著者
岡部 光明
巻号頁・発行日
(Released:2018-07-10)

主流派経済学において前提される人間は、利己主義的かつ合理的に行動するという単純な人間像であるが、人間の本性はもっと多面的である。このため、人間の一面だけに焦点を当てつつ社会を理解しようとする主流派経済学は、社会科学として本質的な問題を抱えている。経済学のこうした状況を手厳しく批判するとともに、新しい研究方向を提示したのが経済学者・哲学者アマルティア・センである(1998 年にノーベル経済学賞を受賞)。本稿では、人間の幸福と社会のあり方を理解するために彼が提示した潜在能力論(capabilities approach)という枠組みを概観した。次いで、その人間観を発展的に応用したものとして位置づけることが可能な一つの人間論ないし実践哲学を紹介するとともに、それが持つ社会的含意を論じた。主な論点は次のとおり:(1)人間の幸福あるいは善い生活(well-being)を捉える方法として従来、効用(utility)を基礎とする主観的アプローチ、財産(resource)を基礎とする客観的アプローチが標準的なものとして存在した、(2)それらの欠陥を補正するためにセンが開発したのが潜在能力アプローチでありそれは主観的要素と客観的要素の両方を含む、(3)人間の潜在能力の開放を重視するその思想は自己実現を重視する現代の一つの実践哲学と重なる面がある、(4)その実践哲学は、普遍性、現代性、社会性、そして実証性を備えているので今後の展開が注目される。
著者
Maharani Dian Permanasari マハラニ デイアン ペルマナサリ
出版者
金沢大学大学院人間社会環境研究科
雑誌
人間社会環境研究 = Human and socio-environmental studies (ISSN:18815545)
巻号頁・発行日
no.34, pp.41-63, 2017-09-29 (Released:2017-12-19)

Indonesia, with its diverse cultural resources and sustainable materials, holds a significant role in revitalizing and preserving traditional crafts. Until recently, there has been an increase in the utilization of banana plants as a sustainable material that is less known as compared to bamboo or rattan. Consequently, the small craft industry using banana bark is now thriving in East Java. In the Javanese traditional culture, banana plants have been used extensively both in daily life and in rituals. Its familiarity is one of the reasons for the insufficient records on the meanings of banana plants in the Javanese tradition. This study aimed to understand the continuity and changes in the usage and functions of banana plants among the Javanese people. The paper presents the general information about the banana plant, including its origin and botanical description, and the varieties of the plant and their use in Java. The paper then presents and discusses the growth of the banana bark craft industry in the research area of East Java. Data on the development of the local craft industry and on the process of harnessing the potential of banana plants in Bojonegoro East Java, the largest banana producer according to Indonesian Bureau of Statistics, were gathered since 2009. Thus, the present study aimed to uncover the hidden potential of banana plants, to record and to provide information for understanding the traditional knowledge on banana plants in the Javanese culture. 多様な文化資源と持続可能な原材料を擁するインドネシアは. 伝統工芸の保存と復興において重要な役割を負っている。 持続可能材としてのバナナの木の活用に関しては, 竹やラタン材の知名度と比して近年まであまり知られていなかった。 しかし, 現在東ジャワではバナナの樹皮を用いた小規模な手工芸産業が典盛している。伝統的なジャワの文化では, 生誕から死に至るまでの様々な場面で, 日常と俄礼とを問わずバナナの木が寄り添っている。 あまりにも近い存在であるため, このバナナの木が持つ意味に関する記録はジャワの伝統にあまり残されていない。本研究はジャワ人の間におけるバナナの活用と機能の変遷を理解することを目的とする。 まずバナナの生物学的概要と栽培起源を概略したあと, ジャワにおける栽培バナナの種類と用法を概観する。そして近年東ジャワで盛んになりつつあるバナナ樹皮工芸産業の一例を紹介し, その成立発展の経緯と活動内容について考察する。 東ジャワのボジョネゴロにおける地域の手工芸産業の発展 およびバナナの木の可能性を産業へと結びつける試みに関するデー タは, 2009年以来の調査によるものである。本研究は, バナナの木のさらなる可能性を明らかにし, ジャワの文化に受け継がれるバナナの木に関する伝統的知識を理解するための情報を記録,提供するものである。
著者
永江 雅和
出版者
専修大学経済学会
雑誌
専修経済学論集 (ISSN:03864383)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.77-92, 2013-11-30 (Released:2013-12-23)

私立鉄道会社の経営にとって、出発時の用地買収は重要な課題である。1923年設立された小田原急行鉄道株式会社(現小田急電鉄株式会社)が沿線用地をどのように買収し、駅を設置してきたのか、沿線地域の史料をもとに検討した。第1に注目される点は創業者利光鶴松のネットワークである。政治家時代に自由党に入党し自由民間活動家や東京市政関係者と親交を結んだ利光は、これらのネットワークを活用して、沿線地域との交渉を行った。第2の論点は駅の設置場所を巡る交渉である。沿線地域のなかでも多摩川以西の神奈川県内陸部の自治体は、東海道線開通以後、県の動脈が沿岸に集中したことから、内陸部の鉄道敷設を渇望しており、少数の例外を除き同社の路線敷設に賛成であった。ただ用地買収条件については、個別の土地所有者の利害が存在し交渉は難航した。小田原急行側は、後発私鉄であるがゆえに、隠密の用地買収を行うことができず、地域有力者の調停が不十分な場合、駅設置の有無、設置場所を交渉カードとして用いた事例が確認された。駅用地についても従来は地元自治体が好意的に寄付を行う事例が多かったと述べられているが、実際には寄付は同社から要求されているケースが多く、駅の設置をめぐり、沿線自治体内外で紛争が生じる場合も存在したことを地域文献を元に明らかにしている。
著者
荒木 猛
出版者
佛教大学文学部
雑誌
文学部論集 (ISSN:09189416)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.43-58, 2018-03-01 (Released:2018-04-11)

明代に現れた神怪小説の代表作に、『西遊記』と『封神演義』がある。この両作品はいろんな点で類似するが、中でも注目されるのは、作中に挿入された詩詞に共通するものが少なからず見られることである。このことは、いずれかが原作で、いずれかがそれを借用した為と考えられる。拙論では、ストーリィの展開の中で、挿入された当該詩詞の妥当性を検討した結果、『西遊記』中の詩詞が原作で、『封神演義』のそれはそれを借用したものであるとの結論に達した。 神怪小説 『西遊記』 『封神演義』 成立時代
著者
野口 康人 岡部 晋典 浜島 幸司 片山 ふみ
巻号頁・発行日
2015-09-13 (Released:2015-09-16)

2015年 社会情報学会(SSI)学会大会会場:明治大学 駿河台キャンパス日程:2015 年9 月11 日(金) ~ 9 月13 日(日)
著者
大津 真作
出版者
東京都立大学人文学部
雑誌
人文学報. フランス文学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
no.102, pp.50-71, 1974-03 (Released:2016-08-03)
著者
神崎 高明 Takaaki Kanzaki
雑誌
関西学院大学社会学部紀要 (ISSN:04529456)
巻号頁・発行日
no.116, pp.15-25, 2013-03-15 (Released:2016-12-01)
著者
安藤 和宏
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2012 (Released:2016-11-22)

制度:新 ; 報告番号:甲3627号 ; 学位の種類:博士(法学) ; 授与年月日:2012/2/29 ; 早大学位記番号:新5985