著者
安藤 清一
出版者
名寄市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ウナギ血漿中には胆汁色素であるビリベルジンが存在し、青緑色を呈する。本研究では、これまで生化学的に解明される機会の乏しかった、ウナギ血漿ビリベルジン結合タンパク質(アンギラシアニンと仮称)の構造と機能について検討した。アンギラシアニンは分子量75, 000ダルトンの単量体として血漿中の非リポタンパク質画分に存在した。N末端および内部アミノ酸配列を決定した結果、アンギラシアニンは血漿中の遊離ヘム色素を結合する糖タンパク質であるヘモペキシン様タンパク質と高い相同性を示すことが明らかとなった。
著者
森 明彦
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)三一権実論争が被差別民の性格に生まれついての悪人、穢れた存在との刻印を与える契機となったことを解明した。(2)神祇令散斎条の注釈では二つの新見解を提出した。i罪の決罰を行う場である市での官私間の交易が自由な価格設定で行われていたこと。ii祈年祭の成立は新しいとする説に批判を加え、プレ祈年祭というべき予祝の祭の存在を指摘した。(3)良源と仲算との三一権実論争の具体的姿を示すと考えられる良助の「天台法輪摧破法相外道銘」の復刻を行った。
著者
加來 昌子
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.609-613, 2002-09-01

転換性障害と診断された「利き手の不随意運動」に対する心理面接の中で,性的虐待が明らかになった2例を経験した.事例1は13歳,女児.心理面接開始約半年後,本児が母親に,10歳からの2年間,同居していた内縁の夫から,内縁の夫自身のマスターベーションを本児の手で行うことを強要される等の性的虐待を受けていたことを告白した.事例2は15歳女児.症状の形が事例1と似ていたことから性的虐待を疑い,本児に直接虐待の有無を尋ねたところ,事例1と同じような性的虐待を受けていることを告白した.これら2例において,利き手の不随意運動は「マスターベーションを強要されたこと」を直接的に表現したものと考えられた.
著者
圓田 浩二
出版者
沖縄大学
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.83-94, 2010-03-31

本稿の目的は、スターパ・ダイビングというスポーツを行う人々の行為を解明し、その特徴が現代社会とどのように関連づけられるかを探ることにある。ダイパーがどのような動機付けと社会的条件のもとにダイビングを行い、その結果として何を得ているかについて分析・考察を行う。ダイビングを行う人々の行為分析であると同時に、ダイビングを通して現代日本社会のもつ問題を明らかにすることになる。最初にダイビングをフローと位置づけ、次にカイヨワの遊びの概念を用いてダイビングの特徴を明からにする。そして、ダイビングを特徴づける「偶然」と「眩暈」の要素から、現代社会とダイビングの関係性を論じる。現代社会において、ダイビングがスポーツとして、遊びとしての、偶発性に左右され、自己を喪失させ、環境への融合を果たすという、優れた性質をもちながら、その感覚自体が社会制度へと回収されてしまっているではないかと分析している。分析枠組みとして用いるのは、M. チクセントミハイのフロー概念、R. カイヨワの4つの「遊び」の類型、A. ギデンズの再帰性の概念である。結論として、ダイビングを特徴づける偶然と眩暈の要素は、個人にとって、競争と管理、監視、ルーティンによって特徴づけられる日常から引き起こされる存在論的な不安を解消することになる。結果的に、ダイパーが体験として行うダイビングは、現代社会に生きる個人の存在論的な不安を解消する制度として確立されている。
著者
水島 裕
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2004

数値計算は数学または応用数学の一分野である.数学は科学,工学に現れる現象,関係,設計過程などをモデル化するのにその威力を発揮している.一方,数学における実数演算を浮動小数点演算で行う場合,丸めや打ち切り誤差が生じるため,その精度に関しては保証することは困難である.そこで,数学的に正しいと保証する理論と技術の開発を,精度保証付き数値計算という.本論文では,数値計算用のソフトウェアであるMATLABを用いた大規模スパース行列の精度保証付き数値計算を行う.大規模な行列を扱う場合,莫大なメモリ量を消費するため,現時点では効率の良い精度保証を行えるまでに至っていない.そこで,スパース行列がもつ非零要素が少ないという特性と反復解法を利用し,10000×10000以上の大規模スパース行列を精度保証することを目的とする.
著者
河嶋 壽一
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.231-236, 2011-12-03

遺物の一つの古文書などは歴史や文化情報などが反映された貴重な資料であるが,それらの版画や版本を刷るために用いられた版木は永年の使用により,絵や文字などの彫られた形状が摩耗あるいは損傷していく.版木の形状の損傷状態は多様であるため,形状を復元する場合には,形状の損傷状態に対応して適切な復元方法を適用する必要がある.本研究では,彫られた絵や文字の損傷状態が異なる版木を対象物として,3次元デジタルデータによる,損傷状態に対応した版木の形状復元方法を提示し,形状復元を行うとともに復元版木の制作を試みた.
著者
佐藤 翔 サトウ ショウ
巻号頁・発行日
2012-02-29

日本の研究・教育機関等に所属する著者のPLoS ONEでの論文発表状況について,学術文献データベース Web of Science を用いて調査した結果を,隣接領域の他の論文等と比較しながら報告する。PLoS ONE 全体での掲載論文数の伸びに沿うかたちで,日本の著者による論文発表数も年々増加している。また,隣接領域の他誌掲載論文と比べると,PLoS ONE 掲載論文の方がより多くの助成金を獲得している傾向が見られた。
著者
日向 良和
出版者
都留文科大学
雑誌
都留文科大學研究紀要 (ISSN:02863774)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.95-111, 2011

本稿は情報リテラシーを意識した図書館ガイダンスの実践例として、都留文科大学での実践例を報告している。主に大学図書館における情報リテラシーと図書館利用教育にかんする2000年以降の文献を踏まえながら情報リテラシー概念を検討した。情報リテラシー概念を検討するにあたり、文献にあるスキル志向アプローチと利用者志向アプローチについて、都留文科大学での図書館ガイダンスをそれぞれのアプローチに当てはめながら分析した。分析の結果都留文科大学では、情報リテラシー教育の必修化と、学生に一定の情報リテラシーを獲得させるためのカリキュラム作成が必要であると結論する。また、公共図書館での情報リテラシー向上サービスの必要性と、公立大学における地域貢献として、公立大学図書館と公共図書館の連携の必要性を認識した。今後の研究課題として地域住民の情報リテラシー能力の調査と、公共図書館における情報リテラシー基準の研究が必要である。
著者
本間 維 永森 光晴 杉本 重雄
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.1-8, 2011-11-15

Web 上で公開されている Web ページ中にメタデータを記述するために,RDFa や Microformats,Microdata など複数の標準的な記述フォーマットが提案されている.しかし,標準的な記述フォーマットに従ったメタデータを持つ Web ページの数はまだ少なく,メタデータを利用した情報流通支援を行うには,より積極的なメタデータ付与が求められる.本稿では,DCMI Description Set Profile を基にした情報抽出テンプレートによる,相互利用性向上や作成コスト軽減を意識したメタデータ生成手法を提案する.Standard metadata formats, such as RDFa, Microformats, and Microdata, have been recommended to embed metadata in HTML or XHTML documents. However, many web pages have no metadata written in those formats. The other side, non-standard formats describing information for layout of web pages is used widely. For increasing metadata more proactively, we regard information in non-standard formats as metadata, and integrate with metadata in standard formats. This paper proposes a method to create metadata from resources with embedded metadata in standard and non-standard formats.
著者
Myowa-Yamakoshi Masako Scola Céline Hirata Satoshi
出版者
Nature Publishing Group
雑誌
Nature Communications
巻号頁・発行日
vol.3, pp.693, 2012-02-21
被引用文献数
55

ヒト特有の学びのスタイルが明らかに. 京都大学プレスリリース. 2012-02-22.
著者
田籠 博
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, 2001-09-29

元文元年(1736)作成の出雲国郡別絵図註書帳六冊は,郡役所の註書原案と松江藩の改定案を備える。本資料に現れた物の大きさを表す語彙を調べると,次のような特色が見られる。なお,(原)は原案,(改)は改定案を表す。相対的な〈大〉を表す語は「大きなり」3例,「ふとし」9例である。(原)川に居申候。長さ四五寸位より大キ成ハ無御座候。(大なきり,魚)(改)羽色は青黒く,足は黄色,大サ雀より少ふとく御座候。(嶋のせんとう,鳥)(原)磯辺に居申候。長さ四五寸位よりふとくは相成不申候。(ひこちや,魚)本資料の「ふとし」は〈大〉だけでなくより上位の意味概念も表し,現代語「大きい」に該当する。漢字表記「大さ・大く」も「ふとさ・ふとく」と訓むべきものである。相対的な〈小〉は「ちいさし・ほそし・こまかなり」で表され,用例も多い。(改)惣身の色薄黒く,雀より少ちいさき鳥ニて御座候。(むさゝび,鳥)(改)冬より春の頃迄,森木の内ニ住。雀よりも細く御座候。(ぬか鳥,鳥類)(原)茶の木に似て,(略)茶の葉より細かなり。尤細か成る白き花付。(しぶき,木類)(改)九月の頃深山ニ生し,大キ成分ハ,笠の廻り六七寸(略)細き分ハ,笠の廻り壱寸弐三歩(略)(萩茸,菌)最後例は「ほそし」が「大キ成分」と対比的に使用された端的な例である。「こまかなり」は用例から見て,〈小〉の下位の意味領域を担っていたと思われる。本資料の大きさを表す語彙は,〈大〉を表す「ふとし」,および〈小〉を表す「ほそし」の存在を特色として指摘できる。これを『日本言語地図』と比較すると,「ふとし」はオーケナ・オッケナに駆逐されて消え,「ほそい」はホシェとして残っている。郡別絵図註書帳における大きさを表す語彙は,言語地図の解釈に寄与するだけでなく,「細し」の語史解明の必要性も考えさせる。
著者
本田 啓之輔 小須田 敏
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.145-152, 1982

In order to find a weak point for mooring, authors carried out the model experiments on the above title problem by using of 1/50 scale model of GT 5,000 ton cargo ship. The external force acting on the model ship in a water tank with generator is wind force, no wave. The wind-direction were changed at every 15 degrees from the line drawed vertically to a line between both anchors. Main experimental results are as follows; (1) A Open-moor of which the leg angle between both chain cables is about 60° is more safety because of smaller yawing motion, as that being obtained by YONEDA. However, it should be taken notice that the shock load acting on the riding cable is greater than that at a single anchor, if the wind-direction is agreed with each cable line, and also that the most possibly raises a dragging anchor in such case. (2) Using Engine-astern in order to control the yawing motion at anchor has the effect of checking gently and smaller, as that being obtained by T.S.HOKUTO-Maru. However, such engine motion at anchor under heavy weather will be brought on the dragging anchor owing to the shortage of an anchor-holding power.