著者
須賀 知美 庄司 正実
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.137-153, 2008
被引用文献数
1

感情労働が職務満足感やバーンアウトに及ぼす影響については,これまでの研究で一貫した結果が得られていない。本稿は,これまでの研究を概観し,研究対象や測定方法などを整理することを目的とした。その結果,さまざまな職業が調査対象とされ,感情労働の測定指標もさまざまであることが明らかにされた。この測定指標の混在が,一貫した結果が得られない理由の一つと考えられる。また,感情労働以外の独立変数や調整変数,媒介変数について,仕事の自律性やソーシャル・サポートなどの労働条件や職場環境に関する変数は多いが,パーソナリティや態度のような変数が少ないこと,労働者が感情労働を行うことよるクライエントや客からの感謝・承認を含めた検討がほとんどないことが指摘された。また,感情労働と他の変数の交互作用の検討も少ないことが示された。さらに,日本での文献数は外国の文献数と比較すると遥かに少ないことが明らかになった。これまでの研究の問題点に対する今後の課題について言及された。
著者
長井 千春 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.77-86, 2007-05-31

ヨーロッパの後進国ドイツは、19世紀末には世界屈指の産業国家に成長していた。日本では、同じ頃、イギリスに代わる近代化の準拠国として新たにドイツに照準をあわせ、重要な輸出産業である陶磁器製造においてもドイツを模範とした。本稿は、マイセンでの磁器開発を起点に盛んとなるドイツ磁器産業の発祥から発展の経緯を検証するなかで、その特性を整理し考察を試みた。19世紀中葉のドイツ文化圏には4つの特徴ある磁器産業地帯が形成されていた。各産地ともに資源環境に恵まれ、量産技術の開発と合理的な経営に優れた工場が多く、これまで特権階級の所有物であった磁器を日用必需品として、幅広い生活層への普及に貢献した。そして、20世紀初頭には輸出量でアメリカ市場を制覇し、かつて粗悪で悪趣味と呼ばれた磁器製品は、国策としての工芸振興とデザイン運動との連動により、技術力とデザインで国際的に認知されるまでに力をつけ始めていた。
著者
姜 鶯燕
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.163-200, 2008-03

本稿は、須藤由蔵の手記である『藤岡屋日記』を素材に武士身分の売買と思われる事例を抽出し、近世中後期における武士身分の売買の実態について検討したものである。『藤岡屋日記』の中で十七の武士株の売買の事例が見つかった。分析の結果を下記のようにまとめる。 ① 全ての事例は御家人株の売買であったが、売買の対象となった御家人の役職が多彩であった。御家人の家筋をみると、「御抱席」の御家人もいれば、「御譜代准席」と「御譜代席」の御家人も少なくなかった。 ② 株の売買は密かに行われているように思われるが、実際に、家来に御家人株を買い与えた幕臣もいた。 ③ 御家人株の売買は庶民が武士になる手段として認識されているが、実際に、武家の二男以下の男子や武士身分を失った武士が武士層に戻る手段として御家人株を利用した。 ④ 身分を売った元御家人の中で町人となった者もいたことがわかった。
著者
林 倫子 神邊 和貴子 出村 嘉史 川崎 雅史
出版者
土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.246-254, 2010

本研究は,明治・大正期に鴨川の河川空間が官有地となり京都府の管理下にあった時期を取り上げ,官有地利用に関する行政文書など当時の史料の読み取りを通じて,料理屋・貸座敷営業者による先斗町の鴨川河岸地と堤外地の土地利用の仕組みを解明した.その結果,[1]当時の先斗町の鴨川官有地は,営業者にとって付加価値の高い場所として認識されていたこと,[2]先斗町の営業者は,河岸地を宅地として隣接する民有地と一体的に利用しており,その地先に当たる堤外には高床構造や床几構造を設け,それぞれ別の契約によって官有地を借用していたこと,[3]営業に用いる河川構造物は営業者が私費を持って設置・修繕を行っており,京都府は一定の節度を持ってその可否決定をなすことで鴨川の河川環境を管理していたことが明らかになった.
著者
永嶺 重敏
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.200-210, 1999-11-01

婦女新聞社や東京日日新聞社をはじめとする新聞社や出版社は,明治から大正にかけて一連の図書館活動を展開するが,この活動はあるユニークな特徴を有していた。それは,通常みられるような直接来館者への閲覧サービスではなく,郵便による非来館者へのサービスを指向していた点である。具体的なサービス活動としては,(1) 郵便による貸出,(2)読書会事業,(3)巡回文庫の3形態が実施されていた。その展開過程をたどり , さらに,サービス対象となった地方読者の視点から,その持つ意味を考察した。
著者
末冨 芳
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.156-169, 2012

義務教育の基盤としての教育財政制度改革に求められる条件は、(1)公立学校については「面の平等」の不足を補いつつ、「個の平等」に対応していくための学校分権やナショナル・スタンダードの導入、(2)公立学校の枠組みでは保障してない教育ニーズへの対応である。また効率を重視する財政削減路線の中で、学校や教育行政のアカウンタビリティの遂行が義務教育財政の充実のために必要とされる。
著者
稲垣 佑典
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.92-102, 2009

Yamagishi (1998) predicted that the level of general trust in urban areas would be higher than in rural areas based on the emancipation theory of trust. According to this theory, communities in urban areas, in which both social uncertainty and opportunity cost are high should foster highlevel general trust. However, there is no difference in the level of general trust between urban areas and rural areas according to recent surveys conducted in Japan. These results contradict Yamagishi's prediction. This study examines whether and why there is a difference between urban and rural areas in the generating process of general trust. I conducted a mail survey in an urban area (Itabashi Ward in Tokyo) and a rural area (the former Tochio area of Niigata Prefecture) in order to examine the cause of this phenomenon. As a result, some of the analyses suggest that the emancipation theory of trust is likely to be applicable in urban areas; on the other hand, different trust-generating processes are more likely in rural areas.
著者
石井 国雄 沼崎 誠
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.24-30, 2011

It has been shown that people under threat to self-worth exhibit negative implicit attitudes toward minority outgroups (e.g., African Americans in North America) (Spencer, Fein, Wolfe, & Dunn, 1998). But it has not been shown that people under such threat exhibit negative implicit attitudes toward outgroups which are not likely to be negatively evaluated (e.g., women). We conducted an experiment to examine whether male participants under threat to self-worth would exhibit implicit ingroup bias related to gender by using Implicit Association Tests (IATs.) Participants received either self-image threatening feedback about initial tests or no feedback (threat vs. non-threat). They then completed gender attitude IATs. The results showed that participants exhibited stronger implicit ingroup biases related to gender in the threat condition than in the nonthreat condition. The role of threat to self-worth in men's implicit gender attitude is discussed.
著者
丹羽 博之 Hiroyuki NIWA
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.16, pp.55-68, 2015

『詩経』(終風)の「寤言不寐、願言則嚔」の詩句に対して、鄭玄箋には「今俗人嚔、則曰人道我、此古之遺語也」とある。古代中国では、嚔をすると他人が自分のことを言っているという俗信があったことを示している。その俗信は後世にも受け継がれていった。北宋蘇軾の「元日過丹陽明日立春寄魯元翰」詩に、白髪蒼顔誰肯記 白髪蒼顔 誰か肯へて記せん 暁来頻嚔為何人 暁来頻りに嚔す 何人の為ぞとあるほか、『嬾真子』巻三「俗説以人嚔噴為人説、此蓋古語也」(俗説人の嚔噴を以て、人説ふと為す。此れ蓋し古語也)等の例を見る。一方、日本でも、嚔をするときは誰かが噂をしているという俗信がある。用例を挙げると、艷二郎くしゃみをするたび、世間でおれが噂をするだろうとおもへども 黄表紙・江戸生艶気樺焼(1785)夏をよそに噂をすればか此ゆふべ薄夏といふてだれもはなひける〈三馬〉滑稽本・大千世界楽屋探(1817)下 日比のうさを語合、謗り咄しに渕右衛門、定めて嚔のうるさからんと、思ひやるさへおかしき人情本・明烏後正夢(1821~24)二・十二回等、江戸時代にまで遡れる。これらの江戸時代の俗信と中国の俗信との関係を考察する。一方、嚔は種々の俗信がある。「嚔を一つすれば褒められ、二つすれば憎まれ、三つすれば惚れられ、四つすれば風邪をひく」等とも言う。『万葉集』には、うち鼻ひ鼻をそひつる〔鼻乎曾嚔鶴〕剣太刀身に添ふ妹し思ひけらしも巻十一・二六三七番歌 の歌が収められているが、これは、前掲の嚔の俗信の「三つすれば惚れられ」に対応する。この他『徒然草』(四七)にも「くさめ」のまじないの話がある。『詩経』の嚔の俗信を中心に日本中国の嚔の迷信について考察した。
著者
野田 理世
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.199-210, 2010

This study investigates the impact of mood on category-consistent/inconsistent information processing by comparison of data collected immediately after an experiment and a time lapse. In two experiments, no impact of mood was observed in recall rate immediately after the experiment among participants induced into a positive mood, regardless of the consistency of category information. However, a greater recall rate was observed for category-consistent information in the time lapse condition. On the other hand, no substantial impact of mood was found, regardless of time lapse, in the negative mood. The results showed the significant impact of mood on category-information coding styles, depending on the strength of the unit connections of the category-consistent/inconsistent information.