著者
野崎 祐子
出版者
広島大学
雑誌
経済学研究 (ISSN:02882434)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-9, 2005-02

本稿の目的は、近年女性の高学歴化が急速に進展した日本の労働市場において、技術進歩がどのような影響を与えたかを定量的に検証することにある。具体的には、高学歴者の労働供給増加が賃金の学歴プレミアム低下を伴わない現象と技術進歩との関連を、要素間の生産関係を説明するモデルを用いて分析する。推計結果からは、高学歴労働者に変更的な技術進歩が雇用吸収力の大きいサービス業でプラスに作用し、労働需要をシフトさせたことが明らかになった。しかしその効果は製造業や運輸・通信業では高卒労働者にシフトするなど必ずしも大卒労働者に有利に働くわけではない。さらに男女で逆に作用するケースも認められた。このように技術進歩が労働市場に及ぼす影響には、産業や教育レベルのみならずジェンダーによっても異なるという重層性が存在する。
著者
藤野(柿並) 敦子
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
no.38, pp.21-41, 2006-05-31

Becker(1965)らによる家計生産モデルによれば,男性の家計内での時間配分は,考慮されていない。このため,この理論モデルから得られる結論は女性の市場賃金率上昇による女性の労働供給増加は,育児時間の機会費用を増加させ,出生率を低下させるというものとなる。ところが,マクロレベルでの国別クロスセクションデータを用いてみたとき,昨今の女性の労働力率と出生率とは,正の相関関係にあることが確認できる。夫の家計内での時間投入を考慮すれば,夫の家計内での生産活動は,妻の育児時間の機会費用を低下させることになる。そこで,総効果としては,女性の所得増大効果と併せ,子ども数が増加する可能性が出てくるのである。わが国では,最近,男性の長時間労働を見直し,家事育児分担を増やすことが,出生力の回復に貢献すると考えられ,少子化対策の中でも強調されてきている。しかし,夫の家計内生産活動と出生力との関係が実証的に明らかにされることは非常に少なかったと思われる。そこで,本稿では,著者の行った社会調査(兵庫県「若い世代の生活意識と少子化についてのアンケート」2003)で得られた最新のミクロデータを用いて,従来のベッカー理論の変数をコントロールした上で,夫の家事育児分担が夫婦の追加予定子ども数を高めることができるのか,実証的に解明する。本稿の分析から,夫の家計内生産活動が夫婦の予定子ども数を高める重要なファクターであることが,明らかとなり,従来のベッカー理論に新たに夫の家庭内での時間配分を考慮すべきことが示唆された。また,妻が非正規就業で働く家計,専業主婦の家計において,夫の家事育児分担が進む場合,夫婦の出生力が高まるという結果が得られた。
著者
坂爪 聡子
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
no.38, pp.43-55, 2006-05-31
被引用文献数
1

本稿の目的は,出産が女性の就業に与える影響を明示的に取り入れたモデルを用いて,少子化の進行要因を明らかにすることにある。従来の理論研究では,出産により就業状態や就業条件が変化することは考慮されていない。それに対して,本稿では,子供をもつ場合ともたない場合,あるいは子供数による女性の就業における違い-生涯所得格差や賃金格差-をモデルに取り入れている。なぜなら,日本では出産を機に退職する女性は依然多く,たとえ再就職してもその条件は悪いため,出産が生涯所得や賃金に与える影響はきわめて大きいからである。少子化の分析において,これらの影響を考慮することは不可欠である。本稿のモデルは,基本的にはベッカーなどに従うものの,上述の設定により子供のコストが従来のモデルとは異なる。このことは,予算制約の形に影響を与え,本稿のモデルでは子供をもたない選択をするケースが導出される。さらに,このケースが成立する可能性は,出産による損失所得や賃金低下の程度が大きくなるほど,高くなる。
著者
小林 淑恵
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-18, 2006-11-30
被引用文献数
1

循環モデルのフレームワークに基づき,家族形成期の日本女性を調査した『消費生活に関するパネル調査2』を用いて,1)結婚意欲と結婚行動の関係の検証,2)働く重要度と結婚行動の関係の検証を行った。1)では結婚意欲が個人属性と母親属性によって決定され,学歴や大都市居住,賃金率の上昇によって高められるが,未婚状態を継続することにより適応効果が働き,「必ずしも結婚しなくてよい」「結婚したくない」と意欲を下げて行くことが明らかとなった。また結婚意欲が実際の結婚行動に与える選択効果も支持され,結婚行動に直接影響する変数と,意欲を介して影響する変数の存在が確認された。2)では働く重要度の違いが結婚行動へ与える影響は見られず,選択効果は棄却された。また就業変化などの直接的な経験による適応効果は見られるが,結婚や出産などによる影響は見られない。これらの分析結果からは,家族形成と就業はどちらかを選択することで他方の重要度を下げるような関係ではないと言えるが,ここで用いた変数が就業と家族形成の狭間における女性の心の揺らぎを十分に把握できていないという可能性は否めない。
著者
穐山 守夫
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-29, 2007-06

まず,英米と日本における新自由主義政策の展開の中に日本の新自由主義的労働政策を位置づけ,その大まかな展開を概観する。次にその政策の理論的基優等を述べ,その意義と問題点を検討する。第三にこれを踏まえて,雇用の流動化政策・賃金・労働時間の弾力化政策・女性の保護法制の規制緩和・外国人労働者の受け人れの規制緩和の意義と問題点を吟味した。結びとして,新自由主義的労働政策の必要性を認めつつ,労働者の自己決定権や勤労権保護の観点から,新自由主義的労働政策の行き過ぎを抑制する必要性を指摘した。
著者
張 純紅
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学経済経営論集 (ISSN:02869721)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.215-253, 2007-11-20

The ratio of the Japanese women to men's earnings(wage gap)in percentage remained at approximately 66 in 2005. The women-men wage gap of Japan has decreased, but narrowing the gap is extremely slow compared with other advanced countries such as the USA(81), the UK(78), France(78 in 2002)and Germany(72). This is a large and somehow puzzling question(figure 2-1). This study explores into the Japanese wage differentials between men and women, clarifying factors which have brought to the bigger wage gap. This study examined the Japanese Employment Practices, finding several possible explanations for the gender gap in wage. First is employment discrimination of a lifetime employment, behind which there has been the generally accepted idea. That is the Japanese sex role specialization system(men work for a living, and women do housework and child care). The second is that various family allowances and promotion are preferentially given to men, which also reflects the Japanese sex role specialization system. The third is that there has been sex discrimination of job specification and an unequal personnel performance evaluation underlying the Japanese seniority order wage system. Full-time women's wage increase and promotion have been extremely small and slow compared with those of full-time men. Moreover this study explores the actual women's labor force status such as labor force participation rate, work experience, and the number of managerial staff and part-timers. This women's situation explains lower wages under the Japanese seniority order wage system. The Japanese women's labor force participation rate depicts M-shape, which means that they are retired for marriage and child care. Therefore the Japanese women relatively have shorter work experience than men, and fewer numbers of them are assigned to a managerial position. The number of poorly paid women part-timers have greatly increased. Since 1990s, it is expected that the enactment of various antidiscrimination legislation has an effect on narrowing the Japanese gender gap in wage, but they are imperfect measures, and many deep-rooted prejudices to women still remain in the Japanese company and society, accordingly the greater improvement will not be expected in the near future. It will be a greater challenge of Japan on how the human capital of women is used usefully.
著者
坂爪 聡子
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
no.41, pp.9-21, 2007-11-30
被引用文献数
3

本稿の目的は,男性の育児参加と子ども数の関係を理論的に説明することにある。従来の研究では,育児は女性だけが負担するものとされてきた。しかし,男性の育児参加も考慮すると,女性の賃金上昇により男性への育児の代替が行われ,女性の就業と男性の育児参加が促進され,同時に子どもの数が増加するケースが考えられる。本稿は,このケースが成立する条件を求めることにより,男性の育児参加促進が少子化対策として効果があるために何が必要か明らかにする。本稿のモデルは基本的にはBecker(1965)に従うが,子どもの生産に投入される育児時間について,男性と女性の時間をわける。そして,女性の賃金が,女性の労働時間と男性の育児時間と子どもの需要に与える影響について分析する。分析の結果,女性の賃金上昇の影響は,男女賃金格差に大きく依存していることがいえる。男女賃金格差の大きいときは,3変数が増加する可能性はほとんどない。女性の賃金が男性とほぼ対等であるとき,同時に男女の育児時間の代替可能性が高い場合,3変数がすべて増加する可能性が高い。
著者
粟倉 大輔
雑誌
中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.43, pp.843-878, 2012-09-28

本稿は、明治期日本において製茶再製に従事した女性労働者=「再製茶女工」について論じ、その再評価を試みるものである。この再製技術は中国から導入されたもので、製茶輸出時に施された「火入れ(=乾燥)」と「着色」のことをいう。再製は居留地外商が経営していた「お茶場」で行われ、その現場は中国人男性が監督していた。 本稿では、お茶場における労働内容や内部のヒエラルキー、労働環境、賃金を詳細に検討した。これらの他にも、「再製茶女工」となった女性本人についても論じている。さらに、当時の新聞・雑誌における彼女たちに関する報道の分析を通じて、そのイメージ形成についても検討を加えた。以上を通じて、「再製茶女工」に対する「女工哀史」的な見方を修正する必要があること、また明治期日本の産業発展に未婚・若年労働者だけではなく既婚女性も大きな役割を果たしていたことを明らかにした。
著者
石川 航平 山本 知幸 藤波 努
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第20回全国大会(2006)
巻号頁・発行日
pp.125, 2006 (Released:2006-12-07)

なぜ人間は技能習得の過程、リズム感の習得において個人差が生じるのであろうか。本研究ではサンバスクールに通い、サンバ・ダンスを初心者が6ヶ月間の練習期間に上達する過程を観察した。サンバのリズムは元来、日本人が持つ感覚とは異なり、長期的に渡る訓練で習得しなければならない。実験においては二人の被験者を対象として6ヶ月間の間、5回に渡り、モーションキャプチャ装置を身体の18カ所のポイントに装着し計測した。タスクは難易度により四段階に分類した踊りのパターンとした。得られたデータを身体各関節の協調度に注目して分析した。その結果、サンバ・ダンスの上達過程における特徴的な差異を特定した。
出版者
帝国馬匹協会
巻号頁・発行日
vol.昭和9年版, 1934
著者
中沢勘兵衛 [述]
出版者
帝国馬匹協会
巻号頁・発行日
1933
出版者
帝国馬匹協会
巻号頁・発行日
1933
著者
勝木 俊雄
巻号頁・発行日
2012-02-29

報告番号: 乙17624 ; 学位授与年月日: 2012-02-29 ; 学位の種別: 論文博士 ; 学位の種類: 博士(農学) ; 学位記番号: 第17624号 ; 研究科・専攻: 農学生命科学研究科
著者
友納友次郎 著
出版者
目黒書店
巻号頁・発行日
1918