著者
藤井 仁奈
出版者
文教大学
雑誌
言語文化研究科紀要 = Bulletin of The Bunkyo University Graduate School of Language and Culture (ISSN:21892709)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.69-92, 2016-03-16

In the famous novel called “Bruges-la-Morte” by Georges Rodenbach, the name of Ophelia is used for the depiction of the city of Bruges. It is described as a dead woman, just like the wife of the main character Hugues. Ophelia, the dead wife and the city Bruges are all described as dead women. On the other hand, Hugues is alive of course, and the contrast is quite clear.◆However, in the essay called “Bruges”,which was written before the novel, we cannot regard Ophelia as the same dead woman in the novel. In the essay, Rodenbach describes Bruges as the dethroned queen who is dying, but not completely dead. When the narrator is surrounded by silence, he imagines that he can hear the voices of the things around him, which say he cannot live any longer. A visage of Ophelia appears in this imagination. She is the person whose soul is salvaged by the water from her agony.◆These descriptions of Ophelia are in contrast with each other. In the novel, Hugues realizes he is alive in the dead city when he thinks of his dead wife just as Ophelia. In the essay, the narrator perceives Ophelia’s soul in the dying city when he has a consciousness of the order of the things, which means all things are going to be dead and mortal. Both of them are described with the scenery of the water of the canals, but they are quite different.◆In this paper, I want to analyze the essay in detail and compare it with the description of Ophelia of the novel.
著者
前田 敦司 中西 正和
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.574-583, 1997-03-15

本論文では,幅優先で式の評価を行う新たな計算機アーキテクチャであるキューマシンを提案し,その実行モデルを用いて関数型言語を特殊なハードウェアのサポートのない密結合並列計算機上で効率良く自動並列実行する言語処理系の構築法を述べる.関数型言語においては複数の関数呼び出しを並列に処理することが可能であるが,すべての関数呼び出しの実行が終了するまで待って実行を再開するための同期オーバヘッドが問題となる.また,通常スタックに保持する局所的な実行の文脈をヒープ上に保持する必要があるため,メモリ管理のオーバヘッドも増大する.本論文では,キューマシンの実行モデルを模倣してスタックをキューに置き換えることにより上記のオーバヘッドを大幅に削減することができ,既存の計算機上で並列関数呼び出しが効率良く実現できることを示す.この手法を用いたプロトタイプ言語処理系の実行時間を密結合並列計算機で測定した結果,逐次実行ではCなどの他の(逐次)言語処理系に劣るものの,2CPU以上では他の処理系を上回り,高い台数効果が得られている.
著者
李 佩
出版者
中央大学政策文化総合研究所
雑誌
中央大学政策文化総合研究所年報 (ISSN:13442902)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.229-251, 2019-09-10

By spelling out what to do when Shibusawa Eiichi receive General Grant in 1879, to close to the prototype of Shibusawa Eiichi’s national diplomacy. Bye examining the influence of thought in youth, to characterize the archetype of Shibusawa Eiichi’s national diplomacy.
著者
末森 明夫 斉藤 くるみ
出版者
日本社会事業大学
雑誌
日本社会事業大学研究紀要 (ISSN:0916765X)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.109-125, 2022-03

This paper describes a morphonological analysis of compound signsconnecting with fingerspelling-letters in Japanese Sign Language. The criticalanalysis revealed that fingerspelling–letters connected with signs indicatedfunctions like phonetic complements, which are observed in the hieroglyphs orthe Mayan scripts. Interesetingly, the patterns of fingerspelling-letters are alsosimilar to sutegana observed in written Japanese in the early modern ages. Theanalysis of mechanisms of compound signs connecting with fingerspelling-lettersuncovered that an initial Kana of a Japanese word corresponded to a certain signis connected before the sign as the phonetic complement, whereas a terminalKana is connected after the sign, suggesting the bi-linearity of fingerspellingletters as the phonetic complement, which is considered to derive from writtenJapanese. The initial fingerspelling-letter connected before a sign tends tobe subsequently converted to a handshape of the sign, however, the terminalfingerspelling-letter is not converted to the handshape of the sign, suggestingthat the bi-linearity of the initial and terminal fingerspelling-letters as thephonetic complement differs each other.本稿では日本手話語彙にみる指文字を含む複合語群の音韻形態論的分析をおこない、複合語群に含まれる指文字が聖刻文字やマヤ文字にみる音声補字に該当する機能を持つことを明らかにした。またこの形式は近世書記日本語にみる捨て仮名ともよく似ていることが窺われた。指文字を含む複合語群の造語機序については、手話単語に対応づけられた日本語の語頭に位置する仮名は手話単語の前につなげられるのに対し、日本語の語尾に位置する仮名は手話単語の後につなげられるという顕著な傾向があり、書記日本語にみる線条性が指文字を含む複合語群にも存在することが窺われた。尤も手話単語の前につなげられた指文字が、手話単語と指文字の空間的共起ないし手話単語の構成要素[手形]への変換を示す傾向を見せたのに対し、手話単語の後につなげられた指文字にはそのような傾向はみられなかった。
著者
小暮 修三 Shuzo Kogure
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 (ISSN:21890951)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.6-19, 2014-02-28

戦前期の写真絵葉書は、現在のような地方の土産物に収まることなく、当時の新聞や雑誌以上に優れた視覚メディアとして機能していた。事実、その解像度は極めて高く、他の如何なる紙媒体よりも高画質の写真を人々に提供していたのである。それはすなわち、絵葉書が、そこに写し込まれた風景や風俗、被写体に対する見る者の意識のあり方を固定化していったことを意味している。このようなメディアの被写体として、海女は頻繁に写され続けていた。絵葉書の〈海女〉は、それを見る者の視覚的経験に対して、どのような影響をもたらしたのか?そして、そのような影響は、時代によって、どのように変遷していったのか?本稿では、公的機関では最多種/数と思われる『甦る戦前の〈海女〉:戦前海女絵葉書集』の分析に基づき、海女の写し出された時代状況や社会状況を踏まえつつ、見る者に対する影響について考察を行ってゆきたい。それは取りも直さず、明治期以降の国民国家化の過程における〈郷土=地方〉の創出から、資本主義の拡大に伴う〈地方〉の観光商品化、そして軍靴の響きを伴う国家主義化に至る時代的・社会的変遷について、海女への〈眼差し〉を通して追ってゆくことでもある。
著者
井出 文紀 Fuminori Ide
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.537-555, 2021-09-17

京都市内に数多く残る仁丹のロゴ入りの町名表示板は、設置から既に100年近くが経過しているにもかかわらず、いまだに鮮明な色合いを失うことなく、道案内役を果たし続けている。さらに、設置当時の京都の街並みとその後の都市開発の様子を現在に伝えてくれる生き証人として、また、戦前期の森下仁丹の広告戦略を検討する上での貴重な資料として、極めて重要な存在である。本稿では、筆者が参加する「京都仁丹樂會」の活動と、町名表示板の設置経緯、設置状況を簡単に紹介するとともに、仁丹の町名表示板を題材とした「まち歩き」活動についても触れ、その意義と保存の必要性を指摘した。
著者
武田 恵史 西田 晃 小柳 義夫
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.51(2002-HPC-090), pp.13-18, 2002-05-27

近年 広域に分散された世界中の情報資源を統一的に扱う Grid と呼ばれる技術が盛んに研究され 開発が進められている. 本研究では LAN 上のPC クラスタを Grid に見立て グローバルコンピューティングのソフトウェアインフラストラクチャに必要とされる様々な要素技術を提供するツール群である Globus toolkit をクラスタ上に実装した. 実験ではGlobus を用いて実装された MPICH の拡張である MPICH-G2 を使用してLinpack ベンチマークテストを行い Grid 上での並列計算における性能を Globus上に実装され資源管理機能を備えた MPICH-G2 と通常の MPICH の複数のネットワーク上での比較により評価した. 実験から 十分な通信帯域幅のある環境では 両者はほぼ同等な性能を示すことが分かった.
著者
岡田 将太朗 奥野 拓
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:21888809)
巻号頁・発行日
vol.2021-IS-158, no.5, pp.1-4, 2021-11-27

本研究の目的は,マインドフルネスを用いてスマートフォン依存症を容易に改善できる仕組みを実現することである.そのために,マインドフルネス認知療法を支援するスマートフォンアプリを構築する.本研究ではマインドフルネス認知療法の一種であるマインドを用いる.マインドは,出来事や思考に対する自身の感情を擬人化して扱う手法である.自身の感情を擬人化し客観的に観察することにより,その感情を引き起こした出来事や思考に対するストレスを軽減させるという効果がある.本研究にて構築したアプリでは事前にユーザに,依存しているアプリとそのアプリを制限したい時間帯を設定してもらう.その後,設定した時間帯に依存アプリを開いた場合にのみ,本アプリが自動的に起動する.ユーザはその際に浮かんできた思考や出来事を記入する.記入後,それらの思考や出来事に対する感情が推定されるため,その感情を観察することでマインドを行う.しかしながら,先行研究においてスマートフォン依存症者にスマートフォンを通じてマインドフルネス認知療法を行うことや,推定された感情を観察してマインドを行うことの有用性については検証されていないため,本研究では脳波や構築したアプリから取得するデータを用いて,それらの有用性についても検証を行う.
著者
原田 康徳
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1-7, 2022-10-21

プログラミング言語ビスケットが誕生して19年になる.その間,単なるプログラミング言語の開発を越えて,ビスケットによる教材,ビスケットの指導法の開発にも関わってきた.ビスケットの指導者育成を目指した「ビスケットファシリテータ講習」は100回を超え,修了者も1,000名に達した.無償で提供しているアプリも,GIGAスクール構想で配布されたタブレットに採用された影響もありiOSだけで260万ダウンロードに達し,非常に多くの小学校に採用されている.本稿ではこの19年間を振り返って,どのようにビスケットとその周辺が変わってきたのか,そしてこれからどの方向に進むべきなのかを述べる.
著者
赤澤 紀子 赤池 英夫 柴田 雄登 山根 一朗 角田 博保 中山 泰一
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.19-34, 2022-10-21

2022年度より,高等学校の「共通教科情報科」は,必履修科目の「情報I」と選択科目の「情報Ⅱ」が設置され,すべての高校生が,プログラミングなどを含む情報の科学的な理解を主とした「情報I」を履修することになる.また,2025年度入試から「情報I」が大学入学共通テストで出題されることが正式に決定された.これにより,各大学の個別入試においても入試科目に「情報」が設置される可能性が増してきた.大学入学試験として情報を出題するためには,大学など出題する側と,受験する高等学校側で,出題内容や範囲,用語などの共通な知識体系が必要となる.しかし現在はまだ,「情報科」の知識体系は明確に定められていない.そこで,本研究では,知識体系の明確化を目標として,「情報I」の教科書で用いられる用語から知識体系に関する考察を行う.
著者
井手 康太 堀江 亮太
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.221-226, 2021-08-23

近年,VR空間で開催されるイベントが注目を集めている.我々はジャグリングによるステージパフォーマンスに着目し,その一種であるディアボロの演技をVR空間で行うシステムを開発した.このシステムを用いたVR空間でのディアボロの演技1種類と,現実空間でのディアボロの演技2種類を,それぞれ平面動画として視聴させる主観評価実験を行ったところ,視聴者による演技の評価基準はVR空間で演じられた動画と現実空間で演じられた動画の間で変わらないという傾向が示唆された.
著者
和久井 健司 岡部 慎也 小松 憲治 丹羽 克昌 藤垣 順三 Kenji Wakui Okabe Shinya Komatsu Kenji Niwa Katsumasa Fujigaki Junzo
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.261-266,

RAPD および ISSR 法により,シクラメン(Cyclamen)属内における種および個体間の遺伝的変異を評価し,類縁関係を推定した。シクラメン属野生種(C. persicum, C. coum, C.purpurascens, C. africanum, C. hederifolium, C. graecum およびC. rohlfsianum)および園芸品種(C. persicum cv.カールソ,ネオゴールデンガール)の計 7種 24個体について,17種のランダムプライマーおよび 11種の ISSR プライマーを用いた多型解析の結果,453 のバンドが検出され,全てのバンドで多型がみられた。そのうち,55 のバンドは種特異的であった。多型データに基づく AMOVA 解析の結果,遺伝的変異は種内と比べて種間で大きく,種の分化が明確に示された。同データによる数量化理論III類より 7種は 4つのグループに分けられた。そこで,野生種のみのデータを用いた UPGMA 法によるクラスター解析を行った結果,7種は 3つのクラスターを構成し,シクラメン属内の亜属を Psilanthum, Gryophoebe, Cyclamen および Eucosme とする,既報の分類仮説と一致した。本研究は,RAPD および ISSR マーカーを用いてシクラメン属内の類縁関係を示した最初の報告であり,これらマーカーによるシクラメン種の識別の可能性を示唆した。