著者
池田 恭治 竹下 淳
出版者
独立行政法人国立長寿医療研究センター
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

骨の破壊は、引き続く骨の再生に必須の生理過程であり、造血細胞から分化して新たに形成される多核の破骨細胞が行う。一方で、病的な数や質の破骨細胞は、閉経後骨粗鬆症や関節リウマチの原因となる。本研究では、造血細胞から、骨を破壊し骨代謝サイクル開始のシグナルを送るという特殊な機能を担う破骨細胞へと分化する過程で起こるさまざまな代謝適応や細胞周期動態とその転写ネットワークを明らかにした。また、破骨細胞に分化する過程で分泌される因子を遺伝子発現解析と生化学的手法で同定し、骨の破壊から次の再生過程への転換のメカニズムの一端を明らかにした。
著者
今井 宏昌
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

最終年度である平成28年度は、成果の発表につとめると同時に、前年度に引き続き、ヨーロッパや日本国内の古書店、大学図書館のデータベースを利用し、研究テーマに関連する文献の調査・収集をおこなったほか、平成28年8月8日から9月1日にかけて、ドイツで文書館史料の調査・収集をおこなった。具体的な成果としては、まず博士論文を単著『暴力の経験史:第一次世界大戦後ドイツの義勇軍経1918~1923』(法律文化社、2016年)として出版したことが挙げられる。この出版により、ドイツ義勇軍の経験が戦間期のドイツ・ヨーロッパ史に与えたインパクトとともに、本研究が重視する「経験史[Erfahrungsgeschichte]」の分析視角をより広くの人びとに知らせることができた。また「経験史」に関してはさらに、T・キューネ/B・ツィーマン編『軍事史とは何か』(原書房、2017年)を共訳書として発表した。特筆すべき研究の進展としては、義勇軍経験をめぐる史料の「発掘」と収集が挙げられる。ザクセン州立ライプツィヒ文書館では、義勇軍出身のナチ党員であるH・O・ハウエンシュタインが1926 年11 月にヒトラー率いる党中央から離反する形で結成したドイツ独立国民社会党の機関誌『ドイチェ・フライハイト』の1927 年5 月22 日号を「発掘」し、組織の中で明確に義勇軍経験が意識されていた点が明らかとなった。さらにマールブルクのヘルダー研究所では、義勇軍雑誌『ライター・ゲン・オステン』の大部分を収集することに成功し、これによりバルト地域を中心とする義勇軍運動の記憶がナチズムに接収されていく過程を跡づけるための前提条件が整った。ただ、これらの史料「発掘」と収集により、論文執筆スケジュールに大幅な変更が生じ、結果として平成28 年度中に雑誌論文としての成果の発表には至らなかった。
著者
松本 賢一 諫早 勇一 山本 雅昭 高木 繁光
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究代表者を含め4人の共同研究者は、それぞれ1.ワイマール共和国時代のドストエフスキイ流行について、2.ベルリンにおける亡命ロシア人の活動と文学作品のかかわり、3.ワイマール時代のドイツにおけるユダヤ人問題について、4.映画製作の手法における独露の影響関係について、といったテーマを設定し、概ね次のような知見に達した。1.ワイマール時代のドストエフスキイ流行は、既にロシア第一次革命の直後に種子が蒔かれており、その仲立ちを務めたのがメレジュコフスキイとメラー-ファン-デン-ブルックであった。後者はドストエフスキイの過激な民族主義とナチズムをつなぐ役目を果たしてもいる。2.亡命ロシア人、ことにウラジーミル・ナボコフにとってベルリンは、サンクトペテルブルグを髣髴とさせる安住の地であったが、作品執筆に当たり、彼はロシア語版と英語版でベルリンを想起させる描写に相違を持たせ、作品に一層の普遍性を与えようとした。3.)ワイマール時代とは、ユダヤ人にとって「同化」を目指す変貌の極点であったが、同時に反ユダヤ主義とシオニズムが一層激しさを増した時代でもあった。そのような中に身をおいたユダヤ人が自らのアイデンティティーの基盤としたのが虚構の精神的共同体としてのJudentumであった。4.ワイマール期から第二次大戦に至る時期のドイツ映画に特徴的なディテールを分析していくとひとつの方向性を見出すことができる。それは、単に時代精神や社会的動向によってのみ説明される方向性ではなく、「バロック的アレゴリー劇」とでも名付け得る流れであり、その影響力は近年の映画製作にも及んでいる。
著者
鈴木 健夫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

18世紀末以降にロシアに大量に移住したドイツ人移民(ロシアドイツ人。19世紀末に約180万人)は帝政末期のロシア化政策、第一次世界大戦、社会主義革命、内戦、飢饉のなかで多くの人びとがドイツや南北アメリカに移住したが、スターリン時代の1920年代末にもかなりの数が国外に、そして不法に国境を越えてハルビンにも逃げた。本研究はそうしたハルビンのロシアドイツ人難民の生活とパラグアイとブラジルへの再移住の実態を解明し、民族的なマイノリティの社会経済的諸問題を考察する。平成28年度には主としてメンノ派のハルビンからのパラグアイ移住(1932年と1934年)の経過(フランス経由、人数等)と移住直後の彼らの社会経済生活を解明したが、平成29年度にはフランスに出張し、メンノ派とルター派が1932年と1934年にハルビンからパラグアイ、ブラジルに向かった、その経由地のマルセイユ(両派到着)、ルアーヴル(メンノ派出港)、ボルドー(両派出港)における当時の地方新聞の記事を古文書館で検索し閲覧し、彼らがハルビンから何年何月何日にどのようにしてマルセイユに到着し、そしてルアーヴル、ボルドーから何年何月何日にどのようにしてパラグアイ、ブラジルに向かったかについて明らかにした。この調査結果を踏まえて平成30年1月7日に報告「ハルビン難民の南米移住 1932、34年――マルセイユ到着、ルアーヴル、ボルドーから出港」を西洋経済史研究会(早稲田大学)で行った。なお、ハルビン在住時のロシアドイツ人難民の生活については、前年度と同様、すでに収集してある史料を分析した。また、ハルビンのロシアドイツ人難民の10年前の歴史について論文「マフノ軍・赤軍に立ち向かうドイツ人移民」を作成、雑誌『セーヴェル』34号(平成30年5月刊行)に発表した
著者
海津 亜希子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.241-255, 2016 (Released:2016-08-08)
参考文献数
55
被引用文献数
8

早期の段階での算数に焦点を当て通常の学級で実施するアセスメントを開発した。本研究では多層指導モデルMIM(海津, 2010; 海津・田沼・平木・伊藤・Vaughn, 2008)のプログレス・モニタリング(PM)としての機能を有するかについて検証した。対象は小学校1年生400名。MIM-PM算数版を年間通じて定期的に実施した。妥当性の検証では反復測定による分散分析の結果, 実施回における主効果が認められ, 回を経るごとに得点が高くなる傾向が示された。標準化された学力検査算数とも比較的高い相関があった。また, 既存のMIM-PM読み版とテスト・バッテリーを組み, 双方の得点傾向から3群(算数困難群, 高学力群, 低学力群)に分類し, 比較分析を行った。3群の学力検査算数の得点でも差異がみられた。算数困難群は全体の5.15%であった。実施回×学力特性群の2要因混合計画の分散分析を行った結果, 有意な交互作用, 2要因とも主効果が認められた。MIM-PM算数版の実施により把握できた算数困難群や低学力群は, 高学力群のような有意な得点上昇が一貫してみられなかったが, 当該学習に関する直接的な指導が実施されている期間では有意な伸びが確認された。MIM-PM算数版の活用でつまずきの早期把握の可能性が示唆された。
著者
神戸 航介
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.7-31, 2016-03-25

本稿は税収が豊かな国のことを指す「熟国」と、税収が不安定で統治が困難な国を意味する「亡国」の語に注目し、熟国・亡国概念の制度的構造について検討を加え、摂関期の地方支配のあり方の一端を明らかにすることを目指した。

3 0 0 0 OA 八多村誌

著者
八多村 編
出版者
八多村
巻号頁・発行日
1933

3 0 0 0 OA 文献目録

出版者
日本私法学会
雑誌
私法 (ISSN:03873315)
巻号頁・発行日
vol.1950, no.3, pp.A1-A13, 1950-09-30 (Released:2012-02-07)
著者
竹内 俊隆 タケウチ トシタカ
出版者
大阪大学中国文化フォーラム
雑誌
OUFCブックレット (ISSN:21876487)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.279-300, 2013-03-20

現代中国に関する13の問い―中国地域研究講義―

3 0 0 0 OA 石川県史

著者
石川県 [編]
出版者
石川県
巻号頁・発行日
vol.第3編, 1933
著者
谷村 圭介 渡辺 弥生
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.364-375, 2008
被引用文献数
1

本研究は,(1)ソーシャルスキルの自己認知と他者評定との関係,(2)自己の印象とソーシャルスキルとの関連,(3)ソーシャルスキルの自己認知と実際の行動との違いを明らかにすることを目的とした。質問紙によって113名の大学生を2つのグループに分け,ソーシャルスキル高群10名,低群10名(それぞれ男性5名・女性5名ずつ)を研究対象者とした。研究対象者は実験室で初対面の人物と対面し,「関係継続が予期される初対面場面」として共同作業場面を実験場面とし,実験を行った。そのやりとりの内容は,ワンウェイミラーを通して観察した。その結果,ソーシャルスキルの自己認知は他者評定とかなり一貫していることがわかった。ソーシャルスキルの高い者は他者評定によっても高く評定されていた。また,相手の人に対してよい印象を与えていると自負していることがわかった。ソーシャルスキルの高い者は初対面場面において,質問などをすることによって会話を展開,維持する傾向にあることがわかった。また,相手が異性であるか,同性であるかということが行動に影響を及ぼしたことが推測された。
著者
林道義著
出版者
文藝春秋
巻号頁・発行日
2004
著者
藤森栄一著
出版者
学生社
巻号頁・発行日
1995
著者
吉村 豊文
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
鉱山地質 (ISSN:00265209)
巻号頁・発行日
vol.11, no.45-46, pp.22-27, 1961-03-25 (Released:2009-06-12)
参考文献数
2

A small displacement, about two meters or less, of a manganese ore deposit is called "Hitokase Danso", meaning "one-frame fault". The movement on the fault had evidently occurred before the manganese deposit was formed, and most of the shear zones have been mineralized by various manganese ores. The manganese ore deposit itself, therefore, has not been displaced by the fault movement, although slickensides on such later formed manganese minerals indicate the renewed movement of minor scale along the one-frame fault.
著者
Takeshi Otsuki Kazuhiro Shimizu Asako Zempo-Miyaki Seiji Maeda
出版者
日本酸化ストレス学会
雑誌
Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition (ISSN:09120009)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.45-48, 2016 (Released:2016-07-01)
参考文献数
22
被引用文献数
5

Decreases in saliva secretion compromise food mastication and swallowing, reduce mucosal immune function, and increase the risk for oral diseases like dental caries. Chlorella is a green alga that contains a variety of nutrients including amino acids, vitamins, and minerals. In our previous study, Chlorella-derived multicomponent supplementation did not affect salivary flow rates in healthy young individuals, but Chlorella-derived supplementation attenuated a decrease in saliva secretion that was observed during a kendo training camp. Hence, we hypothesized that Chlorella-derived supplementation increases saliva secretion in individuals with lower rates of saliva flow. Sixty-four subjects took Chlorella-derived tablets for four weeks. Before and after supplementation, saliva samples were collected by chewing cotton. In the complete study group, there was no difference in saliva production before and after supplementation (1.91 ± 0.11 ml/min before vs 2.01 ± 0.12 ml/min after). Analysis of subgroups based on saliva production before supplementation found an increase in saliva secretion in the lower saliva flow group (1.18 ± 0.06 vs 1.38 ± 0.08 ml/min), but no change in the higher saliva flow group (2.63 ± 0.11 vs 2.64 ± 0.15 ml/min). These results suggest that Chlorella-derived multicomponent supplementation increases saliva production in individuals with lower levels of saliva secretion.