著者
芝 哲史 笹田 耕一 平木 敬
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.1-22, 2012-08-20

近年,様々なスクリプト言語処理系に対してコンパイラが開発されている.これらのコンパイラは処理系に組み込む形で実装されることが多く,新しくコンパイラを開発するために,処理系そのものの再実装や,処理系の大幅な改変が行われている.このため,スクリプト言語処理系に対する新たなコンパイラの開発には多大な労力をともなう.そこで我々は,スクリプト言語RubyのCによって実装された処理系(CRuby)の機能を活用することで,処理系に対して新たに手を加えることなく動作するコンパイラCastOffを開発した.CastOffは,実行時コンパイル,コンパイル済みコードの再利用,プロファイル実行,アノテーションのサポート,脱最適化,再コンパイルなどの機能を持つ.これらの機能を,CastOffはCRubyのCによる拡張ライブラリ(C拡張)としてCRubyにいっさいの変更を加えずに実現している.本稿ではCastOffの設計と実装を述べ,CastOffの機能をRubyのC拡張でどう実現したかを詳細に解説する.そして,CastOffのようにライブラリとしてコンパイラを実装するために,どのような機能が必要かを議論する.
著者
AARONJ.STOKES HIDEO MATSUDA AKIHIRO HASHIMOTO
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.40, no.SIG06(TOD3), pp.66-78, 1999-08-15

Complete DNA sequences (complete genomes) for an increasing number of organisms are becoming available each year for use in biological research. However genome project groups incorporate their own formats (or schemas) for representing the genome data accumulated by the projects. Such heterogeneity of their schemas prevents researchers from exchanging and comparing their data across genomes. In this paper we present a new method for exchanging and querying information on complete genomes. Since genomes and the genetic information encoded on them have a hierarchical structure they can be represented as a kind of structured document. We propose a document language called GXML for representing complete genomes. The document language based on XML can be used to exchange many kinds of genomic data and offers a high degree of extensibility. We also define a query language called GQL to operate on the genome documents. Using this language one can easily associate henes among different genomes and perform other biological analyses. We developed a prototype system based on the language. Using the system we executed several test queries. The results were consistent with those published in biological literature. The processor and memory requirements of the prototype system were accptable.
著者
米倉 裕希子
出版者
関西福祉大学社会福祉学部研究会
雑誌
関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.71-76, 2012-03

【目的】知的障害や発達障害者の地域生活の実現には,家族および地域住民の理解と支援が必要不可欠であり,地域住民の障害者に対するスティグマ是正への取り組みが必要である.本研究の目的は,知的障害や発達障害者との接触経験および障害に関する知識の伝達を含んだ地域住民を対象にしたスティグマ是正の実践プログラムの開発を目指し,試行的に実践したプログラムの評価である.【方法】対象者は,A町社会福祉協議会で開催された「当事者とともにつくるサポーター講座」の講座参加者で,知的障害や発達障害の知識や対応などについての自信度を講座の前後で比較した.【結果】分析対象者は13 名だった.発達障害の方が知的障害よりも自信度が低い傾向がみられた.また,講座後は,知識や対応,地域での生活において自信度が高まる傾向がみられたが,気持ちの理解においてはあまり変化が見られなかった.【考察】講座に参加することで,知識や対応の自信を高め,その結果,障害者との地域生活への自信につながったと考えられる.講座は,知識の伝達にとどまらず,多様かつ継続的な接触経験をする場を設け,障害当事者や家族など多様な立場の人が参加することが望ましい.また,発達障害は精神障害と同様に見えない,とらえにくい特質上,スティグマを受けやすいかもしれないので,取り組みの強化が必要である.今後は,さらに対象者を増やし,プログラムの効果を検討していくとともに,様々な場所や対象者に応用可能で,より簡便で効果のあるプログラムの検討も必要だろう.また,プログラムの効果を検証するアウトカムの開発が望まれる.
著者
末田 航 味八木 崇 暦本純一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1465-1474, 2011-04-15

モバイル機器では,位置情報を利用したアプリケーションが多用されている.GPSなどの位置測位手段から得られる緯度経度は,数値情報でありそのままでは利用者にとって直感的ではないので,それを住所や番地の表現に変換するリバースジオコーディングが必要である.しかし,現状のリバースジオコーディングでは行政的な地番に基づいて変換を行うため,モバイルアプリケーションを利用する利用者の主観的な空間意識とは必ずしも一致しない(たとえば「表参道」「ハチ公前」のような表現は地番ではないため利用不可能だった).本研究では,インターネット上の緯度経度情報付きの大量の写真とそのタグを実世界での集合知と見なし,それを集積・解析することで,人々の主観的な感覚に合致したリバースジオコーディングを自動的に行う「Social Reverse Geocoding」(SRG)を提案し,その構築の方式と,モバイルアプリケーション応用例を示す.SRGでは,統計学的手法であるカーネル密度推定法とSVMを用いることで,都市生活者としての利用者の空間意識により近い空間語とその範囲を自動推定する一連の方式を提案している.そして各種モバイル使用下での位置情報表現がより自然になり,また位置情報つき写真への自動タグレコメンデーションや,ライフログのサマライズが可能なアプリケーションを提案実装した.また,提案手法の都市計画やマーケティング分野への有効性を検証するために,従来手法による認知地図との比較,今後解決すべき問題と,関連分野への応用について議論する.
著者
加藤正恭 小川秀人
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.249-251, 2011-03-02

大規模組込みソフトウェア開発では,機能追加や変更による影響範囲特定が課題である。従来の影響分析では,まず変更点ごとに影響が波及しそうな機能に目安をつけて絞込み,そのあとで実際にどんな影響があるかを人手で分析していた。しかし,大規模なソフトウェアの場合は人手による影響分析では工数がかかる。本研究では,ソースコードから変数と関数の依存関係に関する情報を自動的に抽出し表形式(CRUDマトリクス)で可視化する手法を開発した。CRUDマトリクスを用いてレビューを行なうことにより,影響分析工数を削減することができるようになった。
著者
森 奈実子 久住 憲嗣 中西 恒夫 福田 晃
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2010-MBL-53, no.12, pp.1-8, 2010-03-19

ドメイン特化型開発では,特定の市場領域に属するソフトウェアを効率的に開発できる DSL (Domain-Specific Language) を定義し,開発者はその言語を用いてソフトウェアを開発する.しかし,ドメイン特化型開発では特有のテストプロセスは定義されていない.そこで,本稿では DSL の分類に応じたテストケース自動生成手法を援用したテストプロセスを提案する.ケーススタディとして小規模な DSL に提案手法を適用し,その結果を基に従来手法との比較を行った.
著者
鴨志田 良和
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2012-HPC-135, no.20, pp.1-6, 2012-07-25

本稿はクロスコンパイルされた実行ファイルとそうでない実行ファイルを判定する機構と,execve システムコールをフックし,クロスコンパイルされた実行ファイルを実行しようとすると,自動的にリモートホストへ実行を転送する機構を有する TLDT というツールを提案する.TLDT を利用することにより,ローカルホストから通常の実行ファイルとリモートホスト向けの実行ファイルが透過的に実行可能になるため,ATLAS を始めとするインストール時自動チューニングを行うソフトウェアなど,クロスコンパイル環境でのビルドが困難なソフトウェアを容易にビルドできるようになる.
著者
勝連城二 永久 龍彦 山本 崇夫 長岡 恭弘 米澤 浩和 冨田 泰弘 渡里 滋 國信 茂郎
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.51(1990-ARC-062), pp.1-6, 1990-06-22

RISC型マイクロプロセッサ(105)は、SPARCアーキテクチャを採用した64ビットMPUでその高機能化及び高集積化を実現することにより1チップ内のトランジスタ数は約100万個に達する。その内部は、整数演算、浮動小数点演算、命令キャッシュ、データキャッシュ、メモリ管理及びバスコントロールの6個の機能モジュールから構成され、40MHzの動作周波数で、40MIPS/20MFLOPSのピーク性能を達成している。このような大規模なチップの開発において我々は、テスト容易化設計によるテスティングの効率化や高速な内部信号のタイミングの検益のための新たな故障解析手法を採用し、さらにMPUのテス卜・デバッグをより効率的にかつ高度に解析可能な環境としてEBテスタを中心とするテスト・デバッグシステムを構築した。
著者
川端 秀明 磯原 隆将 竹森 敬佑 窪田 歩 可児 潤也 上松 晴信 西垣 正勝
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2011 論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.3, pp.161-166, 2011-10-12

Android OSを搭載した端末では,アプリケーション(以下,アプリ)をインストールする際に,アプリが利用する機能や情報をパーミッションという単位でユーザに通知して,インストールの可否を仰いでいる.しかしながら,一度ユーザがアプリのパーミッションを許可してしまうと,そのアプリがパーミッションをどのように利用しているのか把握することができず,制御が効かない問題がある.そこで本稿では,実行中のアプリに対して,利用する機能や情報へのアクセスをリアルタイムで制御するフレームワークを提案する.危険を伴うパーミッションに付随するAPIに割り込み処理を実装し,パフォーマンス評価を行い有効性を示す.
著者
湯淺 太一 奥乃 博 尾形 哲也
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.1191-1194, 2011-08-15
著者
佐々木 宣介
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.6, pp.112-115, 2011-10-28

本研究の大きな目標は、世界の将棋類においてルールの変遷が各変種に対して与える影響を探ることである。計算機による自動プレイを用いて、現代将棋とは異なる系統の大きな盤と多数の駒を持つ中将棋について評価を行った。中将棋には現代将棋にはないいくつかの特別なルールが存在するため、それらのルールの影響を評価した結果を報告する。
著者
三島 健 櫻井 英俊 吉元 昭裕 野下浩平
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.4007-4015, 2008-12-15

ゲームHexでは,具体的な必勝手順を求めるために,様々な数学的技法が提案されている.8×8や9×9など大きい盤面に対する必勝手順を導くためには,これらの技法に基づいたシステムで人間とコンピュータの共同作業ができるものを実装する必要がある.本稿では,与えられた局面に対してユニオン連結性を判定するプログラムAとBを提示する.プログラムAは局面表を用いたAND-OR探索に基づくものであり,Hex特有の着手選択アルゴリズムにより強化した.プログラムBは,さらに仮想準連結などを組み込んで改良したものである.これらのプログラムは,実行時間と探索節点について評価する.ベンチマーク問題として,Noshitaによる7×7と8×8の必勝手順に現れる約40種類の難しい問題を選んだ.我々の実験結果によると,これらの局面の正しさは,非常に速く検証できた.このことは,我々のプログラムが実用に使えるということを意味する.着手選択(順序付けと先行排除)は,人間の熟練者と同程度に正確であると評価できる.本稿の実験結果をみると,我々のプログラムは,8×8以上の必勝手順の検証・発見のための対話システムを開発する際に最も基本的な道具として使えることが分かる.
著者
中村 陽介 三上 浩司 渡辺 大地 大圖 衛玄 伊藤 彰教 川島 基展 竹内 良太
雑誌
研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2012-CG-146, no.6, pp.1-8, 2012-01-31

近年,スマートフォン向けアプリやソーシャルゲーム等新しい市場に向けたゲームの普及により,その開発スタイルも市場に合わせ多様化する傾向にある.特に,短期間でのゲーム開発は,従来の家庭用ゲーム機向けの大規模な開発とは必要なノウハウが大きく異なっている.この様な新しい開発スタイルにも対応できる人材を育成するため,東京工科大学と日本工学院が合同で行った,短期開発による開発スキルとコミュニケーション能力の向上を重視した新しいスタイルの教育カリキュラムについて,その結果をアンケートと評価データを元に報告を行う.
著者
鈴木 茂哉 石原 知洋 ビルマニング 村井 純
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.385-402, 2012-01-15

携帯電話のような携帯デバイスは,インターネットへ接続する機能を持つが,デバイス間で直接通信するネットワーク機能をあわせて持つものもある.本論文ではデバイス間の直接通信によりその場で構成されるネットワーク部分をアドホックネットワークと呼ぶ.アドホックネットワークは,ファイル交換等に有用と考えられるが,アクセス制御のための認証操作が煩雑なため活用されていない.認証操作が煩雑なのは,アドホックネットワーク環境で相手を認証する際,信頼できる第三者を仮定できず,パス・キーの手入力等主たる通信路以外の通信路(アウトオブバンド通信)に頼る必要があるからである.本論文では,アドホックネットワークにおけるノード間認証方式として,アウトオブバンド通信に頼らない方式を提案する.提案方式では,本方式参加ノードそれぞれが,ノード自身の識別のために必要な公開鍵(NK)と公開鍵に至る信頼の連鎖(NKCT)を事前に用意する.検証者は,立証者と自身の持つNKCT双方を組み合わせることで,必要な信頼の連鎖を構成できる.信頼の連鎖の確保により,認証が可能となる.また,信頼の連鎖の確保にDNSSECリソースレコードを用い,運用性を高めた.本研究の評価では,検証ライブラリとともに,簡単なスマートフォンアプリケーションと,サーバ用認証モジュールを実装し,実験により本方式の効率性と有効性を示した.
著者
中西 健一 高汐 一紀 徳田 英幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.2260-2268, 2005-09-15

未知のサービスが我々の位置に即したサービスを自律的に提供するユビキタスコンピューティング環境の実現へ向け,近年,多様なロケーションアウェアサービスが実用化,商用化されている.しかし一方で,公開した位置情報を不当に扱われることに対する危機感も増加しており,プライバシに対する関心が高まっている.本研究では,公開した位置情報を悪用された場合に我々が被る損害を抑えることを目的としており,公開する位置情報にユーザの望む匿名性を付加するサービスフレームワークを提案する.本フレームワークは,ユーザの望む程度の匿名性を満たすよう,公開する位置情報の粒度を動的に変更する.設定された匿名性が高いほど,サービスによる位置情報の悪用は困難となるため,ユーザは自身の望む程度でプライバシを保護できる.結果,従来は「位置情報を公開するか否か」の二極でしか選択肢を持たなかったユーザが,「この程度の匿名性で位置情報を公開する」といった中間解を選択できるようになる.
著者
堀口 悟史 井垣 宏 井上 亮文 山田 誠 星 徹 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.61-71, 2012-01-15

HTML講義資料を用いるプログラミング講義では受講生が講義資料に自由にアクセスできるため,講師の意図した順序やタイミングで資料を閲覧させることが困難である.講師の意図したとおりに資料を閲覧させることができなければ,結果として受講生の講義内容に対する理解が不足してしまう可能性がある.本稿では,受講生個別の講義資料へのアクセス状況を閲覧ログとして収集・分析する授業進捗管理システムを提案する.授業進捗管理システムは閲覧ログに基づいて受講生がどのような状態にあるかを分析し,講師に提示する.実際にプログラミング講義において我々のシステムを利用したところ,遅れているのべ73%の受講生を検出できることが確認できた.
著者
坂根 広史 伊豆 哲也 猪俣 敦夫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.182-186, 2012-01-15