著者
中井 遼
出版者
北九州市立大学法学会
雑誌
北九州市立大学法政論集 (ISSN:13472631)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3・4合併号, pp.57-94, 2022-03

政治的空間における「左右」の意味内容は時代・地域の政治的文脈の影響を受ける一方,人間心理とも無関係ではない事が論じられてきた。本稿は文化的制約の少ないとされる価値理論であるシュワルツ価値体系を用い,広く先進諸国を対象に,左右イデオロギー自己位置と諸価値間の相関関係を探索的に分析した。発見は主に二点である。1)平等と伝統に価値を置く態度が相対的に多くの国で左右の位置づけと相関している。2)当該両相関が見られるのは西欧・北米に多く,一部の国では伝統等の保守性(と対極にある変化への開放性)のみが左右イデオロギー自己位置と相関しており,ポスト体制変動国ではそれらの相関がない,あるいは左右の意味が逆転している例もある。
著者
斉藤 慎一
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.161-179, 2022-09-30

Dutton and Aron’s (1974) suspension bridge experiment is one of the most renowned studies in the field of psychology related to romantic love. Their study has been frequently mentioned in popular psychology books and on Internet sites, but these sources often oversimplify the results of the experiments and thus mislead readers. Based on the numerical values reported by Dutton and Aron, this study reproduced their data and reanalyzed it in order to find out what their experiment actually revealed. In addition, this study examined whether Dutton and Aron’s interpretation of their results was convincing.Dutton and Aron(1974)による揺れる吊り橋を使った実験は、恋愛に関する心理学的研究の中で最も有名なものの一つであろう。一般向けの書籍やインターネットのサイトなどで俗に「恋の吊り橋効果」などと呼ばれているものの元になった研究であるが、多くの場合内容が断片的にのみ取り上げられ、また結果が過度に単純化されていて、読者に誤解を生み出している場合が少なくない。本論文では、Dutton and Aron(1974)に報告されている数値から彼らが使用したデータを再現し、データの再分析を行いながら、揺れる吊り橋を使った2つのフィールド実験について詳しく解説し、彼らの実験から実際に何が明らかになったのかを検証した。また、Duttonらが仮説を立てる際に依拠した理論の一つに、Schachter and Singer(1962)の情動2要因理論があるが、本論文ではDuttonらの結果の解釈の妥当性についても検討した。

27 0 0 0 OA 近衛政家の台頭

著者
石原 比伊呂
出版者
聖心女子大学
雑誌
聖心女子大学論叢 = SEISHIN STUDIES (ISSN:00371084)
巻号頁・発行日
vol.131, pp.59-87, 2018-06-30
著者
八幡 茉莉子 渡辺 明日香 Mariko Yahata Asuka Watanabe
雑誌
共立女子短期大学生活科学科紀要 = Annual bulletin department of the science of living
巻号頁・発行日
vol.56, pp.11-31, 2013-02

This work bases on the assertion that the roots of Lolita fashion lay in the 1980s and explores how Lolita fashion came onto the scene as well as what sorts of changes it has undergone up until the present day. Analysis began with a visual survey using photographs of street fashion and fashion magazines such as "Olive." This work divides Lolita fashion into stages taking the early 1980s as "Lolita's FirstEra," the golden age of Lolita in the 1990s as "Lolita's Second Era," and the diversification of Lolita in the 2000s as" Lolita's Third Era," As a result, it was concluded that Romantic fashion and Lolita fashion have many traits in common and that Lolita fashion said to have sprouted in the 1980s sprang from Romantic fashion The work also concludes that the Lolita fashion of today owes its existence to the flourishing of 1990s street fashion and can be taken as a signal of the intensification of its popularity cycle after the 2000s.
著者
國田 祥子
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.87-93, 2016-06-16

電子メディアと従来の書籍では,文章の読みやすさや印象に違いはないのだろうか。國田(2015)はiPadを用いた読みと文庫本での読みを比較し,iPadで読む場合は書籍で読むよりも読み時間が長くなり,文章に対する印象が異なる傾向が示されたと報告している。このような差が見られた原因として,ディスプレイの大きさによる視点移動の多さや目の疲労感が考えられる。そこで本研究では,より小型のディスプレイを持つiPad miniおよび目に対する負担が少ないとされるe-inkディスプレイを搭載したKindle Paperwhiteを用い,大学生に電子メディアと文庫本で同一の文章を読ませ,読み時間を計測した。さらに読了後,文章の読みやすさ評定と印象評定に回答させた。その結果,読み時間および読みやすさ評定はいずれも文庫本と差がなかった。このことから,ディスプレイの大きさに配慮することで,電子メディアでの読みやすさが書籍と同等になることが示唆された。一方,印象評定はiPad miniと文庫本の間でいくつかの差が見られた。iPad miniは操作性やディスプレイ表示の質感などがスマートフォンと類似しており,その馴染みが読みの特性を変化させたのかもしれない。Kindle Paperwhiteと文庫本の間にほとんど差が見られなかったのは,ディスプレイ表示の質感が紙に近く,そのため書籍で読んだ場合と印象があまり変わらなかったためではないだろうか。
著者
西村 俊範
雑誌
人間文化研究
巻号頁・発行日
vol.37, pp.91-118, 2016-12-10
著者
釋 知恵子
出版者
大阪市立自然史博物館
巻号頁・発行日
2019-03-22

幼稚園・保育所・認定こども園・小学校の先生と保育士への皆様へ博物館にはたくさんのものが展示されています。たくさんありすぎて、子どもたちと何を見よう?どんなことを話そう?と悩むというお話を聞くことがあります。そんなときに、ヒントにしてもらおうと思って作った本です。実際の皆さんの見学の様子を観察し、「ふむふむ、そんなふうにお話するのか」「あれ、ちょっとここ、みんな間違えやすいのかな」などと気付かされながら、皆さんの目に触れやすいものを選んで、作りました。遠足に来るときに、先生のかばんに入りやすい虎の巻になるように、小さなサイズで作りましたが、少人数であれば、子どもたちと一緒に読むこともできるでしょう。
著者
MARRA Claudia
出版者
長崎外国語大学
雑誌
長崎外大論叢 = The Journal of Nagasaki University of Foreign Studies (ISSN:13464981)
巻号頁・発行日
no.20, pp.47-55, 2016-12-30

AbstractEven considering Japan’s high literacy rates during the early modern period, it is rather unlikely, that the majority of the Japanese population would have been able to read and understand an important Buddhist text like the Heart Sutra, 般若心経. This naturally posed a problem for the monastic schools, who competed with the rather easy to practice Pure Land and Amida schools, and needed to become more accessible to their lay-supporters. An answer to this problem presented itself in the form of Hanjimono (判じ物), rebus-like allusions, using pictures to represent words or parts of words. Usually used for playfull riddles, artists would also use Hanjimono to represent their names and sometimes even short subversive slogans. It were monks from the Tohoku area who adopted Hanjimono to represent the Heart Sutra and thus helped to make it accessible to the illiterate lay people. The considerations behind that practice are topic of this paper.概要江戸時代に日本の高い識字率にもかかわらず、一般の日本人は般若心経の様な代表的な仏教の経文を読める事が不可能であっただろう。この問題を解決するために普段言葉遊びに使われた判じ物が利用される事になった。東北の寺で制作が始まった判じ物の絵般若心経は全国に広まった。この絵般若心経の意図するところを明らかにするのが、本論文のテーマである。
著者
結城 浩
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, 2015-08-15
著者
李 永寧
出版者
文教大学
雑誌
言語と文化 = Language and Culture (ISSN:09147977)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.136-146, 1997-03-01

Taking the view that the language a person uses when he or she is angry is a key to understanding that person's value system and true character, I will examine the language of abuse available to the native speaker of Chinese and show its connection to the "Chinese spirit."

26 0 0 0 OA 人形写真論

著者
菅 実花
出版者
東京藝術大学
巻号頁・発行日
2021-03-25

令和2年度
著者
ムンクジルガラ
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.117-135, 2010-03

本稿の課題は、アイヌの海外諸民族との交流が、彼らの民族としての復権運動において大きな意味を持つことを文献資料及び聞き取り調査などに基づいて明らかにすることである。アイヌの民族復権運動は、長年日本政府によって強いられてきた「同化」政策や一般の人々の間にある差別や偏見のなかで他者からも独自の民族とみなされないだけではなく、アイヌ自らも民族として名乗れなかったなど、紆余曲折をたどった。70年代に実現したアイヌ中国訪問は、アイヌにとって、初の海外交流になっただけではなく、中国の少数民族との交流は「輝かしいもの」として中国の民族政策のあり様に触れる機会となった。中国の少数民族との交流の実現は、アイヌの民族としての復権運動の大きな契機となった。アイヌは、中国の民族政策に倣って日本における少数民族としての諸権利を求める運動を展開させていこうとした。中国訪問に始まる世界の先住・少数民族との積極的な交流は、アイヌの民族の権利回復と結びついていったのである。
著者
上野 和男
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.241-270, 1991-11-11

本稿は最近における日本の社会文化の地域性研究の学史的考察である。日本の地域性研究を時期的に区分して,1950年代から1960年代にかけて各分野で地域性研究が活発に行われた時期を第1期とすれば,最近の地域性研究は第2期を形成しているといえる。第2期における地域性研究の特徴は,第1期に展開された地域性論の精緻化にくわえて,新たな地域性論としての「文化領域論」の登場と,考古学,歴史学などにおける地域性研究の活発化である。1980年以降の地域性研究の展開にあらわれた変化は次の3点に要約することができる。まず第一は,従来の地域性研究が家族・村落などの社会組織を中心としていたのに対して,幅広い文化項目を視野にいれて地域性研究がおこなわれるようになったことである。地域性研究は「日本社会の地域性」の研究から「日本文化の地域性」の研究へと展開したのである。第二は,これまでの地域性研究が現代日本の社会構造の理解に中心があったのに対して,日本文化の起源や動態を理解するための地域性研究が登場したことである。とくに文化人類学や歴史学・考古学のあらたな地域性論は,このことがとりわけ強調されているものが多い。第三は,これまでの地域性研究が社会組織のさまざまな類型をまず設定し,その地帯的構造を明らかにしてきたのに対して,1980年以降の地域性論では,文化要素の分布状況から東と西,南と北,沿岸と内陸などの地域区分を設定することに関心が集中するようになったことである。つまり「類型論」にくわえて「領域論」があらたな地域性論として登場したことである。本稿では地域性研究における類型論と領域論の差異に注目しながら,これまでの地域性研究を整理し,その問題点と今後の課題,とくに学際的な地域性研究の必要性と可能性について考察した。