著者
丸山 和孝
出版者
大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻
巻号頁・発行日
2007-02-02

報告番号: ; 学位授与年月日: 2007-03- ; 学位の種別: 修士; 学位の種類: 修士() ; 学位記番号: 修第号 ; 研究科・専攻: 情報理工学系研究科電子情報学専攻
著者
長松 奈美江 阪口 祐介 太郎丸 博
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.77-93, 2009-05-25 (Released:2010-01-08)
参考文献数
23
被引用文献数
2

職業は、私たちの社会生活に大きな影響を及ぼす要因の一つである。これまで日本では、職業指標として職業威信スコアやSSM職業8分類が用いられてきた。しかし、職務内容を反映した職業指標はあまり利用されてこなかった。本稿では、仕事の複雑性に注目し、そのスコアを構成した。 Dictionary of Occupational Titles(DOT)第4版と、「情報化社会に関する全国調査(JIS調査)」のデータを用いて、合併コード、混合コード、DOTコードという三つの方法によりスコアを構成した。さらに、構成されたスコアを用いて、仕事の複雑性が、職業と関連が深い意識やライフチャンス変数に効果をもっているかを検討した。重回帰分析の結果、複雑性スコアは、個人収入や階層帰属意識、職業による不公平感に対して、職業威信スコアに還元できない効果をもっていることがわかった。この分析結果は、仕事の複雑性スコアの妥当性と有効性を示していると考えられる。
著者
藤垣 裕子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.172-180, 2010-03-05
被引用文献数
1

本稿では,現代における科学者の社会的責任について考える.責任を呼応可能性,応答可能性という意味で捉え直して再整理すると,現代の科学者の社会的責任は,(1)科学者共同体内部を律する責任(Responsible Conduct of Research),(2)知的生産物に対する責任(Responsible Products),(3)市民からの問いへの呼応責任(Response-ability to Public Inquiries)の3つに大きく分けられることが示唆される.この3つの区分を,ジャーナル共同体(専門誌共同体)との関係を用いながら考察し,最後にカテゴリー間の葛藤について考える.
著者
崔 玉花 CUI Yuhua
出版者
Linguistic Circle, The University of Tsukuba
雑誌
言語学論叢 オンライン版 (ISSN:18826601)
巻号頁・発行日
vol.4(通巻30), pp.29-41, 2011-12-31

本稿は同じ意味内容を表すと思われる日本語と中国語の動詞が結果キャンセル構文の成立において異なる文法性を示す現象を取り上げ、当該構文の容認度に影響する要因を英語との比較を通して考察する。まず、目的語の量が特定されているか否かは日英語の当該構文の容認度に影響する要因であることを示す。また、日本語では自動詞文の表す出来事の性質も当該構文の容認度に影響する要因であることを述べる。次に、中国語では日英語と異なり、目的語の定性と特定性が結果キャンセル構文の容認度に影響しないことを示し、当該構文の容認度に影響するのは動詞のアスペクト性であると論じる。
著者
矢後 勝也 矢田 脩
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.181-184, 2002
参考文献数
11

2001年4月23日,福岡市西油山にて採集されたウラギンシジミCuretis acuta Moore,1877の越冬個体1♀を用いて採卵実験を行ったところ,蔵卵数と生存日数に関する著しい結果が得られた.この個体はやや汚損していたが,翅型は明らかに秋型の特徴を表わしており,前年秋に羽化した越冬個体と判断された.筆者らは本個体を用いて,原則として1日おきに採卵実験を行った.実験にはナイロン製のネットでできたケージを使用し,食草としてフジの新芽を入れ,午後の一定時間に高さ約1mの屋外で採卵した.また採卵時以外の時間帯はインキュベーター(20±1℃;14L-10D)による室内保管を行った.その結果,本個体は捕獲後87日間生存し,その間の産卵総数は343卵を記録した.本個体の産卵能力のピークは4月下旬から5月上旬で,その後,日々の経過につれて産卵数の減少が見られたが,7月中旬に死亡するまで本個体は確実に有精卵を産んでいた.本種の越冬♀は神奈川県や九州では3月下旬から産卵を始めるといわれており,それゆえ本個体も採集以前の時点で,すでにかなりの卵を産んでいたと想像される.本種の♀は条件が整えば,おそらく約400卵あるいはそれ以上の産卵能力を持つものと考えられる.本個体は明らかに越冬個体であるので,その羽化は前年の9月から10月に行われたとすると,本個体は10から11ヶ月間生きていたと考えられる.筆者らが知る限り,多化性かつ成虫越冬するチョウでこのような長期生存するものは,国内ではクロコノマチョウMelanitis phedima(Cramer,1780)(法西,1996,2001;白水,2000;石島・中島,2001;森田,2001)を除いて他にいない.
著者
名知 祥
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

臨床的な敗血症・腹膜炎モデルである盲腸穿刺腹膜炎(CLP)マウスモデルを作成し、抗菌ペプチドを投与する事で治療効果を検討した。そのまま閉創する群(control群)と抗菌ペプチドを腹腔内投与してから閉創する群(peptide群)を作成したところ、Peptide群は有意に生存日数が延び、IL-6、TNF-α、血中エンドトキシン値も低値であった。以上から抗菌ペプチドは、CLP モデルへの投与で有意に生存日数を延ばすだけでなく、炎症反応も抑え治療効果があると考えられた。
著者
龍村 あや子 谷 正人 マーマット ウメル 小柴 はるみ 屋山 久美子
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は新疆ウイグル自治区のウイグル人作曲家、ウメル・マーマットを主たるインフォーマントとして、比較文化・文明の観点から中央・西アジア音楽研究に携わってきた研究代表者(龍村)が、トルコ(小柴はるみ)、イラン(谷正人)、アラブ(屋山久美子)の音楽研究者と共に、トルコ語系民族のウイグルと他の中央・西アジア地域の音楽との比較を行ったものである。今日の伝承におけるウイグルの「ムカーム」は、他の地域の伝統よりも固定性が強く、各ムカームが固有の旋法のみならず、固有のリズムと舞踊の様式を持っている。ムカームに基づく一人の奏者の即興演奏も見られるが、音楽・舞踊の一体化した全体が一つのムカームの表現なのである。
著者
安藤 元一 椎野 綾 鳥海 沙織
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.260-268, 2012-03

センサーカメラによる自動撮影調査は,野生動物研究に広く使われている。しかし調査によって設置方法や使用機種が異なるために,調査結果を定量的に比較することが困難である。本研究ではセンサーカメラの機種による性能差を明らかにすることを目的に,フィルムカメラ 1機種(FieldNoteIIa),デジタルカメラ 5機種(FieldNoteDS8000, FieldNoteDS60, GAME SPY D40, Cuddeback Expert およびTSC30) および単体センサー 1機種(TrailMaster550)を対象とし,各機種のシャッター・タイムラグ,動物検知可能距離,種判別可能距離,検知可能画角,および電池寿命を実験的に比較した。タイムラグは 0.6秒から 4.5秒まで機種に大きな差があった。大型の動物を検知できる距離は 7m から 27 m までの差があった。しかし検知距離が長い機種ではフラッシュ光はその距離まで届かなかった。小動物を近距離で撮影した場合,デジタルカメラはすべて被写体が白飛びして種判別が困難であったが,フィルムカメラでは 20cm まで近接しても判別できた。 センサーの水平検知可能画角も機種によって10~150°と大きな差があり,タイムラグが長いカメラほど検知画角が狭くなる傾向があった。電池寿命はいずれの機種も常温で 3週間程度はあり,実用上問題なかった。米国の会社が発売する 3機種は,見通しのきく森林において動きの遅い大型獣の存在を確認するための,ハンティング用調査に適した性能を有していた。国産の 3機種は近距離の中小動物撮影に適し,汎用性の高い機種といえる。一般的な自然環境調査においては,他の調査と比較できる方法を用いることが重要である。しかしカメラ性能の差が大きくてモデルチェンジが頻繁という現状では,定量的な比較のためには機種の統一を目指すよりも,撮影面積を一定にするなどカメラの設置方法^5) を工夫する方が現実的と思われる。Trail camera photography has become a common practice in wildlife field studies. Quantitative comparison of different survey results, however, remains difficult partly because different cameras are used in different studies. This study aims at clarifying performances of film-and digital-sensor cameras under experimental conditions. Seven camera types were tested : a film camera(FieldNoteIIa), five digital cameras (FieldNoteDS8000, FieldNoteDS60, Cuddeback Expert, GAMESPYD40, TSC30)and a separate-type sensor(TrailMaster550). Time lags from sensing to triggering varied from 0.6 sec. of FN IIa to 4.5 of TSC30. Detectable distances were from 7m of FN IIa to 27 m of TSC30. Identifiable distance of TSC30, however, was no more than 12 m due to the lack of speedlight power. Horizontal detectable angles also varied from 10° of Expert to 150° of TrailMaster. When shooting close up photos of small-size animals, images of digital cameras tended to be overexposed and not to allow species identification. This was not the case in the film camera that allowed identifiable close up shot as near as 20 cm. Battery satisfactorily lasted for more than three weeks in all cameras. Cameras distributed by US companies generally had longer detectable distances, narrow detectable angles and longer triggering time that were suitable in detecting big game in woodlands of good visibility. Cameras made in Japan had more compact size, shorter detectable distances and wider detectable angles and broader dynamic ranges. These were desirable performances for use in rural thickets in Japan. For comparing different survey results, it seemed more practical to standardize rules of camera installation rather than unifying camera performances.
著者
松崎 正治
出版者
同志社女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

まず、先行研究の整理と分析枠組みの研究を行った。先行研究では、ライフヒストリーアプローチに焦点化して検討した。また分析枠組みの研究では、ライフヒストリー、カリキュラム経験、学習記録の3つの視点を設定した。これに基づいて、中学校国語科教諭・遠藤瑛子と高校国語科教諭・荻原伸にインタビューを重ね、ライフヒストリーを構成した。さらに、国語科授業に関するドキュメントや学習記録を収集し、それぞれのカリキュラム経験を分析した。遠藤瑛子教諭の場合、1990年度の「風-自然とともに生きる」というカリキュラム経験を通して、《往還するコミュニケーション》と《情報力》を重視する授業スタイルを創り出し、授業スタイルの選択肢を増やしていったことが分かった。また、1985年の単元「写真からことばへ」で意識されていた《再文脈化》と、1987年の単元「旅に生きる」で意識されていた《人間の生き方の認識-夢・希望》を、1996年の単元「あれから一年 強く生きる」では結びつけたというところに遠藤瑛子の「授業スタイル」のもっとも重要な変容があることが分かった。荻原伸教諭の場合、教師としてある志向性を持って教職生活に臨み、新任のおよそ十年という時間を経て、その志向性をどのように実践的に具体化していったのか、その力量形成の過程を検討した。。そのような教師の志向性のもとに、実践の「テーマ」と「モチーフ」が規定され、具体的な実践が生成される。荻原伸教諭の場合は、次の3つの志向性から実践が生み出されていることが分かった。(1)「ほんまもん」性で自分を試そう、(2)愛と世界平和、(3)関係性と批判的思考の重視→自他問題と学校言説の相対化という実践のテーマ。このように、荻原伸教諭の教職生活の最初十年間の初任期は、こういう志向性に支えられながら、自分の実践テーマを深めていったことが分かった。
著者
柴口 順一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

各自伝における関東大震災に関する記述を追うことで、それぞれの自伝を横断的に捉える試みを行なった。その結果、自伝における関東大震災のさまざまな捉えられ方や描かれ方が明らかになったと同時に、単なる出来事としての関東大震災とはまたちがった様相が浮かび上がっても来た。そのことによって、出来事としての関東大震災に関する研究にも大いに資するところがある。以後、その対象をさまざまな出来事(事件)に拡大して研究を広げていくことが可能である。
著者
宋 基正 宮崎 清 朴 燦一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.37-46, 2011-01-31

本小論では、全羅北道淳昌郡において2005年から展開されている地域革新体制(RIS:Regional Innovation System)に関する現地調査に基づき、当該地域の伝統的生活文化を活かした内発的地域振興計画の特質を考察したものである。伝統的な醤類づくりを基底に据えた淳昌における地域づくりは、以下の特質を有している。1)淳昌では、当該地域の自然・風土のなかで育まれてきた韓民族の伝統食文化である醤類産業を淳昌のアイデンティティーととらえ、その生活文化の産業化を通した地域振興が展開されている。2)核家族化の進行につれてかつての醤類の自給自足形態が脆弱化したことにより、住民-自治体-中央政府の連携的事業展開がなされてきた淳昌の伝統的醤類産業は、今日では韓国における不動の醤類産業としての地位を淳昌にもたらしている。3)淳昌における醤類産業を基底に据えた地域振興が今後とも持続的に展開・進展していくためには、醤類づくりの原材料生産を協働して実施する地域住民の意思と実践、ならびに、その協働を基点として形成される人びとの醤類に対する価値認識の共有化が不可欠である。
著者
下司 晶
出版者
上越教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

「教育」と「治療(心理臨床)」の境界について、精神分析を中心に原理的な研究を行った。その結果、特に児童生徒の「心」の理解と教育との関係や、道徳性の発達等の問題について、成果を提出することができた。すなわち、(1)教育モデルと治療モデルとの異同や混交を原理的に解明すること、(2)教育において心理学のはたす役割とその限界を提示することができた。さらに(3)精神分析を中心とする心理療法についても、従来は十分に踏まえられていなかった思想史的観点から、新たな一次資料を発掘し検討するなどの基礎的な知見を付け加えることができた。以上の成果は、各種学会等で発表されるのみならず、一部は大学教育や現職教員向けの講習等でも広く還元された。特に教員養成の現場に対しては、今後の教員養成の指針となりうる観点を提出することができた。