著者
高橋 孝次 タカハシ コウジ TAKAHASHI Koji
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.32, pp.13-28, 2016-03

〈文壇〉からの孤立というイメージによって強く価値づけられてきた稲垣足穂だが、大正末から昭和初期にかけては、〈文壇〉という文学場において、「新時代」を代表する作家として登記された存在だった。本稿では作家自身の証言に依拠するのみでほとんど検証されてこなかった〈文壇〉時代の稲垣足穂の姿を当時の時評や合評、新たに発見された資料、同時代言説などから再構築することを目的とする。滝田樗陰と「中央公論」、佐藤春夫との破門問題、中村武羅夫と「新潮」、新感覚派と「文芸時代」といった稲垣足穂と〈文壇〉を繋ぐ人々との関わりを再検証し、当時の足穂がいかにして〈文壇〉での位置を獲得していったかを裏付ける。加えて石野重道と猪原太郎という二人の友人をめぐる「オリジナリティ」の問題を採り上げ、足穂の送った二つの抗議文と、それに対する〈文壇〉の反応から足穂の「新しさ」がどのように認知、受容され、消費されていったのかを明らかにする。
著者
朴 [Hyun]国
出版者
龍谷大学
雑誌
国際文化研究 (ISSN:13431404)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.43-50, 2016-03-20
著者
日本チバガイギー株式会社農薬本部開発普及部登録課 株式会社エス・ディー・エスバイオテック企画開発部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.307-309, 1986

カルブチレートの安全性評価のための各種毒性試験の結果, 本剤は急性毒性がきわめて低く, 眼に原体ではきわめて軽度の刺激性を有するものの皮膚に対してはまったく刺激性を有しない. また, 亜急性毒性試験での本剤の最大無作用量は15mg/kg/日 (雄) であり, 細菌を用いた変異原性試験はいずれも陰性を示した.<br>本剤は造林地下刈用および非農耕地用除草剤としてそれぞれ昭和57年および58年に農薬登録され, これらの分野で有用な資材の一つとなっている.
著者
安井 行雄
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

水田に生息する甲殻類ホウネンエビBranchinella kugenumaensis(Ishikawa)の生活史形質において,前年度までの研究で明らかにされた表現型多型(長期繁殖型と短期繁殖型)が生じる原因が,遺伝によるのか環境によるのかを実験的に明らかにするためには,大前提として供試個体を容易に入手する必要がある。そこで本研究ではまず、香川県木田郡三木町を流れる河川(吉田川、新川、鴨部川)の流域においてホウネンエビ長期繁殖型の発生が見られるかどうかを探索した。また表現型多型の生じる原因を明らかにするためには、これまで困難とされてきたコントロールされた環境条件下で個体を飼育することが必要である。そのため本研究では半野外条件および恒温室内での飼育技術の確立を試みた。野外の調査地においてホウネンエビの発生が確認できたのはM3地点(吉田川上流足田打)のみであった。M3での個体の成長は短期繁殖型のものと類似しており、河川上流部で長期繁殖型個体の発生を確認することはできなかった。しかし半野外環境下での飼育において、M1地点(吉田川上流朝倉)の土壌から長期繁殖型と思われる個体の発生が確認出来た。恒温室内での実験ではN20地点(琴電農学部前駅南西)の土壌を用いた。これは野外網室での半野外飼育の結果としてN20個体はM1やM3など山間部の個体と比べて環境順応能力が高いと考えられたからである。大型のプラスティックトレイ(924×610×200mm、容量79リットル)に水田土壌を入れ、水道水を加えて攪拌し、網室内に放置して自然の日射と温度変化に曝すだけで土壌中のホウネンエビ卵を孵化・成長・繁殖させることができた。またトレイの底に土壌を入れた状態であれば恒温室(27℃、16L8D)内で人工照明を当てた状態でもホウネンエビを飼育することができた。光条件(ライト1灯と2灯)と水質条件(ハイポネクス添加、乾燥酵母添加および無添加対照区)をコントロールした飼育実験で発生消長を調べたところ、ライトの照度と水質の違い、および雌雄の性差についていずれも体サイズにおける有意差を生じさせることができた。ライトは2灯が1灯よりも成体の体長を大幅に促し、また酵母添加区、ハイポネックス添加区、対照区の順でわずかずつ体長が大きかった。また雌は雄よりもわずかに大型であった。本実験を通して、水中に土壌を残すという半人工条件とはいえ、これまでは困難とされてきたホウネンエビを飼育することに成功した。この結果、今後季節的要因にとらわれることなくホウネンエビを周年累代飼育することが可能となった。またその際、ライトの照射および酵母・ハイポネックスの添加を行うことは成長を促進する上で有効である。
著者
山本 哲也 長谷川 香子 小野田 誠 田中 啓一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.136, no.6, pp.905-911, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 7

Iguratimod (IGU), a disease-modifying antirheumatic drug launched in September 2012, has been reported to carry a risk of severe hemorrhages through a suspected interaction with warfarin (WF) in the all-case surveillance and early postmarketing-phase vigilance. To elucidate possible mechanisms of adverse interaction between IGU and WF, we analyzed the effects of IGU on the pharmacodynamics and pharmacokinetics of WF in rats. IGU was orally administered to male Wistar rats once daily for 5 d at 10 or 30 mg/kg in combination with WF at an oral dose of 0.25 mg/kg. Coadministration of IGU 30 mg/kg enhanced the anticoagulant activity of WF; prolonged blood coagulation time (prothrombin time and activated partial thromboplastin time) and decreased levels of vitamin K (VK)-dependent blood coagulation factors (II, VII, IX, and X) were observed. On the other hand, the pharmacokinetic parameters of WF including maximum plasma concentration (Cmax) and area under the plasma concentration-time curve from 0 to 24 h (AUC0-24 h) were not affected by the combination with IGU. IGU alone did not change blood coagulation time at doses up to 100 mg/kg, while VK-dependent blood coagulation factors decreased slightly at 30 and 100 mg/kg. These results suggest that the pharmacodynamic effect of IGU on VK-dependent blood coagulation factors is involved in the mechanism of drug-drug interaction of IGU with WF.
著者
高橋 和子
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.23, 2009

本稿では, サポートベクターマシンの分類精度を高めるため, リサンプリングではなく素性を変化させて複数の分類器を構築し, 事例ごとに適切な分類器を選択する方法を提案する. 提案手法を自由回答と選択回答からなる調査データの分類タスクに適用した結果, 分類器選択の方法として、分類器が出力するスコア(分類スコア)に基づいて推定したクラス所属確率を用いた場合に, 単独の分類器で最も高い分類精度を上回った.
著者
中島 美樹 丸山 弘明 跡部 昌彦
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】レモンジュースの香味特性は、原料果実の産地、収穫時期や搾汁方法、殺菌方法などの違いで変化し、現在、市場にも様々な香味特性を有する商品が存在する。本研究では、これら市販レモンジュースが、どういった香味特性を有するのか評価し、さらに、これらの香味特性が製菓調理後の香味特性と、どう関係するのか解析した。平成23年度大会では、第1報として、レモンジュースの配合量を合わせて試作した、ゼリー、ベイクドチーズケーキでの結果を報告した。今回は、添加するレモンジュースの酸度が同一になるように、添加量を調整して試作し、同様に香味特性を評価、解析した結果を報告する。【方法】市販レモンジュース(22品)、青果レモンを搾ったもの(2タイプ)について、官能評価による香味評価を行なった(第1報)。その結果で特徴的であった市販レモンジュース(7~8品)を用いて、焼き菓子(ベイクドチーズケーキ、マドレーヌ)を試作し、官能評価による香味評価を行なった。官能評価は両極7段階尺度法で評価した。 【結果】<ベイクドチーズケーキ>レモンの添加量を統一した第1報では、レモンジュースの香り特性は、チーズケーキの評価では区別されなかった。しかし、酸度によって添加量を調整した今回は、レモンの香り特性の一つである「レモンの果皮の香り」と「レモンの果肉の香り」が、チーズケーキの評価で区別された。また、「レモンの果皮の風味」「レモンの青っぽい風味」の強いレモンジュースは、チーズケーキの「チーズの風味」を弱く感じさせることが確認できた。<マドレーヌ>「後引く感じ」の強いレモンジュースは、マドレーヌの「バターの風味」「卵の風味」を弱く感じさせることが確認できた。
著者
門馬 拓哉 酒井 宏
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.27, no.23, pp.5-8, 2003-03-20

本研究では、2次元テクスチャを付与した場合、しない場合における陰影からの3次元構造知覚について心理物理学的に検討する。これにより陰影と輪郭の相互作用を明らかにする。具体的には、単純なグラデーションを付与した円形の領域(図)に、ホワイトノイズ(WN)やランダムドット(Rnd)を付与した場合について検討した。実験により次の結果が得られた。(1)図と地の平均輝度が等しい湯合(上下方向に図/地のコントラスト極性が変化する場合)に知覚が向上する。(2)WNを図に付与すると、図が地より暗い場合は知覚が向上する。(3)Rndを図地の両方に付与すると知覚は低下する。(4)黒線で図の輪郭を囲むと、図が明るい場合には知覚が向上する。これらの結果から、テクスチャの付与等によって、図と地の境界が区別されやすくなる場合には陰影からの3次元知覚が向上し、区別しにくくなる場合には知覚が低下することが示唆された。
著者
平塚 弘明
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.1-14, 2006-09-30

Visual Culture Studies, which attaches importance to the sociality or historicality of vision, has revealed the problem of power which underlies "seeing", but on the other hand runs the danger of reducing "seeing" to a mere repetition of social structure or discourse. This paper aims to discover within "seeing" itself a way to break through the constructed nature of it by considering the notion of the Image and its double function in the theory of W. J. T. Mitchell. Mitchell defines the Image as a "natural sign", a sign which represents a resemblance in a given representation system. One of its social functions is to provide in a natural form the basis for "seeing" to those who share the same representation system. This basis is formed and functions not by the power of the Image itself, but through our narrations concerning the Image. However, the Image, as a natural sign, has a further function of making visible the basis itself for "seeing". Such a recognition of the Image is not "seeing" on a particular basis but is itself the basis for "seeing", and thus differs from seeing within "a prescribed set of possibilities". In narrating concerning the Image, we forget what lies outside of the possibilities even though we experience it continually.
著者
田中 貴子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1-11, 1991-06-10

網野善彦氏の『異形の王権』以降南北朝時代への関心が高まっているが、特に文観と立川流と呼ばれる真言密教の一派については、それぞれ邪教、妖僧として特別視される傾向があった。しかし、こうした文観像は、彼を非難するために[ダ]枳尼天法の行者の姿をモデルとして作り出されたものであり、その背後には[ダ]枳尼天法をめぐる「異類」と性の問題が存在している。本論は、『渓嵐拾葉集』の説話を通して、「異類」と性の力が中世王権の体制の中に組み込まれている様相を探るものである。