著者
多ケ谷有子 タガヤ ユウコ Tagaya Yuko
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
vol.123, pp.105-139, 2011-12

イングランド最古の叙事詩Beowulfと渡辺綱伝説のモチーフの類似については、島津久基の『羅生門の鬼』で詳細に論じられて以来、衆目を集め、両者の比較検討も行われるところとなった。本稿は、Beowulfと日本の古典文学における類似するモチーフの比較というテーマの一環として、『古事記』における「国譲り譚」と『出雲国風土記』の「安木郷猪麻呂説話」を取りあげ、類似するモチーフの比較検討を行った。前者については、新来の神/英雄が在来の神/怪物と素手で闘い、相手の手/腕を害し、その結果在来の神/怪物は湖に逃走し、新来の神/英雄に追われて完敗し、国譲りが完成する/斃される、という類似がみられる。後者については、娘/息子を害された父/母が復讐し、斃した相手から片脛/片腕を奪い返し、相手の死骸を曝す、という類似が見られる。本稿では、この類似についての考察を行い、加えて、話型の比較考察をすることの意味を見出し、今後の研究につなげる展望を模索した。
著者
岩佐 壮四郎 イワサ ソウシロウ Iwasa Soshiro
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
vol.123, pp.259-282, 2011-12

本稿では、これまで「GBSの影」(本学『紀要』一〇五号、二〇〇五)「変容する笑い--益田太郎冠者と曾我廼家五郎」(本学『人文科学研究所報』二九号、二〇〇六)「冷笑のシーズン」(『KGU比較文化論集』二号、二〇一〇)「五九郎というキャラ」(「悲劇喜劇」二〇〇九・六)などの諸論で展開してきた、一九一〇年代を一つの画期とする近代日本における〈笑い〉の表象の変容についての考察を、主として三代目蝶花楼馬楽(一八六四-一九一四)の落語と、それに敏感に反応した志賀直哉との関係を俎上にしながら試みた。もともとは上方落語の演目の一つであった「長屋の花見」を「隅田の花見」として東京風に改作して注目され、独特の諧謔で喝采を浴びながらも精神疾患のために再度にわたって入院し、大正初めに逝った馬楽の面影については、吉井勇の戯曲「俳諧亭句楽の死」(一九一七)などによって知られているが、興津要氏等により、「ブラック」で「ナンセンス」とされるその語りの味わいを、残された口述速記に拠って検討、「濁つた頭」(一九一一)「正義派」(一九一一)のような作品に読み取ることのできるアモルフな情動とどのようにスパークしていったかを視界に収めながら、一九一〇年代における〈笑い〉の質の変容の様相に光をあてることが本稿の基本的課題である。
著者
水原 一
出版者
駒澤大学文学部国文学研究室
雑誌
駒沢国文 (ISSN:04523652)
巻号頁・発行日
no.7, pp.1-15, 1969-06
著者
神野 真吾
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.27, pp.205-218, 2006-03-31
被引用文献数
1

明治期に,西欧の制度を移入し,美術という言葉が生まれて以降,日本においては,美術家たちによって実践される「美術」と,教育現場で行われる「美術教育」の間に,次第に距離が生じ,断絶した状況が生じている。その一方で生涯学習をはじめ,一般市民の美術は,「美術」「美術教育」いずれともほとんど関わりを持たずに,盛んに取り組まれている現実がある。こうした混沌とした状況の中,現在,美術・美術教育をとりまく環境は大変厳しいものとなっている。今こそ,我々は近代化の中で美術と美術教育が辿ってきた道程を顧み,私たち日本人にとって必要な美術の在り方を,構築する必要があるのではないだろうか。
著者
赤尾 光司 後藤 春彦 三宅 諭 米山 勇
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.64, no.519, pp.187-194, 1999
参考文献数
72
被引用文献数
5 3

The purpose of this paper is to clarify the forming process of landscape in Waseda University, Nishiwaseda Campus through the analysis of "City beauty" by Prof. Koichi Satow and the history of the building and repairing organization. Prof. Koichi Satow and the city beauty of that he had a concept had affected the design of Nishiwaseda Campus. We interpret the concept of the city beauty as a modern adjustment using the beauty factors of "Change" and of "Unity". Which was, inherited through : 1) the deep relation between the building and repairs organization and the architecture laboratories before the Second World War, 2) The leading engineer Sugiura, who followed the steps of campus designing after the Second World War.
著者
稲田 利徳
出版者
岡山大学
雑誌
研究集録 (ISSN:04714008)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.(1)-(6), 1997-11

一.本稿は耕雲の紀行文「耕雲紀行」の注釈である。一.底本は東京大学史料編纂所蔵本(貴41.2)で、次の方針に従って校訂本文を作成した。(1)漢字・仮名を原則として通行の字体に変え、新字体のある漢字はそれを用い、獨点、句読点を施した。(2)底本の仮名を漢字に改めた場合は、表記を改めた本文の右側に、もとの仮名を記した。漢字の訓みを()の内に示したものである。(3)仮名遣いは原文のままとし、送り仮名を補った場合は()内に記した。また歴史的仮名遣いと一致しない場合は、()を付して歴史的仮名遣いを傍記した。ただし、仮名に漢字を宛てた場合は、これを省略した。(4)反復記号は底本のままとし、踊り字の場合はもとの仮名に直し、右側に「ゝ」を付した。(5)底本の丁数などを省略し、本文も適宜改行した。(6)虫損などで判読するのに、やや支障をきたす個所は□とし、その中に推定した文字を記した所もある。(7)本文の不審な所には、(ママ)を付した。(8)全体を適当な個所で区切り、通し番号と内容に即した見出しを付した。一.注釈は〔本文〕〔語釈〕〔通釈〕〔考〕の順序で進める。一.「耕雲紀行」の翻刻を御許可くださった東京大学史料編纂所に対し、厚くお礼を申し上げます。
著者
中村 茂和 松井 繁幸 杉山 典 黒田 博通
出版者
静岡県畜産技術研究所中小家畜研究センター
雑誌
静岡県畜産技術研究所中小家畜研究センター研究報告 (ISSN:18826415)
巻号頁・発行日
no.2, pp.43-48, 2009-02

微粉砕したモウソウチクに乳酸菌を添加してサイレージ化した竹粉サイレージ資材を肉用鶏および採卵鶏の飼料中に所定割合添加し、それら排せつ物から揮散するアンモニア態窒素揮散量や硫黄系化合物濃度について測定した。その結果、竹粉サイレージ資材を添加した試験区の排せつ物におけるpHや水分率等は対照区とほとんど同じであり、資材添加による明らかな違いはみられなかった。更に、排せつ物の主要な臭気成分であるアンモニア態窒素揮散量についても同様、対照区に対する明らかな低減効果は認められなかった。一方、排せつ物のpHとアンモニア態窒素揮散量との関係では、肉用鶏および採卵鶏のいずれの場合においても正の相関関係が認められたことから、供試排せつ物のpHは、揮散するアンモニア態窒素量の多少に影響することが推察された。また。硫黄系化合物の濃度は、いずれも対照区に対する有意な違いは認められなかったが、肉用鶏の場合、竹粉サイレージを2.5%および5%添加した時のメチルメルカプタン濃度や硫化メチル濃度は対照区に比べて低くなる傾向がみられ、採卵鶏の場合、10%添加において、測定した全ての硫黄系化合物濃度は対照区に比べて低くなる傾向がみられた。このことから、肉用鶏の場合、飼料中に竹粉サイレージ資材を約5%添加することにより、また、採卵鶏の場合は、約10%添加することにより、排せつ物から揮散する硫黄化合物の濃度低減の可能性が示唆された。
著者
具 承桓 藤本 隆宏
出版者
日本経済国際共同センター
巻号頁・発行日
2000-06

本研究の目的は、自動車部品産業を中心に情報技術の導入、特に3次元CADなどのデジタル技術の導入が製品開発プロセス、特に設計、試作、コミュニケーションなどにどのような影響を与えるのか、部品(製品)のタイプによってどのような違いがあるのか、等々を分析し、サプライヤーにとって、より効率的な製品開発を進めるために要求されるマネジメント能力は何かについて考察することにある。本研究で扱うデータは、1999年3月に、日本自動車部品工業会に登録されている1次自動車部品メーカーに対してアンケート調査を行い、回答を得た153社からのものである。それと並行してインタビュー調査も行った。まず、日本の自動車部品産業への3次元CADシステムの導入傾向を見ると、85-90年に36.91%、91-95年に58.37%、そして96-99年に85.91%と導入率が増加していた。このような傾向は、カー・メーカーの導入時期より5年くらいのタイムラグをおいて導入された。つまり、カー・メーカーの導入以降、90年代に入ってからサプライヤーの本格的な導入があったと言える。また、部品別に見ると構造的に部品間の干渉問題が多い車体部品などを中心に先に導入された。3次元CADの導入が製品開発にどのようなインパクトを与えるのかについては、3次元CADの利用、システム間の互換性、オンライン率と開発活動(コミュニケーションの頻度、試作レビューの回数)、リードタイムとの間の関係を分析してみた。その結果は以下の通りである。(1)サプライヤーの製品開発への3次元CADの利用は、カー・メーカーのシステムの互換性とオンライン化の増加と連動している。(2)3次元CADの利用の増加は必ずしもコミュニケーションの頻度の減少をもたらさない、むしろ増加させる傾向が見られる。(3)製品開発における3次元CADは設計試作や量産試作の減少、リードタイムの短縮に影響を与える。しかし、その効果は製品(部品)によって異なる。例えば、最近の変化を見ると、電装部品は開発への3次元CADの利用、オンライン率と互換性の増加によって、試作レビューがより確実になり、開発期間の短縮につながる、という効果が車体部品の場合よりも顕著だと考えられる。それは車体部品より、相対的に機能的・構造的な調整が容易であるという電装品の製品特性ゆえに、CADの利用は試作の回数の削減、ひいては開発期間の短縮に繋がっていると考えられる。一方、3次元CADの使用と関連して自動車部品メーカーが直面している問題は、3次元CAD自体の技術的な問題とマネジメント上の問題がある。まず技術的な問題としては、(1)ハードウェアや通信回線の負荷が大きすぎること、(2)ユーザーインターフェースや細かな機能に改善の余地が多くあること、(3)2次元図面に慣れた技術者がソリッドモデラーを扱うには障壁があることなどが挙げられる。マネジメント上の問題は(1)取引先(カー・メーカー)によって異なるシステムの採用による参入障壁、(2)エンジニアに対する体系的な教育の不足による技術的な不具合い、(3)エンジニアの無駄な作業の増加に対する管理が挙げられる。要するに、製品開発への3次元CADの利用はデザイン試作や量産試作の回数を減らし、開発リードタイムを短縮などの様々なインパクトを与えるが、部品の特性によってその効果は異なり、異なるマネジメントが必要とされるだろう。また、自動車部品産業では3次元CADの導入によって組織間のコミュニケーションの頻度を必ずしも減少させるとは限らない。むしろ、日本の開発パターンの特徴である、対面的なコミュニケーションは依然として重要である。部品と車全体とをマッチさせるという問題を本当に解決するには、製品開発プロセスと技術の統合的な管理が必要なのである。
著者
山本 雅史 久保 達也 冨永 茂人
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.372-378, 2006 (Released:2006-09-25)
参考文献数
32
被引用文献数
14 52

カンキツにおける自家不和合性は結実不良の原因となることもあるが,単為結果性が備わった場合には無核果の生産につながる重要な形質である.そのため,本研究では主としてわが国原産のカンキツ類65種・品種(以下,品種と略)を供試して,その自家不和合性について解明するとともに,血縁関係のある自家不和合性品種間の交雑不和合性についても検定した.なお,不和合性は花柱内の花粉管伸長によって検定した.レモンは自家和合性であった.ブンタンでは 6 品種すべて,ブンタン類縁種では11品種中 7 品種,ダイダイおよびその類縁種では 6 品種中 2 品種,スイートオレンジおよびその類縁種では 5 品種中‘ありあけ’のみの 1 品種,ユズおよびその類縁種では 5 品種中ヒュウガナツのみの 1 品種,マンダリンおよびその類縁種では28品種中14品種が自家不和合性であった.キンカン類縁のシキキツおよび分類上の位置が不詳の辺塚ダイダイは自家和合性であった.すなわち,本研究で供試したカンキツ全65品種中31品種が自家不和合性であった.交雑不和合性はクレメンティンとその後代である‘ありあけ’との正逆交雑でのみ認められ,両者の不和合性に関する遺伝子型が一致していると推定できた.
著者
Hyang-Sook CHOI Masayoshi SAWAMURA
出版者
(社)日本農芸化学会
雑誌
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (ISSN:09168451)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.48-55, 2001 (Released:2002-06-28)
参考文献数
24
被引用文献数
20

The volatile flavor components of ripe and overripe ki-mikan (Citrus flaviculpus Hort. ex Tanaka) peel oil samples, which had been isolated by cold-pressing, were investigated by capillary GC and GC-MS, and compared with the Hyuganatsu (Citrus tamurana Hort. ex Tanaka) flavor. Limonene (ripe fruit, 82.44%; overripe fruit, 73.10%) was the most abundant compound in the ki-mikan oil, this being followed by γ-terpinene (8.83% and 13.74%), trans-β-farnesene (1.76% and 3.12%) and myrcene (1.54% and 1.13%). The composition of overripe ki-mikan oil was characterized by higher amounts of aliphatic and sesquiterpene hydrocarbons, monoterpene and sesquiterpene alcohols, ketones and esters than that of ripe ki-mikan oil. Monoterpene hydrocarbons, especially limonene (84.78%), were predominant in Hyuganatsu oil. The CPO composition of ki-mikan was qualitatively similar to that of Hyuganatsu, but differed quantitatively. The content of sequiterpene hydrocarbons was higher in the ki-mikan oil samples than in Hyuganatsu oil, while ketones showed the opposite predominance. These differences were more evident in the trans-β-farnesene and l-carvone contents. The ratio of both these compounds could be used to distinguish ki-mikan oil from Hyganatsu oil.
著者
呉 洋 小崎 真寛 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2012-GN-83, no.15, pp.1-8, 2012-03-14

情報セキュリティ対策としてのセキュリティログ解析が,情報セキュリティインシデント発生後の迅速な原因究明のために重要となっている.しかしながら,従来は 1 人の専門家に対する解析作業支援に重点が置かれ,複数の専門家による協調解析を十分に支援できていなかった.そこで,本研究では 2 人の専門家による情報セキュリティインシデントの解析を対象とし,壁方タッチパネルである SMART Board 上に構築したシステムよりセキュリティログ協調解析支援を行う.その際,共有解析画面と専門解析画面という 2 つの画面を交互に入れ替えることで,一画面上で協調解析作業を完結可能なシステムとした.本提案システムの有用性を実証するために,情報セキュリティインシデントの解析を行うというタスクを 2 人 1 組の被験者に実施した結果,従来の専門家が個々に解析用 PC を持った上で紙やホワイトボード,口頭で情報共有を行っている場合と比べて,解析時間が共有解析画面を用いたタスク 1 で 39.4%,専門解析画面を用いたタスク 2 において 49.3% 短縮した.