著者
伊豆原 月絵 イズハラ ツキエ Tsukie IZUHARA
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.40-48, 2011-01-31

本研究は、1700年代を中心に、1600年代中葉以降のフランス宮廷を中心とした欧州貴族の女性にみられる美意識を明らかにすることを目的とする。往時の女性に対する観察者の「美意識」については、図像資料や文献資料を基に論じた。文献資料からは、1600年代から1700年代初期までは、情感を表現する眼差しや表情を「美しい」としていたが、1700年代の中葉にかけて、次第に女性の外見に重きをおいた記述が増え、「豊かな胸」「見事な肩」「背が高い」などの外見的特徴が主な美の構成要素になっていく。 また、美しさを構成する要素は、「真直ぐ伸びた背中」、「高い胸」のデコルテと「なで肩」であり、それは、姿勢と体型に関係がみられることを、人体解剖学的見地より考察し、新しい視点を示唆した。
著者
斉藤 くるみ
出版者
日本社会事業大学
雑誌
日本社会事業大学研究紀要 = Study report of Japan College of Social Work : issues in social work (ISSN:0916765X)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.173-200, 2015-03

現在まで、聴覚障害者の書記日本語の実用的運用能力の改善を目指すための教授法や教材は、日本においては、開発されてこなかった。しかしICT の発達と相まって書記日本語のスキルが高ければ、必ずしも発話ができなくても、今や能力を発揮できる職種は十分あるし、高等教育機関への入学、そしてその後の学習にも支障は少なくなる。本研究では、書記日本語のエラーアナリシスに基づき、統語論的・形態論的・意味論的習得及び語用論習得のための教授法を体系的に構築することを目指した。ろう者・難聴者の言語パフォーマンスを資料とし、エラーアナリシスを行ったところ、日本手話者については主に日本手話の統語論的影響が現れ、難聴者については主にうろ覚えや経験不足からの意味論的・語用論的エラーが現れた。それらを集中的に修正するような教授法や教材が有効であると考えられた。(本報告書を基にろう・難聴児の進学や就労に有益な書記言語習得のためのリーフレットを作成した。)
著者
MALITZ David M.
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
世界の日本研究 = JAPANESE STUDIES AROUND THE WORLD (ISSN:24361771)
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.33-48, 2023-03-15

This article investigates Japanese cultural and political influence in the Kingdom of Siam, renamed Thailand in 1939. Early exchanges in the late sixteenth and early seventeenth centuries saw the consumption of Japanese products in the Southeast Asian kingdom as status symbols. Japanese swords in particular were cherished and have become dynastic heirlooms since then. From the late nineteenth century onward, Imperial Japan was seen as a role model of successful modernization in Bangkok and Japanese advisors and instructors were hired by the court. Critics of the absolute monarchy meanwhile stressed that Imperial Japan had become a great power as a constitutional monarchy.
著者
佐野 幹
雑誌
宮城教育大学紀要 = BULLETIN OF MIYAGI UNIVERSITY OF EDUCATION
巻号頁・発行日
vol.56, pp.11-27, 2022-01-31

本報告は平成29年度告示の学習指導要領に対応した、小・中学校の国語教科書を対象にマンガがどのように教材化されているのかを調査したものである。調査した内容は、マンガが使われている教材の種類とマンガに与えられた教育的役割である。調査した結果は項目(「校種」、「出版社と巻」、「頁」、「教材名」、「マンガの役割」)を立て表にまとめた。調査の結果から、次のことを指摘した。 1、「活動のモデル・ナビ」と「内容理解の補助」の役割で多用されていた。2、マンガそのものが推薦図書に挙げられていた。3、マンガが日本の文化や固有の表現形態として認められ、文章の題材となっていた。4、読みの対象としてマンガが扱われていた。5、物語を作成するためにマンガが活用されていた。
著者
和田 由美子 井﨑 美代
雑誌
心理・教育・福祉研究 : 紀要論文集 = Japanese journal of psychology, education and welfare
巻号頁・発行日
no.19, pp.49-59, 2020-03-31

ネガティブではない泣きが幼児期から見られるか否か明らかにするために,保育者を対象に,ネガティブではないと思われる状況で幼児が泣いたエピソードについて,自由記述で回答を求めた。76名から得られたエピソードの内容を検討した結果,ネガティブではない泣きに該当すると判断されたエピソードは82件中33件,報告者数は76名中25名(32.9%)であった。泣きの生起状況の類似性に基づき,エピソードをKJ法で分類した結果,親が迎えや担任の出勤時に泣く<愛着対象との再会>が13件,自分または人が勝利・成功した時に泣く<成功・勝利>が11件,自分または他者が危機的な状況から解放された時に泣く<危機からの解放>が3件で,33件中27件(81.8%)がこの3つのカテゴリーに含まれた。エピソードの報告件数は,男児より女児で有意に多かった。大学生の回想から,幼児期にネガティブではない涙が見られることは報告されていたが(和田・吉田,2015),保育者の「直接観察」によっても,同様の結果が裏付けられた。
著者
佐藤 髙司
出版者
共愛学園前橋国際大学
雑誌
共愛学園前橋国際大学論集 (ISSN:2187333X)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-12, 2023-03-31

本論文は、大学における方言の保存・継承活動の1つのあり方を具体的に提示した実践報告及び考察である。方言の保存・継承活動は、方言が各地で異なるようにその地域や教育機関によって異なる様々な課題を有する。本実践における方言かるた制作の過程・手法では、群馬県という地域であることを考慮し小規模私立大学という研究機関に応じた工夫を施すことで課題の解決を試み実践が可能になったと考えられる。本論文では「ぐんま方言かるた」制作の過程を示したうえで、環境(言語・文化)、資金、連携・共同の面から制作の課題を示しその課題解決について方言研究や大学教育との関係から考察を行った。環境(言語・文化)面では、読み札の制作において方言辞典が存在しないことを群馬県方言研究の今後の課題としてとらえる一方で、かるたが盛んな群馬県特有の県民文化や志向が本企画・制作に優位に作用したと考察した。資金面では、その工面が最大の課題であるとし、本制作においてはその目的に地域教育への貢献と学生主体の活動への支援を掲げることで、地域共生と学生主体をモットーに掲げる私立大学において支援が得られやすくなり企画の実施・完成にまで至ったと評価した。連携・共同面では、方言かるたの商品化において異なる研究分野間の連携・共同は欠かすことはできないものであり、それゆえ研究者間の教育観の相違などが課題ではあるものの、小規模大学ならではの密な教員関係を生かした研究者間の連携・共同により課題解決に至ったと考察した。方言の保存・継承を目的とし、方言かるたを制作して商品化する学生プロジェクトを教育界や社会が受容するかということ自体が、方言教育や方言研究にとっては課題である。その意味で本実践は地方の小規模大学からの小さな挑戦とも言えるが、方言を楽しんだり方言に価値を認めたりする現代社会や多様化の時代が、本実践を根底で力強く支えてくれたと考える。
著者
古川 智恵子 中田 明美 フルカワ ナカタ C. FURUKAWA A. NAKATA
雑誌
名古屋女子大学紀要 = Journal of the Nagoya Women's College
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-12, 1985-03-01

"現代のように,上に衣服を着ける社会では,褌は下着として軽視されやすいが,本来は前布によって紐衣を飾るハレの衣装であった.従って,わが国においても,昭和初期頃まで漁山村を問わず,仕事着として用いられていた事は,納得のいく事である.人間は権力を現わす手段の一つとして衣を用いてその形を変え,幾多の装飾を施してきた.しかし,褌は表着のめまぐるしい変化に対して,簡略化される事はあっても,大きく変化する事はなかった.それは,褌が人間工学的な機能美を最も追求した「衣」だったからである.シンプルな衣によってアピールするには,素材が一番重要なポイントである.従って,長い歴史の中で木綿だけでなく,絹羽二重や縮緬等の高価な素材も用いられるようになったのである.褌は,現在のファッションの動向である,最小限度という「ミニマル」の真髄を何千年もの間保ち続け,生きた日本文化を今日に伝える貴重な文化財である.伝統ある褌の形態や機能性は,時代の新しい息吹きを吹きこまれながら,若者の下着やビキニに,今後も脈々と生き続けていくであろう.褌のルーツを探る事によって日本文化の一端にふれ,愛着やいとおしさを覚えるものである."