- 著者
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中村 大輝
松浦 拓也
- 出版者
- 一般社団法人 日本理科教育学会
- 雑誌
- 理科教育学研究 (ISSN:13452614)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.1, pp.89-97, 2023-07-31 (Released:2023-07-31)
- 参考文献数
- 24
幼少期の自然体験と将来の学力変数の関連を指摘する先行研究は多いが,その多くは観察研究であり,因果関係を検討する上での重大な問題を抱えている。因果関係を検証するための理想的な研究デザインはランダム化比較試験であるが,参加者が自然を体験するか否かをランダムに割り当てる研究の実施は倫理的に難しい。そこで次善の策として,本研究では傾向スコアを用いた統計的因果推論の手法に着目し,観察研究のデータから幼少期の自然体験の因果効果を推定した。具体的には,東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が実施した縦断調査の公開データを用いて,小学校1年生までの自然体験が小学校4年生時点での理科学習への動機づけに及ぼす因果関係を検討した。傾向スコア分析の結果,幼少期の単発的な自然体験の効果は認められないが,幼少期の日常的な自然体験は小学校4年生時点での理科学習への動機づけを向上させることが明らかになった。