著者
大森 美佐
出版者
Japanese Council on Family Relations
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.109-127, 2014 (Released:2015-03-31)
参考文献数
19

日本では、晩婚・未婚化現象、それと連動して起こる少子化の傾向を問題視してか、人々に恋愛や結婚を意識させるような話題がメディアを媒介に世間を賑わせている。しかし、依然として結婚前の「恋愛」を中心的に扱った調査研究は少ない。本稿では、1983年から1993年生まれ、現在20歳代の未婚男女で異性愛者24名を対象にフォーカス・グループディスカッションと半構造化インタビュー調査を行い、若者たちが「恋愛」をどのように語るのかというレトリックに注目し、その論理構造をジェンダー視点から考察した。考察の結果、「付き合う」という契約関係は性関係を持つことの承認を意味するが、「付き合う」ことが必ずしも「恋愛」と同義ではないということがわかった。特に女性からは、結婚に結びつく恋愛を「恋愛」であるとする語りがみられ、ロマンティック・ラブを忠実に体現しようとすればするほど、「恋愛」から遠ざかるということが示唆された。
著者
山川 勝史
出版者
公益財団法人 国際交通安全学会
雑誌
IATSS Review(国際交通安全学会誌) (ISSN:03861104)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.49-56, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
11

新型コロナウイルス疾患の流行と同時に感染が懸念される場所の一つとして、満員電車が挙げられている。著者は、目に見えないウイルスの振る舞いを流体シミュレーションにより可視化し、これまでに満員電車における感染シミュレーションを実施していた。新型コロナ感染が広がり始めた2020年2月以降、本シミュレーション結果はテレビ、新聞、雑誌等数多くのメディアで取り上げられたものの、放送時間や記事面の制約による説明不足のため誤解を与えるものも少なくなかった。本論説では、これまでにメディアで紹介されたシミュレーションの正確な情報を記載するとともに、著者の考える満員電車における感染リスクについて記述している。ただし結論からいうと、ほとんどの乗客がマスクを着用している日本国内における電車内では、これまで同様、今後もクラスターは発生しにくい環境であると考える。
著者
勝木 俊雄
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.93-104, 2017-04-30 (Released:2020-03-23)
参考文献数
15
被引用文献数
3
著者
田上 雄大
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.23-45, 2017 (Released:2020-10-30)

ウクライナ憲法三四条は,言論の自由(свобода слова)を保障している.その一方で,ウクライナには言論の自由を制約する通称・脱共産主義法が存在する.同法は,旧ソ連支配下のウクライナで引き起こされた人工飢餓といった出来事を否定する表現に対する罰則を設け,さらに共産主義に対する称賛やナチズムに対する称賛も禁じている.本稿では,ウクライナにおける言論の自由とその制約との関係について論じている.
著者
渡邊 寛 城間 益里
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.162-175, 2019-03-31 (Released:2019-03-31)
参考文献数
56

There has been an increase in the number of Japanese people who disagree with traditional gender roles which has resulted in diversified male roles. Based on a nine-male-roles model, this study examined the chronological changes and differences in male characters as per their ages and relationships with the heroine in NHK’s morning drama serials known as “asadora,” which is a Japanese TV drama. Results indicated that the roles of middle-aged men evolved from “high communion” in the ’60s and ’70s, to “high social status” in the ’80s and ’90s, to “commitment to household responsibility” in the ’00s and ’10s. Meanwhile, young men’s roles evolved from “high agency” in the ’90s to “attentiveness to women” in the ’10s. Additionally, the heroines’ husbands, ex-husbands, male friends, and romantic partners demonstrated “low effeminacy,” “superiority to women,” and “attentiveness to women.” Conversely, the heroines’ brothers, sons, and neighbors demonstrated “psychological and physical strength” and “emancipation from emotional restriction and toughness.” Based on social changes in Japan, implications of this study and future prospects were discussed.
著者
小林 正啓
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.240-250, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
27

自動運転が実用化段階を迎えつつある。しかし,特に完全自動運転を実用化するに当たっては,さまざまな法制度上の課題に対応しなければならない。自動運転技術は事故を減らすだろうが,ゼロにすることは絶対にないから,事故が起きたときの法的責任の所在も論じられなければならない。本稿では,自動運転技術が直面することになる法制度上の課題を概観するとともに,対応策の方向性について,提案を行う。
著者
長田 進 鈴木 彩乃
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶応義塾大学日吉紀要 社会科学 (ISSN:13425390)
巻号頁・発行日
no.20, pp.43-72, 2009
被引用文献数
1

1, はじめに2. オタク関連研究の概況について3. 今回の研究における対象地域の設定と「オタク」関連用語の定義4. 専門店の分布パターンに見る秋葉原と池袋の特徴5. 取扱商品の違いから見る秋葉原と池袋の特徴6. 歴史的展開に見る秋葉原と池袋乙女ロード地域の比較7. 両地域に対する総合的考察8. おわりに
著者
笠谷 和比古
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.33-48, 1997-09-30

徳川家康の姓氏問題は複雑である。家康はその血統的系譜を清和源氏の流れを汲む新田一族の一人得川四郎義季の末裔たることに求め、自らの姓氏を清和源氏と定めたとされるが、これは天下の覇権を掌握した家康が、慶長八(一六〇三)年の征夷大将軍任官を控えて系譜の正当化をはかる目的で、そのような始祖伝承を無理に付会していったものであるとこれまで見なされてきた。しかし家康宛の朝廷官位叙任に関する口宣を分析した米田雄介氏の近年の研究成果は、このような通説的歴史像に疑義を生じさせるものとなっている。本稿はこれらの研究史を踏まえ、かつ家康関係文書の再検討を通して、家康の姓氏の変遷を追究する。それは単に、家康の源氏改姓の時期のいかんを求める事実問題としてだけではなく、姓氏の変遷に表現されたこの時期の国政上の意義にかかわる問題でもある。本稿では、この家康の源氏改姓問題を通して、豊臣秀吉の関白政権時代の国制はその下に事実上の徳川将軍制を内包するような権力の二重構造的性格を有するものであったことを論じる。
著者
大井 雄介 鈴木 大地
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.117-126, 2023-03-25 (Released:2023-03-15)
参考文献数
51

脊椎動物の嗅覚系は,いつ,どのように進化したのだろうか.脊椎動物に最も近縁な無脊椎動物であるホヤやナメクジウオには明確な嗅覚器が認められないため,脊椎動物の嗅覚系は脊椎動物の系統で独自に発達したと考えられる.ヤツメウナギとヌタウナギからなる円口類は,脊椎動物において初期に分岐した系統の生き残りであり,脊椎動物の初期進化を理解するうえで重要な動物群である.嗅覚受容体や嗅細胞,嗅覚回路の比較を通して,円口類と他の脊椎動物の嗅覚系の共通点と相違点が明らかとなり,ここから嗅覚系の起源と多様化が見えてくる.