- 著者
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古川 智恵子
中田 明美
フルカワ
ナカタ
C. FURUKAWA
A. NAKATA
- 雑誌
- 名古屋女子大学紀要 = Journal of the Nagoya Women's College
- 巻号頁・発行日
- vol.31, pp.1-12, 1985-03-01
"現代のように,上に衣服を着ける社会では,褌は下着として軽視されやすいが,本来は前布によって紐衣を飾るハレの衣装であった.従って,わが国においても,昭和初期頃まで漁山村を問わず,仕事着として用いられていた事は,納得のいく事である.人間は権力を現わす手段の一つとして衣を用いてその形を変え,幾多の装飾を施してきた.しかし,褌は表着のめまぐるしい変化に対して,簡略化される事はあっても,大きく変化する事はなかった.それは,褌が人間工学的な機能美を最も追求した「衣」だったからである.シンプルな衣によってアピールするには,素材が一番重要なポイントである.従って,長い歴史の中で木綿だけでなく,絹羽二重や縮緬等の高価な素材も用いられるようになったのである.褌は,現在のファッションの動向である,最小限度という「ミニマル」の真髄を何千年もの間保ち続け,生きた日本文化を今日に伝える貴重な文化財である.伝統ある褌の形態や機能性は,時代の新しい息吹きを吹きこまれながら,若者の下着やビキニに,今後も脈々と生き続けていくであろう.褌のルーツを探る事によって日本文化の一端にふれ,愛着やいとおしさを覚えるものである."