著者
川野 秀一 村田 右富実 Shuichi Kawano Migifumi Murata
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1-13, 2019

万葉歌の研究において,歌の音の使用傾向から歌人の特徴を捉える場合がある.それぞれの歌人の使用している音の癖を読み取ろうとするものである.しかし,これまでは歌内で多く使用されている,もしくはほとんど使用されていない単一の音のみに着目した単変量的な解析や主観的な判断がほとんどであった.本論文では,複数の音を考慮に入れた統計解析を実行し,歌人の分類ならびにその音に基づいた特徴付けについて考察する.具体的には,まず,柿本人麻呂,山上憶良,大伴旅人の3 歌人の短歌に着目し,各短歌内で使用されている音節から特徴量を作成する.その後,得られたデータに対してスパース正準判別分析を適用することにより,歌人の分類と各歌人に特徴的な音節の選択を行う.
著者
森田 武志
巻号頁・発行日
2010-09-24

本研究では、近年になり地域の内外で広く知られるようになり、観光資源としても注目されている札幌スープカレーという地域の食を事例として、次の点を明らかにすることを目的としている。1) 札幌スープカレーが地域内外に定着した背景を明らかにすること。事例を一つの確立した地域ブランドととらえ、ここに、企業ブランド論におけるブランドアイデンティティやブランドイメージ、コンテクストの共有といった視点を持ち込み、現象を分析すること。2)上記の事例分析を踏まえ、今後、他の地域の食文化を観光や地域の振興に活用する際に取りうる戦略の可能性を検討すること。研究の背景としては、近年、地域の食を観光や地域の振興に活用することに成功している事例が増えており、これらのB 級ご当地グルメに注目が集まっている。そして、このような取り組みは、地域ブランドの形成という形で論じられることが多いが、実際に先行する企業ブランドの理論や知見を通じて理論的な背景を明らかにしたものは少ないため、研究の蓄積が必要である。また、企業ブランドと地域ブランドの間には相違点も多いことが指摘されており、今後の地域ブランド論にとってはこの点を明らかにすることも重要であるという目的意識がある。よって、本論では、地域ブランドとして確立した事例として、札幌スープカレーを選び、企業ブランド論のコンテクストブランディングという枠組みから分析を行った。第1 章では、研究の背景と目的、本論の流れを整理した。第2 章では、文献による先行研究のレビューおよび仮説の提示を行った。第3 章では、スープカレーに関する事例調査を実施した。調査内容は大きく分けて2つあり、まず一つは、文献や新聞・雑誌等のメディア調査である。もう一つは地域内住民に対するアンケート調査および札幌スープカレーに関係する人々に対するインタビュー調査である。第4 章では、第1 章の先行研究および第3章で得られたデータをもとに、札幌スープカレーが地域内外に受け入れられるに至った過程を、ブランド論の枠組みで考察し、仮説の検証をおこなった。結論として、次の2つのことが明らかとなった。1つ目は、札幌スープカレーは、まず地域内でブランドイメージが共有され、それが地域ブランドのブランドアイデンティティとなり、地域外に受け入れられ評価されるようになっていることである。2つ目は、札幌スープカレーは、ブランドの推進主体や、歴史的な背景が無いにも関わらず、地域内でブランドイメージが共有されており、その背景には、札幌スープカレーが持つ豊富なコンテクストにより、地域内でのブランドコミュニケーションが活発に行われたという理由が存在することがわかった。
著者
横山 真男 斉藤 勇也
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. EC, エンタテインメントコンピューティング (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.22, pp.1-6, 2015-02-23

1980 年代から 2000 年にヒットした邦楽の楽曲構造を分析し可視化を行った.対象として,オリコンランキングの 1980 年から 2007 年の各年で Top10 に入る楽曲について調査した.本研究では,曲のサビに注目し,コード進行の頻度やパターン,シンコペーションの数,動機のパターンを取り上げ,年毎にその特徴を分析した.
著者
福井 典代
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第54回大会・2011例会
巻号頁・発行日
pp.74, 2011 (Released:2011-10-11)

目的 各メーカーからすすぎ1回で洗濯が可能な超コンパクト洗剤が発売され,洗濯工程の時間短縮と節水効果が期待されている。しかしながら,今まで2回行っていたすすぎを1回のみのすすぎで十分に洗剤が除去されているのか不安に思う消費者は多い。そこで本研究では,各洗濯工程における水の表面張力の測定を通して,水中に含まれる洗剤濃度を予測した。この実験結果から,目に見えにくい洗剤量の把握を通して洗濯におけるすすぎの役割を理解するための教材を作成した。 方法 1)陰イオン界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(以下SDSと略す。)を用いて,濃度の異なる水溶液を調製して,デュ・ヌイ表面張力計と簡易液滴法による表面張力を測定した。 2)簡易液滴法により,4種類の市販合成洗剤(メーカーの異なる2種類の超コンパクト洗剤,液体洗剤,粉末洗剤)水溶液の表面張力を測定して,臨界ミセル形成濃度(以下cmcと略す。)を算出した。 3)電気洗濯機を用いて4種類の市販合成洗剤による通常洗濯を行い,各洗濯工程の水を採取して,簡易液滴法により表面張力を測定した。 4)文献をもとに衣類に残留する界面活性剤量から各市販合成洗剤の水溶液濃度を算出して,すすぎ限界濃度として定義した。上記3)の洗濯工程における実験結果と比較して,各洗剤のすすぎ性能の定量化を試みた。 5)各洗濯工程の水溶液の表面張力の値と水道水の表面張力の値を比較することから,すすぎの役割を理解できる教材を提案した。 結果 1)濃度の異なるSDS洗剤水溶液を用いて,デュ・ヌイ表面張力計と簡易液滴法による表面張力を測定した結果,相関係数r=0.8767となり,両者の測定値に比較的高い相関関係が得られた。この結果から,以下に行う実験は比較的容易に測定できる簡易液滴法を用いて表面張力を測定することにした。 2)4種類の市販合成洗剤水溶液の表面張力を測定してcmcを算出した結果,各洗剤の使用量の目安と類似した濃度となった。超コンパクト洗剤のcmcは液体洗剤,粉末洗剤のcmcと比較して約1/2の濃度であることがわかった。 3)4種類の市販合成洗剤の各洗濯工程の水の表面張力を測定した結果,すべての洗剤において,洗い,すすぎ1回目,すすぎ2回目の順に表面張力は高くなった。 4)超コンパクト洗剤では,文献をもとに算出したすすぎ限界濃度の表面張力よリすすぎ1回目の表面張力が高く,水の表面張力に近い値となった。この結果から,すすぎ1回での洗濯により,十分に洗剤成分が除去されていることがわかった。 5)以上の基礎実験の結果をグラフ化して,すすぎの役割を視覚的に理解できる教材を作成した。
著者
好村,滋行
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, 2003-05-20
著者
川上 一
出版者
慶應義塾大学国文学研究室
雑誌
三田國文 (ISSN:02879204)
巻号頁・発行日
no.64, pp.1-31, 2019-12

はじめに一、伝本とその系統二、各系統の概要三、成立年の検証四、編集の意図 : 文明期の自歌合むすび
著者
吉良 枝郎
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.757-767, 2006-11-20

なお攘夷の激しい維新当初より,京都官軍病院にイギリス公使館医を医師として招聘し,ついで御所への西洋医学の導入を認め,典薬寮医師として蘭方医を採用し,元年末には医学校である大学東校を開校し,近い将来での医師開業試験の実施を布達した。明治新政府は,わが国の医学として,初めて,積極的に西洋医学を受容した。漢方医の影響下にあった旧幕府とは,極めて対照的である。戊辰戦争で貢献した英国公使館医は,大学東校の病院長兼医学教師に就任した。政府内には,従来のオランダ医学に代わって,わが医学の教師役はイギリス医学がとの雰囲気があった。一方長崎医学校で学んだ若い蘭方医達は,世界の医学界をリードしているとして,ドイツ医学のわが国への導入を提案した。厳しい討議のすえ,ドイツ人医学教師の招聘が決定された。初代のミュルレルは,伝統的医学教育に固執する日本人教師らの抵抗を抑え,厳しく,徹底的に医学校を改革した。医学生は,予科3年,本科5年に亘り,基礎科学,基礎医学,臨床を,ドイツ人教師によりドイツ語で教育された。極めて特異な事であったが,わが国初の医制を作り上げるためには欠くべからざる事であった。
著者
渡邉 義浩
出版者
東京大学東洋文化研究所
雑誌
東洋文化研究所紀要 (ISSN:05638089)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.1-40, 2016-12

The Shishuo xinyu 世説新語 expounds the need for mastery of the cultural values constituting the foundations of the ver y existence of the authentic aristocrats at the time, as opposed to the aristocracy who formed part of the statesanctioned class system that was established during the Western Jin as a result of the introduction of a system of five grades of nobles in the late Cao Wei. These cultural values were specifically Confucianism and character evaluations, which formed the basic education of aristocrats, as well as the study of various other disciplines. Furthermore, the content of these values was encapsulated in the chapter titles of the Shishuo xinyu, which drew on the four subjects or disciplines mentioned in the Lunyu 論語, and it was shown that Confucianism lay at the root of not only the aristocracy but also Chinese culture. On the basis of this general learning, the Shishuo xinyu also affirmed the way in which the aristocrats from the north, in order to maintain their independence from power, which could act as a reason for superiority, entrusted practical affairs to lowly men of the south, applied themselves to "pure conversation" (qingtan 清談), and protected local influential families through closed marital relationships. Unlike the Yanshi jiaxun 顔氏家訓, the Shishuo xinyu is not a work that reexamines the aristocracy's original mode of being. Rather, it is an educational work the aim of which was to actively af firm the aristocracy of the Liu Song period and pass on the culture lying at the root of its very existence. By compiling the Shishuo xinyu under the aegis of the imperial household, Liu Yiqing 劉義慶 aimed to provide a general summar y of the aristocrats' mode of being. In addition, his staff, who actually wrote it, also intended for it to become a work prescribing the mode of being of aristocrats so as to preserve the aristocracy in the Liu Song too. These were the aims behind the compilation of the Shishuo xinyu.
著者
河村 史紀 馬場崎 勝彦 山田 明義
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会50周年記念大会
巻号頁・発行日
pp.160, 2006 (Released:2007-06-05)

外生菌根菌にはマツタケやホンシメジなどの優秀な食用菌が多く含まれている.これらの菌はこれまで菌根合成実験が多数報告されているが,子実体の発生まではほとんど調べられていない.また,菌根合成実験においては限られた植物-菌の組み合わせしか行われておらず,各菌種の菌根形成能をある一定の基準のもとに相対的に評価することは行われていない.本研究では,多様な外生菌根菌を用いて菌根形成能と菌根実生の順化に関する基礎データの蓄積を目的として実験を行った. 研究室保有の外生菌根菌41種64菌株,腐生菌10種11菌株を実験に供試した.宿主植物には無菌発芽させたアカマツ(Pinus densiflora)とユーカリ(Eucalyptus dives)を用いた.菌根合成実験は,セロファンを敷いた寒天培地上で行う簡易合成系と,バーミキュライトを支持体としてガラスビンで行う長期合成系を用いた.簡易合成系で75,90日,長期合成系で120日間培養(20-22°C, 5000lux)を行った.その後,アカマツの長期合成系で作出した菌根苗は有機層又は無機層土壌(共に滅菌土壌)を含む500mlガラスビンへ移植して順化を試み,上記と同様の条件で6ヶ月間培養した. アカマツの簡易菌根合成系において20種27菌株で菌根が形成され,長期合成系においては31種51菌株で菌根が確認された.長期菌根合成系では高頻度で菌根の形成が見られたが,採取植生がアカマツ林であるキアブラシメジ,ヤマドリタケモドキ,シラタマタケ,ケロウジ,アカハツなどでは菌根が形成されなかった.ユーカリの長期合成系においてアシナガヌメリ,ガンタケ,オオキツネタケなどで菌根が形成された.菌根苗順化実験では供試した31種51菌株のうち,28種48菌株において菌根の順化に成功した.土壌条件間での比較では,有機層で地上部の成長が良好で,無機層で地下部の成長が良好な傾向が認められた.
著者
皆川 諒 高田 哲司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.726-736, 2020-03-15

セキュリティ警告はセキュリティ脅威への遭遇可能性をICT利用者に伝え,それを回避可能にするための仕組みである.しかし,利用者の多くはセキュリティ警告を有効活用していないという現状がある.そこで本研究では,セキュリティ警告の効果改善を目的とし,「かわいい」と感じる視覚的刺激による行動誘引効果をセキュリティ警告に応用することを提案する.このアイデアに基づき,セキュリティ警告内に「かわいい効果」をもたらしうる画像を導入したプロトタイプ警告を実装し,それを用いて実験参加者による評価実験を行った.その結果,かわいい効果を導入した警告は既存の“そうではない”警告と比較してセキュリティ警告内の警告文を理解するよう利用者を誘引できる,という結果を得た.
著者
YAMAZAKI Akio
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.19-32, 2020-02

This paper investigates how environmental taxes affect manufacturing productivity by examining British Columbia’s revenue-neutral carbon tax. I develop a new hypothesis, the “Productivity Dividend Hypothesis,” to show that environmental taxes can positively affect productivity by recycling tax revenues to reduce corporate income taxes. This revenue-recycling increases investment and could raise productivity more than environmental taxes lower productivity by diverting resources from production. I evaluate this hypothesis using detailed confidential plant-level data. I find that the carbon tax lowers productivity, although this is offset to some extent by the revenue-recycling. For some plants, the policy generates a net gain in productivity.
著者
長田 明日華
出版者
奈良女子大学史学会
雑誌
寧楽史苑 (ISSN:02878364)
巻号頁・発行日
no.64, pp.35-49, 2019-02-20

本稿は、平成三十年度山梨県大村智人人材育成基金若手研究者奨励事業による研究成果の一部である