著者
森村 進
出版者
日本法哲学会
雑誌
法哲学年報 (ISSN:03872890)
巻号頁・発行日
vol.1987, pp.74-92, 1988-10-25 (Released:2008-11-17)
参考文献数
22
著者
栗原 五美 加藤 雅枝 佐藤 美栄子 長濱 貴彦
出版者
静岡赤十字病院
雑誌
静岡赤十字病院研究報 = Journal of Japanese Red Cross Shizuoka Hospital (ISSN:09119833)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.61-65, 2004-12-01

症例は17歳女性.統合失調症の診断にて当院精神科に通院.自殺企図によリトリカブトを服用し,悪心・嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した。来院時より心室性期外収縮の連発が見られ,心室細動に対して来院後6時間に合計33回の電気的除細動を行なって救命し得たので報告する。
著者
宇津川 喬子 白井 正明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.329-346, 2016-11-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
87
被引用文献数
2

粒子形状の研究は理学・工学のさまざまな分野で行われているが,長年にわたる用語の不統一や,近年における画像解析を中心としたデジタルな手法への移行といった傾向があることから,研究の現状を整理する必要がある.本稿では砕屑物の形状,特に昨今注目される「円磨度」に焦点をあて,20世紀以降の研究史を紹介する.円磨度は,半世紀以上前に提案された定義や階級区分が今日でも多用されている.中でも,短時間で半定量的に円磨度を計測できるKrumbeinの円磨度印象図は今後も活用が見込まれることから,より再現性の高い測定を行うための補助フローチャートを提案した.また,2Dおよび3D画像解析では高解像度化に伴う粒子の輪郭の評価が焦点となることから,曖昧であった円磨度と表面構造の境界を再定義した.今後,画像解析は円磨度を含めた形状研究の主軸となる可能性が高く,画像解析に対応した粒子形状の評価方法をさらに議論する必要がある.
著者
矢ケ﨑 典隆
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.83-101, 2015-03-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
64
被引用文献数
1

地誌学は地域を説明するための考察の枠組を提示し,地域スケールに応じた地域像を描くことを目的とする.今日,地誌学を再評価・再構築することが急務である.そこでアメリカ地誌の新しい方法を提示するために,自然と人間,起源と伝播,地域と景観,時間と変化に着目した.コロンブスの到来以降,アメリカ先住民の世界は大きく改変され,北東部には北西ヨーロッパ系小農経済文化地域,南東部にはプランテーション経済文化地域,南西部にはイベリア系牧畜経済文化地域が形成された.19世紀後半に北西ヨーロッパ系小農経済文化地域が全土に拡大した.そして20世紀に入って1960年代末までにアメリカ的生活・生産様式が確立し,1970年代以降,アメリカ型多民族社会・分断社会が形成された.21世紀のアメリカの地域像を描くためには,「世界の博物館アメリカ」という考察の枠組が有効である.アメリカ地誌には探検と発見の可能性に満ちた魅力的なフロンティアが存在する.
著者
永岑 光恵 原 塑 信原 幸弘
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.177-186, 2009
被引用文献数
2 5

少子高齢化は将来の日本社会を大きく規定する要因であり,ここから生じる諸問題を解決する社会技術の開発は緊急の課題である.基礎科学として発展してきた神経科学も少子高齢化に対応する社会技術として活用されなければならない.そこで,神経科学の社会技術的応用可能性を検討する先駆的試みとして,神経科学的観点から高齢化社会の問題,特に振り込め詐欺の認知上の原因を分析する.振り込め詐欺のうち,オレオレ詐欺,還付金詐欺の被害が最も深刻だが,この被害者の大部分が中高齢者である.中高齢者の意思決定は加齢により自動化していくが,このことが詐欺に対する高齢者の脆弱性の原因となっている.そこで,中高齢者の意思決定上の特徴を考慮して,振り込め詐欺の防止策を提案する.
著者
小坂 英輝 楮原 京子 今泉 俊文 三輪 敦志 阿部 恒平
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.493-504, 2013-11-01 (Released:2017-12-08)
参考文献数
16

本論では,平野側に大きく湾曲する形状をもつ逆断層のセグメンテーションを検討するために,北上低地西縁断層帯・上平断層群南端部に発見されていた断層露頭を精査した.また,断層露頭周辺の断層変位地形の記載をあわせて行い,断層活動履歴,平均上下変位速度および単位実変位量を求めた.断層露頭の断層は,新第三系の凝灰岩が段丘堆積物に対して48°以上の高角度で衝上する構造をもち,右横ずれ変位を伴う逆断層である.その断層活動は最終氷期後期以降に少なくとも4回,平均上下変位速度は0.3±0.1 m/千年程度,単位実変位量は2.4~3.4 mと推定される.これらの諸元は上平断層群中央部のそれらと同等であり,上平断層群南端は断層セグメントにおいて活動度が低くなるとされる断層末端の特徴を有しない.すなわち,湾曲という断層の平面形態は必ずしも断層セグメントの認定基準にならないことを示唆している.
著者
平田 航 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.338-353, 2013-07-01 (Released:2017-12-05)
参考文献数
17
被引用文献数
2

「二つ玉低気圧型」は日本で有名な気圧配置の一つで,全国各地に大雨や強風をもたらしやすいと言われている.本研究では二つ玉低気圧を並進タイプ,日本海低気圧メインタイプ,南岸低気圧メインタイプの三つに分類し,降水量や降水の強さ,降雪の深さについて気候学的解析を行った.また,比較のために一般的な日本海低気圧と南岸低気圧についても同様の解析を行った.並進タイプは全国に降水をもたらし,日本の南岸で降水量が多い.日本海低気圧メインタイプでは全国的に降水量が少ないが,本州の日本海側で冬季にふぶきとなりやすい特徴があった.南岸低気圧メインタイプは日本の南岸と北陸地方で特に多くの降水をもたらし,冬季には比較的広い範囲に降雪をもたらす.二つ玉低気圧3タイプで降水分布に生じる違いは,前線の有無に依存する.さらに,二つ玉低気圧が強雨をもたらすときは,南側の低気圧が日本列島により近いコースをとることがわかった.
著者
片岡 健
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.158-172, 2013-03-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
25
被引用文献数
2 3

本研究では,土佐国の長宗我部氏の市町であった岡豊新町を復原した.従来の研究成果を踏まえ明治期地籍図の地筆を基に,天正期『長宗我部地検帳』と明治期土地台帳の記載面積を使用して比定地の地割を再検討した.さらに,同時代史料により岡豊新町周辺の河道を復原して比定地との整合性を検討した.『長宗我部地検帳』と明治期土地台帳の比較によると,『長宗我部地検帳』の測量精度は高い.そこで,地籍図に示される地割のみでなく,天正期以降に地割が再施工された可能性を考慮して,地筆ごとの面積に基づいて屋敷地レベルで比定した.本稿の手法は,発掘成果のない状況で精緻な景観復原を可能にし,さらに,文献史料を基に地割の存続した時期を検討する一つの可能性を示すものである.検討の結果,岡豊新町西部分は定説より南に存在するという新しい復原案を示すことができた.岡豊新町の東町の地割は16世紀後半の景観を反映しており,それが明治期まで残存していた.
著者
中屋敷 千尋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

民主主義的政治制度が成功しているといわれるインドであるが、対象地の北インド・チベット系社会スピティ渓谷では、階層の下位に位置づけられる人々の政治的地位が向上する一方、儀式や祭礼の場面では中間層から下層の人々への差別的発言や暴力的行為が顕著になっている。本発表ではこの両義性の現状と背景を把握した上で、インドの政治体制と土着の階層制度がどのような関係にあるのかを明らかにすることが目的である。
著者
三木 理史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.618-632, 2012-11-01 (Released:2017-11-16)
参考文献数
47

本稿の課題は,「群馬県庁文書」の活用によって,1910年利根川大水害の罹災者の対応を,移住者送出に視点を据えて明らかにし,これまでの移民研究の空隙を埋めることにある.本稿は,群馬県多野郡の朝鮮移住と全県的に推進された北海道移住に重点を置いて考察を行った.群馬県は,商品作物生産が盛んで,かつ農業外労働市場が豊富なため,元来移住者送出数が少なかった.多野郡では,出身者の日向輝武の勧誘活動により,1900年代初めから移住者送出が本格化していたところへ大水害が発生した.しかし,同郡罹災者に東拓の朝鮮移住情報は浸透せず,彼らは新聞広告から情報を得て渡航した.一方,県主導の北海道移住では,義捐金からの補助金拠出に加え,日下部宗三郎ら地元の先駆的移住者の積極的勧誘が促進要因であった.その結果,全般に死者が少なく,耕地や家屋の被害多大な地域で移住者送出依存の高かったことが明らかとなった.
著者
埴淵 知哉 中谷 友樹 村中 亮夫 花岡 和聖
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.447-467, 2012-09-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
33
被引用文献数
1 4

社会調査の回収率は,標本から母集団の傾向や地域差を適切に推定するための重要な指標である.本研究では,回収率の地域差とその規定要因を明らかにすることを目的として,全国規模の訪問面接・留置調査を実施しているJGSS(日本版総合的社会調査)の回収状況個票データを分析した.接触成功および協力獲得という二段階のプロセスを区分した分析の結果,接触成功率・協力獲得率には都市化度や地区類型によって大きな地域差がみられた.この地域差は,個人属性や住宅の種類などの交絡因子,さらに調査地点内におけるサンプルの相関を考慮した多変量解析(マルチレベル分析)によっても確認された.したがって,回収状況は個人だけでなく地域特性によっても規定されていることが示された.しかし,接触成功率・協力獲得率には説明されない調査地点間のばらつきが残されており,その理由の一つとして,ローカルな調査環境とでも呼びうる地域固有の文脈的要因の存在も示唆された.
著者
宋 明杰 阿部 康久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.214-235, 2012-05-01 (Released:2017-10-07)
参考文献数
40
被引用文献数
2

本稿では,中国の自動車メーカーにおける部品の発注方式の変化について明らかにした上で,このような変化がサプライヤーの選択や分布にどのような影響を与えたのかという点について検討した.調査対象として大手民営メーカーである吉利汽車の低価格車と中高級車を事例として分析を行った.中国メーカーの発注方式は,サプライヤー間の競争を促し,調達コストを下げるために複数のサプライヤーから調達する複社発注が一般的であった.これに対して吉利では,近年,開発・生産を始めた中高級車の場合,外資系(特に日系)完成車メーカーと同様に,各部品に対して一つのサプライヤーから部品を調達する一社発注を行う例が増加している.加えて,高い技術力を持つ大手サプライヤーから一次部品に近いものを一括発注する例が増えており,品質が向上した反面,調達コストは上昇している.サプライヤー分布を見ると,特に高付加価値部品については,省内の中小サプライヤーからの調達は減少し,長江デルタ内外にある外資系等の大手サプライヤーから調達するようになっており,サプライヤーの分布は広域化している.
著者
岡部 遊志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.193-213, 2012-05-01 (Released:2017-10-07)
参考文献数
35

本稿ではフランシュ・コンテ地域圏を事例として,多層化した政府間関係に注目しながら,競争力に重点を置いた地域政策の展開を分析する.地域政策の制度的側面に関して,権限は地域圏政府とグラン・ブザンソンに配分されているが,予算的な裏付けは地域圏政府のみにあり,政府間関係は地域圏政府を中心に成り立っている.実際においては,地域圏政府が競争力発揮の可能性が高い地域を支援し,他の地域には,その他の主体が予算負担することで配慮がなされ,結果として,地域圏内全体として競争力の向上が図られるかたちになっている.逆に実際の産業の転換に際しては,地域圏政府以外の主体も大きく関わっている.地域の中心的産業であった時計産業の衰退に対して,フランシュ・コンテ地域圏では多くの行政主体が関わってマイクロテクニクス産業への転換を促している.こうした方向への合意は必ずしも十分ではなかったが,地域圏政府などに刺激され,企業や研究機関,地方行政主体などが産地形成に向かって一体となって動いている.