画像のクリック率を商品カテゴリごとに計測することで類似画像による関連商品の有効性を検証した.
著者
斎藤 祐一郎 久野 靖
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.7-18, 2015-03-16

コミュニケーションは,企業内でソフトウェア開発を遂行するうえで不可欠である.しかし,現状ではコミュニケーションが苦手なソフトウェア技術者が存在し,新人技術者にも同様の傾向が見られる.そこで筆者らは,新人技術者がソフトウェア開発に必要なコミュニケーションスキルを獲得できるような教育方法を考案し,ソフトウェア技術者予備軍である大学4年生を対象に試行のうえ,有効性を評価した.教育方法には,コミュニケーションの重要性を体感できるケースメソッドとロールプレイング形式を組み合わせたものを採用した.被験者として情報系大学4年生2グループ各3名を集め,コミュニケーションに関する事前指導を片方のグループのみ施した.その結果,事前指導を施したグループにおいて,特に成果物を基にチームメンバと接するコミュニケーションスキルを獲得できたことを確認した.
著者
江渡 浩一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.496-498, 2017-05-15
著者
村田 朋紀 橋本 剛 長嶋 淳
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2006論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.17-24, 2006-11-10

ゲーム木探索において,何らかの枝刈りを行う場合,一時的に損をするが後で良くなる手筋を読むことは困難である.本研究では有効な手筋を少ない計算量で導き出し,有効な手順を深く探索させることを目的とする.そのために手筋を自動で収集・登録し,数手一組として探索に用いるためのフレームワークが必要である.本稿では部分局面パターンにn-gram統計を使用し,棋譜データベースから手筋を自動で抽出する手法を提案する.この手法により大量の棋譜から局面に対し有効な手筋データのみを獲得することに成功した.また,獲得した手筋データを探索に用いる手法を提案し,性能評価を行った結果,探索性能の大幅な向上に成功した.