著者
池上 貞子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 = JOURNAL OF ATOMI UNIVERSITY FACULTY OF LITERATURE (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
no.36, pp.A1-A12, 2003-03

本論は,2001年度および2002年度跡見学園女子大学特別研究助成金を受けて,倉石あつ子助教授との共同研究「『女性とモノ』についての考察1,2」を行った成果のひとつである。われわれは上海をはじめとする華南地方の都市での資料収集と,そこでの絹に関連した文化施設の見学,および浙江省の農村での養蚕の現況についての調査などを行なった。養蚕に関する研究と農村の現況報告については倉石論文で扱い,本論では主として製品としての絹と中国近現代文学との関連に視点をあてて論じた。絹はその主な製品が衣類であることから,中国の多くの文学作品でも言及されるところであるが,とくに張愛玲(1920-95)の作品のなかでは,それらが技法上の効果を高めるものとして,多用されている。本論ではまず,彼女の代表作である「金鎖記」1944のなかの,絹の諸様相を描写している箇所を拾い上げ,その意味するところを分析する。また張愛玲は衣服にこだわったことでも知られ,小説での言及はもとより,エッセイでも正面から論じている。とりわけ初期の英文エッセイChinese Life and Fashionsと,大枠はそれに取りながら中国語で論じた「更衣記」は,みごとな中国文化史論になっていて,単なる"恋衣"(Clothes fetishism)を超えている。本論では,その背景にある,張愛玲が香港大学時代に影響を受けた可能性のある許地山(1893-1941)の著述や活動についても考察し,この影響関係から開けてくる張愛玲の中国近現代文学史への位置づけの展望についても論じる。
著者
隅田 大勇 竹川 高志
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2022-MPS-138, no.23, pp.1-6, 2022-06-20

機械学習モデルの精度を向上させるためには,使用するモデルの特徴,およびデータのドメイン知識を踏まえたうえで特徴量エンジニアリングを行うことが重要である.機械学習モデルを構築する者がデータのドメイン知識を深く理解していない場合は,関連する知見の調査が必要である.そもそも得られたデータの変数間の因果関係が不明である場合は,詳細な探索的データ分析を行う必要がある.本研究ではデータからそのデータの変数間の因果グラフを推定する統計的因果探索の手法である LiNGAM を用いた特徴量選択と交互作用項の生成を組み合わせることによって,予測モデルの精度を向上させることができた.
著者
吉井 ゆかり 徳山 喜政 今野晃市 曽根 順治
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.18(2006-CG-122), pp.7-12, 2006-02-20

CGアニメーションでは,人物や動物などのキャラクターの形状モデルが重要である. これらの形状を複数枚の Bezier,B-spline や NURBS などのパラメトリック曲面で表現する場合,曲面同士を滑らかに連続するのは困難であり,複雑な処理を必要とする.この問題を解決するために,近年細分割曲面(Subdivision Surfaces)がよく利用されている.しかし,効率的でデザイナーの意図するようなモデリングが依然として大きな課題である.一方,曲線メッシュを Gregory パッチで内挿することで滑らかな曲面を生成するモデリング手法はよく知られている.この方法は,曲線メッシュを変形しても曲面同士の G1 連続性が保たれるという大きなメリットがある.本研究では,ポリゴンメッシュと同一位相をもつ Catmull-Clark 細分割曲面の曲線メッシュを生成し,曲線メッシュを Gregory パッチで内挿するようなモデリング手法を提案する.本手法により生成した曲線メッシュの曲面形状と細分割曲面の形状が非常によく似ている.また,直観性と局所変形性においては曲線メッシュの曲面が細分割曲面より優れているため,自由曲面形状のモデリングにおいては,ポリゴンで大まかな形状を生成したあと,曲線メッシュを変形して最終形状を生成する手法が有用である.
著者
ラフマニノフ セルゲイ 土田 定克 Sergei Rachmaninov Sadakatsu Tsuchida
雑誌
尚絅学院大学紀要 = Bulletin of Shokei Gakuin University (ISSN:2433507X)
巻号頁・発行日
no.83, pp.71-84, 2022-07-28

新しい作品に取りかかるときは、構想を捉えることが先決である。弾き手に才能があれば正しく作品を捉えて伝えることができる。ロシアでは、音楽小学校のうちからテクニックを叩きこむ。ピアニストを目指す者はテクニックを身につけ、肝心要のフレーズのうたい方を学び、何よりも意識の中で真に音楽を感じることができなければならない。この点はテンポを決める際にも同じことである。そして演奏家としての個性を保ちつつも曲の独自性を追究し、ペダルの妙技を極め、因習に陥らないよう気をつけながら真に音楽を理解できるようにならなければならない。そういう真の音楽理解に基づいて聴衆を啓蒙するという使命を持ち、生きた閃きのある演奏を目指すことだ。生きた閃きとは、つまり霊感である。霊感からくる表現はたましいから来るものであって、楽譜に書きこめるものではない。熟練してたましいで奏でているとき、これぞ芸術の使命だという音楽的自覚に目覚めることだろう。
著者
鴛海 太一 福田 直樹
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.477-478, 2017-03-16

本研究では,格闘ゲームにおける各操作キャラクターへの特徴付けを保ちながら,その操作に習熟したプレイヤーに対してもゲームバランスが適切になるように調整可能とする機構の試作について述べる.本研究では,Memetic Algorithmを用いたゲームバランス調整機構に基づいて半自動パラメータチューニングを可能とし,習熟したプレイヤーの動作を最適化中に学習により自動習得させることにより,習熟したプレイヤーがプレイした場合にもバランス調整が崩れないようにする機構の実現を目指す.
著者
村松 由起子 ムラマツ ユキコ Yukiko Muramatsu
雑誌
雲雀野 = The Lark Hill
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-10, 2007-03-31

中国語の受身表現には受身マーカーである「被」等を用いた受身文と,受身マーカーを用いない「意味上の受身文」がある。この「意味上の受身文」は受身の意味を含んでいながら,外見は能動文と変わらないため,中国人日本語学習者が日本語の受身表現を間違える要因の一つとなっている。本稿では,「意味上の受身文」と日本語受身文の対応関係を日本語の表現形式によって<1>他動詞を用いた形式,<2>自動詞を用いた形式,<3>主題化を用いた形式の3つに分類し,このうち<1>他動詞を用いた形式が,中国人日本語学習者にとって特に誤用を生じやすい形式であることを明らかにした。