著者
島津 俊之
出版者
和歌山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

十九夜講とは、月の十九日の夜に女性(おもに主婦)が当番の家や地域の公民館に集まって、如意輪観音の掛輔に念仏を唱えて安産や健康を祈る民俗行事である。これは一般に近世期に始まったとされ、如意輪観音の彫られた十九夜供養碑が建立されるのが通例である。それゆえこの行事は、ある種の<宗教景観>をつくりだす要因ともなる。講の行事を担う社会集団の規模は、近世の藩制村の構成要素としての、いわゆる村組レヴェルの小地域集団であることが多く、藩制村の枠を超えるケースはほとんどない。十九夜講は関東から東北にかけて盛んであるが、西日本では大和高原の北部地域(「東山中」と呼ばれる地域)に集中的にみられることが、これまでの研究からわかっている。それゆえ全国的にみると、東山中は十九夜講の分布における待異な飛び地をなしているといえる。この研究では、(1)<制度>としての十九夜講が、どの村落からいかなるかたちで空間的に伝播していったのか、(2)十九夜講が伝播した各村落において、いかなるレベルの社会集団が十九夜講の行事を担い行い、かつ十九夜供養碑の宗教景観をつくりだしたのかを、明らかにすることを目的とした。2年間の研究の結果、(1)については、十九夜講が現在の奈良市忍辱山地区からおおよそ同心円状に伝播してゆく過程が明らかになってきた。(2)については、十九夜講行事を担う社会集団は近世の藩制村レベルではなく、それを構成する小地域集団(村組や近隣組など)であるケースが多いことがわかっててきた。そのような小地域集団が、十九夜講伝播の担い手となり、十九夜供養碑の宗教景観をつくりだしたと考えられる。
著者
辻 紀海香 加賀美 りさ 社方 健太郎 加藤 秀弘
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.130, pp.105-113, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
19

In order to develop Under Water Speaker system (UWS) incorporating species specific audible properties, we examined cetacean sighting survey data collected by hydrofoil crew from four major hydrofoil sea lanes, in 2008 – 2011; “Northern Kyushu (including Busan-Iki-Tsushima routes)”, “Kagoshima”, “Izu-Oshima (including Atami routes)” and “Sado”. In “Northern Kyushu” cetaceans were tended to be frequent in offshore deeper than 100m. In “Kagoshima”, cetaceans including humpback whales were mainly observed in winter. In “Izu Oshima” it was remarkable that sperm whales occurred in winter to early spring with peak of January to March, and also it seemed to be currently increasing. Baird's beaked whales also occurred in winter in addition to regular occurrences in summer. In “Sado”, minke whales were mainly sighted in month from March to June. So as to increase accuracy in cetacean species identification, it is desire to conduct educational lecture and training for cetacean species identification.
著者
鈴木 貢次郎 井出 美奈子 中村 幸恵
出版者
日本芝草学会
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.105-108, 2008-03-31 (Released:2010-06-08)
参考文献数
5

ジャノヒゲが長期間冠水下で生育できる理由について調べた。長期間冠水したジャノヒゲの根の断面を観察したところ, イネを冠水した時にできる通気組織を観察した。また, ジャノヒゲの植物体全てを冠水したり根系部のみを浸水し, これらを明条件と暗条件に置いて水中の溶存酸素量を測定した結果, 明条件下で水中の溶存酸素量が増えた。ジャノヒゲの根には, 根系での呼吸が行われにくい時, 葉茎部の光合成作用によってつくられた酸素を運ぶ通気組織がつくられたものと考えられた。

3 0 0 0 OA 天気図

著者
中央気象台 編
出版者
中央気象台
巻号頁・発行日
vol.大正14年11月, 1938
著者
Satoru Hashimoto Yoshihiro Motozawa Tadahisa Saito Takahiko Suzuki
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-22-0412, (Released:2022-09-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1

The first percutaneous coronary intervention (PCI) was performed in September 1977, and after 1980 this minimally invasive treatment was established in Japan. To deliver this treatment to a larger population, a number of cardiovascular clinics emerged across the country in the 2000s, and the number of PCI cases performed has been steadily increasing, to >250,000 cases per year. In the early 2000s, a single catheterization unit was profitable, if it performed a certain number of treatments and was adequately staffed without excessive capital investment. In the late 1990s, the price of a balloon catheter medical device used for PCI was approximately JPY300,000, although the price was reduced to JPY32,000, almost one-tenth in price, in the April 2022 revision of the National Health Insurance. The reimbursement of the mainstream drug-eluting stent has also decreased from JPY421,000, when it was first introduced, to JPY136,000 currently. In addition, the consumption tax and reforms in working hours will have a major impact on clinic management. We present a history of cardiovascular clinics in Japan and their present and future positions under the variable external environment.
著者
灘 久代
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1_40-1_51, 2007 (Released:2008-07-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

目 的今日のわれわれ助産師が,助産師としての責務や役割を再認識し,専門職業人として活動できるための示唆を得る。対象と方法戦前から戦後,開業助産師として活動した助産師の聞き取り調査を平成17年2月~平成18年3月まで行った。そして対象者の時間軸に沿って,ライフヒストリーにまとめた。結 果開業助産師は,人々に喜びや安心感をもたらすために,確かな助産技術や判断力を持ち,同時に妊産婦のおかれている状況や家庭環境を把握するために,本人のみならず家族との人間関係やつながりを非常に大事にした。そして,常に妊産婦の味方となり,使命感を持って堂々と助産師としての役割を果たしてきた。結 論助産師には,いつの世においても堂々と責務を果たすために技が必要である。しかし1つひとつの実践は,単なる技に終わるものではない。人間愛や生命への慈しみを持ち,対象者に喜びや安心感をもたらすことも重要である。

3 0 0 0 OA 名将言行録

著者
岡谷繁実 著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
vol.2, 1944

3 0 0 0 OA 安筑史料叢書

出版者
高美書店
巻号頁・発行日
vol.第2輯, 1938
著者
石橋 恭之 木村 由佳 佐々木 英嗣 千葉 大輔 石橋 恭太
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、再生誘導医薬(HMGB1ペプチド)を用いて関節内組織修復を促進する新たな治療戦略を開発することである。関節軟骨は一度損傷すると自然治癒困難と考えられているが、HMGB1ペプチドにより関節内に間葉系幹細胞誘導することで組織修復を促進することが可能となる。このような治療戦略は従来の再生医療とは異なるコンセプトであり、関節軟骨のみならず、半月板や靱帯修復に応用できる可能性を含んでいる。
著者
三島 佳音
出版者
富山大学比較文学会
雑誌
富大比較文学
巻号頁・発行日
vol.9, pp.234-200, 2017-03-10

小泉八雲ことラフカディオ・ハーンは、左目が失明しており右目は強度の近視であった。そんなハーンにとって、異国である日本で執筆活動をする上で重要となってくるのは、彼の耳の感覚であった。ハーンは数多くの「音」に関する文献や作品を残しており、特に日本本来の音や虫の声などを深く愛した作家であった。そういった自然の音の描写のほかにも、ハーンの作品には日本語がそのまま用いられている箇所が多く存在する。さらに言えば『Glimpses of Unfamiliar Japan』の「By the Japanese Sea」にある話のように「Ototsan!Washi wo shimai ni shitesashita toki mo, kon ya no yona tsuki yo data ne?―Izumo dialect」と、ハーンが節子と暮らしていた土地である松江の方言が用いられている場面もあり、ハーンが何らかの意図を持って英文の中に日本語を配置したことが分かる。ハーンは節子や周囲の人々から聞いた話を物語として著しており、その点においても、ハーンとって耳は作品を書くために何より大切な商売道具であったと思われる。ハーンにとって聴覚がいかに大事であったか、その研究は今までにいくつもなされてきた。ハーンが耳を使う作家であることは上記した通り様々な先行研究がなされてきたが、それは虫や下駄の音といった日本の自然や伝統文化の音、もしくは『Kottō』の「The legend of Yurei-Daki」の中にある「Arà!it is blood!」といった日本語の響きの研究が主流であり、節子の出雲方言には今まであまり注目されてこなかった。しかしハーンの作品は出雲方言訛りの節子の語りを聴いて書かれたものが多く、ハーンの作品を読み解く上で節子の発音や出雲方言が重要であることは言うまでもない。日本語が母語ではないハーンには、日本人とは違うように音としての日本語が聞こえていたはずである。今回の研究では特に節子自身の言葉や、節子の出雲方言の影響がどれほどハーンの作品に現れているかを中心に考察しつつ、ハーンが出雲方言、ひいては日本語をどのように日本語を受け取っていたのかということを考えていく。この論文ではその手掛かりとして、ハーンが英文作品にそのまま取り入れた日本語を調査し、その真意を読み解いていくこととする。
著者
蒲田 敏文
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.561-571, 2008-05-31 (Released:2008-07-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

膵疾患を正確に診断するためには,後腹膜腔ならびに膵と腸管(大腸,小腸)を結ぶ間膜(結腸間膜,腸間膜)の解剖学的理解が必要である。単純CTでも急性膵炎の診断は十分可能であるが,重症度や合併症の評価には造影 CTが不可欠である。また,時に膵癌が急性膵炎の原因となることがあるが,単純 CTのみでは膵癌の検出は困難なことが多く,造影ダイナミックCTが必要である。MRI(以下,MRCP)は胆道結石の診断能が高く,急性膵炎に随伴する出血性脂肪壊死,仮性.胞内出血などの出血性変化の評価にも有用性が高い。MRCPは造影剤を使用することなく,胆管膵管の全体像を描出できるので,膵炎の原因精査(胆管膵管奇型)にも推奨される。
著者
川村 潤子 / 原田 忠直
出版者
日本福祉大学経済学会
雑誌
日本福祉大学経済論集 = The Journal of Economic Studies (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.59-81, 2018-09-30

本論は,「子ども」を保育園などに預けることなく,母親たちの相互扶助システムのもと,新たな働き方を模索するNPO 法人マザーズライフサポーターの成立経緯や諸活動を紹介する.その上で,マザーズライフサポーターの運営方法(とくに経済活動)と中国の「包」的営みとの類似性から,その活動の社会的な意義を問い,「家族」にいかなる影響を与えるのかを考察する.
著者
ヴィラーグ ヴィクトル
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
no.20, pp.65-75, 2020-03

近年、ソーシャルワークにおける国際的な諸基準は性の多様性について明確な立場を示しているが、日本の専門職界においてLGBTに関する取り組みはまだ少ない。本稿は、日本を含めて性的マイノリティの実態の把握と関連基準の比較を目的とする。この目的を達成するために、本稿は4部構成となっている。 第一部は、性の多様性をソーシャルワークにおいてどのように理解すれば良いかについて論じ、クライエントの性をアセスメントするために、身体・心理・社会・文化的・スピリチュアルな枠組みを採用している。第二部は、世界中と日本のLGBTについて入手可能な国内外の量的データをまとめている。第三部は、性の多様性に関するソーシャルワークの専門的な基準に係る国内外の文書を比較している。第四部は、理論的モデルのレビューに基づき、LGBTに特化して、反差別的及び文化的力量アプローチに基盤をおいたソーシャルワークの原則を整理している。