著者
金 玲花 中野 亜里沙 安藤 元一 Kim Ryonghwa Arisa Nakano Motokazu Ando
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.137-144, 2014-09

自由行動ネコが野生鳥獣にどのような捕食圧を与えているか,神奈川県厚木市で調査した。神奈川県自然環境保全センターの傷病鳥獣保護記録を調べたところ,保護鳥獣の10%はネコに襲われたものであり,キジバトやスズメなど地上採餌性の種,あるいはヒヨドリなどの都市鳥が多かった。育雛期である5-7月には鳥類の巣内ヒナが半数以上を占め,ネコの襲いやすい位置に営巣するツバメなどが多かった。同市の住宅地帯および農村地帯におけるアンケート調査では,ネコは13%の世帯で飼育されていた。このうち屋外を自由行動できる飼いネコの比率は,住宅地で29%,農村で59%であり,生息密度に換算すると住宅地で2.2頭/ha,農村で0.35頭/haと推定された。こうしたネコが家に持ち帰る獲物の種類は,住宅地では小鳥と昆虫が多く,農村ではネズミ,小鳥や昆虫など多様であった。持ち帰った獲物の半分以上は食されなかった。これらのネコが年間60頭程度の鳥獣を捕らえると仮定すると,1年に捕食される鳥獣はそれぞれ132頭/ha,21頭/haと推定された。飼いネコによる生態系への影響を避けるためには,室内飼いが望まれる。
著者
阿藤 誠
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.5-20, 2017
被引用文献数
2

<p>本稿は日本の少子化の動向・人口学的要因,社会経済的・文化的背景,政策対応を,国際比較を踏まえて概観したものである。70年代以降少子化状況にある先進諸国は緩少子化国と超少子化国に二分されるが,日本は南欧諸国・ドイツ語圏諸国などと並んで後者に属する。人口学的には,少子化は出生の高年齢への先送りによって起こっているが,日本など超少子化国は20代の先送りが著しく30代のキャッチアップが乏しい。そのため世代別の平均生涯出生児数はすでに1.5人以下に低下している。日本では結婚の高年齢への先送りにより未婚化・晩婚化・非婚化が進行する一方,緩少子化国と違い同棲・婚外子がほとんど拡がらなかった。その結果,結婚の変化が少子化の直接的要因となった。結婚したカップルの出生児数の減少は比較的最近のことである。少子化の背景としては,先進国に共通する①豊かな社会の到来と子育て負担の増大と②女性の社会進出(高学歴化・雇用労働力化),日本で注目される③非正規雇用の若者の増大,超少子化国に共通する④伝統的家族観・ジェンダー観について議論した。最後に,少子化への政策対応に関する基本的スタンスを明らかにするとともに,①子育ての経済的支援,②仕事と子育ての両立支援,③非正規雇用問題への対応,④伝統的家族観・ジェンダー観からの脱却について,政策の現状を要約し,国際比較の観点からの評価を試みた。</p>
著者
大坪 舞
出版者
九州大学基幹教育院
雑誌
鷹・鷹場・環境研究 (ISSN:24328502)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.116-126, 2018-03-20

本稿は、鷹狩りが盛んに行われ、多くの鷹書が編纂・書写された戦国時代から江戸初期にかけて、鷹狩り文化の中心にいた近衞前久の鷹書『鷹百首』と『皇鷹記』の引用書目の検討を通じて、前久が継承した鷹書を明らかにし、室町時代後期から江戸初期にいたる鷹の言説を探ったものである。豊臣秀吉・徳川家康のために書写された『鷹百首』にたびたび引用される書が、『諸木抄』である。これは鷹書ではなく、細川高国による武家故実書でありながら、「当流」の説とされるほど重んじられている。対して、『皇鷹記』には、『持明院宰相殿旧記』が引用されている。『持明院宰相殿旧記』は「鷹の家」である西園寺家の言説を継承したものである。前久は武家故実の鷹の言説、公家の「鷹の家」の鷹の言説を継承し、武家を享受者とした『鷹百首』、天皇の鷹狩りを伝える書『皇鷹記』の典拠として使い分けていたのである。In this thesis, we consider the titles of books quoted "Takahyakushu' and "Koyoki' written by Konoe Sakihisa, who had authority of the culture of falconry from Sengoku era to the beginning of Edo era, during these eras falconry was very popular and a lot of Takasho were written. We also characterize the Takasho inherited by Sakihisa and explore the discourse of falconry from the latter period of Muromachi era to the beginning of Edo era. The book often quoted in "Takahyakushu," which was written for Toyotomi Hideyoshi and Tokugawa Ieyasu, is "Shobokusho." This is not a Takasho, but a Bukekojitsusho by Hosokawa Takakuni, and is very important as the main stream of that period. On the other hand, "Jimyoinsaishodonokyuki" is quoted in "Koyoki." "Jimyoinsaishodonokyuki" is the book inheriting the discourse of Saionji-ke whose family business is falconry.
著者
森 雄兒
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.269-272, 1995
参考文献数
12
被引用文献数
3

日用品の素材を組み合わせて,5分ほどで液体窒素の霧箱を作ることができる。この霧箱では,熟練を要せず簡単にα線の飛跡を見ることができる。またアルコールの量を増やすと,β線,陽電子,コンプトン散乱などの飛跡もみることができる。
著者
茅野 恒秀
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集 = Shinshu studies in humanities (ISSN:24238910)
巻号頁・発行日
no.7, pp.99-123, 2020-03

日本各地に再生可能エネルギーが急拡大するとともに「メガソーラー」の存在が定着しつつある。しかし、とりわけ山林開発を伴う事業をめぐって社会紛争が増え、推進側と反対側、そして土地所有者との間での社会的亀裂を生じさせている事業も少なくない。 本稿は、全国のメガソーラー問題の多くが、共有地の性格を有してきた土地に外来型開発として計画・建設されていることに着目し、地租改正や農地改革など近代的土地所有制度の確立過程、そして高度成長期・バブル経済期の国土開発など、土地問題を規定する政策や動向の連続線上にメガソーラー問題を位置づける。そのための方法として、まず立地地域における人と自然との関係を規定してきた環境史・開発史を明らかにし、その知見をもとに問題を分析した。 長野県諏訪市四賀に計画されている長野県下最大級のメガソーラー事業は、近世以来の入会林野・牧野を戦後に分割解放した土地に計画された。この事業を事例に、土地所有者である地元牧野農業協同組合を取り巻く社会的状況の分析を行い、牧野から林野へ、そして観光開発へと資源利用の転換が起こる中で旧来より山元として有していた地位がことごとく裏目に出た結果として、メガソーラー事業への土地売却が企図されたことが推論できた。
著者
清水 勝嘉
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.72-86, 1976

In this papes, administrative orpanization for public health, tuberculosis control and prevention of venereal disease, which had been involved in the problems of public health in the early years of the Showa Era, were discribed. 1. In those days, public health administration had been centrlized to the Health Bureau and Social Bureau of the Ministry of Home Affairs, and they gave their instructions to the Public Health Section of the Prefectural Police Department. Countermeasures for the chronic infectious diseases were the most imoprtant problems at that time. 2. The mortality from tuberculosis in Japan was two or three times higher than that of Western countris, and there were poor and insufficient preventive facilites in all over the country. It was epock making in 1932 that the Health Guidance Clinic were established in every prefectures in order to prevent against tuberculosis by the subsides offered from NHK (Nihon Hoso Kyokai), but not by the national budget. 3. Licenced and unlicened prostitute, geisha, waitress and barmaid had been the major contagion source of venreal disease. Legal inspection system for the syphilis was forcibly applied only to the licenced prostitutes, but the others took the medical check only when they were arrested. Since 1928, when the original Venereal Disease Prevention Law enforced, all prostitures, streetwalkers, geishas, barmaids and waitresses have forcibly taken medical check for the venereal disease.
著者
稲葉 継陽
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学社会文化研究 (ISSN:1348530X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.207-224, 2003-03-31

In the sixteenth century as the last stage of medieval Japan, daimyo domains were built throughout the country. The border areas between the domains were called sakaime (境目) and the cause of dispute among the daimyo. They fought hard for the castles in sakaime. The neighboring local warriors (ryoshu) often played a role of arbitration when the daimyo concerned in the dispute started peace negotiations and settled the question of the title to the castles. The peasants (hyakusho) belonging to a village community in the sakaime, too, dealt with the dispute in a group and showed the autonomy to restore a peace. Toyotomi Hideyoshi could achieve the reestablishment of national unity (tenka-toitsu), taking a step of guarantee to keep the arrangements about sakaime, which were accomplished by the daimyo and village community peasants who pursued a peace in their area. In this article, the Toyohuku (豊後) region in Higio (肥後) province is analyzed as a typical case study of sakaime areas.
著者
多田 實道
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.219-226, 2013-12-20
著者
岩佐 美代子
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤國文 (ISSN:04523652)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.3-17, 1993-02