著者
石原 大輔 村上 直
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

昆虫羽ばたき飛行を規範とする微小飛翔ロボットの可能性は,マルチフィジクスの複雑さと加工技術の限界から未だに十分明らかになっていない.そこで本研究では,最初に,マルチフィジクス計算力学手法を開発し,それにより昆虫羽ばたき飛行の力学を精緻化した.次に,それらを用いて,昆虫羽ばたき飛行を規範とする1mmスケールのモデル翼を2.5次元設計空間内で探索し,満足解の集合(デザインウィンドウ)が存在することを示した.最後に,MEMSプロセスに基づくマイクロマシニングを開発し,それを用いて,モデル翼を実空間で作成した.以上により,微小飛翔ロボットの可能性を明らかにした.

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1944年07月17日, 1944-07-17
著者
高木 芳弘 石川 潔
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究ではパルス光の照射による磁気過程の高速応答を実時間で追究することを目指している。本補助金で購入した広帯域デジタルオシロスコープを用いて時間応答と信号処理能率の改善により、光誘起スピン偏極機構の新たな解明と、合成した化合物溶液においてスピンの歳差運動によるフリーインダクションディケー(FID)を初めて観測することができた。1)磁場存在下での誘起スピン偏極の起源の解明昨年度行った酢酸銅と鉄明礬結晶における磁場下での光の角運動量を必要としないスピン偏極の生成について、その由来を明らかにした。酢酸銅は複核錯体を形成することが研究当初不可欠であると予測されたが、一方、磁場に対して同様の振舞を示す鉄明礬は単核錯体である。さらにスピン3/2のルビーでは以前に得られていた準位交叉の磁場近傍での状態混合によるスピン偏極の信号も同様の起源で説明できることがわかった。この孤立スピン系における実験的証拠から、複核形成は誘起スピン偏極の必要条件ではなく、多重度が3以上で、かつ微細構造分裂を有するスピン系で磁場の印加により状態混合を形成することが起源であると断定した。鉄三価と同じ多重度のマンガン錯塩では信号が得られないが、鉄と異なり超微細分裂が微細構造より大きく、スピン偏極を与える状態混合の形成が十分でないことに起因するとした(投稿準備中)。2)スピンの歳差運動によるフリーインダクションディケー(FID)の観測広帯域デジタルオシロスコープにより時間応答と処理速度の向上が図られ、その結果、鉄三価キレートのアセトン溶液において、励起円偏光ビームと垂直の磁場の印加によりFIDが初めて観測された。振動の周波数は印加磁場と共に増大し、歳差運動の様子が顕著に認められた。これは希釈スピン系であるルビーで古く見出されたものと異なり、高濃度の室温凝縮系での直接検出は我々の知る限り初めてである。これによってマイクロ波を使わずに任意の磁場でのパルスESRと等価な知見が得られることになる。現在詳細な実験を進めている。
著者
石崎 研二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.747-768, 1992-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
51

本稿は,立地-配分モデルを用いてクリスタラー中心地理論における供給原理の定式化を試みるものである.クリスタラー中心地理論では, (a) すべての消費者がすべての財を入手しうる, (b) 財は中心地によって包括的に保有されるという2つの制約条件,および財の到達範囲の概念を鍵として中心地システムが構築される.こうした特性は,立地-配分モデルにおけるカバー問題としての性格を有している.そこで本稿では,供給原理を集合カバー問題として定義し,理論の仮定を便宜的に満たした仮想地域にモデルを適用した.その結果,階層を下位から上位へと構築する方法では,モデルは供給原理に基づく中心地システムを正しく導出するものの,逆の構築方法では異なるシステムを導いた.ゆえに後者の方法については,さらに,最適な階層構造の形成を加味した配置原理の解釈が必要となることが,両構築方法の結果の比較より示唆される.
著者
平井 啓久 古賀 章彦 岡本 宗裕 安波 道朗 早川 敏之 宮部 貴子 MACINTOSH Andrew カレトン リチャード 松井 淳 中村 昇太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

病原体が通常宿主特異性を持つために、宿主と病原体は頑健な宿主寄生体関係を示す。これを病態生理的発現型と見なすことができる。その特性を基盤にして、アジアの霊長類(特に多様性の高いテナガザル類ならびにマカク類)に焦点をあて、これらに感染する病原体(ウイルス(サルレトロウイルス)、細菌(ヘリコバクター)、寄生虫(マラリア原虫))との共進化を以下の項目からひもとく。(1)双方の遺伝子の分化機構を明確にする。(2)霊長類の生物地理学的分化との総合的見知から、病原体と宿主霊長類の双方の進化史を描く。(3)宿主応答機構ならびにゲノム内分化機構から宿主寄生体関係史を遺伝生理学的に明らかにする。
著者
新谷 尚弘 五味 勝也 藤田 翔貴 竹越 祐太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

酵母はパンの製造やアルコール発酵に用いられる微生物である。酵母は環境中にグルコースが存在すると、乳酸やピルビン酸の取込みを制限する。その機構の一つにモノカルボン酸輸送体Jen1のグルコース誘導性のエンドサイトーシスを介した分解(グルコース不活性化という)が挙げられる。Jen1のグルコース不活性化はRsp5-Rod1ユビキチンリガーゼ複合体によるユビキチン化が引き金となり起こる。私たちは、Jen1のC末端の20アミノ酸の領域がRsp5-Rod1複合体によって認識され、膜輸送体のグルコース不活性化を引き起こすのに十分であることを明らかにした。
著者
加藤 茂明
出版者
東京農業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

ステロイドホルモン核内受容体群はリガンド誘導性転写制御因子である。ステロイドホルモン作用発現を理解する上で、これら受容体の性状を明らかにすることは必須の課題である。特に核内受容体の主たる機能である転写促進能の機構は、主としてトランスフェクション転写系により詳細な解析が行なわれてきたが、今尚不明な点が多いのが現状である。特に核内受容体の標的エンハンサーは数多くのコンセンサス配列の同定が行なわれてきたが、核内受容体タンパク群の共通機能の理解に比較し、今だに統一的な法則が得られていない。我々はすでにオバルブミン遺伝子5′上流に新しいタイプのエストロゲン応答配列(OV-ERE)を見出した。OV-EREは、従来知られていたエストロゲン応答配列とはDNA構造が大きく異なりむしろレチノイン酸(RAR、RXR)、ビタミンD(VDR)、甲状腺ホルモン(TR)受容体の標的配列に近い構造であった。そこで本来のOV-ERE配列とともに合成DNAを用いた人工的な配列を用い、エストロゲン受容体(ER)、RAR、RXR、TR、VDR、による転写促進能を調べた。その結果従来より知られていたコンセンサス配列の他に、TRを除く他の核内受容体すべての標的エンハンサーになりうる配列を見出した。これらの知見が、トランスフェクション転写系(CAT assay)によるものであったので、次にin vitro DNA結合実験(ゲルシフト法)により受容体とDNAとの結合能を調べた。その結果転写促進能とほぼ比例して各受容体はDNAと結合することがわかった。以上の結果からある種の標的エンハンサーは一種の受容体のみならず複数の受容体によりその機能が調節されることがわかった。このことは、ステロイドホルモンや脂溶性ホルモン間のクロストーク機構の一端を明らかにするものであった。
著者
加藤 茂明 四釜 久隆
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、核内レセプターの転写促進能に基づいたホルモン評価系を、分子生物学的手法に基づき動物細胞内で構築し、この評価系をもとに以下の2点に焦点を当て、核内レセプターと共役因子との機能的相互作用を中心としたホルモン関連化合物の新たな評価系の構築を試みた。1. ステロイドレセプター群に相互作用する共役因子群の検索及び同定:前年度でクローニングされた共役因子cDNAは断片なので、この断片を用いた生体内での発現部位(臓器)を同定し、発現部位由来〓DNAライブラリーから全長cDNAを取得した。更に全長cDNAを用いることでtransient expression系にてcDNAがコードする因子の転写促進能を調べた。またステロイドレセプターを強発現させた培養細胞(いわゆるstable transformant)を確認し、この細胞核抽出液からレセプター特異的な抗体によりレセプター複合体を免疫沈降させ、この複合体からレセプターと結合している因子群を単離後、ペプチドシークエンンスからcDNAの取得を試みた。取得されたcDNAのコードされた因子の活性は上記の手法と同様に行い、転写共役因子であるか否かを検討した。2. 機能を保持したステロイドホルモンレセプターを用いてのホルモン結合能の評価系の確立:ステロイドレセプターへのステロイドホルモンの結合能は、通常レセプターを含む細胞由来の核抽出液が古くから用いられてきた。しかしながら、生体組織より調製された核抽出液はロット差が大きく、それ以上に調製は煩雑である。本年度では、生合成させたタンパクが最も本来の主体構造を取ると考えられている昆虫細胞内での大量発現を、バキュロウイルス系を用いて行った。次に発現したレセプタータンパクの機能を、in vitro転写系で調べることで検定し、レセプターの主機能である転写促進能を有したレセプターの大量発現系の確立を試みた。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ビタミンDはカルシウム代謝に中心的な役割を果たし、更に細胞分化・増殖、また癌化などにも深く関与することが知られている。同じビタミンであるビタミンAをリガンドとするレセプターには、RAR(α、β、γ)、RXR(α、β、γ)などがあり、リガンドに対し複数のレセプターが存在する。しかしながら、ビタミンDではそのレセプターはVDR1種のみが報告されており、数多く生体内に存在するビタミンD類緑体群を考えると、VDR1種のみでは十分その生理作用を説明することができない。本研究では、VDRと類似したオ-ファンレセプターを探す過程で見出したVDRアイソフォームVDR1の機能解析と、他のビタミンD類緑体との関連を探った。その結果、VDR1は本来のビタミンDレセプター(VDR0)mRNAのスプライシングによって生じるアイソフォームであり、いわゆるイントロンがスプライトアウトされないものであった。このイントロン中には終止コドンが存在するため、VDR1タンパクはC末端に存在するリガンド結合領域を大半失っており、活性型ビタミンD[1α、25-(OH)_2D_3]では結合せず、逆にVDR0の転写促進能を阻害するいわゆるドミナンドネガティブ型のVDRであることがわかった。そこで更にビタミンD関連化合物、また未然の類似体による転写促進能を調べたところ、いずれもVDR1による転写促進能を活性化することはできなかった。一方、VDR1の標的エンハンサー配列を各種ビタミンD応答配列を用い、VDR0に比較したところ、いずれも差異が認められず、同じ配列を認識すると考えられた。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究では神経可塑性を性ステロイドホルモンによる脳の性分化という側面から捉え、以下の3点に焦点を当て、特に脳で特異的に発現する性ステロイドホルモンの1次標的遺伝子群の検索を試みた。1)脳内で特異的に発現する性ステロイドホルモン標的遺伝子群の検索:出生直後の実験動物に大量の性ステロイドホルモンを投与すると、その後の性行動に性転換が見られる。そこでこのような性ステロイドホルモンの効果が見られる胎児あるいは出生直後のラットを用い、大量の性ステロイドホルモン投与直後の脳より、急速に誘導される標的遺伝子群をDifferential Display法(D.D.法)にて検索した。同時にこの時期での野生型ラットを用い、雌雄いずれか特異的に発現する遺伝子を同様の手法で検索した。得られたcDNAクローンは定法に従い、コードするタンパクの機能や脳内での局在をin situ法などにより調べた。2)新たなエストロゲンレセプター(ERβ)の脳での発現部位の同定:既知のエストロゲンレセプター(ERα)の発現部位は、視床下部、下垂体等に限定されており、内分泌系でのエストロゲン作用を裏付けるものであった。そこで既にPCR法によって取得したラットERβcDNAを用い、脳の各部位での発現を検討した。3)脳特異的な核内レセプター共役転写因子の検索:核内レセプターは転写制御因子として作用する時には、いわゆる共役転写因子とともに転写制御を行うと考えられる様になってきている。そこで脳特異的な核内レセプター共役因子を、ER及びアンドロゲンレセプター(AR)をプローブに酵母two-hybridシステムにより脳由来cDNAライブラリーより検索した。
著者
加藤 茂明
出版者
東京農業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

核内受容体による転写制御を分子レベルで明らかにする目的で以下の2点に絞り研究を進めた。1.核内受容体標的エンハンサー配列認識の特異性と非特異性我々はすでに従来より知られてきたコンセンサスエストロゲン応答配列(ERE)とは全く異なるタイプのERE(OV-ERE)が、主要卵白タンパクであるオバルブミン遺伝子プロモーターに存在することを証明した。OV-EREでは多くの核内受容体の標的結合部位であるAGGTCAモチーフが計4個互いに100bp以上も離れて存在していた。そこで、ERのOV-ERE認識の特異性を検討する目的で、2個のAGGTCAモチーフ間のスペースが離れた配列への各核内受容体(VDR,TR,RAR,RXR)の標的特異性を調べた。その結果、2つのモチーフ間のスペースが狭い場合には標的特異性が現れるのに対し、スペースが広い(10bp)場合には、特異性が消失することを見出した。また、この際、DNAに高次構造の変化が生じることも見出している。2.核内受容体群の発現調節レチノイド受容体(RAR,RXR)遺伝子群の発現に及ぼすビタミンA、ビタミンD、甲状腺ホルモンの効果を調べた結果、RXRbetaは正、RXRgammaは負に甲状腺ホルモンによって制御されることを見出した。このことは、核内受容体遺伝子自身の発現が関連するリガンドによって制御される複雑なネットワークが存在することを示したものである。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

現在のところmRNA分解制御の分子メカニズム自体が不明な点が多く、その制御メカニズムを明らかにすることはステロイドホルモン依存的mRNA安定化(不安定化)制御機構解明に向けて必須の課題である。そこで本年度は特に以下の3点に焦点を当て検討した。1)AUUUA配列結合タンパクの機能解析:新規AUUUA配列結合因子(AUF2)のmRNA分解における役割をin vitro mRNA分解活性測定系に導入し検討した。本システムの概要は血清刺激プロモーターに繋いだレポーター遺伝子(β-globin遺伝子)をNIH3T3細胞に導入し、血清刺激により遺伝子産物を一過的に誘導した後、そのmRNAの残存量をノザンブロットにて測定することにより半減期を算出した。2)AUUUA配列結合タンパク共役因子群の検索:AUUUA 配列上に形成される複合体の構成因子を明らかにする目的で酵母を用いたTwo-hybridシステムを導入し、AUF2をbaitにしてヒト脳由来cDNAライブラリーからTwo-hybridスクリーニングによりAUF2とタンパク-タンパク相互作用する共役因子を検索した。3)AUUUA配列結合タンパク共約因子の機能解析:(2)のTwo-hybridスクリーニングによって得られたAUF2結合因子をコードするcDNA断片を用い、ヒト脳由来 cDNAライブラリーから全長cDNAを取得した。得られた全長cDNAを(1)のin vitro mRNA分解活性測定系に導入し、因子の存在下あるいは非存在下においてレポーターmRNAの半減期を測定することによりmRNA分解制御に対するその因子の関与を検討した。更に因子の存在下においてステロイドホルモン存在下および非存在下でも同様にレポーターmRNAの半減期を測定し、ステロイドホルモンの影響も併せて検討した。
著者
藤井 義明 半田 宏 加藤 茂明 石井 俊輔 鍋嶋 陽一 山本 雅之 岩渕 雅樹 梅園 和彦
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1997

平成13年度の取りまとめの期間を除く実質4年間に発表された論文数は900報になり、一論文当たりの平均インパクト係数は8.3で、数値の上からも本研究は遺伝子発現の研究領域に実質的な貢献を果たしたものと考えられる。研究はA)転写因子間の相互作用と機能発現の分子機構。B)転写因子の標的遺伝子及び生物作用の個体レベルでの解析の2つの柱のもとに行われ、総括班はこれらの2つの研究の連絡、調整及び研究成果の発表等を行なった。主な研究成果は次の通りである。基本転写因子TFllH、TFllEなどの複合体のサブユニット構造をリコンビナントタンパク質より再構成により確立したこと。転写伸長反応にも正負の調節機構があり、その調節因子群を遺伝子クローニング法によって明らかにし、それらの作用機構を解明したこと。転写共役因子については新しい共役因子MBF1、UTF1を発見し、これまで癌遺伝子として知られていたSkiが抑制的な転写共役因子として働くことを示した。また広範な転写因子の共役因子として働くCBPについてはさらにGLl3、AhR/Arnt、HlF-12、lRF3などにも共役因子として働くことやβ-カテニンと結合してPML複合体に局在することやCBPとP53の相互作用をβ-カテキンが阻害して、P53の転写活性を抑制することを示した。転写因子と結合して、その活性あるいはタンパク質の濃度を調節する因子としてHSP90他にKeap1を発見し、Nrf2r転写因子の調節に働くこと、そのKOマウスを作り、機能を詳細に検討した。また、こと、幹細胞の末分化状態の維持に抑制性の転写因子Hes5、Hes3などが働いていること、多数の転写因子の構造と機能が遺伝子クローニング及び培養細胞での発現や遺伝子欠失動物の作製によって明らかにされた。
著者
加藤 茂明 柳澤 純
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、下記の3点に焦点を当て、核内レセプターリガンドとして働く新規低分子量脂溶性生理活性物質同定を試みた。1.RXRとのヘテロ2量体化を利用した新たな核内レセプターの検索:VDRをはじめとした非ステロイドホルモン型レセプターは、RXRとヘテロ2量体化することでDNAに結合、レセプター機能を発揮することが知られている。このヘテロ2量体化に着目し、RXRをプローブとしてこれと会合するレセプターを検索し、これを酵母内で発現させ、RXRとのヘテロ2量体は、タンパク-タンパク相互作用に基づくtwo-hybrid法にて検出した。取得されたcDNA断片を用い、cDNAライブラリーから全長cDNAの取得を試みた。2.組織特異的ビタミンDレセプター欠損マウスの作出と表現型の解析:標的組換えによるVDR欠損マウスの表現型の解析を行った結果、重篤なクル病を呈しており、骨形成、皮膚などに明らかな異常が認められた。更にRXRβとRXRγの2重欠損マウス(VDR-RXRβ、VDR-RXRγ)を作製し、これらの異常がVDR単独欠失より軟骨で強調されることを見出した。これら動物の表現型を詳細に解析することで、皮膚、軟骨組織においてはビタミンDが血中カルシウムを介さず直接作用することがわかった。既にCreを発現させる皮膚特異的プロモーター(K_1、K_2、K_5、K_<10>遺伝子プロモーター)や軟骨特異的プロモーター(プロコラーゲンII型遺伝子プロモーター)をもつ発現ベクターの作製に成功しており、現在共同研究者であるフランス・パスツール大学、P.Chambon教授らのグループとともに、このようなCreをもつトランスジェニックマウスを分担して作製しているところである。3.新規核内レセプターリガンドの同定:上記の方法にて得られた新たなレセプターリガンド同定を目的にレセプターの転写促進能を活性化するリガンドを検索した。得られた新規レセプターcDNAを用いた発現ベクターにより、動物細胞内もしくは酵母内で発現させ、血清あるいは食物中の低分子量脂溶性画分を培地中に加えて、転写促進能を指標にリガンドを検索した。
著者
藤井 義明 萩原 正敏 加藤 茂明 審良 静男 久武 幸司 半田 宏 大熊 芳明 上田 均 箱嶋 敏雄 梅園 和彦
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本計画研究班の研究課題は、転写因子も含めて転写因子間の相互作用が最終的に遺伝子発現としてどのようにアウトプットされるかというメカニズムを分子のレベルで解明することを主な目的としている。Preinitiation complexの構成成分であるTFllHの9つのsubunitsをリコンビナントDNAを用いて発現させ、再構成に成功し、各々のサブユニットの機能を検討する系が確立された。またこの系を用いてERCC3のヘリカーゼ活性が転写活性化のプロモーターエスケープの段階に重要であることを示した。転写伸長反応もDSlFとNELFの抑制とpTEFbとFACTの活性化系によって精密にコントロールされていることが明らかにされた。DSlFの一つサブユニットp160のC末端の変異はゼブラフィッシュでは神経の発達異常を引き起こすことが分かった。広範な転写因子の共役因子として働くcbpについては、さらにgi3,AhR/Arnt,HlF-1α,lRF3などの共役因子として働くことやβ-カテニンが阻害して,P53の転写活性を抑制することを示した。2ハイブリッド法によってMBFl,UTF1,P68/P72が各々転写因子FT2-F1,RAR,ERα,βの転写共役因子として働くことを明らかにし、その構造を決定した。ノックアウトマウスを作製することによってAhR,AhRR,STAT3などの機能解析を行なった。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

染色体構造調節因子複合体について、新規複合体の同定及び構成因子の検索や機能調節を調べる事を目的として、15年度は、前年度の1〜3の課題を継続するとともに、特に課題4に焦点を当て、研究を進めた。1.新規ゲノム発現制御複合体の同定:in vitro転写系及びクロマチンヌクレオソーム再構成系(当研究室で研究済み)を用いてHeLa細胞核抽出液から精製し、精製された複合体構成因子群をMALDI-TOFMASSにより同定した。更にcDNAスクリーニングにより各々の構成因子の機能を調べた。2.細胞種特異的複合体構成因子の同定:これら核内複合体の機能は細胞種特異的と考えられる。そこで既知複合体の既知構成因子を各種組織株に高発現させ、複合体を精製することで細胞種特異的構成因子を同定した。3.染色体構造調節複合体の機能調節の分子メカニズムの解明:最近ではアセチル化、ユビキチン化などの各種タンパク修飾によって機能調節される例が報告されているが、染色体構造調節複合体の構成因子のタンパク修飾による機能調節は全く不明である。そこで、既知核内レセプターコアクチベーター(p160、p68/ファミリー)を用い、各種培養細胞での他の複合体構成因子を同定し、構成因子の複合体構成能とタンパク修飾による機能調節の可能性を検討した。4.ショウジョウバエを用いた新規染色体構造調節のスクリーニング:申請者らは既に、ヒトアンドロゲン(男性ホルモン)レセプターを組織特異的に発現するショウジョウバエのラインを確立し、リガンド依存的な転写促進をGFPで検出することに成功した。本システムを用いることで哺乳類特異的染色体構造調節因子を発現する各種ラインを確立し、次に特定染色体部位を欠失した各種変異体を交配することで、染色体構造調節因子機能に必須な因子を分子遺伝学的にスクリーニングを行った。更に同定された因子をプローブに複合体を同定及び解析した。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史 高田 伊知郎 大竹 史明 武山 健一 北川 浩史 大竹 史明
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌などのホルモン依存性癌の治療薬として用いられている「選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)」は、組織特異的な転写制御能を発揮するがその分子機構は明らかではない。我々は、SERM依存的にエストロゲン受容体ERαに結合するタンパク質群の精製を試み、ブロモドメインを有するBRD4を同定した。BRD4はpositive transcription elongation factor b(P-TEFb)と共に転写伸長反応を促進する因子であることから、SERMによる転写制御は、転写伸長の促進/抑制による可能性が示唆された。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究では以下の4点に焦点を当て、核内レセプターの高次機能を明らかにする目的で標的組換えマウスを用い解析を行った。また核内レセプターの細胞核内での機能を明確にする目的で、核内レセプターのリガンド結合による構造変化の解析、及びこの変化を認識する共役因子の同定を行なった。1)脂溶性ビタミンレセプターの高次機能の解析:脂溶性ビタミンDレセプター(VDR)は1種、ビタミンAには6種のレセプター(RARa,b,g及びRXRa,b,g)が存在する。VDRはホモ2量体もしくはRXRa,b,gのいずれかとヘテロ2量体を形成し、ビタミンD標的遺伝子の転写を制御する。このVDR KOマウスは授乳期以降にのみ障害を示すことが明らかになった他、性生殖系に障害がみられ、全く予期されなかった表現型がみられ更に解析を進めた。2)核内レセプターのリガンド結合による構造変化:核内レセプターはリガンド結合により転写促進能を得るが、この際レセプターの立体構造変化を伴うと考えられている。特にレセプターN末端とC末端に存在する2箇所の転写促進領域はリガンド結合依存的な機能上の相互作用が予想されている。そこでERのAF-1、AF-2の相互作用をyeast、mammalian two-hybrid法にて検討し、さらに相互作用する領域を同定した。3)核内レセプターの共役転写因子の検索:ER、VDR、アンドロゲンレセプター(AR)、ミネラルコルチコイド(MR)のAF-1、AF-2をプローブに、yeast two-hybrid法にて各種cDNAライブラリーから共役因子を検索した。特にER、ARのAF-1蛋白を細胞内で大量発現させ、結合する核内因子を生化学的に精製した。4)細胞周期と核内レセプター機能との相関:ER及びARの、AF-1とAF-2への細胞周期特異的なキナーゼ(サイクリン/CDK等)によるリン酸化の可能性を探った。