著者
岡崎 具樹 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

PTHrPおよびPTHrP遺伝子に存在する、負のビタミンD反応性配列nVDREを組み込んだレポーター遺伝子の細胞導入実験によって以下の結果を得た。1)クロマチン免疫沈降(ChIP)法を用いて、HDAC2がビタミンD存在下で特異的に、nVDREを含むプロモーター周囲のクロマチンに動員されるのに対しHDAC1はビタミンD非存在下でのみ動員された。2)ビタミンD存在下ではHDAC2だけでなく、VDRもまた、このクロマチン構造をとったプロモーター領域に動員され、この2者の選択的動員がビタミンDによるnVDRE-VDRを介する転写抑制の主役を担っていると考えられた。これらがヒストンのアセチル化、脱アセチル化を反映していることは、抗アセチル化ヒストンH3、および抗アセチル化ヒストンH4抗体、さらにHDACの特異的阻害剤のトリコスタチンAを用いて行ったChIP法で確認された。3)これらのChIP法の結果は、nVDREを元来持っている内因性のPTHrP遺伝子プロモーター領域でも、異なるプライマーを用いたPCRで確認された。3)さらに免疫共沈降法によって、VDRとHDAC2の両者はお互いに結合しその結合がビタミンD依存的に増強することを確認した。4)ヒト乳癌MCF7細胞にエストラジールを投与して種々の抗体およびnVDREを用いた同様のChIPアッセイを行ったところ、ビタミンD存在下はかりでなくE2存在下でもHDAC2がクロマチン-プロモーター領域に動員され、さらにE2存在下ではERも同様に動員されており、これらの動員はnVDREのDNA配列特異的であった。さらに抗アセチル化ヒストンH3、抗アセチル化ヒストンH4抗体、および抗HDAC1抗体によってこれらの抗体が認識する各蛋白は、ビタミンDの時と全く同様にE2存在下での動員が阻止された。以上よりER、VDRのそれぞれのリガンドによる転写抑制機構に共通のメカニズムがあることが示唆された。
著者
加藤 茂明
出版者
東京農業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

ステロイド、甲状腺、ビタミンA,Dなどの脂溶性生理活性物質をリガントとする核内レセプターは、ひとつの遺伝子スーパーファミリーを形成する。核内レセプターはリガンド依存性転写制御因子であることから、リガンドの信号を遺伝子情報に伝達する最も重要な分子である。したがって、新たな核内レセプターの同定や、未知リガンドの同定は、直ちに新しい情報伝達系の発見につながるため、新規核内レセプターやそのリガンドの検索は極めて有意義であると考えられる。我々は核内レセプタースーパーファミリー内で最も相同性の高い領域をプローブとして新規核内レセプターを種々の臓器由来のcDNAライブラリーを検索し、未だに報告のないタイプのビタミンDレセプターの同定に成功した。特に、ビタミンDレセプターの異なる分子種(VDRアイソフォーム)を同定した。そこで本研究では、VDRアイソフォームのビタミンD情報伝達機構における機能およびそのリガンドの同定に焦点を絞り、研究を進めた。このVDRアイソフォームは今まで知られていたVDR遺伝子のエキソン8と9の間のイントロンがそのままエキソンとして用いられているものであることを、既にVDRcDNA,VDRゲノム構造の解析から明らかにしている。また、このイントロンの挿入によりVDRアイソフォームタンパクは既知VDRのC末端側が欠落することを明らかにした。さらに、このVDRアイソフォームを動物細胞内発現ベクターに組み込み、既に我々が報告しているようなin vitro解析により、転写促進能を調べたところ、dominant negative typeのアイソフォームであることを明らかにした。また、大腸菌内発現にも組み込み、大量合成を行ない、各種ビタミンD類縁体との結合能を調べている。また、このアイソフォーム特異的なcDNAを用い、Northern blot解析を行ない。このアイソフォームmRNAの発現が数多くのビタミンD標的器官でみられた。
著者
加藤 茂明 高田 伊知郎 山本 陽子 大竹 史明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本年度、研究実施計画にある2. 細胞及び軟骨細胞での各種核内受容体群の機能については、各種骨細胞種特異的受容体遺伝子欠損動物を作製、その骨変異を引き続き解析した。昨年度、骨芽細胞特異的なエストロゲン受容体欠損マウスの解析と骨細胞特異的な核内受容体欠損マウスを作出したが、骨芽細胞特異的なエストロゲン受容体欠損マウスに関しては、雄が骨形成と骨吸収が低下することによる低回転型の骨量減少を示し、この表現型についてさらなる詳細な解析を引き続き行なった。具体的には、昨年度骨芽細胞におけるエストロゲン受容体の骨量維持機構の分子メカニズムを明らかにする目的で、骨芽細胞特異的エストロゲン受容体ノックアウトマウスと対照群でマイクロアレイ解析を行ない、その結果発現変動を示した遺伝子がいくつか得られので、これら候補の遺伝子群の発現を定量的PCRなどにより確認し、有意に変動する遺伝子を同定した。また新たな骨細胞特異的なCreトランスジェニックマウス作出に関して昨年度は、Dmplプロモーターを用いたCreトランスジェニックマウスのキメラマウスの作出に成功し、1個体のキメラマウスを取得した。現在得られたキメラマウスと野生型マウスの交配を行い、染色体レベルでの相同組換えを確認している。さらに研究実施計画にある1. 破骨細胞内のゲノムネットワークの解析と3. 細胞及び軟骨細胞特異的な核内受容体転写共役因子群の生化学的同定については、成熟破骨細胞の機能においては性ホルモン受容体が極めて重要な役割を果たすことが分かりつつあるので、性ホルモン受容体群に結合する複合体群を生化学的に同定しその分子機構をさらに解析するために、タグ付きの性ホルモン受容体の発現ベクターを作製し、安定細胞発現株の作製を行っている。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

脳神経の可塑性は数多くの要因によって引き起こされている。その1つに脳の男性化と女性化を引き起こす性ホルモンが挙げられる。性ホルモンであるアンドロゲン(男性ホルモン)やエストロゲン(女性ホルモン)はこのような脳の性分化のみならず、性行動など脳の高次機能にも重要な働きをすることがわかっている。これら性ステロイドホルモンの分子作用メカニズムは、これらのホルモン特異的な核内レセプターを介した標的遺伝子群の発現制御であることがわかっている。そこで本研究では神経可塑性をステロイドホルモンによる脳の性分化という側面から捉え、まず脳で特異的に発現し、性分化を規定すると想定される性ステロイドホルモン1次応答標的遺伝子群の検索・同定を試みた。具体的には周生期もしくは性ステロイドホルモン処理したラットを用い、脳からホルモンに応答する遺伝子cDNAを、PCRを利用したDifferential Display法にて検索し、有望な数クローンを得た。現在これらcDNAクローンの全長cDNAの単離、及びこのcDNAクローニンがコードするタンパクの性状を解析しているところである。またこれらのクローンした因子の中で、特に脳の高次機能に関与していると想定されるものについては、ノックアウトマウスの作出を行い、in vivoでの機能を同定する予定である。一方昨年度、従来のエストロゲンレセプター(ERα)に加え、第2のER(ERβ)が発見されたため、脳内での各部位でのERα、ERβの発現を調べた。その結果、ERβは大脳皮質など、"新しい脳"に、ERαは下垂体など"古い脳"に発現していることがわかった。
著者
武山 健一 加藤 茂明 高田 伊知郎 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

申請者はポリグルタミン伸長異常タンパクによるSBMAモデルショウジョウバエを用いた神経変性誘導を指標とした(1)分子遺伝学的アプローチおよび(2)生化学的アプローチによる候補因子探索と、(3)その性状解析からクロマチン構造変換機能異常によるエピジェネティック制御破綻への情報基盤を構築した。(1)分子遺伝学的アプローチによる新規神経変性制御因子の探索SBMAモデルショウジョウバエのpolyQ-AR誘導性の個眼神経変性を指標として、神経変性の変動が観察された25系統を単離した。中でも神経変性を顕著に回復する遺伝子としてRbfの同定に成功し、RbfによるE2F-1転写活性化を破綻させている事を見出した(Suzuki et al.,投稿中)。(2)生化学的アプローチによる新規polyQ-AR相互作用因子の探索クロマチン画分からのpolyQ-ARタンパク複合体精製はトランスジェニックショウジョウバエ個眼より精製後、MALDI-TOF/MS法あるいはLC/MS法にて同定する。その結果、ヒストンシャペロンやelongation factor、RNA結合タンパク等を同定した。3 候補因子の性状解析とエピジェネティック制御情報基盤の構築(1,2)で同定した相互作用因子のクロマチン構造変換能をヒストン修飾や構造、クロマチン構造変換能に着目した生化学的解析を行った。具体的にはヒストンアセチル化、メチル化、ユビキチン化およびリン酸化assay、MNase assay、クロマチンsupercoiling assayやdisruption assayによりin vitro系を構築した。これに必須材料となるヒストン八量体およびDNAとのクロマチン再構築は、HeLa細胞核抽出液およびrecombinant系を両者で整えた。
著者
柳澤 純 武山 健一 加藤 茂明
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

女性ホルモンであるエストロゲンの低下は、女性において骨量の低下を招くことから、エストロゲンは、骨量維持に極めて重要な役割を担っているものと考えられている。エストロゲンは、細胞内に存在するα、βの2つのサブタイプのエストロゲンレセプター(ERα、β)によって受容される。これらのレセプターはリガンド誘導性の転写因子であり、エストロゲン結合によって活性化される。近年、レセプターのユビキチン化とプロテアソームでの分解が、転写活性化に重要であることが示唆され、注目を集めている。本研究では、ERαがエストロゲン存在下でも非存在下でも、ユビキチン・プロテアソーム系によって分解を受けることを明らかにした。エストロゲン非存在下では、ERαはCHIPと呼ばれる蛋白質によってユビキチン化を受け、分解されることが示された。CHIPはhsp70/hsp90/hsp40などのシャペロン蛋白質と複合体を形成し、フォールディングに異常のあるレセプターを選択的にユビキチン化し、分解へと導くことにより、レセプターの品質を向上する役割を担っていることが明らかとなった(EMBO J.Y.Tateishi et al.,2004)。一方、ERβは、ERαと同じくエストロゲン依存的分解を示すものの、その分子機構はERαと異なることが判明した。ERβの分解には、N末端に存在する領域が必須であり、この領域を持たないERβ変異体は、エストロゲン依存的な分解を示さなくなる。本研究者らは、すでにこの領域を認識して結合するユビキチン・リガーゼの単離に成功しており、解析を進めている。また、エストロゲン依存的な分解を示さないERβ変異体も転写活性を示すことから、レセプターの転写活性に分解は必要でないことが示唆された。今後、レセプターの分解と骨代謝制御について研究を進める予定である。
著者
河野 博隆 中村 耕三 山本 愛一郎 川口 浩 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

男性ホルモン・女性ホルモンそれぞれの骨量維持作用及び骨量の性差については、これまで不明な点が多く残されていた。主要男性ホルモンであるテストステロンが男性ホルモン受容体(AR)を介して機能しているばかりでなく、アロマターゼによって女性ホルモンに変換されてERを介しても機能する代謝系を持つことが、性ホルモンそれぞれの骨代謝機能に関する解釈を複雑にする一因となっていたと考えられる。我々はCre-loxP systemを用いて、従来の標的遺伝子組み替え法では不可能であった雌雄の男性ホルモン受容体遺伝子欠損(ARKO)マウスを作出した。骨組織を解析したところ、雄性ARKOマウスは雌雄両方の同胞野生型(WT)マウスに比べて、高代謝回転型の著しい骨粗鬆化を呈していた。これに対して、雌性ARKOマウスの骨量は雌性WTマウスと同等であり、骨量減少は見られなかった。雄性ARKOマウスの去勢実験からは骨代謝を調節している男性ホルモンは副腎由来ではなく精巣由来であることが示唆された。また、性ホルモンの負荷実験結果から、女性ホルモン受容体を介さない男性ホルモンシグナル固有の骨量維持作用が明らかとなり,雄性個体の骨量維持に男性ホルモンと女性ホルモンの両者が関与していることが定量的に示された。初代細胞培養系の解析では、男性ホルモンの骨量維持作用は、男性ホルモンが破骨細胞に直接作用するのでなく、骨芽細胞の破骨細胞形成支持能を抑制することで発揮されることが示された。
著者
加藤 茂明 四釜 久隆 柳澤 純
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、下記の3点に焦点を当て、核内レセプターに基づいた性ホルモン評価系を、分子生物学的手法に基づき動物細胞内での構築を試みた。1.性ステロイドレセプターと転写共役因子群とのin vitro相互作用を利用した性ステロイドホルモン様化合物の評価系:前年度に引続き2種のヒト女性ホルモンレセプター(ERα、ERβ)と男性ホルモンレセプター(AR)のAF-2と、SRC-1、TIF2とのリガンド結合依存的な相互作用を検出するin vitro GST pull-down系を構築し、この2者相互作用を誘導もしくは阻害を測定することで、ホルモン様活性の迅速な評価を試みた。2.転写促進能を利用した性ステロイドホルモン様化合物の高感度生物検定法:1で評価されたステロイドホルモン様化合物が生物活性を有するか否かを、更にステロイドレセプターの転写促進能で検定することで生物検定法とする。ERα、ERβ、ARのAF-2とGAL4DNA結合領域とのキメラタンパクを発現させ、GAL4との結合評価系有するリポーター遺伝子(ルミフェラーゼ)系で、リガンドの転写促進能を調べた。同様な手法で転写共役因子と核内レセプターの相互作用を酵母two-hybrid系にて構築した。この方法でアゴニスト活性のみが検出可能であるが、アンタゴニスト活性は、女性ホルモン(ERα、ERβ)、男性ホルモン(AR)存在下で同様の方法で評価可能であった。3.性ステロイドホルモン活性を規定するレセプター共役因子の同定:性ステロイドレセプター種(ERα、ERβ、AR)固有の共役因子の検索・同定を、酵母two-hybrid法を用いたcDNAスクリーニング、及び生化学的手法を用いて行った。この時第一には転写を促進する因子群の同定を目指したが、同時にクロマチン構造を制御する因子や、細胞周期を制御する因子などの同定も試みた。特に後者の因子の同定は、各種ホルモンの細胞複製・細胞増殖への作用を分子レベルで初めて明らかにできる足掛かりと期待された。
著者
尾形 悦郎 柳澤 純 市川 智彦 名和田 新 首藤 紘一 梅園 和彦 加藤 茂明 大薗 恵一
出版者
(財)癌研究会
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

ホルモン療法における作用機序及び耐性化の機序につき検討し、以下の結果を得た。1.ステロイド・ホルモンによる遺伝子抑制の機序をVDとPTHrP遺伝子とを例に検討し、PTHrP遺伝子上の責任promoter構造を決定。ついでそこにVDRとKu抗原が結合すること、Ku抗原によるVDRのリン酸化が抑制の作用機序である可能性を示した(尾形)。2.オーファン・レセプターとしてTixを新たに単離・同定した。Tixが神経芽細胞腫や結腸癌に発現すること、これの過剰発現が細胞増殖を強く誘導することを示した(梅園)。3.RAR・RXRに比較的特異的に結合・作用する薬物を合成し、それによりRAR・RXRの機能の解析を行った(首藤)。4.白血病細胞のグルココルチコイド抵抗性との関係で、PPARγの発現が極めて高いこと,増加が認められるGRβは核内で機能することを観察した(名和田)。5.ホルモン療法抵抗性前立腺癌の14%にAR遺伝子codon877の点突然変異を見出しこの変異を持つ癌細胞がアンチアンドロゲンによっても増殖刺激を受けることを示した(市川)。6.ビタミンD作用に拮抗する新規化合物(TEI9647)について検討し、これがVDRと結合し、そのco-activatorとの作用を阻害する可能性を示した(大薗)。7.乳癌患者に化療を施した場合のestrogenレベルの動態を明らかにした(堀越)。8.核受容体をめぐるステロイド・ホルモンと成長因子・サイトカインとの間のクロス・トークの例としてERがMAP-kinaseによりリン酸化され、AF1の転写活性が高まることを示し、このためのco-activatorの候補として68KD蛋白を見出した。また、TGFβの作用に関与するSmad蛋白がVDRと相互作用し、VDRの転写活性を増強することを見出した(柳澤)。
著者
加藤 茂明 河野 博隆 川口 浩 山本 愛一郎 山田 高嗣 中村 耕三 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

転写共役因子の骨組織における機能を解明する目的で、SRC-1(Steroid receptor coactivator-1)遺伝子欠損(KO)マウスを作出し、その骨組織の解析を昨年に引き続き行った。昨年、SRC-1KOマウスは、雄・雌ともに、代謝回転が亢進した高回転型の骨量減少を呈し、この原因はアンドロゲン及びエストロゲンによる骨量維持作用が抑制されているためであることを報告した。この骨量減少について、24週齢の大腿骨を用い、pQCTとμCTを用い、更に詳細に検討を行ったところ、海面骨の骨量は約40%低下していたにも関わらず、皮質骨の骨量は野生型(WT)とあまり差がみられなかった。海面骨・皮質骨におけるエストロゲン受容体(ER)の2種類のisoformの発現を免疫染色で確認したところ、海面骨ではERα・ERβ共に同程度に発現していたにも関わらず、皮質骨では主にERαのみが発現していた。骨芽細胞の培養系において、SRC-1はERβの転写活性は上げるが、ERαの転写活性にはあまり影響がみられなかったことから、海面骨・皮質骨でみられた表現型の違いは、SRC-1が主にERβによる骨量維持作用に関与しており、ERβの発現が多い海面骨で主に機能しているためと考えられた。雄においても、骨量の維持はアンドロゲン受容体(AR)のみでなく、ERにも依存していることが明らかになっており、ERのisoformの局在の違いが、雌同様に海面骨・皮質骨における表現型の違いを生じていると考えられた。また、KOで観察された骨量減少は、12週齢の時点では有意差がみられず、高齢化に伴い骨量減少が顕著になっていることが明らかとなった。これは、高齢化に伴い、フィードバック機構によって上昇した性ホルモンがシグナル伝達の障害を代償しきれなくなっているためと考えられた。また、性ホルモンと同じステロイドホルモンの一種であるプレドニゾロンの負荷実験では、骨量減少がWTとKOで同程度に見られたことより、SRC-1のグルココルチコイドシグナルへの関与は小さいことが明らかになった。
著者
加藤 茂明
出版者
東京農業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

ステロイド、甲状腺ホルモン核内レセプター群はリガンド依存性転写制御因子であり、リガンドである脂溶性ホルモンおよび脂溶性ビタミンの信号を遺伝情報に伝達する。このような核内レセプターを介する情報伝達系は組織の分化、増殖に代表される高次生命現象の制御に中心的な役割を果たしている。本研究では核内レセプターによる転写制御を分子レベルで明らかにすることを目的に複数の視点から解析を進めた。1)核内レセプター転写促進に関わる共役転写因子の検索および同定核内レセプターには転写を促進する領域が2箇所存在(AB,E領域)し、各々組織特異的な機能を有することが知られている。そこでビタミンD(VDR)、エストロゲン(ER)、アンドロゲンレセプター(AR)のAB,E領域を酵母転写制御因子GAL4のDNA結合領域に連結し、このキメラタンパクを用い、各領域特異的に作用する共役転写因子をYeastを使ったtwo hybrid systemにより哺乳類cDNAライブラリーから検索した。その結果各々有望な10数個のクローンを得ることに成功した。現在これらクローンについて解析を加えている。2)核内レセプターと基本転写因子との相互作用の検討上記のGAL4とのキメラタンパクあるいはfull length VDR, ER, ARやその欠失タンパクを大腸菌発現ベクターに組み込み、各種タンパクの発現に成功した。また既に得られているTFIIBタンパクとの相互作用を検討する系の確立を行なった。
著者
竹下 克志 阿久根 徹 佐藤 和強 星 和人 川口 浩 中村 耕三 加藤 茂明 池川 志郎 竹下 克志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では骨・軟骨の形成、再生におけるcystatin10(Cst10)の役割と制御機構を解明し、Cst10の医療応用を実現することを目的として行われた。Cst10はマウス軟骨細胞からクローニングされ、cysteine protease inhibitorであるcystatin familyに属する分子で、形態学的、分子生物学的手法を用いた解析により、軟骨細胞の分化後期に発現し、軟骨細胞の後期分化・アポトーシスの誘導に働くことを見いだした。更にCst10の生体内における高次機能を解明する目的で、Cst10ノックアウトマウス(Cst10KO)を作製した。Cst10KOは、成長・外見ともに、野生型マウス(WT)との顕著な差は見出されなかったが、骨組織を各種画像検査、および組織形態計測によって解析した結果、骨成長や骨代謝の著しい障害は見られなかったものの、成長板での石灰化層および一次海綿骨の減少が見られた。Cst10KOの成長板から単離した軟骨細胞培養により、分化に障害がみられたことから、軟骨細胞に発現しているCst10の役割は、細胞の最終分化の促進と基質の石灰化であることが明らかとなった。また、内軟骨性骨化が関与すると考えられる骨折治癒、変形性関節症における骨棘形成や、高齢化に伴う異所性石灰化においても、Cst10KOではWTに比し石灰化の著明な低下が認められた。またWTでは、これらの病態における石灰化部位においてX型コラーゲンを発現している肥大化した細胞に、Cst10が強く発現していた。これらの所見から、Cst10は、軟骨細胞石灰化作用を有し、生理的な骨成長や骨代謝には影響を及ぼさないものの、変形性関節症や異所性石灰化の病態に関与している事が明らかとなった。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史 高田 伊知郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

染色体構造調節複合体について、新規核内複合体群の検索及び機能解析を目的として、本年度は下記の3点に焦点をあて、研究を進めた。1.細胞種特異的複合体構成因子の同定:核内複合体の機能は細胞種特異的と考えられる。そこで既知複合体の既知構成因子を各種組織株に高発現させ、複合体を再精製することで細胞種特異的構成因子の同定を試みた結果、組織特異的な発現因子を含む複合体の存在が明らかになった。2.染色体構造調節複合体を共役する因子の分子遺伝子学的検索:染色体構造調節複合体と転写共役因子複合体の協調作用により、ヒストンタンパクの修飾やヌクレオソーム配列の再整備が行われ、その結果としてより転写制御反応を潤滑化もしくは難化すると予想されている。機能未知因子を検索・同定することを目的とし、ショウジョウバエに男性ホルモン受容体を発現するハエラインを確立している。そこで、特定染色体領域欠失、あるいは遺伝子が機能的に欠損したハエラインと掛け合わせることで、受容体機能に必須な共役因子を分子遺伝子的に検索・同定し、いくつかの候補因子を同定した。今後このようなアプローチによって同定された修補因子については、前述した生化学的アプローチにより、その核内複合体の同定、機能解析を行う予定である。3.染色体構造調節複合体構成因子群の生体内機能の解明:染色体構造調節複合体は、同様の活性を有するものが複数見出されており、in vitro系での解析では、その機能的生理的な差異は見出されないでいる。一方、多くの転写共役因子複合体構成因子群のノックアウトについては、胎生致死となるか、もしくは全く異変が見出されない例が多い。従って、これら複合体種特異的な機能を評価する強力なアプローチの一つとして、構成因子遺伝子欠損マウス(ノックアウトマウス)の作出が挙げられる。本年度は、染色体構造調節複合体種特異的構成因子に焦点を合わせ、Cre-loxP系を用いた時期・組織特異的遺伝子破壊法により胎生致死を回避し、当該因子の生体内高次機能を評価した。特に、前年度で同定された有力候補因子を同様な手法により、骨を中心に解析した。
著者
加藤 茂明
出版者
東京農業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

核内受容体による転写制御を分子レベルで明らかにすることを目的に複数の視点から解析を進めた。1)核内受容体の組織特異的転写調節機構の解析核内受容体のAF1の活性は一般に組織特異的かつ構成的であるが、この機構を明かにする目的でこの領域をリン酸化するキナーゼに着目した。今回は、AF1のリン酸化が転写活性を調節することが明らかにされERAF1のリン酸化について詳細に解析した。まずリン酸化部位がMAP kinaseのコンセンサス配列であることから、大腸菌で大量合成したERのAB領域タンパクを用いアフリカツメガエル胚より精製した活性型MAP kinaseによるリン酸化を検討したところ、セリン118が特異的にリン酸化されることを見いだした。次にリン酸化の転写活性への効果を検討する目的で、MAP kinaseの上流に存在するRas cDNAを導入したところ、AF1の転写促進能が増強されることがわかった。2)核内受容体の標的配列認識の特異性AGGTCAモチーフはレチノイン酸(RAX,RXR)、ビタミンD(VDR)、甲状腺ホルモン(TR)受容体の標的エンハンサー配列の基本モチーフであり、2個のDirect Repeat型(DR)のAGGTCAモチーフ間の距離を変えることで、標的特異性が生じる。今回はこのモチーフを3個並べた時のDRの標的特異性をCAT assayと精製受容体を用いたin vitro DNA結合実験により調べた。その結果モチーフを3個並べた時には従来報告に有るような標的特異性は消失することがわかった。この他にもいくつかの標的遺伝子のリガンド応答配列の同定、性状を明らかにした。
著者
加藤 茂明
出版者
東京農業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

ステロイド・甲状腺ホルモン核内レセプター群はリガンド依存性転写制御因子であり、リガンドである脂容性ホルモン及び脂容性ビタミンの信号を遺伝情報に伝達する。このような核内レセプターを介する情報伝達系は組織の分化・増殖に代表される高次生命現象の制御に中心的な役割を果たしている。従ってこれら核内レセプター群の共通する情報伝達経路や各レセプター固有の情報伝達経路間でのクロストークを明らかにすることは核内レセプターを介する情報伝達機構を知る上で必須の課題である。核内レセプター研究に標的遺伝子組換え技術が導入された結果、当初予想もされなかったレセプターの機能が浮き彫りにされるようになってきた。そこで当研究室ではVDR遺伝子欠失マウスを作製した。1)VDR遺伝子欠失マウスの作製 VDR遺伝子欠失ホモ接合個体を作製した。続いて常法に従い標的遺伝子のゲノム解析や発現量を解析している。またVDR欠失に伴い現われる骨組織や、腎臓での機能障害を調べる。また発生初期や胎児での骨形成について詳細な解析を加える。2)RXR-VDR2重欠失マウスの作製 RXR、VDRホモあるいはヘテロ結合個体を交配させることでRXR-VDR2重欠失マウスを作製する予定である。RXRβ,γ欠失マウスは既にフランス・ルイパスツール大・医・P. Chambon教授より供与された。
著者
加藤 茂明
出版者
東京農業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

ステロイド・甲状腺ホルモン、ビタミンA・D核内受容体群は、一つの遺伝子スーパーファミリーを形成するため、互いに構造・機能が類似している。これら核内受容体群は、そのリガンドの知られたものの他に、リガンド不明のいわゆるオ-ファン受容体の存在が知られている。オ-ファン受容体の中には、未だ同定されていない脂溶性生理活性物質がリガンドとして働く可能性が考えられており、これら新規脂溶性生理活性物質が同定されると、オ-ファン受容体を介する新たな情報伝達機構が明らかにされるばかりでなく、既存の情報伝達系への関与が明確になると考えられている。本研究では、特に生理活性体の他、代謝誘導体の多いビタミンA、Dに着目し、これら既知の核内受容体cDNAを用い、関連受容体の検索を、ラット各臓器由来のcDNAライブラリーより検索した。その結果、数種のオ-ファン受容体を見出したほか、新たなビタミンD受容体アイソフォーム(VDR1)を見出した。VDR1は野性型(VDR0)に対し、その機能を負に制御するdominat negative型のアイソフォームであることが明らかになった。更にラットVDR遺伝子構造を解析した結果VDR1は、イントロン8がalternative splicingの際、残された(intron retentin)結果生じるアイソフォームであることが証明できた。現在までに、VDRにはアイソフォームの報告はなく、ビタミンDに多くの活性体が存在する事を考えあわせると、VDR1は、これらの一つをリガンドとする可能性が予想された。また同様の手法を用い、今回取得されたオ-ファン受容体の性状を解析している。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、標的組換え動物(いわゆるノックアウトマウス)などの分子生物学的手法を用いることで、今まで知られていなかったビタミンA、Dの作用を探ることを目的に以下の2点に焦点を当て、これらビタミンの遺伝情報を介した分子メカニズムの解明を試みた。1. 新たなビタミンA、D標的遺伝子の検索:ビタミンA、Dの広汎な生理作用から、無数の標的遺伝子群が存在すると予想されている。同定された標的遺伝子群のみでは、これらビタミンの生理作用を十分●説明できないのは明らかである。そこで上記のレセプター欠損マウスでは、ビタミンAあるいはビタミンDの標的遺伝子の発現が極端に変化していると予想されているため、この標的遺伝子群の発現の差に着目し、RT-PCRを利用したDiffential Display法を用いて標的遺伝子cDNAの単離・同定を試みた。更に得られたcDNA断片をプローブとして全長cDNAの取得を試みた。またクローン化したcDNAを用いコードするタンパクの機能をin vitro系で解析するとともに、当該遺伝子のノックアウトマウスを用いることで全動物での機能を検討した。2. ビタミンA、Dレセプター欠損マウスにおけるビタミンA、Dの代謝:ビタミンA、Dの生合成及びその代謝は複雑な制御を受け、生体には数多くの類縁体が存在する。これらの生合成・代謝の制御を行う当該酵素の性状は不明なものが多い。レセプター欠損マウスは究極のビタミン欠乏動物であるため、これら生合成・代謝酵素活性は大きく変動していると考えられる。そこでこれらのマウスに活性型または代謝型のビタミンを投与し、その生体内での動態を探った。また動態を経時的に迫ることで、各種酵素の性状を検討した。
著者
加藤 茂明 武山 健一 高田 伊知郎 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

ステロイドホルモン核内受容体の転写制御機能を分子レベルで理解する目的に、性ステロイドホルモン受容体の転写促進能及び新たな核内受容体転写共役因子の検索・同定を試みた。多くの前立腺癌や乳癌の発症は、アンドロゲンやエストロゲンといった性ステロイドホルモンに依存する。性ステロイドホルモンが標的細胞内において機能を発揮する主要な経路は、核内受容体を介した転写制御である。このような転写制御には転写共役因子複合体群が必須であり、クロマチンリモデリングやヒストン修飾といった様々な異なる機能の複合体群が同定されてきている。性ホルモン依存性癌の発症メカニズムを解明するためには、未知の複合体群の同定とその複合体機能の解明が必要である。そこで我々はエストロゲン受容体α(ERα)と機能的に相互作用する複合体の同定を試み、スプライソソーム主要構成因子複合体を同定した。更に、この複合体とERαとの結合はMAPキナーゼによるERαのリン酸化に依存することを見出した。またこの複合体はERαの標的遺伝子群に対してスプライシング効率を調節する機能をもつ。このような機能は、乳癌に関わりの深いエストロゲンシグナルと成長因子シグナルとのクロストークがmRNAスプライシングの調節を介して乳癌発症に関わる可能性を示唆する。
著者
加藤 茂明 今井 剛
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

ステロイド・甲状腺ホルモン、ビタミンA・D核内レセプタースーパーファミリーは、リガンド誘導性転写制御因子であり、リガンド結合依存的にリガンドのもつ信号を遺伝情報に伝達する。核内レセプターが基本転写因子群とともに転写を促進する際には、これら2者間を機能的に介在し、両者に直接結合されている転写共役因子群の存在が知られている。更に現在までに同定されている転写共役因子と核内レセプターの相互作用は、リガンド活性とほぼ相関することもわかっている。そこで本研究では、核内レセプターによる転写促進能の分子メカニズム解明を目的に、核内レセプターと相互作用する新規共役因子を検索した。またリガンド結合によるレセプターの立体構造変化の可能性についても探った。その結果、ビタミンDレセプター(VDR)に特異的に相互作用する転写共役因子の同定に成功した。これらの因子は核内カルシウム結合タンパクであり、またVDRとの相互作用はカルシウム存在量によって左右されることがわかった。現在これら新規因子と、既に同定されている共役因子群との相互作用についても現在解析しているところである。また同様にエストロゲンレセプター、ミネラルコルチコイドレセプターとの共役転写因子群の同定を急いでいる。またエストロゲンレセプターのリンガド結合による構造変化を調べたところ、レセプターN末端とC末端が、リガンド依存的に相互作用し、かつこの相互作用には共役因子が関与することが明らかになった。
著者
門 勇一 島崎 仁司 品川 満
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

人体近傍微弱電界通信の応用分野の拡大を狙って、カード型の装着型トランシーバと環境埋め込み型トランシーバを試作した。ユースケースに即して、両トランシーバ間の通信品質を評価するシステムを構築して、パケット誤り率を評価した。また、EO-OEプローブを開発して、実人体上や人体等価ファントム上での信号伝搬損失を正確に測定すると共に、電磁界シミュレーションによりその妥当性を確認した。ユニバーサルインターフェイスとして社会実装するための課題に対して、電界通信システムの等価回路モデル化に取り組み、通信品質改善や信号干渉抑制に対する指針を明らかにした。