- 著者
-
今北 哲平
田治米 佳世
池成 早苗
- 出版者
- 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
- 雑誌
- 労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
- 巻号頁・発行日
- pp.JOSH-2019-0018-GE, (Released:2020-02-21)
- 参考文献数
- 44
医療現場では,患者や患者家族から職員に対するセクシュアルハラスメントが問題となっている.そこで本研究では,病院に勤務する職員478名を対象として,患者等から職員に対するセクシュアルハラスメントの実態調査を実施した.その結果,患者等からのセクシュアルハラスメントの被害経験率は42.7%であり,すべての職種,性別に被害経験があった.被害内容は「身体の一部への接触」,「容姿のことを言われる」,「性的行為を迫られる」,「性差別的発言や扱い」など多岐にわたっていた.ロジスティック回帰分析の結果からは,看護・介護職は「容姿」(aOR = 2.64 [1.12-6.20]),リハビリ職は「抱きつき」(aOR = 4.04 [1.41-11.60])や「性的話題」(aOR = 2.50 [1.06-5.87]),事務職は「性的質問」(aOR = 5.17 [1.39-19.20])というセクシュアルハラスメントを,他の職種よりも有意に受けやすい可能性が示された.一方,被害について一度も相談したことがないと回答した人は被害経験者のうちの46.5%であり,相談しなかった理由は「大したことではないと思った」,「相談しても意味がないと思った」,「我慢しなければならないと思った」,「患者の疾患特性によるものだと思った」など多岐にわたっていた.本研究の結果から,職種や性別を限定せず,かつセクシュアルハラスメントの定義や具体例を示すことで,適切な実態把握ができる可能性が示された.さらに,被害についての相談を促進するためには,相談行動の阻害要因ごとに取り組みを検討することが有効と考えられた.