著者
稲子 翔太 中野 裕司 杉谷 賢一 久保田 真一郎
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2020-CE-154, no.9, pp.1-8, 2020-03-07

我々はブラウザの拡張機能と記録サーバを組み合わせ,学習時に閲覧した Web ページから得た頻出語等を学習履歴として記録するシステムを開発してきた.しかし,集めた頻出単語等は,ダッシュボード上にキーワードとして羅列されるだけにとどまっており,自己学習の振り返りに効果的な可視化ではなかった.自己学習の振り返りにおける効果的な可視化として,知識の変化を自己認識できることが望ましいと考え,本研究ではブラウザの拡張機能により収集した Web ページ内の文章を分析し,Wikipedia の文章をもとにした共起グラフを表示し,キーワード同士の関連性や知識の変化を表現することで,学習者にとって効果的な学習履歴の可視化を目指した.
著者
梶並 知記 長谷川 和也
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.17-27, 2018-02-28

本稿では,対戦型格闘ゲームの初心者観戦者を対象とした,試合の観戦支援システムを提案する.対戦型格闘ゲームは,プレイヤが格闘家を模したキャラクタを操作し,対戦相手のプレイヤが操作するキャラクタと闘うゲームであり,近年国際的な競技会も開催されているデジタルゲーム競技(e-Sports)のジャンルの一種である.従来研究で,キャラクタの相対位置や,ゲームフィールド上の絶対位置がプレイヤの意思決定に及ぼす影響について考察されている.本稿ではゲームキャラクタの相対位置や絶対位置に基づき,対戦型格闘ゲームのプレイ中に現れる典型的な3つの状況である,近距離状況,遠距離状況,画面端状況を定義し,状況に応じた文字アノテーションと図形アノテーションを提示する観戦支援システムを構築する.文字アノテーションは,プレイヤにとっての各状況の意味を端的に観戦者に示しつつ,攻防が行われそうなタイミングを観戦者に伝達する.図形アノテーションは,矩形や矢印といった基本図形で,攻防が行われそうな場所を観戦者に伝達する.対戦型格闘ゲームにあまり詳しくない初心者観戦者を被験者とした評価実験を行い,提案システムの有効性を検証する.実験の結果,提案システムを用いた被験者が,試合中の攻防が行われるタイミングや場所をより容易に理解・予測できるようになることを示す.
著者
石井 雄飛 栗原 徹
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.259-260, 2017-03-16

近年、全天球カメラがより一般的なものとして普及している。その全天球カメラを用いて撮影された全天球画像において、画像の保存形式として一般的に用いられる手法は円筒展開である。円筒展開された平面画像では全天球カメラの外部パラメータによって特徴的な歪みが発生し、従来の画像処理技術を用いた物体認識を正確に行うことは難しい。従来、加速度センサを用いた回転補正が用いられているが、十分とは言えない。本研究では、垂直線を検出することで地面に対して水平に撮影された画像と同等の画像に補正する。垂直線を検出するため撮影環境に依存してしまうが、十分な量の垂直線を含む画像であれば十分な補正が可能であると言える。
著者
河内山 真理 有本 純
出版者
関西国際大学教育総合研究所
雑誌
教育総合研究叢書 = Research Institute for Education, Kansai University of International Studies (ISSN:18829937)
巻号頁・発行日
no.15, pp.123-133, 2022-03-31

本研究では,発音を表記する方法について,英和辞典や発音辞典,英英辞典や音声学の専門書,中学校検定教科書等を,母音を中心に,比較・分析し,どのような表記方法を用いているか明らかにした。日本・イギリス・アメリカの表記方法の差とそれによる影響について,英語音声学・英語教育・学習者の立場から考察を行った。また,表記の不統一は指導者にも学習者にも混乱を生み出す。高校までは統一表記を導入し,代表的な英音と米音等の発音については,電子辞書の音声に格納するのが望ましい。学習者に対しては教育の現場での適切な指導や,特に小学校教育における正しい音声と文字・綴りを結びつける指導が望まれる。
著者
大野 順子
雑誌
摂南大学教育学研究 = Bulletin of Educational Research of Setsunan University (ISSN:13498118)
巻号頁・発行日
no.18, pp.11-24, 2022-03

本稿は、第二次世界大戦後、軍国主義から民主主義へ社会状況が変化する中で、アメリカより「経験主義」が教育課程に導入された状況を概観し、さらに、それが1958年の教育課程改訂において排除された教育課程改訂のプロセスについて、改めて整理しなおし、検討したものである。特に、「経験主義」が当時の教育課程から排除された理由には、その無計画性や系統的でないこと。内容が個人的であり、人間性重視で普遍的知識の学習を軽視していることなどが指摘され、「はいまわる経験主義」として批判された。しかしながら、実は、経験主義的な学びは知識軽視の学びではなく、むしろ知識を経験学習に加えていくことでより子どもたちの学びが深まること。そして、個人的な学びと言われがちではあるが、個人の経験を通して導き出される普遍的知識が存在すること。さらには、そもそも「経験」をともなわない学びは真の学びとならないという指摘があることから、「経験と知識をつないだ学び」が本来教育課程には重要であり、「経験主義」こそ学力と人間性の両者をつなぐものとなることを指摘した。また、こうした学習理論は、近年の教育課程改訂においても「アクティブラーニング」の導入や「社会に開かれた教育課程」などのように注目されている点についても述べた。
著者
石倉 忠夫 廣光 佑哉 北島 孟 Tadao Ishikura Yuya Hiromitsu Takeshi Kitajima
出版者
同志社大学スポーツ健康科学会
雑誌
同志社スポーツ健康科学 = Doshisha Journal of Health & Sports Science (ISSN:18834132)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-9, 2022-06-20

本研究は成功または失敗時における快または不快感情を喚起するメッセージがゴルフのパッティング技能の学習と感情に及ぼす影響について検討した。分析の結果から、30試行のゴルフパッティングの練習における目標枠内にボールが停止した場合に快感情メッセージを被験者に与える条件と目標枠外にボールが停止した場合に不快感情メッセージを被験者に与える条件はゴルフのパッティング技能の学習に不利であったと推察された.
著者
早川 聞多
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.125-159, 1997-09-30

本稿は鈴木春信作『今様妻鑑』の絵解きを通して、春信の見立絵の特色を論じようとするものである。『今様妻鑑』は上中下三冊からなる艶本で、各巻は春信作の春画十一図と作者未詳の艶笑小話二話から成る。本稿で取り上げるのは主に春画であるが、各図は平安時代に成つた『和漢朗詠集』の漢詩句を頭書し、それを基に春信独特の見立てを春画によつて試みたものである。その絵解きを通して、「外面の極端な相違と内面の意外な共鳴」といふ春信独特の見立絵の構造を明らかにする。