著者
塩崎 美穂
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-9, 2002

The modern Japanese public day nurseries were formed for the lower strata of society after Kome-Sodo (Popular uprising against increasing the price of rice, 1918) as one of social services. In preceding historical studies on the early childhood care and education, the formation of the public day nurseries is considered to be "enlightenment" by governing classes. Most certainly, the nursery services aimed to support workings of the proletariat and reform poor families as the enlightenment, but in actual practices, nurses groped for "education" which deal with lives of the children who suffered extreme poverty (they were different from children of Kindergartens which the upper-middle classes used). Besides, the nursery services were great help to the parents in poor, and saved lives of children. The public nursery services had big significance of existence.
著者
小山 真理
出版者
文化学園大学
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 = Journal of Bunka Gakuen University and Bunka Gakuen Junior College (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.69-79, 2017-01

筆者は2016年度より文化学園大学短期大学部において、初めて「文章表現演習」を担当した。これまで留学生を対象とした「日本語」の授業を主に担当してきたため、日本人学生のみの授業はほとんどなく、誤用も留学生とは違うことに気づいた。そこで本稿では、その誤用を洗い出し、日本人短大生の文章表現に関する諸問題を整理して概観した。誤用では「話し言葉」が最も多く、[話すように書く」傾向がはっきりと現れた。それ以外にも、読点が少ないこと、漢字表記や語彙の選択ミスなども目立ち、漢字力や語彙力の不足が明らかになった。しかし、学生へのアンケート調査では、漢字テストを必要だと感じておらず、危機意識が希薄であることがわかった。また、本授業では、学生が作文嫌いにならぬよう、自己理解・他者理解を織り交ぜた教材を作成し、添削を操り返してきた。アンケートでは、全体の9割弱が楽しんで受講でき、全員が少しでも上達したと答え、当初の目的は達成できた。だが、陥りやすい誤用をどう是正するか、語彙力をどうつけさせるかなど課題は多い。今回得た分析結果や問題点を、今後の授業計画・教材開発、指導の一助としたい。
著者
樋口 雄三
出版者
International Society of Life Information Science
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.387-390, 2003-09-01 (Released:2019-05-03)
参考文献数
9

最近、ようやく気功が広く知られるようになり、大学病院でも気功を取り入れて治療をしているところが現れている。気功には多くの功法があるが、自分で練功した場合は、アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールなどが40分間の錬功直後に減少し、ナチュラルキラー(NK)細胞活性、インターロイキン(IL)-2などが増加した。これらのことから交感神経活動水準が低下し、ストレスが緩解し、免疫能が向上することが明らかとなった。また、外気治療においては患者のNK細胞活性は治療直後にやや減少し、40分後に増加した。遠隔治療においても同様な傾向が認められた。著明な効果を現す気功師の多くは、霊的エネルギーを利用しており、今後、スピリチュアルヒーリングの解明が課題である。
著者
小川 佳万
出版者
日本比較教育学会
雑誌
比較教育学研究 (ISSN:09166785)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.20, pp.93-104,215, 1994-07-01 (Released:2011-01-27)
被引用文献数
1

This paper deals with Chinese higher education policies for minorities focusing on the mechanisms of “preference” and “control.” The findings are as follows: First, the Chinese government established “Institutes of Nationalities”(Minzu Xueyuan) for the training of minorities' cadres. These “Institutes of Nationalities” originated with “Liberation Area-Type Colleges”, which put an emphasis on political-ideological education.Second, Chinese higher education policies for minorities are characterized as “preference.” Many of preferential policies have been instituted thus far, such as special treatments for minorities in the admission procedures and campus life of the “Institutes of Nationalities.”
著者
堀越 哲郎
出版者
東海大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、アンチセンスRNA増幅法の導入により、ウミウシという各種の遺伝子の塩基配列が未知の動物について、古典的条件付けによる神経細胞での遺伝子発現量の変換を検出することを当初の目的として行った。遺伝子発現を検出するためには各遺伝子のDNAプローブが必要であり、神経可塑性に関与する可能性のある遺伝子としてPLC、CREB、PKC、TRK遺伝子、および全mRNA量の指標として解糖系酵素GAPDHの遺伝子のDNAプローブを作製した。文献とのDNAデータベース検索により各遺伝子の保存性の高い領域を探し、それに相当するDNA断片をラットまたはマウス脳cDNAからPCR法にて増幅し、精製してプローブとした。これらのプローブが軟体動物腹足類に対して使用可能かどうかを、モノアラガイ中枢神経系からジゴキシゲニン標識アンチセンスRNAを作製し、ドットブロットハイブリダイゼーション法で判定した。その結果、複数のプローブが使用可能なことが確認されたが、いずれもシグナルが弱く、単一神経細胞レベルでの検出は困難であると思われた。アンチセンスRNAを電気泳動で観察すると比較的短いRNA断片が多く、テンプレートである2本鎖cDNA作製法に問題があることが示唆された。cDNA作製法を改良するためにはcDNA合成効率を見積もる指標が必要であると考え、モノアラガイras遺伝子の部分塩基配列の決定を行ない、PCR法により検出することで指標とした。その結果、これまでのcDNA作製法ではモノアラガイ中枢神経系約2万分の1個分のcDNAからras遺伝子発現が検出された。現在はcDNA作製過程を改良しており、予備実験では少なくとも100倍程度増やすことが可能となってきている。モノアラガイ中枢の神経細胞数が約2万5千個であることを考え合わせると、今後、単一神経細胞レベルで遺伝子発現量が測定できるものと考えている。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1928年02月24日, 1928-02-24
著者
菅原 祥
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.75-96, 2021-03-31

本稿が試みるのは「SF の社会学」という新たな試みに向けた第一歩である。それは,SF 文学を一種の社会学的テクストとして(あるいは,従来の社会学が苦手としてきたような領域を社会学的な考察の俎上に載せるためのヒントになるようなテクストとして)読むことを提唱する。この目的のために,本稿はアーシュラ・K・ル・グィン(ル=グウィン)の『所有せざる人々』(1974)を「時間の社会学」の観点から詳細に読解し,この作品が社会学における時間に関する議論にどのような新たな視点を付け加えることができるかを検討することで,SF が社会学にどのような貢献をなしうるかを考察する。考察の結果,SF 文学には「時間の社会学」に対して以下のような有効性があることが示唆された。第一に,「異化の文学」としてのSF 文学は,その最良の場合において「他なる時間のあり方」への想像力を喚起する。そこにおいてSF 文学は,物理学や生物学の知見を取り入れることによって「社会的時間」という社会学用語が含意する人間中心主義の独善を免れることが可能なのであり,それによってさまざまな存在レベルの時間を相互に横断し結びつけるような社会理論へと思考を媒介していくことが可能である。第二に,SF 文学は,このような「他なる時間のあり方」をさらに「人間的時間」へと再び差し戻し,翻訳しなおすことによって,人間と「未来」との関わりの有り得べき可能性の探求を可能にしている。そこにおいては現実に対するユートピア的な改変可能性の力を有する「未来」のあり方が示唆される。ここに,「未来」通じて現在を批判的に考察する文学としてのSF 文学の強みがある。
著者
柴田 奈美
出版者
岡山県立大学短期大学部
雑誌
岡山県立大学短期大学部研究紀要 (ISSN:13404687)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.(13)-(23), 2002-03-31

赤木格堂が正岡子規に認められ、子規の生前中に活躍した時期は、明治三十二年から同三十五年の前半までで、非常に短い。しかし、この短期間のうちに才能を認められ、「日本附録週報」の代選まで任せられる程の信用を得た。のちに、「ホトトギス」や「俳星」、「渋柿」といった俳誌にかかわっていく格堂であるが、この一年半という短いながらも親しく深い子規との交流が、他の「ホトトギス」の俳人に認められていたからこそ、そのことが可能になったのである。
著者
坂口 美優 赤坂 郁美
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.101, 2014 (Released:2014-10-01)

ヒートアイランド現象を緩和する効果があるとして、都市内緑地の熱環境改善効果に期待が高まっている。都市内の緑地では、樹木による日光遮蔽効果や葉面からの蒸散作用で周辺市街地よりも気温が数℃低くなる。これはクールアイランド現象と呼ばれ、成田ほか(2004)によって新宿御苑とその周辺市街地では夏季日中には約2℃、夜間は日によって変化があるものの1~3℃の差が現れることが明らかになった。また、静穏な夜間に芝生面からの放射冷却などで生み出された冷気が周辺市街地へと流れ出る「にじみ出し現象」の存在が丸田(1972)によって指摘されている。緑地内で低温域を作り出すのは樹林地及び水面である(尹ほか,1998)。そのため、水面の面積が大きいほど周囲の温度を下げる効果が大きいと考えられる。そこで、本研究では都市部の公園の中でも公園全体の面積に対し池の割合が大きい石神井公園とその周辺市街地で気温の観測を行い、クールアイランド現象やにじみ出しによる冷気の到達範囲を明らかにする。東京都練馬区の都立石神井公園(面積約22.5ha)において観測を行う。園内には三宝寺池(面積約3.2ha)と石神井池(面積約4ha)の2つの池がある。 公園内13か所(図1のA~M)と公園外市街地2か所(図内三角形の印)に温度・湿度データロガー(T&D社TR72-U)を設置し、2014年8月から1か月間の定点観測を行う。公園をほぼ南北方向に横切りその延長上の市街地を含むルート(図1に示すルート1,2)と、公園を東西に分けている道路(井草通り:図中ルート3)上と、公園の西端・東端からそれぞれ150m・200mの道路(図中ルート4,5)において気温の移動観測を夜間に行い、冷気のにじみ出し効果の範囲を調査する。また、日中にも公園内の冷気が周辺市街地に影響を及ぼしているかどうかも調査するため、日中にも気温の移動観測を行う。観測の際の移動は夜間は自動車、日中は徒歩で行う。夜間に公園と市街地の境界地点3か所(図1内星印)に熱線式風速計を設置し、風速の観測を行う。風向については夜間の気温移動観測時に観測を行う。予備観測として、2014年6月2日に図1のルート1において日中に徒歩での移動観測を行った。17時の地点3から16の各地点の気温を図2上に示す。気温の最高値は南側の市街地内地点13の31.3℃で、最低値は公園内地点9の29.1℃であった。公園内は市街地に比べ気温が低く、クールアイランドを形成していることがわかる。観測を行った16時30分から17時30分には南風と南東の風が卓越しており、公園北側の市街地内の気温が南側より低かった原因の1つと考えられる。また、地点4~6の西側は住宅地であるが、東側は松の風公園という緑地であるため、その冷却効果の影響も受けている可能性がある。また、夜間の自動車での移動観測を2014年7月6日に行った。19時40分のルート1・ルート3の各地点の気温を図2中・下に示す。ルート1で公園外北側の地点7と8で最も低温となっている以外は6月2日の徒歩での観測結果と類似した特徴を示しており、公園北側には団地内の緑地の影響とみられる低温帯が形成されている。ルート3においては公園に面している地点での低温帯の形成が確認できる。8月における本調査の結果は、発表にて述べる。