著者
古川 智恵子 豊田 幸子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.29-39, 1979-03-15

以上の調査結果をまとめると,今回の調査の範囲内では次のとおりである.(1)和・洋服の所持率については,学生は洋服が83%,和服が17%と和服が少なく,主婦はそれぞれ55%, 45%である.これらの和服の着用機会は,学生では正月,お盆,成人式等であり,主婦では冠婚葬祭,正月,人学式,卒業式等である.また,和服を自分で着装できる者は,学生では約17%と極めて少ないが,主婦では日常着については約90%,礼服についても約半数を占める.(2)将来の衣生活設計については,学生,主婦層とも96%以上の者が和服をとり人れ,和・洋両式の衣生活をしてゆきたいと答えた.この結果から,和服は今後も長く伝統的な民族衣裳として日本人に愛され続けるものと思われる.(3)和・洋服の所持服の製作別割合では,学生,主婦共に洋服では既製品が多く,和服では注文が最も多く,既製はごく低率であった.家族の衣生活を担当する主婦の和服の縫製技術所持者は約80%であり,持に中・高年層に高度な縫製技術があったが,家庭製作より注文する割合が多くみられた.これは余暇時間に趣味的な事を行なったり,あるいは社会に出て生産的活動をする人が多くなってきたことによるのではないかと考えられる.(4)和装既製品の購人状況では,両者共に,たび,長襦袢,裾よけ等の下着類が多く,上着類では注文が多いことがうかがえる.和装既製品の選択重視項目順位では,学生,主婦共に"必要な時すぐ着られる"という利点を第1位にあげており,次に"価格が手ごろ","時間の節約"をあげている.また,これらの購入場所は専門店が最も多く利用され,日常着ではなく晴着としての和服は,衝動買いせず信用ある専門店で購入し,仕立てもそこで頼むという状態である.(5)既製和服に対する学生および主婦の意識差は,両者の生活経験により多少異なり,学生は概念的な思考が多いが,主婦は,より具体的な生活的思考をしている.しかし共通して不満意識が多く,大体次の3点にしぼられた.1)サイズの種類が少なく体に合いにくい.2)ミシン縫いが多く,縫製が雑である.3)材質面では表地に対して裏地が悪く,同一柄のものが多い.しかし,以上のイメージはそのまま購入経験者による,既製和服の問題点へと直結している傾向が見られた.既製和服購入低率の一要因が,このあたりにあるのではないかと考えられる.かって,洋服における既製服が,戦前→戦中→戦後の歴史を経て,安かろう,悪かろうの「つるし」の時代から,現代の「ファッション」の時代に到着し,量・質共に飛躍的な発展をし,消費者イメージも今や,外出着,日常着共に満足度の大きいものに変化して来た.一方,和服の既製服が伸びないのは,和服の構造そのものが,洋服的な量産体系にのりにくいという基本的な問題があるが,最近になって,大手の化繊企業がシステム化の研究に着手し,システム方式を開発した.これにより,化繊製品については,今までの既製服の機械縫製にみられた,パツカリング発生率を極限までに押える持殊ミシン使用により,品質向上を期待することが出来るようになった.また,W&W性と,仕立上りの品質が明らかに優れているようである.しかし,これもサイズ面,材質面等については未だ完全なものではなく,今後の研究の余地があろう.このように最近は,企業も消費者ニーズをよく研究している現状であるが,消費者もこれまでのような「上手なお買物」的な消極的なものだけでなく,消費者と企業とのすれちがいを解消する消費者のための生産へとリードしていく,より積極的姿勢が望まれる時代に来ている.短大の被服教育においてもこれに答える為には,これまで以上に高い知識や,問題解決への能力養成の必要があろう.今後は既製和服の問題点とされた,サイズ,および縫製面における検討を重ねてゆきたいと考えている.本研究にあたり,調査に御協力下さった主婦の方々及び本学被服コースの学生に感謝いたします.
著者
中沢 志保
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学紀要. Journal of Bunka Gakuen University. 人文・社会科学研究 = (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.35-55, 2012-01

本稿は,20世紀前半期のアメリカにおいて主要な対外政策の立案と決定に関与したヘンリー・スティムソン(Henry L. Stimson)を引き続き考察するものである。本稿では,ファシズムの台頭を背景にアメリカが第二次世界大戦に参戦していく過程と,ローズヴェルト(Franklin D.Roosevelt)政権下の陸軍長官に就任し,戦争計画において中心的な役割を果たしたスティムソンの思想と行動に焦点を合わせる。具体的には,1930年代から明確に示された枢軸国への警告,連合国側への軍事援助を参戦前から可能にした武器貸与法(the Lend-Lease Act)の成立と運用,対独戦における主要な戦略と評価される第二戦線の形成などの内容を振り返り,それぞれにおいてスティムソンが果たした役割を検証する。第二次世界大戦の後半期から重要課題として浮上してくる原爆の開発と投下決定,核の国際管理,戦後処理,対ソ連外交などの問題に関しては次の研究課題としたい。
著者
原田 洋平
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.359-365, 2016-09-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
4

国土交通省では,高齢者や障害者,訪日外国人を含めたあらゆる人がストレスなく自由に活動できるユニバーサル社会の構築に向けて,ICTを活用した歩行者移動支援サービスの普及に取り組んでいる。2020年を念頭に,歩行者の移動に必要なデータをオープンデータ化するための環境を整え,利用者のニーズに合致した多様なサービスがさまざまな主体から提供されるよう取り組みを進めている。
著者
門馬直衛 著
出版者
岡田日栄堂
巻号頁・発行日
vol.第1輯, 1926
著者
秋本治著
出版者
集英社
巻号頁・発行日
1977
著者
藤原 正弘
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会全国大会研究発表論文集 日本社会情報学会 第26回全国大会
巻号頁・発行日
pp.151-154, 2011 (Released:2012-03-20)

For twenty or thitry years video phone service has not diffused. Some reasons, such as the rate for calls, difficulties in its handling, an adverse reaction to face-to-face calling, were pointed out in earlier studies. We focus on the demand patterns inclueding users' attributes. In our research we found a intended party does not always to want to use video calling services. For example a 40's or 50's husband has a wish to make video calling to his wife but who does not hope so.
著者
櫻井 貴敏 青山 幸生 齋藤 紀彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.34-39, 2015 (Released:2015-06-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1

【目的】我々の2次救急現場では,急性胃腸炎による腹痛などの入院を要しない疼痛患者をよく経験する。そこで,四肢の疼痛,胆石の疝痛発作などに頓服として用い,鎮痛効果があると報告されている芍薬甘草湯が,救急外来における急性疼痛症例に対し,有効であるかについて,検討した。【方法】平成23年8月から11月までの期間,救急外来に救急車で搬送され,疼痛を主訴とする患者のうち,理学的,画像診断にて,生命の危機を除外できる30症例を対象とした。芍薬甘草湯エキス剤2.5gを投与し,30分後に疼痛の改善の有無を判定した。有効性はvisual analog scale(VAS)を用いて投与前後で評価した。【結果】全症例の投与前後のVAS 平均値が投与前71.03 ± 19.42mm から投与後34.86 ± 34.89mm(P < 0.01)へ有意に変化した。【考察】芍薬甘草湯は救急外来における疼痛軽減に有効である。特に,急性胃腸炎による疼痛軽減に有効である。
著者
高橋 原
出版者
東京大学文学部宗教学研究室
雑誌
東京大学宗教学年報 (ISSN:2896400)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.21-32, 2005-03-31

This essay focuses on some recent criticisms of C. G. Jung's religious thought. Some of them are based on the newly discovered documents and put new light on Jung's thought. Two types of views can be pointed out among the critics ; one considers Jung as a clinical psychologist and another as a religious thinker.Typical Freudian criticism belongs to the former and doesn't find any value in Jung's religious writings ; that is, Jung's religious or theological writings are the results of his childhood psychological problems and/or his break with Freud influenced upon them. Richard Noll's controversial book, Jung Cult, belongs to the latter. According to Noll, Jungian psychology started as a cult whose charismatic leader was Jung himself. In contrast to these critical view, there are certain Jungians who welcome him like a prophet. Edward Edinger is one of such Jungians, who considers Jung's Answer to Job like a holy scripture. So, for the proper understanding of Jung's thought and his influence as a whole, it's important to have a look at the context or constellation of the recent controversy as well as those in Jung's life time.
著者
狩野 謙一 伊藤 谷生
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.8, pp.413-432, 2016-08-15 (Released:2016-09-02)
参考文献数
59
被引用文献数
2

伊豆半島南部に分布する新第三系の白浜層群中には伊豆-小笠原弧背弧域の浅海火山活動と,それに密接に関係した堆積・造構作用を示す露頭が海岸部に好露出している.ここで見られる現象は,未固結堆積物に貫入する様々な形態の岩脈,ドーム,火山岩頚,ラコリスなど,および貫入岩体周縁部での水冷破砕とぺぺライト形成,母岩の熱水変質作用,枕状溶岩,自破砕溶岩を含む水中火山岩の噴出・堆積過程,火山活動に起因する堆積物重力流の発生・再堆積,地質図規模の緩やかなドーム・べースン構造,貫入岩体周辺での急傾斜部,堆積同時性断層の形成などである.本巡検では,半島南東部の下田地域,南伊豆地域,西伊豆地域の海蝕崖,海食台でこれらの現象を観察する.これらは,火山性島弧の背弧やリフト帯の浅海域での海底火山活動の実態を理解するための好例である.
著者
中北 宏
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-17, 2009-08-23
被引用文献数
1
著者
末廣 恒夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.457-460, 2016-09-01 (Released:2016-09-01)

神奈川県資料室研究会の活動の中心は,8月を除く毎月開催している月例会である。月例会では,講演会,見学会,グループディスカッション等を行っている。理事会が月例会の企画・運営を行っており,年間計画を立てて総会に提案している。講演会では,電子ジャーナル・学術雑誌関連,実務関連,著作権関連などのテーマを中心に取り上げている。毎回詳細な記録を作成し,「神資研ニュース」と年報「神資研」に掲載している。小規模やワンパーソンで運営しているところが多い会員に対して,「泥臭さ」と「半歩先を行く」というモットーの元に月例会を開催しているところに,神資研が月例会を開催する意義がある。
著者
福島 昭治 鰐渕 英機 森村 圭一朗 魏 民
出版者
日本環境変異原学会
雑誌
環境変異原研究 (ISSN:09100865)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.75-79, 2005 (Released:2005-12-26)
参考文献数
11

Until recently it has been generally considered that genotoxic carcinogens have no threshold in exerting their potential for cancer induction. However, the non-threshold theory can be challenged with regard to assessment of cancer risk to humans. In the present study we show that food-related genotoxic hepatocarcinogens, heterocyclic amines and N-nitroso compounds at low doses do not induce preneoplastic lesions and cancer-related markers in rat medium-term carcinogenicity bioassay. The results imply existence of a threshold, at least practical one, for carcinogenicities of genotoxic carcinogens.
著者
大久保 治男
出版者
武蔵野学院大学
雑誌
武蔵野学院大学大学院研究紀要 (ISSN:18828515)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.7-15, 2008

本稿は「日本文化論」(持講を含む)を講述して行くに付、就中、日本法文化史的側面のうちで徳川幕藩体制下の刑事法分野における特色、刑罰体系、犯罪の事例(今回は殺人、盗罪、放火についてのみ)裁判制度等を理解する上で、最低限度知っていなければならない事項の概況について記述したものである。これは、前々よりその必要性を感じていた受講生の便宜のために用意したものである。拙著の「日本法制史概説」(芦書房)「日本法制史」(高文堂出版社)「公事方御定書百ヶ条」(高文堂出版社)「日本法制史史料60選」(芦書房)「江戸の犯罪と刑罰」(高文堂出版社)等の自著を基盤に拙者がまとめ記述した別冊歴史読本特別増刷「鬼平犯科帳のすべて」(新人物往来社)収録の「犯罪類型別・大江戸犯罪録」の内、前半よりの一部加筆変更して引用したものである。尚、「殺人」「盗罪」「放火」についての犯罪に関する具体的事件内容や適用刑罰については、総て、「御仕置例類集」「徳川禁令考」に収録してあるもの(原文は漢文調の幕府公用文)を筆者が現代文的に訳して引用しているものである。一部難解の処はニュアンスを加えて詳述・加筆してある処もある。
著者
有賀 敦紀 西田 公昭
出版者
立正大学心理学研究所
雑誌
立正大学心理学研究所紀要 The journal of the Institute of Psycology, Rissho University (ISSN:13482777)
巻号頁・発行日
no.11, pp.45-49, 2013

Visually similar products with each other are recently pervasive in the marketplace. Specifically, the products that are aimed at humorously imitating the originals are called "parody products". This study examined how consumers perceive the similar products including parody products. Research I investigated participants' general impressions (visual similarity, likeability, familiarity, and so on)of the similar products, and then found a positive correlation between the visual similarity and the difference in the ratings given to the other impressions between them. In Research II, the effects of prior stimuli on likeability to the original and parody products were investigated. Then, the different modulations of likeability between the original and parody were demonstrated when the original product was repeatedly presented as prior stimuli. These results suggest that consumers establish different representations for visually similar products, and importantly that they perceive the parody and its original in a totally different manner.