著者
伊藤 博之
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.477-482, 2012-04-15

著作権法で規定される著作物の利用は,著作権者の許諾を必要とする密なモデルである(原則NG).「初音ミク」を人々の創作の共通テーマとして不特定多数のクリエイターが創作に使用できるために,当社はライセンスを規定・公開して当社の許諾を取らずとも使用できる範囲を拡げ疎のモデルを提案した(原則OK).これにより「初音ミク」がクリエイター同士を結びつけるインタフェースの役割を持つものとして,インターネットで創作の連鎖を引き起こした.この創作の連鎖は,技術研究の分野,商業分野にも波及しており,日本発のムーブメントとして,世界にも影響を与えはじめている.
著者
高瀬 英希 上野 嘉大 山崎 進
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB) (ISSN:2188868X)
巻号頁・発行日
vol.2018-EMB-48, no.5, pp.1-8, 2018-06-22

2012 年に登場した Elixir は,Erlang VM 上で動作する関数型言語であり,分散システム対応でスケールしやすく,軽量で耐障害性が高いという特徴がある.習熟容易性および開発生産性が高く,並列処理のプログラミングが容易に実現できる.Elixir の Web アプリケーションフレームワークとしては Phoenix が知られている.本稿では,IoT システムの構築における Elixir の有用性を議論する.IoT システムにおいて多く採用される IoT ボードに Elixir / Phoenix の実行環境を整備し,種々の性能を評価できる動作するベンチマークスイートを用意する.これによって各種 IoT ボードにおける Elixir / Phoenix の実行性能を基礎評価し,IoT システムへの導入に向けた有用性を定量的に議論する.評価の結果,Elixir の並列処理性能は IoT システムにおいても発揮されること,Phoenix サーバについても IoT システムに十分な応答性能を得られることが示された.
著者
田村 悦子
雑誌
美術研究 = The bijutsu kenkiu : the journal of art studies
巻号頁・発行日
no.252, pp.13-31, 1968-03-25

The writer, devoted to the study of the so-called kohitsu-gire fragments of old manuscript copies of various classical works, has found a rare fragment of the Heiji Kassen Emaki or scroll paintings illustrative of the War of the Heiji era (1159 A.D.), world-famous because the first of the three existing scroll paintings is owned by the Museum of Fine Arts, Boston, Mass., U.S.A. The fragment is from the text which accompanied the scroll illustrating the battle of Rokuhara, Kyoto, of the Heiji War. This scroll in its integrity is now lost, and is known only by copies. This is the first time a fragment of the original text is introduced to the learned world, though small pieces of the paintings were found twenty years ago. The fragment, hitherto noticed by no art nor literature historians, can be seen without difficulty in the Shin Ga Jo album of kohitsu-gire fragments chromolithographically reproduced first in 1890 and then in 1939 by the Hongan Ji temple of the Hongan Ji Ha sect of the Shin-shu, known popularly as Nishi or Western Hongan Ji, Kyoto, Japan, probably from the originals in the possession of the temple. The writer, making into laborious tables her minute and exhaustive comparison of the calligraphy of the fragment and of each existing scroll of the Heiji Heiji differ in time of production with scrolls.paintings with one another, draws the conclusion that all the texts accompanying the Heiji paintings were written by one and the same hand. This conclusion, aided by the fact that some lines of the text are found on the same sheets of paper as the paintings and that the text and the painting ought to be contemporaneous with each other, is of great significance as it stands in the way of the new theory that the paintings of the Heiji differ in time of production with scrolls. Lastly, Miss Tamura collates critically the text of the Battle of Rokuhara Scroll with the standard current texts of the Heiji Monogatari (the Tale of Heiji), a literary account of the Heiji War. This scroll of the Heiji paintings has been neglected by students of Japanese literature.
著者
壷阪 幸輝、山下 茂
雑誌
2015年度 情報処理学会関西支部 支部大会 講演論文集 (ISSN:1884197X)
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015-09-18

Stochastic Computingでは、真のランダムソースから必要なStochastic数を得られない場合がある。本研究では、論理式を元に目標のStochastic数に近似する回路の合成手法を提案する。
著者
阿知羅 隆雄 Takao ACHIRA
出版者
北見工業大学
雑誌
北見工業大学研究報告
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.59-82, 1992-09

This paper is composed of : 1. the Furness Railway Co. in the period of the'Great Depression',2.the decline of the basic industry in Barrow-in-Furness and the collapse of the Furness Railway'Industrial Empire, 3.the state of the Cavendishes' finance.
著者
高橋 一樹
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.75-92, 2003-10-31

王家や摂関家の中世荘園は、それぞれの家政機関(院・女院庁や摂関家政所)や御願寺に付属するかたちで立荘・伝領される。本稿はこのうち王家の御願寺領荘園群の編成原理と展開過程の分析を通じて、個別研究とは異なる角度から中世荘園の成立と変質の実態について論じた。具体的な素材は、関連文書と公家日記等の記録類とを組み合わせて検討しうる、十二世紀後葉に建立された最勝光院(建春門院御願)の付属荘園群をとりあげた。最勝光院領の編成と立荘については、落慶直後から寺用の調達を目的に六荘園がまとめて立荘され、その後も願主の国忌(法華八講)などの国家的仏事の増加に対応して新たに立荘が積み重ねられた。その前提には、願主やその姻族(平氏)と関係の深い中央貴族から免田や国衙領が寄進されたが、実際に立荘された荘園は国衙領や他領をも包摂した複合的な荘域構成をとっており、知行国主・国守との連携にもとづく国衙側と協調した収取関係(加納・余田の設定)をもつ中世荘園の形成であった。また、最勝光院領に典型的にみられる立荘と仏事体系のリンクが、御願寺および付属荘園群の伝領を結びつけており、御願寺の継承者が仏事を主催し付属荘園から用途を徴収する現象の原理をここに見いだしうる。鎌倉幕府の成立した十三世紀以降の最勝光院は、各荘園の預所職を知行する領家(中央貴族)たちの寺用未進に対処するべく、同院政所を構成する別当・公文の主導のもと寺用にみあう下地を荘園内で分割して、その特定領域における領家の所務を排除する事例が多くみられた。下地を分割しない場合も含めて、これらの寺用確保の下支えになったのは地頭請所であり、その背景には幕府との政策連携があったことが推測される。これは領主制研究の枠組みのみで論じられてきた従来の下地中分論や地頭請所論とは大きく異なる評価であり、荘園制支配の変質と鎌倉幕府権力との関係を問う視角も含めて問題提起を行った。
著者
森 達
出版者
東洋大学法学会
雑誌
東洋法学 (ISSN:05640245)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.1-25, 1967-05
著者
中林 隆之
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.194, pp.147-169, 2015-03-31

正倉院文書には、天平二十年(七四八)六月十日の日付を有した、全文一筆の更可請章疏等目録と名付けられた典籍目録(帳簿)が残存する。この目録には仏典(論・章疏類)と漢籍(外典)合わせて一七二部の典籍が収録されている。小稿では、本目録の作成過程および記載内容の基礎的な検討を行い、それを前提に八世紀半ばの古代国家による思想・学術編成策の一端を解明した。本目録には、八世紀前半に新羅で留学した審詳所蔵の典籍の一部が掲載されていた。審詳の死後は、彼の所蔵典籍は、弟子で生成期の花厳宗の一員でもあった平摂が管理した。本目録は、僧綱による全容の捕捉・検定を前提として、内裏が審詳の所蔵典籍の貸し出しを平摂の房に求めた原目録をもとに、それを平摂房で忠実に書写し、写経所に渡したものであった。審詳の所蔵典籍には、彼が新羅で入手したものが多かった。仏典は、元暁など新羅人撰述の章疏類が一定の比重をしめた。それらの仏典は、写経所での常疏の書写に先だって長期にわたり内裏に貸し出されていた。内裏に貸し出された中で、とくに華厳系の章疏類は、南都六宗の筆頭たる花厳宗が担当する講読章疏の選定と布施額の調整などに活用された。漢籍も、最新の唐の書籍や南北朝期以来の古本、さらに兵書までをも含むなど、激動の東アジア情勢を反映した多様な内容であったが、これらも内裏に貸し出され、国家による諸学術の拡充政策などに活用されたとみられる。八世紀半ばの日本古代王権は、『華厳経』を頂点とする仏教を主軸においた諸思想・学術の国家的な編成・整備政策を推進したが、その際、唐からの直接的な知的資源の確保の困難性という所与の国際的条件のもと、本目録にみられたものを含む、新羅との交流を通して入手した典籍群が一定の重要な役割を担ったのである。
著者
大槻 麻衣 大隈 隆史
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2020-HCI-187, no.13, pp.1-6, 2020-03-09

超高齢化・少子化のために労働人口減が進む現代日本社会において,サービス業における人手不足が今後ますます深刻化することが予想される.現状,サービス業における訓練では,OJT (On the Job Training) として,指導者が訓練者に付き添い,実際の接客を通じて指導を行うことが多いが,訓練者の認知や判断の途中経過を指導者が客観的に捉えることが難しいことから,OJT による指導は極めて難しい.また,訓練の効果を評価するためには,採点者に依らない定量的な指標の計測が必要であるが,実店舗での接客中に計測することも困難である.これらの問題に対し我々は,飲食サービス業において特に実店舗で訓練が難しい要素である「気づき」と「優先順位判断」に着目した VR 業務訓練システムを開発する.提案システムでは,VR 空間に再現した実店舗モデルを用いて訓練を行う.訓練者は複数のテーブルに対して並列して接客業務を訓練することができ,また,指導者はリアルタイム,あるいは後からその様子を見て採点可能とした.本稿では提案システムの設計とプロトタイプの実装について述べる.