著者
加藤 恭子
出版者
上智大学
雑誌
上智大学仏語・仏文学論集 (ISSN:02881934)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.19-37, 1991-03-20

12世紀の作家クレチアン・ド・トロワは, アーサー王と円卓の騎士を主題とする5つの作品の中で, 6組の男女の愛を世界を描いた。彼の描く「愛」の世界は彼の時代の反映であったのか, G.Parisの言うように, 聴衆に気に入るため, つまり聴衆の好みの方向を示すものだったのであろうか?もしクレチアンの作品が独創的なものであったとするならば, その前提として, 彼の同時代人たちの作品の傾向を知らなくてはならない。本稿は, ごく皮相的にではあるが, 同時代人たちの描いた「愛」を主題的特徴の面から一瞥することを目的としている。
著者
茶園 敏美
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
雑誌
コンタクト・ゾーン = Contact zone (ISSN:21885974)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.128-162, 2014-03-31

本論は、占領期の日本をあらゆるひとたちが相互交渉し対処する場を、「コンタクト・ゾーン」としてみる。それはたんに、勝者米国が敗者日本を統治したというだけではなく、日本のおんなたちとGI(米兵)が対等に相互交渉をおこなっているということを明らかにする。とりわけ本論では、1人のGI と関わる、「オンリー」や「オンリー・ワン」と呼ばれていたおんなたちに注目する。 具体的には、占領期に京都社会福祉研究所が調査した、26 名のおんなたちの口述記録を考察する。彼女たちは、GI と性的な関係を持ったという理由で性病検診を強制的に受けさせられたおんなたちである。彼女たちは「高級街娼」とみなされ、「オンリー・ワン」と分類された。 さらに本論では、さまざまなおんなたちがお互いに助け合う可能性についても論じる。とりわけ、占領期に実施された強制的性病検診を受けるために待つ空間であった、病院の待合室に注目する。病院の待合室はGHQ や日本政府がおんなたちの間に「分断支配」[Enloe 2000;エンロー 2006]を持ち込もうとする空間であるからだ。 本来、あらゆる立場を超えておんなたちが、一斉検挙という暴力に対して互いに手を結ぶことができるにもかかわらず、当局側の「分断支配」によって被害を受けているおんなたち同士が互いに反目しあう状況が生み出される。 だがコンタクト・ゾーンという視点で彼女たちとGI たちとの関係に注目すると、エンローの「分断支配」も、彼女たちを調査した研究員たちのように一義的な力関係を前提とする分析にすぎないことがわかる。 彼女たちは、これまでの既存の枠組みでは分析できないおんなたちである。「規範」のものさしで彼女たちを測ることをやめたとき、彼女たちのことをもっと理解することができるだろう。
著者
村井 正
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.5-9, 2001

1961年人類初の宇宙飛行が実現してから40年が経過した.SF映画「2001年宇宙の旅」が公開されたのは1968年のことであり,映画の中で描かれた宇宙での活動は,2001年を迎えた現在,大半は未だ実現していない.しかし過去40年間の有人宇宙開発の進歩は着実なものであり,現在日本も参加して国際宇宙ステーションが建設中である.数年以内に日本人宇宙飛行士による宇宙ステーション常駐が開始される見込みとなっている.本稿では,過去40年間の有人宇宙開発の歴史を概観し,今後の方向性について論じた.
著者
森中 房枝 浮中 菜々子 小島 摩文
出版者
鹿児島純心女子大学看護栄養学部
雑誌
鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要 = Bulletin of Faculty of Nursing and Nutrition, Kagoshima Immaculate Heart University (ISSN:13484303)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.57-64, 2015

鹿児島では法事菓子の主役として高麗餅を使用することが多い。「これがし」とか「これもち」と呼び,小豆餡と米の粉をこね合わせた蒸し菓子である。高麗餅が鹿児島に伝わったのは,慶長3年(1598年)朝鮮の役により,豊臣秀吉の命を受けて出兵した島津義弘が,李朝の陶工たちを南原(ナモン)から捕虜として連れ帰った折に一緒に伝えたとされている。鹿児島県鹿屋市笠之原地域では,この高麗餅を「シロ」と呼び,地域の玉山宮では祭事や行事の際に高麗餅「シロ」を奉納し"餅返し"の儀式を行っていた。同様に薩摩焼窯元日置市東市来町美山でも,高麗餅を作っていたという記録が残されている。鹿児島における高麗餅の歴史・文化を探る目的で調査を行った。本研究では,鹿屋市笠之原地域玉山宮に伝わる口伝を,宮司を務めていた川元家が書き留めた記録を元に川元アキエ氏が「シロ」を再現しており,聞き取り調査を行った。さらに薩摩焼14代陶工沈壽官氏に聞き取り調査,沈壽官氏所蔵「玉山宮由来記」等を参考に高麗餅の由来や歴史的背景を探り,「シロ」との比較を試みた。韓国の伝統菓子「パッシルトッ」と鹿屋市笠之原の玉山宮に代々伝えられてきた高麗餅「シロ」を再現して比較してみると,類似性が多く美山の記録も同様であった。南原から連れてこられた陶工たちは串木野の島平に上陸後,東市来町美山に移り住み,一部は時を経て笠之原に移住している。笠之原には陶土が少なく陶芸文化は廃れたが,望郷の為に「玉山宮」を建立し,高麗餅を作って"餅返し"儀式を伝えたと推察される。
著者
下井 守
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.282-285, 2006
参考文献数
8

酸素は無色透明の分子であるが,液体状態では薄い青い色を示す。また酸素は偶数の電子を持っているにもかかわらず磁石に引き寄せられる常磁性という性質をもつ。この酸素の特異的な性質は,ルイスの電子対や原子価結合法では説明ができないが,分子軌道法と分子間の相互作用により説明される。
著者
平野 美沙 湯川 進太郎
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.93-102, 2013
被引用文献数
6 1

This study explores the impact of mindfulness meditation on anger. A meditation group (<i>N</i> = 37) attended 5-10 minutes of mindfulness meditation daily for a week. They were assessed with self-report scales measuring three aspects of anger (rumination, arousal, and lengthiness) before, just after, and four weeks after their one-week participation. Their scores were compared to a control group (<i>N</i> = 27), which was assessed at the same intervals as the meditation group. The meditation group was also asked to evaluate their current mood using the Affect Grid before and after each meditation. The results indicated that participants in the meditation group who continued meditation voluntarily after the week of their participation had decreased anger rumination scores just after and four weeks after their participation. Additionally, the pleasant score on the Affect Grid increased after meditation for almost all the participation days. These findings suggest the efficacy of mindfulness meditation on improving the tendency to ruminate about anger episodes in the medium term to long term, and also on improving mood in the short term.
著者
丁 茹 DING Ru
出版者
鹿児島大学
雑誌
地域政策科学研究 (ISSN:13490699)
巻号頁・発行日
no.13, pp.35-54, 2016-03

星新一は日本でショートショート作家としてよく知られているが,その作品は日本ばかりでなく,中国においても中小学校教育用の教科書に採用されよく知られている。中国の場合,星新一のショートショートは教科書だけでなく,小学校の練習問題集から大学の国語副読本まで幅広く採用されている。中でも,最もよく知られた星新一作品は義務教育の中学校国語教科書に採用された「おーい でてこーい」と「アフターサービス」である。本論文はまず「おーい でてこーい」と「アフターサービス」について内容を説明し,その後,中日両国それぞれの読解の異同を分析する。更に,中国における異なる読解の存在理由を時代及び教育の面から分析し,中国におけるこれら二篇のショートショートに対する教育面における独自の受容状況を論ずる。 次に,中国の国語教科書における外国作品の採用状況の発展を説明したのち,現在使用されている四つの義務教育中学校国語教科書における日本作品の採用状況を比較した。その結果,中国の中学校国語教科書において精読される作品は伝統的な日本文学者の作品ではなく,かえって日本で「大衆文学」とされている星新一のSF 作品あるいはショートショートであるという現状が明らかになった。こうした採用状況が形成された理由を教科書の側面,内容の側面,及びテクストの構造の側面から分析し,以下の結論を得た。星新一作品が中国の中学国語教科書において特に好んで採用された理由は,第一に短編小説であること,第二に普遍的なテーマがそこに存在すること,第三に文学的技法の学習に活用できることの三点である。Shinichi Hoshi is a short-short novelist, whose works have been elected to Japan's primary and secondary school textbooks. In China, his works have also been elected to both primary school Chinese exercise book and college Chinese reading book. His most well-known works are He-y, Come on Ou-t! and Afterservice, which are elected to secondary school Chinese textbooks. First of all, this thesis states the contents of He-y, Come on Ou-t! and After-service. Then it expounds the interpretations on the two works from China and Japan, including similarities and differences. At last it analyzes the reasons of different interpretations from the point of age and education, and discusses the special reception of the two works in China. Secondly, this thesis states the adoption and development of foreign works in Chinese textbook. After that I will, compare the adoption of Japanese culture works in secondary school Chinese textbooks. Also this article will demonstrate that the elected Japanese culture works in secondary school Chinese textbooks are Shinichi Hoshi's science fiction rather than traditional ones. At last, the thesis analyzes the reasons of the selection from the aspects of textbooks, contents and structures, and reaches the conclusion that Shinichi Hoshi's works are preferred in Chinese textbooks because: firstly, the novel is short; secondly, the theme is common; thirdly, it can help learn writing methods and techniques.
著者
清滝 ふみ
出版者
関西学院大学
雑誌
經濟學論究 (ISSN:02868032)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.27-46, 2003-06-25

This paper examines why the trade off between incentives and job assignment causes the Peter Principle (where people are promoted to their level of incompetence). It develops a model in which the employer cannot write long-term wage contracts. Under the incomplete contract, employees tend to under-invest in the firm-specific human capital. We show that the employer distorts the assignment in the direction of the Peter Principle to improve this hold-up problem.
著者
尾形 典男
出版者
中央公論新社
雑誌
中央公論 (ISSN:05296838)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, 1961-01