著者
河村 榮吉
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.297-303, 1941-03-28

本報では梨赤星病菌の精子整傳達して本菌の受精を媒介する要因中, 特に昆蟲に就ての實驗, 觀察並に之に附随する二, 三の事項を報告した。その結果を要約すると, 1. 梨赤星病の病斑に生ずる蜜は還元糖を含有してゐて甘いが臭ひはない。2. 天然に赤星病の發生した梨樹から昆蟲の襲來を防ぐと, 銹子腔の形成は半減した。3. クロルリバへ, イヘバヘ, シマハナアブ, ルリアリは本病菌の精子傳達を媒介して銹子腔形成を招來せしむることか實橙證せられた。4. 次の昆蟲は本病菌の精子を病斑から病斑へと傳達することが野外觀察の結果確められた。之等の中, 蠅類が最も普通に傳達し, 蟻類が之に亞ぐ。イヘバヘ, ヒメニクバヘ, クロルリバヘ, クロツヤハナバヘ, シマハナアブ, ホシハナバへ, エゾコヒラタアブ, ヤマトヒラタアブ, ホソヒラタアブ, クロヤマアリ, アメイロアリ, ルリアリ, アミメアリ, クロクサアリ, クロオホアリ, アカハラヒラタアブ, ヤドリバチ, アカスヂチュウレンジ, ウリハムシ, ヒメマルカツヲブシムシ。5. 受精が行はれると, 蜜の分泌は不受精のものに比し速かに停止した。
著者
小林 盾
出版者
成蹊大学大学院文学研究科
雑誌
成蹊人文研究 (ISSN:09191488)
巻号頁・発行日
no.27, pp.57-79, 2019-03

この論文は、キャバクラにおける女性サービス提供者(キャバクラ嬢)が、仕事からなにを獲得しているのかを描く。先行研究では(収入にくわえ)承認感を得るとされるが、それ以外の可能性や多様性については未解明であった。そこで、合理的選択理論の立場にたって、キャバクラ嬢が仕事から人的資本や社会関係資本を獲得し、転職や収入増といったその後の地位達成に活用すると仮定する。データとして現役または元キャバクラ嬢8 人を対象に、インタビュー調査を実施した。語りを分析した結果、(1)対象者のすべてのキャバクラ嬢が、(コミュニケーション力、美意識、飲酒、忍耐力などの)人的資本と(情報、人脈、恋人などの)社会関係資本を得ていると語った。(2)ただし、承認感は獲得したと語る人とそうでないという人がいて、もともと自信のある人は承認感を必要とせず、自信のない人は必要としていた。したがって、キャバクラ嬢という仕事に、承認感といういわばロマンチックな報酬だけでなく、資本獲得というしたたかな合理性も潜むことが明らかになった。これらは、この研究ではじめて明らかにされた。先行研究では、あたかもキャバクラ嬢なら一様に承認感をもつように描かれてきたが、実際には多様なことがわかった。
著者
大森 絵美 西上 智彦 渡邉 晃久 脇 真由美 河田 健介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3054, 2009

【はじめに】日常臨床上,気象の変化による痛みの増強を訴える症例をよく経験する.これまでに,佐藤らはモデルラットを用いて気圧・気温の低下が痛み閾値を低下させることを明らかにした.また,国内で実施された「健康と気候に関するアンケート」の調査結果において,一般生活者及び慢性疾患患者の約7割が天候や季節変化による体調への影響を経験していることが報告されている.しかし,臨床現場において,実際に,気圧・気温の変化が痛みを惹起しているかは明らかでない.そこで,本研究の目的は気圧や気温が痛みに関与するか検討することである.<BR><BR>【方法】対象は本研究を理解し同意が得られ,調査期間中に他に痛みが増強する要因がなかったことを確認した本院外来通院患者21名(男性7名,女性14名,平均年齢68.3±13.0歳)とした.まず,調査初日に気象の変化が痛みに影響するかについて意識調査を行った.痛み,気圧,気温の調査は10月中旬から同年11月中旬の不連続な計10日間に行った.痛みの程度は毎回午前9時から午前10時の間にvisual analogue scale(以下:VAS)を用いて評価した.気圧・気温については気象庁ホームページより,本院から最も近い観測所のデータを参考にした.解析対象は,気圧については調査日の午前9時における気圧及び気圧変化量(午前8時の気圧から午前9時の気圧を引いた値)とした.気温については調査日の午前0時から午前8時までの間の最低気温及び気温変化量(調査前日の午後10時の気温から調査当日の午前6時における気温を引いた値)とした.統計処理はSPSS11.5Jを用いて行った.まず,VASと気圧・気圧変化量・気温・気温変化量のそれぞれの相関係数を求め,相関係数0.8をカットオフ値として2群に分割し,気象の変化が痛みに影響するかの有無とのFisherの正確確率検定を行った.また,VASを目的変数とし,気圧,気圧変化量,気温,気温変化量を説明変数としたStepwise法による重回帰分析を行った.なお,有意水準は5%未満とした.<BR><BR>【結果】気象の変化が痛みに影響すると回答したのは21名中16名であった.Fisherの正確確率検定において有意な差は認めなかった.重回帰分析によりVASに影響を与える説明因子として21名中20名に気圧を認めた.<BR><BR>【考察】気象の変化が痛みに影響を及ぼすかの意識と実際の気象と痛みの関係は乖離していた.また,佐藤らは人為的に起こした気圧低下・気温低下においてモデルラットの痛みの増強を確認しているが,自然な気象変化の中で行ったヒトにおける本研究では,気圧・気圧変化量・気温・気温変化量のうち,気圧がもっとも痛みに影響を与える因子であった.本研究から,気圧の低下が痛みを増強していることが明らかになり,理学療法実施時には十分考慮した上での評価,治療が必要と考えられる.
著者
奥野 智孝 市野 将嗣 久保山 哲二 吉浦 裕
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.2, pp.1-8, 2011-11-28

近年,多様な個人情報がネットワーク上に流通している.同一人物に関する複数の情報を入手することで,単独の情報からでは分からなかった情報が明らかになり,予期せぬプライバシー侵害につながる懸念がある.本研究ではこの危険性を明らかにするために,問題の代表例としてバックグラウンドチェックと呼ばれる雇用前の身辺調査を例に挙げ,ソーシャルメディアのプロフィールが匿名化されていても,履歴書の情報を基にソーシャルメディアのコンテンツの特徴を分析することで,採用希望者のアカウントを特定できることを示した.これにより,履歴書の情報とソーシャルメディアで開示された情報を統合し,個人の言動を調査することができる.Various types of personal information about individuals are accessible through the Web medias. Linking of the personal information obtained through multiple medias can lead to a serious violation of privacy. To address this problem, we developed a method to identify the author of the short messages of Twitter, known as tweets, by using the information from other medias.
著者
葉貫 磨哉
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤大學文學部研究紀要 (ISSN:04523636)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.53-69, 1969-03
著者
北爪 眞佐夫
出版者
札幌学院大学
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.39-60, 2008-03

かつては歴史の時代区分の問題として多いに階級が論じられたことがあった。しかしながら近代以前では身分が外皮におおわれていて,階級がそのまま階級として姿をあらわすとはかぎらず身分的階級などと論じられたことがあった。本稿は鎌倉期の全身分を級うにいたっていず,主として「武士」の身分を問題とするものである。ここで武士身分といっても,さらに細分化された身分があると考え,武士身分内の身分を問題にし,若干は「武士」「郎等」や「家人」についてもふれているがこの問題は後日続編で検討を深めることにしたい。江戸時代の身分などは自明のことで中世でもそうみられなくもないが「種姓」現代的にいえば氏素性(素姓)といったものが身分の根底に根強く存在しているとみてその点を扱ってみたつもりである。
著者
櫛引 祐希子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.31-46, 2009

エズイは中世の中央語として<対象を厭わしく感じる程度の恐怖感>を表していたが、各地に伝播して意味変化を起こした。関東に伝播したエズイは意味変化を重ね、関東で新しく生まれた意味が東北に伝播して二次的な意味変化を起こした。一方、西日本の各地域に伝播したエズイは個々の地域で独自の意味変化を起こした。このように中央語のエズイは関東を挟んだ東西の地域に伝播した結果、東では関東と東北で段階的な意味変化を遂げ、西では各地域で個別的な意味変化を遂げた。エズイが起こした意味変化の東西差は、東日本では関東が東北に対して求心力を持っていたこと、西日本では中央を除くと関東のような求心力を持った地域がなく複数の地域が拮抗状態にあったことを示唆する。
著者
戸田 雄介
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.45-59, 2007-03-01

平安時代中期に成立した宿曜道は、運命の勘申や災厄を祓う祭祀をもって院政期には貴族社会に大きな影響力を持つようになる。この院政期に活躍した宿曜師は主に珍賀と慶算の二人であった。その後時代は下り、鎌倉時代と呼ばれる時代に入っても、この二人の門流の宿曜師達が活躍するのである。平安時代、主に宿曜師の活動の場は京の貴族社会であった。しかし、鎌倉時代には京を離れ鎌倉を拠点に活動する宿曜師が現れてくるのである。本稿では、この鎌倉へ下った宿曜師珍誉の活動を考えてみたい。