著者
浅井 千晶
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.10-15, 2011-12-29

『風の谷のナウシカ』、『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』といった宮崎駿の映画において、「水」は世界を浄化し、生物を静かに受容し、記憶の揺籃となる存在である。近作『崖の上のポニョ』においても水は重要な役割を担っているが、この作品は海辺と海底をめぐる物語であるため水の力はより強大で、その恵み深い側面よりむしろ暴力的な変容をもたらす力が描かれる。また、海辺という海と陸の境界の場は、異なる時空、人間の日常世界と魔法にみちた世界、現実と幻想の境界にあるダイナミックな物語を成立させている。 『崖の上のポニョ』は現代の日本を舞台にしており、自然災害の描写にも迫真性があるが、作品世界内の出来事として受容し、自然の意味を再考することは可能であろう。
著者
伊藤 元博 熊澤 伊和生 西尾 公利 森川 あけみ
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.132-135, 2011
被引用文献数
2 1

患者は40歳,男性.2日前より発熱,食欲低下,頸部腫脹にて他院通院中であった.意識レベル低下が出現し,救急車にて来院.救急外来で突然呼吸停止し,経鼻挿管を施行した.両頸部に発赤,腫脹を認め,入院時CTにて全頸部にガス像を認めた.ガス産生を伴う深頸部膿瘍による敗血症性ショックと診断しノルエピネフリンを0.3~0.9γ投与して全身管理し,全身状態が安定した入院後3日目の造影CTにて椎前間隙に膿瘍を認めたため,入院後3,5日目に切開排膿術を施行した.起炎菌は緑膿菌,嫌気性グラム陰性球菌の混合感染で,DRPM,CLDMを使用し,32日目まで洗浄処置を要した.64日目に右下顎智歯抜歯術を施行した.自験例は右下顎智歯の歯性感染症が原因で生じたガス産生を伴う深頸部膿瘍で,造影CT検査にて膿瘍形成を早期に発見し,至適な切開,抗菌薬の使用にて救命することができた.
著者
宇田 忠司 阿部 智和
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.75-95, 2015-12-10

本稿の目的は,聞き取り調査および公表資料をもとに,コワーキングスペースの運営プロセスを記述することである。具体的には,2012年12月に開設され,国内最大規模の利用者を誇るコワーキングスペース7F(さいたま市大宮区)という場の運営過程について,前史,揺籃期,確立期,転換期という4つのフェーズに分けて詳述していく。
著者
石田 香
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.315-323, 2004-03-10

One of the significant features of the public lending right system in the United Kingdom is that it recognizes the public lending right as an individual author's right to receive remuneration for the free lending of their works by public libraries. This feature was formed through the authors'public lending right campaign, where they fought not for the government patronage but for legal rights of authors. In particular, coinage of the word "public lending right" as an analog of existing rights and the campaign policy settled by the Society of Authors contributed to determine the course of the campaign.
著者
都司 嘉宣 佐竹 健治 石辺 岳男 楠本 聡 原田 智也 西山 昭仁 金 幸隆 上野 俊洋 室谷 智子 大木 聖子 杉本 めぐみ 泊 次郎 Heidarzadeh Mohammad 綿田 辰吾 今井 健太郎 Choi Byung Ho Yoon Sung Bum Bae Jae Seok Kim Kyeong Ok Kim Hyun Woo
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3/4, pp.29-279, 2012-03-16

We report the results of field surveys conducted by the Earthquake Research Institute, to measure tsunami heights from the 2011 off the Pacific coast of Tohoku, Japan Earthquake (M 9.0), on March 11. Measurements were taken at 296 points on the Sanriku coasts of Aomori, Iwate, and Miyagi Prefectures, and the Pacific coasts of Ibaraki and Chiba Prefectures. The data are included in the results of the 2011 Tohoku Earthquake Tsunami Joint Survey Group. We did not cover the Sendai plain in the southern Miyagi Prefecture because other parties extensively measure there, nor Fukushima Prefecture because of the accident of the Fukushima Dai-ichi nuclear power plant. The twelve surveys first sought traces indicating tsunami runup or inundation heights. Reliability was classified into A (most reliable based on clear physical evidence and eyewitness accounts), B (mostly based on natural traces), and C (least reliable based on equivocal evidence). Most physical evidence obtained after June was not significant; therefore, reliance was mostly placed on eyewitness accounts. Locations and relative heights above sea level were measured using handheld GPS receivers, auto-level, or total station. The measured heights were corrected for differences in tide level between measurement time and tsunami arrival time. The results are shown on table and four regional maps; however, the details of each measurement, including locations shown on 1:25,000 maps and photographs of evidence are shown in the Appendix. Along the northern Sanriku coast (Aomori and Iwate), most of the 141 heights range between 10m and 30m. Runup heights exceeding 30m were measured at one location in Noda Village and nine locations in Miyako City. On the southern Sanriku coast in Miyagi, most of the 76 measurements range between 4 and 20 m. On the Ibaraki coast, 36 measurements range from 2.8 to 8.1 m, and the heights generally decease toward the south. On the Chiba coast, 43 measurements range from 0.7 to 7.9 m, with the maximum height near Iioka, Asahi City.
著者
盛山 和夫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.172-187, 2015

<p>少子高齢化の中で社会保障制度はさまざまな見直しを迫られており, 社会保障改革を主張する声は多い. しかしそのほとんどは主流派経済学に依拠した「社会保障の削減」にすぎない. そこでは「社会保障費の増大」は「国民経済への負担を増大させる」とのまことしやかな (実際にはまったくの虚偽でしかない) 論理に基づいて, 財政難を理由に公費支出水準の削減と受益者負担の増大とが叫ばれるばかりで, 「福祉社会の理念」は完全に欠落している. 本来, 社会保障制度をどう改革するかの議論は, 「あるべき福祉社会像」に基づいて展開されるべきであり, それは社会学が取り組むべき重要な課題である, ところが, 今日の社会学には, 財政難の論理を適切に反駁したうえで社会保障制度の改革構想を具体的に展開するという学問的営為が見られない. せいぜいのところ「社会的包摂」や「連帯」や「脱生産主義」などの抽象的理念が語られるだけである. これには (1) 社会学がこれまで経済学の論理と直接対峙することを回避し, マクロ国民経済的な視点の鍛錬を怠ってきたこと, (2) 「理念を語る際には, その実現条件は無視してよい」という空想的理念主義が知的鍛錬を避ける免罪符としてあったこと, そして (3) それらの根底に, 新旧の経験主義的な社会学自己像がある. 本稿は, そうした社会学の現状を批判的に考察し, 社会学がどのような道筋で社会保障改革の問題に取り組むべきかを明らかにする.</p>
出版者
立川飛行機
巻号頁・発行日
1942
著者
岩野 笙子
出版者
新潟県民俗学会
雑誌
高志路 (ISSN:0912067X)
巻号頁・発行日
no.398, pp.1-12, 2015-11

4 0 0 0 OA 東京市史稿

著者
東京市 編
出版者
東京市
巻号頁・発行日
vol.?園篇 第4, 1936
著者
遠藤 宏美
出版者
筑波大学大学院博士課程教育学研究科
雑誌
教育学研究集録 (ISSN:03867927)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.25-35, 2002

はじめに 本稿の目的は、通信制高校の生徒を支援する「サポート校」を対象に、そこでの「学校文化」なるものの現状を明らかにすることである。「サポート校」は、学校制度のうえでは周辺部に位置する民間教育機関であるにもかかわらず、 ...
著者
戸田 聡
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 = Journal of religious studies (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.397-421, 2014-09

「しあわせ」「幸福」は現世で感得される心的状態を表すが、キリスト教修道制が目指したのは救済であり、幸福とは明らかに異なる(「幸福感」とは言えても「救済感」とは言えない)。しかも救済に到達するために、修道制は、この世で得られる様々な幸福の源泉(飲食、性、家族関係)を放棄している。修道制における幸福を語ることがそもそも可能かどうかは問われてよい。キリスト教の中には、現世での幸福は観照に存するとする伝統があり、それを紹介しているピーパーの議論を本稿では詳しく検討したが、言うところの「幸福」があまりに抽象的だとの感が否めない。幸福はもっと日常的に人々が感得できるものであり(例えば、喜びを通じて)、その観点から見れば、修道士もまた、生活形態こそ通常人のと異なるとはいえ、何らか人間関係の中で日常生活を営んでいたのであり、彼らもまた幸福を感得できたという可能性は否定できない。
著者
井上 和人
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
vol.132, pp.230-248, 2015-07

本稿では、西沢一風作『風流今平家』(元禄一六年三月刊)から七八之巻一「今俊寛涙の足ずり」を取りあげる。『風流今平家』が『平家物語』の「やつし」--『平家物語』を当世風に卑近に崩した作--であることは周知。ただし、『平家物語』の「やつし」は全篇の構想であり、一章一部分の趣向には『平家物語』以外の素材も活かされているはずと推測。果たして、今回の検討の結果、「今俊寛涙の足ずり」のうつぼ舟の趣向は、大職冠物によることが明らかになった。